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ジミ・ヘンドリックス、1970年のマウイ公演にまつわる新作ドキュメンタリーがリリースへ

 ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのマウイ来島を模様を収めた新作ドキュメンタリー『Music, Money, Madness… Jimi Hendrix in Maui』が完成した。

 このドキュメンタリー映像では、何かと問題の多かったマネージャー、マイケル・ジェフリーが制作し不運な運命をたどる映画『レインボウ・ブリッジ』の撮影にジミ・ヘンドリックス達はどう巻き込まれていったのか、その様子もまとめられている。

 この新たなドキュメンタリーに加え、7月30日の午後に行なわれた2回のパフォーマンスで現存するすべてのショットを、16ミリのカラー映像、並びにステレオ及び5.1サラウンド・ミックスで収録したBlu-Rayがリリースとなる。パッケージには、7月30日の2回のパフォーマンスを3枚組CD(LPでは3枚組)に収めた『ライヴ・イン・マウイ』も含まれる。この音源についてはジミ・ヘンドリックスのエンジニアを長年務めたエディ・クレイマーが、新たにテープの復元とミキシングを、バーニー・グランドマンがマスタリングを手がけた。

 この歴史的コンサートで演奏された「ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)」の配信も始まっている。
 
 1970年の半ば、ジミ・ヘンドリックスは、ミッチ・ミッチェル(ドラム)、ビリー・コックス(ベース)とともに『エレクトリック・レディランド』に続くアルバムの制作を開始。全米のフェスティバルやアリーナ会場でのヘッドライナーを務める一方で、米マンハッタンのグリニッジ・ヴィレッジにエレクトリック・レディ・スタジオを設立する。最新鋭の録音機材を備えたスタジオにはすでに莫大な費用が投じられていた。マネージャーのマイケル・ジェフリーはワーナー・ブラザーズに掛け合い、スタジオ完成に必要な残りの費用50万ドルの前払金を調達。その同じミーティングでジェフリーはワーナー・ブラザーズのエグゼクティブから、マウイ島で撮影する『レインボウ・ブリッジ』なる映画への資金出資も取り付けた。見返りとして約束されたのは、ジミ・ヘンドリックスのスタジオ録音の新曲から成るサウンドトラック・アルバムの権利だった。
 
 アンディ・ウォーホルの従者であるチャック・ワインが監督を務め、『イージー・ライダー』に着想を得たというこの作品。ジェフリーが描こうとしたのは、悟りを開いた世界とそうでない世界を結ぶ“虹の橋(レインボウ・ブリッジ)”だ。サーフィン、ヨガ、瞑想、太極拳を織り交ぜたシーンを、脚本なしで、プロの役者も使わずに撮影するという構想だった。が、結果はヒッピー文化がこれでもかと脈略なく寄せ集められたにすぎず、ジェフリーは資金繰りに不安を感じ始めていた。エクスペリエンスはホノルルのH.I.C.アリーナで1970年8月1日にコンサートが予定されていた。映画の中でヘンドリックスをある程度フィーチャーせねばならないチャック・ワインは、ハレアカラ休火山の裾野で誰でも自由に参加できる“色と音による振動的実験” を行ない、それを撮影する策を講じた。ジミ・へンドリックスのフリー・コンサートの噂はあっというまに広まり、何百人もの興味本位のマウイっ子たちがオリンダのボールドウィン牧場に集まった。その場凌ぎのステージが建てられ、オーディエンスは星座ごとに場所が割り振られた。パフォーマンス自体は大成功だった。3人の演奏はパワーの極みにあり、息を飲むような大自然をバックに2回のセットが滞りなく展開された。
 
 マウイのパフォーマンスを終えたヘンドリックスは、米ニューヨークに戻り、エレクトリック・レディ・スタジオでの仕事をすぐに再開。その後、『レインボウ・ブリッジ』のプロジェクトにはノータッチだった。8月末、ワイト島でのフェスティバルのヘッドライナーを皮切りに、ヨーロッパ・ツアーが始まる。ところが1970年9月18日、突然彼は帰らぬ人となる。
 
