SHE'S「10年間、ひとりじゃなかった……。ありがとう!」音楽が大好きな仲間たち=ファンと完成させた【SHE'S in BUDOKAN】

2022年3月14日 / 19:00

 大阪出身のピアノロックバンドとして【閃光ライオット】で大きな注目を集め、気付けば日本のバンドシーンを賑わす存在となっていたSHE’S。結成10周年&メジャーデビュー5周年を迎えるほどのキャリアを積み上げ、多種多様な音楽性で驚きと感動を与え続けてきた彼らが、2月24日に初の日本武道館ワンマンライブ【SHE’S in BUDOKAN】を開催した。

<SHE’Sの人生そのものだった【SHE’S in BUDOKAN】>

 SHE’Sは次々と新しい音楽性を取り入れながら変化と進化の一途を辿ってきたバンドだ。海外のピアノエモに影響を受けて「ピアノロックバンド」と名乗りながらも、音楽の好みが移り変わっていく度にソレを取り入れることに貪欲にチャレンジし、必ずしもピアノを演奏する形態に捕われなくなっていった。The 1975にハマれば80’sリバイバルサウンドを取り入れ、エド・シーランを大好きになればアコギを多用し、アヴィーチーの音の使い方に感銘を受ければデジタルサウンドも吸収し、その上でSHE’Sらしいオリジナルソングへと昇華していく。新しきを受け入れないリスナーも多い日本の音楽シーンの中で「何かにカテゴライズされたままの音楽をずっと聴かされて「つまらない」と思われるほうが怖い」と自分たちが今その瞬間に表現したい音楽を愚直に創作し、発表し続けてきた。

 結成10年目に開催された【SHE’S in BUDOKAN】は、そんな音楽に対する真っ直ぐな愛情表現とも言える、彼らの妥協なき挑戦が何ひとつ間違っていなかったことを証明するような公演だった。1曲目「追い風」で歌われた「誰の目も厭わずに咲き誇れ」というメッセージからして、この日はまるでSHE’Sのテーマソングのように感じられたし、井上竜馬(vo,key)、服部栞汰(g)、広瀬臣悟(b)、木村雅人(dr)から放たれる、楽曲を追うごとに目まぐるしく変貌していく多種多様な音色や声色、フレーズ、リズムのひとつひとつがそのままSHE’Sの10年間の歴史を物語っていたし、総勢7名の管弦楽チームと演じていく有機的なアンサンブルも「曲を作るのが楽しくて仕方なかったから」バンドを始めた彼ららしい協奏に感じられたし、そこで鳴っている音楽のすべてが(セットリストも最新アルバム『Amulet』を中心に新旧名曲を織り交ぜた選曲になっていたが)類稀なバンド楽団であり、純粋な音楽愛好家仲間でもあるSHE’Sの人生そのものだった。

<音楽が大好き同士の仲間でいよう。そんな温かい関係でいよう>

 井上も「声を出していないはずなのに一緒に歌ってる、聴こえてくる、そんな感覚です」と語っていたが、彼らが音楽にこれほど純度高く人生を乗せることが出来た要因は、この日披露されたすべての楽曲に対して全身全霊で呼応していたファンの存在。SHE’Sの絶え間なく変化していく音楽性にロマンを感じ、自身の人生を重ねて共感し、日本武道館に辿り着くまでのストーリーを一緒に歩んできた仲間とも言えるリスナーがいてこそ、彼らはありのままの自分を音楽化することが出来た。その信頼関係=絆の強さが、緊張や重圧に押し潰されてもおかしくないSHE’S史上最大規模のワンマンライブをハートフルな音楽空間にしてみせたのだろう。笑顔で溢れ返った客席。SHE’Sの10年間を全肯定するような光景。それを見つめながら語られた井上のライブ終盤のMCをここに記したい。

 「ありがとう。10年分、ありがとう。俺が今……どれだけの気持ちを込めて「ありがとう」と言っているか、きっと伝わらへんと、伝えきれないと思う。けど、その分、これからも伝えていこうと、歌で伝えていたいなと思います。俺たちは喋れないから。俺のLINE知らんやろ、みんな(笑)。連絡取られへんやろ。ほんまはな、送りたいくらいや。みんなに「ありがとう、ありがとう」って。でも、それはできへんし、しなくたっていいし。そんなところで俺たちは繋がってないから。今日のライブも「私はいっぱいSHE’Sに救われたのに……行けないことになりました」とか「空席をつくってごめんなさい」とか……そんなんじゃないよね。別にガラガラだっていいよ、もう。(ガラガラだと)マネージメントに怒られちゃうかもしれないけど(笑)そういうことじゃないよな、今日は。

 俺は言葉にすることを仕事をしているのに、言葉にできない想いをなんとか頑張って言葉にして伝えることを仕事にしているのにも関わらず……こういった夜は上手いこと言葉が出てこないです。それぐらい「ありがとう」と想っています。みんな「こんなにもいっぱいもらって」とか言ってくれるけど、僕たちも同じことを想っています。「力をもらってばっかりで、ちゃんと作品で返せているのか。ライブで返せてんのかな?」ってすごく思います。そういう関係でいよう。俺たちがすごいとか、お客さんが上とか、そんなんじゃなくて。ただ音楽が大好き同士の仲間でいよう。そんなあったかい関係でいよう。心を込めて歌います。ありがとうございました! SHE’Sでした」

