【Editor's Talk Session】今月のテーマ:ライヴハウス支援に立ち上がったDとlynch.に訊く

2020年5月14日 / 12:00

Editor's Talk Session (okmusic UP's)

BARKS、OKMusic、Pop’n’Roll、全日本歌謡情報センターという媒体が連携する雑誌として立ち上がったmusic UP’s だからこそ、さまざなテーマを掲げて、各編集部員がトークセッションを繰り広げる本企画。第六回目も前回に引き続き特別編。新型コロナウィルスの影響で窮地に立たされているライヴハウスの応援プロジェクトを展開中のDのASAGIとlynch.の葉月に参加してもらい、バンドの立場から現状であり、想いを語ってもらった。
座談会参加者

■烏丸哲也

ミュージシャン、『GiGS』副編集長、『YOUNG GUITER』編集長を経て、BARKS編集長に至る。髪の毛を失った代わりに諸行無常の徳を得る。喘息持ち。

■ASAGI

2003年4月にD結成、08年にメジャーデビュー。Vocalist。作詞家、作曲家。Dのリーダーであり、浅葱ソロとしても活躍。有限会社GOD CHILD RECORDSの代表取締役社長CEO兼CFO。Executive Producer。撮影スタジオStudio Rosariumオーナー。多摩動物公園オフィシャルサポーター。DMMオンラインサロン『Sub Rosa』運営。

■葉月

lynch.というバンドで曲と詞を書き、歌っています。フルマラソンでサブフォーを達成し、琵琶湖にバスボートを所有し、ゲーム実況をやっています。

■石田博嗣

大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP’s&OKMusicに関わるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。

■千々和 香苗

学生の頃からライヴハウスで自主企画を行なったり、実費でフリーマガジンを制作するなど手探りに活動し、現在はmusic UP’s&OKMusicにて奮闘中。ディズニー好き。

■岩田知大

音楽雑誌の編集者、アニソンイベントの制作、アイドルの運営補佐、転職サイトの制作を経て、music UP’s&OKMusicの編集者として活躍中。元バンドマンでアニメ好き。
何かしないと 自分たちの今後が危ない