 1971年に発売されたジミ・ヘンドリックスの死後初となるアルバム『クライ・オブ・ラヴ』は、広く一般と評論家を喜ばせるヒットとなり、高い評価を得た。そこでジェフリーが次にリリースしたのが『レインボウ・ブリッジ』とそのサウンドトラックだ。しかしヘンドリックスの名前にも関わらず、映画は大ゴケに終わった。むしろ多くの者はコンサート映画を観に行くつもりで映画館に足を運び、大いに困惑したのだ。お目当のヘンドリックスのコンサート・シーンは、でたらめに編集されたわずか17分。ようやく最後のカットに登場し、映画のせめてもの救いになっている。マウイでのパフォーマンスのオリジナル・レコーディングに技術的な問題があったため、映画に使用できるようにミッチ・ミッチェルは1971年、エレクトリック・レディ・スタジオでドラム・トラックをすべて録音し直し、オーバーダブで重ねている。
 
 エディ・クレイマーはその時の様子をこう語る。「オーバーダブ作業でのミッチの仕事ぶりはすごかった。最初のテイクで録れなかったとしても、間違いなく2度目のテイクで仕留めてみせていた。既に叩いたドラムパートを完璧に再現する彼の能力にはびっくりだったよ。録音の問題は時速80キロ近い風だ。なんてったって火山の真横で撮影してたからね。でもミッチは何が何でも修復してみせるという気概だった。ジミが死んで、僕はしばらくテープが入ったクローゼットを開けられずにいたんだ。ミッチは英国人らしい“やればなんでも出来る” という態度で頑張ってくれた。オーバーダブでドラムを重ねるだけなら誰でも出来るだろう。でもそれが分からないように出来るのはマジックだ。彼はすべての曲を知り尽くしていた。素晴らしいミュージシャンとしての、そしてジミと対等かつ協力的パートナーとしてのミッチの感性のなせる技だよ」
 
 死後に発表された『レインボウ・ブリッジ』のサウンドトラックはミッチ・ミッチェル、エディ・クレイマー、ジョン・ジャンセンが制作にあたり、「ドリー・ダガー」や「ヘイ・ベイビー(ニュー・ライジング・サン)」といった代表曲が収められた秀逸の1枚だった。しかし、マウイのコンサートからの音源が含まれなかったことは、アルバム購入者のさらなる当惑を招いたかもしれない。
 
 ジョン・マクダーモット監督、ジェイニー・ヘンドリックス、ジョージ・スコット、ジョン・マクダーモット制作『Music, Money, Madness… Jimi Hendrix In Maui』はこれまで未公開だったオリジナル映像に加え、ビリー・コックス、エディ・クレイマー、ワーナー・ブラザーズのエグゼクティブ、『レインボウ・ブリッジ』のキャスト、そして監督チャック・ワインら、当時の関係者ならびに主要プレイヤーたちとの新たなインタビューを満載。彼らの口から語られるのは、史上稀に見る論争を呼んだインディペンデント映画の“真実” のストーリーだ。
 
 そしてジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの幻の2ステージがCD『ライヴ・イン・マウイ』で完全再現された。「フォクシー・レディ」「紫のけむり」「ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)」といったコンサートでのお気に入りから、ヘンドリックスが向かおうとしていた新たな方向性を示す当時未発表の「ドリー・ダガー」や「自由」なども含まれている。尚、CD2枚とBlu-rayで3枚組になる日本盤『ライヴ・イン・マウイ』はジミの生誕日となる11月27日発売予定(輸入2CD+Blu-rayは11月20日、輸入3LP+Blu-rayは12月4日発売予定)となっている。
 
 「冒険が大好きだったジミにとってハワイでの滞在は冒険に事欠かなかった。そしてハワイは彼が大好きだった場所よ」とジェイニー・ヘンドリックスは言う。「“レインボウ・ブリッジ”とこれらのレコーディングの背景を知るほどに、奇妙なことを素晴らしいものに変えてしまうジミの尋常じゃない能力が浮き彫りになる。今回の商品化でジミの天才性により迫る作品になったことを、私たちもとても嬉しく思っています」

◎リリース情報
CD+ Blu-Ray『ライヴ・イン・マウイ』
2020/11/27 RELEASE
6,000円(plus tax)
※完全生産限定盤、デジパック(輸入)、英文解説の完全翻訳・書下ろし解説・歌詞・対訳掲載の日本版ブックレット

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