 そんなSHE’Sの音楽とファンへの深い愛を感じさせたMCのあと、フレーミング・リップスさながらのダイナミックかつ美しい紙吹雪が舞う中で披露された「Stand By Me」は、これまでSHE’Sと共に旅してくれた人々へのファンファーレとして響いた。

 貰うことばかりで返せていないから 大袈裟だって言うけど 心から伝えるよ 出逢えて良かったんだ 出逢えて良かったんだ──

<あなたに、あなたにね、救われてきたから! あなたが光なんだ!>

 これほど美しい大団円はないだろうと思えた「Stand By Me」だったが、彼らの届けたい想い=音楽はアンコールで更なるスパークを生む。ステージに再び現れた4人はそれぞれに今この瞬間の想いを伝えると、まずはインディーズ時代の1stミニアルバム『WHO IS SHE?』に収録されていた、長い冒険のはじまりの歌と言っても過言ではない「Voice」をエモーショナルに歌い奏でていく。まだ無名だった時代に紡いだ「君の声が聞こえるように 耳を澄ましてここにいるから 瞼の裏 逃げ込んだ涙の行方を 僕に話してみてよ」という想いに応えてくれるファンが今こんなにもたくさんいる、そんなあの頃の未来へと結実していく物語はあまりにもドラマティックだった。

 「【SHE’S in BUDOKAN】も10th anniversaryイベントということで、10周年を楽しく過ごそうかと企画されたものなんですが、10周年、2021から2022の今日まですごく楽しかったです。お世話になりました! ありがとうございました! 最後に相変わらず気の利いたことは言えませんが……でも、解散ライブじゃないんで、これからもSHE’SはSHE’Sらしく進んでいこうと思っています。たまに走ったりね、たまにちょっと足を止めてみたり。足を止めてみたりとか言ったら活動休止を匂わせる発言になってしまうな(笑)。そんなつもりはないですよ。でも、ちょっと歩いてみたり。みんなと同じように。

 ただ人生に音楽を演奏するピースがあっただけだと思っています。で、こんなに多くの人に僕たちの音楽が愛されているのは不思議です。不思議、ほんまに不思議。音楽は逃げ場所だったから、俺にとって。どうしようもない気持ちをさ、どこにぶつけたらいいんやろと思って。それを音楽にしてみたら気持ち良くてさ。気持ち良くて、気持ち良くて、「バンドやろうや」って声をかけて、いまだに好きな奴らと好きなことができて、生きてて……しあわせだよなぁ、俺は。ほんまに。こんなに多くの人に応援してもらって。

 ……もう伝えたいことは伝えたんで、話す言葉はないんですけど、渡せる歌が最後に1曲だけ残っています。俺たちにいつも手紙をくれたりするファンのおかげで、俺たちは今もここに立っています。一枚の手紙から生まれた曲を最後に……僕たちからあなたへの手紙のようなものです。受け取って帰ってください。2022年2月24日、今日ここに来てくれてありがとうございました!」

 そんな井上の丸裸のMCのあと、オーラスの「Curtain Call」で歌い叫ばれた「あなたに、あなたにね、救われてきたから!」「あなたが光なんだ!」という想いは、そのままSHE’Sに対するファンの想いでもあったはずだ。彼らが音楽を通して出逢ったみんなに救われてきたように、ファンもまた彼らの音楽に救われてきた。ゆえにSHE’Sの妥協なき挑戦の物語は続いてきたし、これからも続いていくのだろう。

 10年間、ひとりじゃなかった……。ありがとう!

取材&テキスト:平賀哲雄
カメラマン:Shingo Tamai、MASANORI FUJIKAWA

◎ライブ【SHE’S in BUDOKAN】
2022年2月24日(木)日本武道館 セットリスト:
01.追い風
02.Masquerade
03.Un-science
04.Over You
05.Do You Want?
06.In Your Room
07.If
08.Ugly
09.Delete/Enter
10.ミッドナイトワゴン
11.White
12.Letter
13.Chained
14.Clock
15.Ghost
16.Blue Thermal
17.Imperfect
18.Dance With Me
19.The Everglow
20.Stand By Me
En1.Voice
En2.Curtain Call

◎リリース情報
シングル『Blue Thermal』
2022/3/2 RELEASE
<初回限定盤(CD+DVD)>
TYCT-39170 1,980円(tax in.)
<通常盤(CD)>
TYCT-30128 1,100円(tax in.)

◎公演情報
【SHE“Zoo”サファリ vol.3】
2022年5月27日(金)愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
2022年6月2日(木)3日(金)大阪・梅田 CLUB QUATTRO
2022年6月9日(木)10日(金)東京・渋谷 CLUB QUATTRO
特設サイト:https://fc.she-s.info/feature/she_zoo_safari3


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