石田
「この座談会企画は編集部スタッフが話し合うものなのですが、コロナ禍の中、前回は苦境にあるライヴハウスの方に参加してもらったので、今回はそのライヴハウスの応援企画を行なっているバンドということで、おふたりに参加していただきました。早速ですけど、この応援企画を始めた動機はどんなものだったのですか?」
ASAGI
「いつまで続くのか分からない不安な状況にあるわけじゃないですか。だから、“音楽で何かできることをしたい”というのが最初の気持ちでした。でも、ライヴ活動ができないわけですから、自宅からでも何かできることはないかと考えて、まずは曲を作ってみたり、今回のプロジェクトを立ち上げたりして、できる限り前を向いてやっていこうと思いましたね。」
石田
「Dは東日本大震災や熊本地震、台風、オーストラリア森林火災の時もチャリティー的なアクションを起こしていましたが、それも“音楽で何かをしたい”という気持ちから?」
ASAGI
「そうですね。結構長くバンド活動をしてますけど、結成当初はメジャーを目標に頑張ってて、そのメジャー10周年を迎えたあと、改めて“自分たちの目標って何だろう?”って考えた時、音楽で何かの、誰かの力になるようなことをやっていきたいと、より強く思うようになったんですね。そうなると音楽を作る時の気持ちも変わってきて…それこそオーストラリアの森林火災の件もそうですけど、悲しいニュースを観た時に“自分にできることは何かないか?”って。もちろん自分にできることなんて本当に微力なんですけど、自分がアクションを起こすことで少しでも力になれたらっていうのが最初だったんですよ。それでWWFジャパンとのプロジェクトだったり、新たに日本ユニセフ協会へ寄付できるプロジェクトも立ち上げたりしてるんですけど、実はこれらはコロナ禍になる前からやっていたことでした。すぐに実現するものではなかったんですよね。特に音楽配信からの“自動的な寄付”という内容的にも前例のないイノベーション的なことだったので、結構時間がかかって。前々から計画したのが、ようやく今になって実施されたという感じなんです。」
石田
「そのシステムも秀逸だなって。ダウンロードだったり、サブスクで楽曲を聴いてもらって、その配信収益の何パーセントかが自動分配されるわけですよね。」
ASAGI
「はい。2019年の秋頃だったかな? 配信サイトの新たな機能として、収益が自動分配されるシステムができたんですよ。“それって寄付にも使えるんじゃないか?”と思ったんです。楽曲制作には役割があるからシステム的には“プロデュース”や“エンジニア”、“フィーチャリング”“ディレクション”“レーベル”“マネージメント”“エージェント”“プロモーション”などという項目はあるんですけど、もちろん“寄付”はないし、このようにかなり細分化されているので“その他”というのもない。まずはサイトへ寄付に利用していいかを相談して、次にWWFジャパンや日本ユニセフ協会に受け皿になってもらえるかを相談しました。なので、コロナ禍になってからの実際の動きとしては、まずはライヴなどの延期の対応を含め、メンバー、スタッフ、ファンのことを第一に考えて行動しましたね。そして、すぐにファンクラブ会報にマスク2枚、グッズ通販にもマスクや除菌ウェットティッシュを同梱することを考えて手配し、ほぼそれと同時に自宅での曲作りやライヴハウス応援企画を始めました。」
石田
「lynch.もライヴハウス支援の企画をやられていますが、それはどんな想いから?」
葉月
「思ったよりも活動できない期間が長引きそうだと感じたところから始まったんですけど、最初は“じゃあ、コロナに対する曲でも作るか”ってスタッフと話してて、その売上でマスクを作るとかして、医療関係とかに寄付できないかなって思ってたんですよ。でも、それよりも身近なところ…ライヴハウスに寄付したらどうかっていう話をスタッフから言われたんです。“コロナが終息したら、またライヴをやりたい!”とか言ってますけど、いざ終息した時に会場がない可能性があるから、だったらライヴハウスを助けないといけないって思いましたね。もちろん僕らだけでどうにかできることじゃないし…それは金額的なところも含めて。あと、僕らが行動することで他のバンドやアーティストにも“何かしないと自分たちの今後が危ない”と思ってもらいたかったんですよね。だから、早く行動に移したかったのはありますね。」
ASAGI
「そこはまったく同じ意見ですね。」
烏丸
「バンドが解散・崩壊する背景には、人間関係や音楽性などさまざまな要因がありますけど、活動ができなくなる…ライヴをやらなくなるとバンドは潰れますよね。バンドって生き物ですから。ライヴ活動ができないという現状に、何を思いましたか?」
ASAGI
「確かに。僕、こういう時っていつも最悪のケースを想定するんですよ。だから、そうなった時の対処を日々考えて、何か音楽に通じることを発信していかないといけないと思ってて。さっき葉月くんも言ってましたけど、Dがライヴハウス応援活動を始めても、自分たちの力だけではどうにもならないってのは分かっていたから、自分たちがアクションを起こすことで“そういうやり方もあるんだ!?”って輪が広がっていってほしいと思ってましたね。そんな時に葉月くんも“ライブハウスを守ろう!”ってTwitterでつぶやいてたから、なんか頼もしかったし、嬉しくなって思わずLINEしちゃったんですけどね(笑)。」
葉月
「来ました(笑)。lynch.の場合は…lynch.って実はバンドっぽくないバンドなんですよ。曲作りにしても、みんなでスタジオに入って“せーの”でジャムりながらやるんじゃなく、僕がメインコンポーザーをやらせてもらってるんで、ある程度まで構築したものをメンバーに渡して、そこからみんなでアレンジしていくんですね。もともとリモートワークが多かったから、ライヴがないことによってメンバー間の阿吽の呼吸みたいなものが崩れる心配はまったくないんですよ。そういう意味では、ライヴができてないからって何も変わってないですね。」
烏丸
「それは頼もしい。バンドマンにとって葉月さんの意見は心強いですね。」
葉月
「どうなんでしょう? それぞれのバンドでのやりようってあると思うんですよ。僕らの先輩であるDIR EN GREYがいち早く無観客ライヴをやったんですけど、あれにはすごく勇気をもらいましたね。そうやってどんどんアクションを起こしていけば、周りにも伝播していくと思うから、こういう状況でも…まぁ、さすがにライヴは難しいですけど、活動はできるっていうことを示したいですね。」
この状況に慣れてしまうと エンタメが死んでしまう

