『Fuck Love』ザ・キッド・ラロイ(Album Review)

2020年7月31日 / 18:00

 2003年生まれ、オーストラリアはニューサウスウェールズ州シドニー出身。本名をチャールトン・ケネス・ジェフリー・ハワードといい、フージーズやエリカ・バドゥ、2パックといったヒップホップ~R&Bシンガーを愛聴していた母親の影響もあり、ブラック・ミュージックに没頭していったという、若干17才の新星ラッパー。フェバリット・アーティストからみるに、ママの年もアラフォー世代といったところか……?

 2018年にオーストラリアのローカル・ミュージシャンを発掘する『Triple J unearthed』でファイナリストとなり、SoundCloudとYouTube限定で初EP『14 with a Dream』をリリース。翌2019年にはリル・ビビー率いる<Grade A Columbia>と契約し、デビュー曲「Let Her Go」を発表した。この曲がヒップホップ・ファンの注目を集め、ミュージック・ビデオは2,000万再生を打ち出すヒットを記録。続くリル・テッカをフィーチャーした「Diva」は、本国で初のチャートイン(76位)を果たしている。

 その勢いに乗り、Y2Kとコラボした「Go Dumb」や、リル・ティージェイとの「Fade Away」などシングルを精力的に発表し、6月にリリースした新曲「Go」で、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”初のランクインとなる52位をマーク。オーストラリアでは23位と「Diva」を超える最高位を更新したばかりだ。

 「Go」は、昨年12月に薬物のオーヴァードーズにより死去したラッパー/シンガーの故ジュース・ワールドとコラボレーションした話題曲で、自身のインスタグラムには追悼の意を込めた投稿が続々とされている。また、最新シングル「Tell Me Why」でも、ジュースを失った悲痛が淡々と綴られていて、彼にとってその存在がいかに大きかったかを物語る。

 本作『Fuck Love』は、その「Go」や「Tell Me Why」を収録した自身初のフル・アルバム。ジュース・ワールドのスタイルをまんま継承したといっても過言ではないエモ・ラップが満載で、いずれの曲にも喪失感や失望感といった、悲観的な要素が含まれまくっている。パっと見、ジャスティン・ビーバーの初期を彷彿させるちょっとおぼこいイメージだが、そのキュートな容姿から放たれてるとは思えない負の感情、高音のガナり具合が絶妙なラップ&ボーカル・ワークにギャップ萌え?する。17才という若さだから醸し出せる勢いもいいが、数年後にはどういうアーティストに変化していくのか……というのも、たのしみなところではある。

 近年、ラッパーの間でロックやメタルにクロスオーバーしたトラックがプチ・ブームとなっているが、本作にもまた、そういった色が加えられている。オープニング・トラック「MAYBE」は、オルタナとトラップと掛け合わせたような曲だし、インスタに投稿された「SAME THING」もラップ・ロック的な要素が強い。「ERASE U」~「RUNNING」なんかはポスト・マローンのオウム返しで、ジャンルを超越した音楽性は、ラップ・フォロワー以外からも支持されるとみえる。

 ニーヨの大ヒット曲「So Sick」(2006年)をまんま使いした「NEED YOU MOST」は、スティングの「Shape Of My Heart」(1993年)をサンプリングしたジュースの代表曲「Lucid Dreams」を受け継いだようなメロウ・チューン。バズり方次第では、「Lucid Dreams」に続くヒットも期待できそう。売れ線では、「Blueberry Faygo」で大ブレイク中の新人ラッパー=リル・モジーとコラボレーションした「WRONG」も、良質なメロディ・ラインと今っぽいトラック&リリックで、若層を中心に人気を博している。痛みを取り除く術を手探りにする「I WISH」や、失恋からのメンタル・ヘルスを歌った「SELFISH」など、ジュースの影響をモロに受けたエモ・ラップもいい。

 本作のリリース2週前には、ジュース・ワールドの遺作『レジェンズ・ネヴァー・ダイ』が発売されていて、翌週のビルボード・チャートではアルバムが初登場1位に、そしてキッド・ラロイも参加した「Hate the Other Side」がソング・チャートで10位にデビューし、自身初の全米TOP10入りを果たしている。この功績が本作『Fuck Love』のヒットに繋がることは間違いないだろうし、アルバムの発表を機に、レジェンドの後釜として活躍することも期待したい。

 アニメーションによるアルバムのカバー・アートは、「ジュース」というカタカナ表記の看板や、渋谷の109と思われるビル群から、日本にインスパイアされたものかと思われる。  

Text: 本家 一成


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