リンゴ・スター、今年2作目のEP『チェンジ・ザ・ワールド』に込めた想いや故チャリー・ワッツとの思い出を語る

2021年9月24日 / 18:00

 2021年に入って2作目となるEP『チェンジ・ザ・ワールド』を本日9月24日に発売したリンゴ・スターが、リリースに先駆けて各国のメディアに向けて、自宅のスタジオからZoomでプレス・カンファレンスを行った。スクリーンに登場したリンゴの背後には、カラフルな“星”のオブジェが飾られており、その上には新作のCDをディスプレイがされていた。約30分間のプレス・カンファレンスで、彼は最新作や11月にディズニープラスで配信されるドキュメンタリー・シリーズ『ザ・ビートルズ:Get Back』、故チャーリー・ワッツとの思い出についても語ってくれた。

 今年3月に発売したEP『ズーム・イン』に次ぐ、4曲入りの新作『チェンジ・ザ・ワールド』には、前作の「Waiting for the Tides to Turn」同様にレゲエ調の「Just That Way」が収録されている。本曲は、その「Waiting for the Tides to Turn」でも共演したジャマイカ人ギタリストのトニー・チェンに加え、故ボブ・マーリーとのレコーディング経験を持ち、リンゴが“マスター・レゲエ・ベース・プレーヤー”と呼ぶフリー・フルウッドをフィーチャーしている。「ジャマイカ出身のプレーヤーに参加してもらうことで、より曲に勢いがつくし、僕自身も最高のミュージシャンと演奏することができて嬉しい。自分のためにEPを作っているとはいえ、こういった才能溢れる人々と演奏して、ハングアウトすることは楽しいからね」とリンゴは話した。

 リンゴが“とても気に入っている”というカントリー調の「Coming Undone」は、アデルやピンクの楽曲を手掛けてきた名ソングライターのリンダ・ペリーとの初のコラボ曲だ。彼女から送られてきた音源には、途中“喉”でトロンボーン・ソロを演奏したようなパートがあったため、トロンボーン・ショーティとのコラボも実現した。リンゴから音源を受け取った彼は、トロンボーンのみならず、ブラス・セクションを付け加えたファイルを送り返してきたそうで、リンゴは「彼のおかげでこの曲が完成した。彼にはアイディアがあって、それが見事に形になったんだ。僕らが向かっていた場所と全く違うフィーリングの曲にしてくれた。ある意味とても悲しい内容の曲だけど、彼のセクションが曲をアップリフトしてくれた」と説明し、「レコードを作っている時に起きるサプライズは大好きなんだ」と語った。

 EPの最後に収録されているビル・ヘイリー&コメッツによるロックの名曲「Rock Around The Clock」を取り上げた理由は、子供の頃の鮮明な記憶に基づいているそうだ。「僕は7歳の誕生日、14歳の誕生日を病院で過ごした。そして15歳の誕生日を迎える頃にもまだ入院していた」とリンゴは病弱だった幼少期を振り返り、「結核を患っていて、すでに1年以上入院して体調は良くなっていたので、15歳の誕生日には、母が医師に打診して外出できることになった」と述べた。その時に、祖父母とともにマン島に観に行った映画『Rock Around The Clock(邦題:ロック・アンド・ロール/狂熱のジャズ)』に衝撃を受けたと明かした。

 「観客はバカンス中で羽目を外していた人々ばかりで、ややクレイジーだった。ずっと入院していて、何が流行っているのか全く知らなかった僕は、映画を観ながら椅子を投げたり、劇場を破壊して大盛り上がりしている人々の様子に、“ワオ、最高だな”と思ったよ。この瞬間は僕の脳裏に刻まれ、今でも昨日のように覚えている」と説明した。この曲に関しては、元々はオールドスクール風なバージョンをレコーディングしていたそうだが、「やはりロックすることにした。そしてジョー・ウォルシュに連絡して、彼もロックしてくれた」と最終的にはロックなバージョンになったそうだ。

 また、ザ・ビートルズがいかにロックの歴史を変えたかという質問には、「ロックではなく音楽の歴史を変えたと思う。ザ・ビートルズが革新的だった理由の一つは、自ら曲を書いて、それを録音していたこと。当時は、別に作詞家がいて、その曲をバンドが録音するのが主流だった。僕らもジョージ・マーティンから素晴らしい楽曲の数々を提供されたことがあったけれど、自分たちの曲をやりたいと断ったんだ。まぁ、僕は“ジョージ、これをやりたい”と言ったんだけど、みんなが反対した。ザ・ビートルズの音楽は未だに存在しているし、普遍的だ。熱心に取り組んだし、その中からはグレイトな曲がいくつか生まれたんだ」と答えた。