烏丸
「他のバンドマンは今何を考えているか、情報って入ってきますか?」
葉月
「いや、入ってこないですね。弾き語りをやってる動画はよく観かけるけど。」
ASAGI
「そうだね。あまり入ってこないよね。」
葉月
「だから、この状況にファンが慣れてしまうのがすごく怖いんですよ。今までは普通にあったエンタメというものがなくなったじゃないですか。“寂しいけど、別に生きていける”っていうスイッチが入っちゃったら、それこそエンタメが死んでしまう。そうならないためにも僕はファンとの距離を遠くしないようにしてるんですよ。実は今、ゲームの実況配信をやってるんですね。『FINAL FANTASY VII』をやりながら、その実況をInstagramに毎日アップしてるんです。そこで最新シングルについてとか、ゲームに全然関係ない話もしてて。そうやってファンとの距離を保っているというか。」
ASAGI
「そういうことだよね。僕らも『Sub Rosa』というオンラインサロンをやっています。オンラインに特化したコアファン向けのコンテンツなんですけど、他では観られない動画や生配信、読み物だったり、オンラインでいかにファンを楽しませるかっていうのは常々考えてますね。」
石田
「ファンがバンドを身近に感じるという部分では、Dは“全世界へ向けてエールを送る新曲”ということで、メンバーそれぞれが自宅にいながら全てオンラインでレコーディングして、視聴動画も作った「Hang in there」を公開してましたよね。」
ASAGI
「はい、「Hang in there」は少しでも疲れた心を癒せれば…という想いで作りました。」
石田
「あと、lynch.もライヴハウス応援企画で販売するパスケースをメンバーが手作業で作ってる写真を公開してて、すごく親近感が湧きましたよ。」
ASAGI
「あー、観ました(笑)。あれはすごい感動的だった。俺も自社グッズの作業はやるから共感したなぁ。」
葉月
「膨大な量だったから、なかなか大変だった(笑)。」
ASAGI
「そうやって自分たちにできることをやっている姿を観ると感動しますよね。今の時代って自宅からでも世界に向けて配信できるじゃないですか。こういう時だからこそできること…やっぱりミュージシャンとしては、音楽で何かしないといけないと思うんですね。世の中に対して思うことはいろいろあるけど、物事は側面だけでは判断できないし、それはその専門分野の詳しい人たちにお任せして、自分はなるべく音楽を発信しいていこうって思ってます。最初に葉月くんも言ってましたけど、僕らミュージシャンが、まず身近な人やファンを守りたいと思うのはとても自然なことだと思うんです。ライヴハウスにしても“◯月◯日の◯時にここで会いましょう”っていうファンとの待合場所だから、絶対に行動を起こして守りたいと思ったんです。と同時に、今は微力なので“こういう時のためにももっと力をつけなくてはいけない!”とも思いました。もっと話すと、僕は“最悪なケースを考える”って言いましたけど、まずファンと、ファンの待ち合わせ場所であるライヴハウスを守りたいと思ったし、同時に社長でもあるからメンバーやスタッフのことも守らないといけない中で、“もしもライヴハウスがなくなってしまったらどうしょう?”って考えた時、“そうなったら進化したライヴハウスを自分で作るしかない!”とまで思ってました。だから、マスクがないってなった時はマスク工場を作ることも想定して、機械の値段を調べたり、工場を経営している知人に相談しましたからね。僕は“ないものは作ろうよ!”っていう精神があるので(笑)。」
石田
「ASAGIくんらしい(笑)。」
ASAGI
「あははは。でも、アーティスト活動を第一に考えると“作る”というのは最終手段なので、今は現状できることをして、できる限りサポートすることが先決だし、何度も言いますけど、それって自分たちの力だけではどうにならないので、これがアーティストパワーのきっかけとして広がっていけばいいですね。だから、lynch.が僕らと同時期に立ち上がってくれたことがすごく心強かったんですよ。“さすが!”って思いました(笑)。」
“ピンチはチャンス!”が “ピンチはクエスチョン?”に

