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年始のチャートに大きな影響を与えるもののひとつに、12月31日に放送されるNHK『紅白歌合戦』がある。一時に比べると影響力が衰えたといわれることも多いが、それでも国民的な歌番組として全国津々浦々で観られるというのは非常に大きい。
昨年はコロナ禍の影響もあって、自宅でテレビを見て過ごす人が増え、視聴率も概ね良かったようだ。もちろん出演者によって差はあるが、ここではとくに視聴率が高かったアーティストの楽曲を2曲をピックアップしておこう。まずはヴァーチャルな顔出しが話題になったGReeeeN。今週のHot 100では先週まで圏外だった「星影のエール」が44位にまで上昇している(【表1】)。また、トリを飾ったMISIAの「アイノカタチ」も同じく圏外から43位にまで再浮上した(【表2】)。
この2曲のチャートアクションを見ていると、いずれもCDの売上数と配信のダウンロード数が大幅に急上昇している。テレビでそのパフォーマンスを観て気に入り、CDを買ったりダウンロードしたりするのは自然なことであり、しばらく圏外だった楽曲ならなおさらこの動きは目立ってくる。ただ面白いのは、映像という点ではテレビと親和性の高い動画の再生数に関して、「星影のエール」は反応が薄いが、「アイノカタチ」の方は急上昇している。逆に、ラジオのオンエア回数を見ると、「星影のエール」のほうが顕著に反応している。これらはアーティストや楽曲の特性によって変わってくるのだろう。
ただ、気になるのがストリーミングの動きだ。いずれの楽曲もストリーミングに関しては紅白後も圏外のままで、100位以内には入ってきていない。もしかしたら多少は増えているのかもしれないが、フィジカルやダウンロードに比べるとあきらかに反応が鈍い。裏を返せば、ストリーミングのユーザーには紅白はあまり影響しないということだ。実際、他の紅白出場アーティストの楽曲も、このタイミングでストリーミングが大幅に増加しているケースはほとんど見られない。
そうなると、ストリーミングは既存のプロモーションで簡単に攻略できる場ではないことがわかる。ストリーミングのユーザーはますます広がっていき、比率も高まることだろう。そうなると紅白に出れば売れる、という図式が崩れていく可能性も大いにある。2021年はこういった固定概念を崩されていく一年になるのかもしれない。Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
※記事初出し時に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。
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