 今作からファンにどのようなことを伝えたいかと問われると「優しさ、思いやり、理解、愛を示し、平和でいてほしい」と述べたリンゴは、「そうなればいいと思う。今、世界の半分は沈んでしまい、半分は燃えている。数年後には、大気汚染の影響で息をするのが苦しくなるだろう。隣人、友人、周りの人々を労わろう。それぞれの状況を理解するように努めよう」とメッセージを送った。

 さらには、「“チェンジ・ザ・ワールド”という表現は、子供たちのために変えるということだ。現在ニューヨークでは多くの人々が集まっている。世界の半分は沈んでしまい、半分は燃えている。それなのに、彼らはまだ“いや、やらない”と言っている。やるべきことはたくさんあると思う」と現在米NYで開催されている国連総会に出席している世界リーダーたちについて述べ、「政治家たちには子供はいないのだろうか?その子供たちに子供はいないのだろうか?それだけで、我々が呼吸をし、水を飲めるようにする理由にはならないのだろうか」と話した。

 先月亡くなったザ・ローリング・ストーンズのドラマー、チャリー・ワッツについては、「彼は最高の男だった。僕よりも団結するのが難しいバンドのメンバーだったけれどね(笑)」と話し、1970年代にリンゴが自宅で開いたパーティーでのチャーリー、そしてレッド・ツェッペリンのドラマー、故ジョン・ボーナムとの逸話を披露した。

 「自宅の屋根裏にはドラム・キットがあった。(パーティには)チャーリーが来て、ジョン・ボーナムも来た。3人のドラマーがハングアウトしていて、ボーナムがキットに座った。でもステージ上のように固定されていないから、ジョンが叩くうちにベース・ドラムが次第に遠のいていったんだ。そこで、チャリー・ワッツとリンゴが彼が演奏する中、ベース・ドラムを抑えてたんだ。これはきっといい動画やTikTok、写真になっただろうし、(存在していたら)世界中に拡散されていただろう。70年代には、自宅でパーティを行っていたけれど、写真は一枚も残っていない。僕が許可しなかったからなんだけど、残っていたら最高の写真になっていただろう」と当時の貴重な思い出を共有した。

 最後に、リンゴはザ・ビートルズ最後のアルバムとなった『レット・イット・ビー』の制作からアップル社の屋上で行われたバンドにとって最後のライブとなるルーフトップ・ライブの舞台裏を捉えた、ピーター・ジャクソン監督によるドキュメンタリー・シリーズ『ザ・ビートルズ:Get Back』について触れた。

 11月にディズニープラスで3夜にわたり配信されるドキュメンタリー・シリーズについて、「とても気に入っているよ。なぜなら僕は出演しているからね。だから、6時間あっても足らないよ」と笑いながら話し、「作品には、僕にとって思い出深いシーンがあって、ポールが“ライブなんて誰がやりたいんだ”と言うんだけど、後ろで僕が“自分はやりたいよ”と話す声が入っているんだ(笑)。そしてライブをやることになった。それまでビートルズは、様々な場所で映像を撮影してきたけれど、最終的には(アップル社の)屋上でやろうということになった。最高だった」と振り返った。

 さらには「誰もが楽しめる作品になっていると思う。バンドが感情的な浮き沈みを経験しながらも、制作に精一杯取り組み、いつものように到達点に辿り着く姿を捉えている。そんな感じだったんだ。4人の男が部屋に集まると、浮き沈みがあるのは当たり前だ」と続け、「そして、ピーターは、僕らのヒーローで、とてもいい仕事をしてくれた。実際のルーフトップ・ライブは43分ぐらいあると思う。なかなかクールだよ。元々は8分半だったからね。最終結果は、すごく気に入っているということだ」と締めくくった。

◎リリース情報
『チェンジ・ザ・ワールド』
2021/9/24 RELEASE
UICY-16018 / 2,310円(tax incl.)
日本盤のみ:解説付/対訳付、SHM-CD仕様
https://umj.lnk.to/RingoStarr_lctw
<トラックリスト>
レッツ・チェンジ・ザ・ワールド
ジャスト・ザット・ウェイ
カミング・アンダン
ロック・アラウンド・ザ・クロック

Photo: Scott Robert Ritchie


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