烏丸
「ネットインフラの進化は“CDを売ってライヴをする”というミュージシャン活動の定形を壊しましたよね。さらに、ライヴもこれからはサブスクになるかもしれない。covid-19はそんな時代の変革を加速させたけど、もともと将来を見据え変化しながら活動していたDやlynch. にとっては、壊滅的なダメージを受けるものではないことが分かった気がします。もちろん未曾有の事態ではあるし、試練ではありますけど、足元をすくわれるものではないですね。」
ASAGI
「ありがとうございます。確かに時代の変化ということでは、急激に加速してますよね。それに対応していくというか、適応するために変わり続けていかないといけないというのは日々思っていることなので…でも、これまでのピンチの感覚って主に自分たちに降りかかってくるものだから、それは“ピンチはチャンス!”というスタンスで進んできたんですけど、この新型コロナウイルスに関してはみんながピンチじゃないですか。だから、チャンスというふうには全然考えれなくて、僕の中では今、“ピンチはクエスチョン?”なんですよ。“大ピンチだ。さぁ、どうする?”という。これに対していかにベストアンサーを出していくかというのを日々考えてますね。例えば、時代的にCDが売れなくなったのって、バンドとしてはピンチじゃないですか。そのアンサーとして、ダウンロードやサブスクをもっと前向きにとらえていかないといけない…と思ってるんですよ。だから、今回のプロジェクトを通してダウンロードやサブスクがアーティストの収益になることを少しでも広めていければいいなとも思ってるんです。サブスクがアーティストの収益になると意識して聴いている人ってまだ意外と少ないと思うんですよ。Dの企画の場合は今自社の権利で配信しているので、一回の再生に対して1円前後の収益があるんですね。それを今回に当てはめて考えてみると、例えば、そのライヴハウスに該当する楽曲を、世界中のDのファンを含め、Dをまだ知らなくても、そのライヴハウスを愛し、応援したいと思う人達2,000人が毎日Dの該当曲を5回聴いてくれると一日約1万円の収益になるので、その10パーセントが分配されるから、一日に約1,000円、一カ月で約3万円、一年で約36万円、これが3年続けば約100万円になる。それをライヴハウス約50カ所で計算すれば、この企画の3年間の総額は約5000万円。これにダウンロード収益は別。Dが活動している間、企画はずっとやり続けるので、これはすごく持久力としてとらえたプロジェクトなんです。金額はあくまで仮ですが、可能性は0ではありません。今すぐにどうにかしたくても、今どうにかできる力は僕にはない。それにウィルスは今回だけとは限らない。であれば、自分が死ぬまで続く応援のかたちをするべきだと思って決めました。で、まさに今ってアーティストを支えたいと思っているリスナーはたくさんいらっしゃると思うんですね。サブスクを聴くこと自体がアーティストを支えること、Dが立ち上げた複数の企画においてはライヴハウスを支えること(#LiveHouseNeverDie)、自然と動物たちを守ること(#あなたの1再生が自然と命を救う)、世界中の子どもたちを守ること(#あなたの1再生が子どもたちを守る)になるっていうのを、もっとSNSを使って提示していきたいとも思ってますね。この記事を読んでいるみなさんも、もし見かけたらぜひ拡散してください。Dのチャリティー企画はもとより、サブスクで聴くこともアーティストの支えになるということを広めたいので。サブスクは無料のものもありますしね。」
烏丸
「音楽を聴くことが支援につながることを伝えないといけないですね。たくさんのアーティストが#stayhome状況下で動画をアップしていますが、そこにこそ広告を入れてほしいんです。“こんな時に金儲けかよ”と炎上は避けたいし、マネタイズは不謹慎と思っているのかもしれませんが、多くの音楽ファンが広告を観れば少しでも経済は回っていくわけですし、そこでマネタイズすることに抵抗があるのであれば、収益は寄付に回せばいい。」
ASAGI
「おっしゃる通りです!」
烏丸
「“広告を観ることだって、サポートの一助になり、経済に貢献しうる”ことを伝えてくれれば、僕らオーディエンスは喜んで広告を再生しますよ。」
ASAGI
「確かに。それか、そういうことに詳しい方が主導でYouTubeで複数のアーティストが出るような音楽番組をやってくれないですかね(笑)。テレビでは音楽番組がどんどんなくなっていっているじゃないですか。でも、昔の音楽番組も視聴者参加型のものもあって…それこそリクエストの葉書を送ったりしてたけど、そういうことってすごく大事だと思うんですよ。それが今の時代になって、デジタルに進化したかたちも提示できるわけだし。YouTubeってYouTuberにしても個による発信も多いけど、個ではないロックバンドでそれはなかなか難しいから、何組かが集まって番組をやると面白いんじゃないかな? もちろんコロナ禍が終わってからのお話ですけど。」
岩田
「それは観てみたいですね。やっぱりファンはバンドが活動している姿を観るのが一番安心するし。」
ASAGI
「そうですよね。オンラインってどうしてもライヴの生の良さには敵わないじゃないですか。ライヴの代わりを担うものはかなり難しいと思うけど、コロナ禍以前のようになるには何年もかかるかもしれないし、第二波、第三波も来るかもしれない。オンラインでやるならオンラインだからこその良さというのを見つけないといけないですよね。」
岩田
「コラボ動画もそうですよね。“えっ! この人と一緒にやるの!?”っていうワクワクもあるし。」
ASAGI
「確かに! 葉月くん、一緒にやろうよ!(笑)」
葉月
「何、やります?(笑)」
ASAGI
「何やろっか? ツインヴォーカルとか?(笑)でも、ほんとに一緒にやりたいよね。コロナが終息した暁には、同じ志を持ったバンド同士でチャリティーライヴをやるとかさ。それ、やれたらいいな〜。」
もうライヴができなくなる 覚悟はしている

