<ライブレポート>ONE OK ROCKの挑戦的なアコースティック・ライブ【Day to Night Acoustic Sessions】を振り返る

2021年8月28日 / 12:00

 ONE OK ROCKがアコースティック・ライブ【ONE OK ROCK 2021 “Day to Night Acoustic Sessions” at STELLAR THEATER】を開催した。日本での有観客ライブとしては、昨年1月にファイナルを迎えた『EYE OF THE STORM』のジャパン・ツアー以来となるので、約1年半ぶりのこと。

 会場の河口湖ステラシアターは、富士山のふもとにある野外ステージで、舞台から扇状に広がる客席は約3,000人を収容できるキャパシティ(感染症対策のため当日の収容人数はキャパシティの50%が上限)なのだが、その構造は歌劇場のような立体感のある作りになっていて、ステージ上の視認性はバッチリだ。日本でアリーナ~スタジアム規模のツアーを回るだけでなく、海外諸国をめぐるワールド・ツアーも行う彼ら。久しぶりのファンとの再会の場となったのは、さながら山奥の隠れ家のような、どこか閉鎖的で親密な空間だった。ONE OK ROCKの野外ライブと言えば、2016年の渚園公演、【ROCK IN JAPAN FESTIVAL】や【SWEET LOVE SHOWER】といったフェスティバルなど、広大なフィールドに渦巻く熱狂!といった印象があるだけに、今回の雰囲気は新鮮だ。

 流麗なストリングスのイントロに誘われ、盛大な拍手に迎えられながらメンバーがオンステージ。最後に登壇したフロントマンのTakaが深々とお辞儀すると、オープナーの「We are」が始まる。“Day to Night”と銘打たれた今回のステージは、一部の日程を除き、昼夜2公演が予定されていて、時間の移り変わりに伴い、ガラッと変わる雰囲気を楽しめるのも特徴的だった。メディアの取材対象公演だった昼公演は、澄み渡る青空と白い雲、木々の緑の3色コントラストが美しく、全国から足を運んだファンたちも、ロケーションの魅力を存分に楽しめたのでないか。

 しかし本公演で最も特筆すべき点はやはり、この日のために編成されたスペシャル・バンドの存在だろう。サポート・メンバーとして迎えられたのは、ギター、パーカッション、キーボード、そしてストリングス・カルテットに2人のコーラスを加えた計9人。2018年の東京ドーム公演ではフィナーレを飾り、4万5千人のオーディエンスを丸っと飲み込む圧巻のスケール感を放った「We are」も、緻密なオーケストレーションによって生まれ変わり、グツグツと煮えたぎる熱量を少しずつ解放していくような、ある種の焦燥感にも似たスリルを孕んでいた。

 では、この日の彼らは、ロック・バンドというアイデンティティを一時的に捨て去り、アコースティックというコンセプトに生真面目に迎合していたかと言われれば、決してそうではなかった。1曲目を椅子に着席して歌唱したTakaも立ち上がり、激情的な歌声をのせた2曲目「Bombs away」は、不規則に跳ね踊るビートがストリングスを含めた全体のアンサンブルを先導していたし、演奏の音色は最小限に留め、端正なヴォーカルを最大限に発揮させた「カラス」のアプローチは、R&Bやヒップホップが席捲するグローバルな音楽シーンに挑む彼らの最新モードとも重なるものがある。今回のONE OK ROCKの試みは、アコースティック仕様だからといって自分たちの楽曲をスクラップ&ビルドする根本的な転身ではなく、スペシャルなアコースティック編成の中でどこまでONE OK ROCKとして遊ぶことができるかというチャレンジだったようにも思える。

 遊び心と言えば、Ryotaがふくよかなウッド・ベースの音色を添えた「Deeper Deeper」も象徴的だった。ザ・ユーズドやパニック!アット・ザ・ディスコ、ブリンク 182らを手掛け、エモやパック・ロックのシーンに多大な功績を残すジョン・フェルドマンとの最初のコラボレーションとなったナンバーだが、今回はそれをジャジーにリアレンジ、原曲とはまた違う独特なグルーヴを湛えたパフォーマンスになった。また、感傷的なロック・バラードを鳴らす「Wherever you are」はこの日、トロピカルなレゲエ風の仕上がりに。こうした試みは、本公演のバンド・マスターであり、10年以上にわたってONE OK ROCKのサウンド・プロデュースを務めてきたakkinへの信頼に由来するとも言えるのかもしれない。

 こうした意外なアプローチで驚かせられた楽曲の一方で、オリジナルの編曲の持ち味を生かし、とりわけピアノとストリングスの生演奏が世界観の構築に大きな貢献を果たしたのが、映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の主題歌「Broken Heart of Gold」だ。悲壮感漂うシンフォニックなサウンド、その余韻を掬い上げるように始まった「Mighty Long Fall」は、Takaと2人のコーラスが織りなすハーモニーも美しく、「いつもやってないことをやりたい」と語り、ONE OK ROCKとしては珍しい邦楽曲のカバーとして披露された「First Love」(宇多田ヒカル)では、ソウルフルな歌声に拍車がかかる。

 「べつに立っちゃいけないとかないからね」と呼びかけ、直後の各セクションによるソロ回しでも存分にオーディエンスの身も心も躍らせた「Taking Off」、ロケーションの開放感も相まって楽曲本来のスケールがさらに肥大化していくような「Renegades」のパフォーマンスを経て、迫りくるクライマックス感覚がいよいよピークに達した「Stand Out Fit In」と「Wasted Nights」でショーはフィニッシュ。「今回のライブで汗かくと思ってなかったよね」とTakaは言ったが、バンドとして成長するためにたゆまぬ研鑽を続け、未知なる挑戦も全力で楽しむ彼らの心意気が存分に映し出された今回のステージは、そうした野心的なエネルギーに満ち満ちた内容だった。

Photo by Kazushi Hamano / Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

◎公演情報
【ONE OK ROCK 2021 “Day to Night Acoustic Sessions” at STELLAR THEATER】
2021年7月22日(木)・23日(金)・24日(土)・25日(日)
<セットリスト(25日昼公演)>
01. We are
02. Bombs away
03. カラス
04. The Beginning
05. Deeper Deeper
06. Wherever you are
07. Broken Heart of Gold
08. Mighty Long Fall
09. First Love(カバー)
10. Taking Off
11. Renegades
12. Stand Out Fit In
13. Wasted Nights


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