葉月
「個人的には無観客で対バンイベントをやりたかったんですよ。でも、少人数でも人が集まるのは良くないってことで、それすらできなくなっちゃったじゃないですか。」
ASAGI
「そうなんだよね。今ってCDの購入者特典でのインストアイベントやアウトストアイベントもできないから、僕らはウェブストアイベントをやろうと思ってて。Zoomを使ったイベントなんですよ。YouTubeだと限定URLでもそれを知れればそのイベントの参加権利がなくても見れてしまうわけだけど、Zoomだと承認ができるので、そこでトークとミニアコースティックライヴをやるっていう。機材搬入スタッフや、ローディー、ヘアメイク、照明スタッフ、PAスタッフ、その他のアルバイトなどを必要としないアコースティックだったらメンバーとスタッフひとりという最小人数でできるし、ソーシャルディスタンスも守って距離をとりつつ…っていうのを5月9日にやります。そういう意味では、Zoomを使って他にもできることがあるかもしれないですね。」
烏丸
「世の中ではZoom飲み会も盛んですけど、背景にASAGIさんがワインを飲んでる動画を貼れば、まるで一緒に家飲みしている感じが作れるでしょ? そういう動画を販売してほしいです(笑)。」
ASAGI
「それ、面白いですね(笑)。それぞれが好きなメンバーの画面で楽しめますものね。吉本興業の芸人さんがZoom飲み会のチケットを売って収益化してたりするんですよ。芸人さんはトークも大事なお仕事がだからそれは当然OKだと思うので、その考え方を他の生配信ができるプラットフォームを視野に入れつつも、いろいろな職業に置き換えて考えていけば、ちゃんと収益化につながっていくかもしれませんね。僕的にはミュージシャンなので、ちゃんと音楽を届けるようにすればいいというか。」
烏丸
「Zoomライヴでも、みんなで背景の色を合わせるとか、決まったテーマの画像を使うとか、これまでにない一体感や新しい楽しみ方を創出できる可能性はたくさんありますよね。」
ASAGI
「それ、いいですね! そう考えるといろいろできそうですよね。」
石田
「それこそ生のライヴにはできない楽しみ方ですよね。」
ASAGI
「今の時期はできる限りオンラインで楽しんでもらって、いざコロナ禍が終息したら生のライヴでフラストレーションを爆発させるしかないですね。これはあくまでそうあってほしいという希望ですけどね。そういう意味でも、ライヴって改めて大事なものだったって思いますよね。」
葉月
「またできるようになりますかね? そこも覚悟してるんですよ。“もうライヴはできなくなるかもしれない”っていう心の準備はしてますね。」
ASAGI
「それ、俺も考えてる。だって、未知のウィルスって今回の新型コロナだけじゃないわけじゃん? 環境破壊によって未知のウィルスが出てくるって以前から言われてたりもするから、第二、第三のウィルスが出てくる可能性があるし、そうなるとエンタメ業界はどうなるのかって考えてしまうよね。」
葉月
「ライヴなんて三密そのものですからね。世の中的にもそういうイメージが定着してしまっているから、その中でライヴが再開できるのってなかなか厳しいと思うんですよ。」
ASAGI
「難しいだろうね。だから、これからのバンドはオンラインで収益化できる仕組みをいくつか持っていないと立ち行かなくなると思う。クラウドファンティングや、投げ銭を含めた有料視聴電子チケット制のプラットフォームとしては『ZAIKO』や、イープラスがこれから始める『Streaming+』などあるし、これからもどんどんそういうのは出てくると思うけど、バンドのポリシーによってやり方は違ってくるだろうし、別に何が正解、不正解かっていうのはないんだよね。クラウドファンディング にしてもお金以上に夢があるリターンが必要だろうし、YouTubeのスーパーチャットにしてもお金を払ってもらう以上は、しっかりと作り込んだもの…それこそDIR EN GREYがやったみたいに、お客さんがちゃんとお金を払いたくなるようなライヴを観せないといけないと思う。」
葉月
「でも、コロナ以前に投げ銭をやってる人って、見られ方を気にしてかほとんどいなかったと思うんですけど、その道が開けたっていうのはすごい進歩だと思いますね。」
ASAGI
「うん、やっぱりDIR EN GREYのライヴが良かったんだろうね。その時もShinyaくんに“すごく良かったよ!”ってラインしたなぁ(笑)。例えば、先陣を切った他のバンドが中途半端なものだったらそのとらえ方の意味も違ったというか…やっぱり圧倒的なライヴを観せて、お客さんがお金を払いたくなる気持ちにさせたっていうのがすごく大きい。だから、逆に考えるとクオリティーの低いライヴでスパチャをやってもお金はあまり集まらないと思う。」
烏丸
「感動したらお金を払いたくなるという心理は信じていいと思っています。自分が得た感動に対して“ありがとう”と感謝する証ですから。チケットを買ってライヴを観るか、観たライヴに対して対価を払うのは、先払いか後払いかの違いでしかない。」
ASAGI
「僕らは約一年前からオンラインサロンをやってるんですけど、これをただ簡単にお金が集まるからっていう考えでやると失敗すると思うんです。サブスクモデルだから月額会員制なので、地に足を着けたアーティスト活動をするためにはとても有効。ただ、クローズドのコミュニティーだから広がりにくいんですよ。僕は結構前からサロンを考えていて、ファンときちんと向き合うことと、払っていただいている金額以上のものを提供することという目的を持っています。クローズドならではの記事の内容だったり、ライヴ当日の密着を配信したり、全MVやマルチアングルMV、ライヴDVD、デモ音源を公開したり、メンバーごとのコーナーでは担当の曜日を決めてほぼ毎日更新されるようにしたり、ファンの子の疑問や質問に答えたり、少しでも楽しんでもらえるように結構な時間と労力をかけてて。最近は生配信もできるようになって内容もパワーアップしましたね。今この時期だからこそ、アーティストがファンの近くにいてあげれるっていう意味では、ベストコンテンツだと思いますね。以前からオンライン化の加速を予想していたので、あちこちでさまざな有料コンテンツに登録してもらうより、好きなひとつのバンドに特化したものをひとまとめにしたほうがコアファン的にもいいよねという考えもあって、Dは早めに立ち上げていました。元来オンラインサロンはFacebookを使用するものが主だったのですが、今はDMMの独自アプリもあるので、会員は匿名で参加できますし。これからのウィズ・ウィルス時代でも、本気で音楽を続けたくて、本気でファンと向き合える人にはDMMオンラインサロンはお勧めですね。始めるのが不安な人はまずは期間限定で初めて、感触が良かったら本格的に続けるというのでもいいと思う。今、DMMにエンタメからの問い合わせが急増しているようですよ。」
日々変わる状況に 適応していかないといけない

千々和
「話が戻るかもしれないけど、思ってることがあって…数年前ってCDに数千円使うのも、ライヴのチケットに1万円近く払うのも抵抗がなったんですけど、サブスクが出てきた時、月額千円以下でものすごい数のアーティストの曲が聴けるし、今まで買ってきたCDの曲も聴けるようになって便利だと思った反面、すごく怖いと感じたんです。もうほぼ無料じゃないですか。実際、サブスクを使うようになってから買ったCDの枚数も減ってしまったし。今って自粛要請の中でアーティストが無料でライヴ配信したり、ライヴ映像を公開したりしていて…もちろん有料でやってる人たちもいるし、新規のファンを取り込むプロモーションにもなるとも思うんですけど、今までちゃんとお金を払っていたファンにとっては、無料というのは疑問に思うんです。音楽の価値が一気に下がってしまったというか。」
ASAGI
「めっちゃ分かりますよ、その気持ち。でも、僕的にはアーティストマターで無料で公開することに関しては反対派じゃなくて。今ってメジャーとインディーズの差ってほぼなくなってますけど、昔で言う“メジャーのメリット”っていうのはブランディング以外には、圧倒的な無料公開の力だと思うんですね。タイアップによって無料で聴いてもらって、テレビ番組に出て歌ったり、ラジオでかけてもらうことで無料で聴いてもらって、そこで知ってファンになってくれた人の購入につなげていくっていう。そういう意味では今も同じというか、無料公開することで、その先にいる未来のコアファンを獲得していかないといけない。だから、僕らも結構YouTubeでも無料公開してるんですね。ただ、僕らは今回の応援プロジェクトとしてもサブスクを使ってますけど、ちゃんとCDも発売してるんですよ。これからのCDはコレクターズアイテムになっていくだろうから、歌詞、アートワークも含めて価値のある作品を提示しないといけないと考えてるんですね。僕らの立場からは言いずらいんですけど(笑)、アーティストを支えるという意味では、グッズとして持っておきたいものということでCDを買っていただいて、サブスクで持久的に聴いてもらうというのがアーティスト側の理想なのではないでしょうか。実際に作品価値を高めた豪華仕様…それこそ受注生産の単価の高いCDでも、その価値のあるものであればちゃんと納得して買ってくれているファンはいますし、並行して手に取りやすい価格のCDも出しつつ、配信もするというスタイルで今後もやっていくつもりです。やっぱり、欲しい、実際に手に取りたいという人がいる限り、なるべくCDというものはなくしたくないんですよ。ストリーミングよりも音がいいしね。」
葉月
「おっしゃる通り! CDを提供する立場としては、ASAGIさんとまったく同じ考えですね。CDを出す際には、いつも初回盤…豪華盤と通常盤を出してるんですけど、ほとんどのファンが豪華盤を買ってくれるんですよ。」
ASAGI
「やっぱりそうだよね!」
葉月
「ですよね。やっぱり豪華盤って写真集やBlu-ray付きになるから価格的にも高くなるんですよ。まさにコレクターズアイテムで。コアファンが納得するアイテムとして出すっていうか。そこに対する戸惑いもないです。“CDが売れなくなっちゃったからどうしよう”っていうのも思わないし。まぁ、CDが売れてた時代に自分たちのCDが売れてた経験もないし(笑)。」
ASAGI
「それは俺も一緒だ(笑)。」
烏丸
「おふたりのお話を聞いて、“ミュージシャンが元気で良かった”と思いました(笑)。」
千々和
「それ、私も思いました!(笑) 状況を悲観していないというか、その中で前に進もうとしていて。」
ASAGI
「ありがとうございます。せっかくこの時期にお声かけいただいたので、少しでもこの音楽シーンを生き抜くための前向きなお話ができればと思っていました。日々変わる状況の中、音楽を続けるためには時代に適応していかないといけないと思ってて。それをファンの子たちも懐を深く理解してほしいというのはありますね。変わってほしくないっていう想いも分かるんですよ。でも、僕の場合は本質的な“らしさ”というものは絶対に変わらない。材料は変わらず、料理のレパートリーが増えて、提供方法が変わるだけなんですよね。明日はどうなっているか分からないっていう状況の中、生きていくためにそれらを変えないほうが難しい…というか、先を見据えていかないと僕らのようなバンドはもう生き続けられないでしょうね。ただひとつ言っておきたいのは、僕は活動の方法や仕組みが変わっても、音楽を生み出すための核となる“自分らしさ”や“ポリシー”や“世界観”は絶対に揺るがないということ。これを信じてついてきてほしいですね。」
烏丸
「元来、音楽家の収益はパフォーマンスに対する投げ銭が基本にあるのでしょうから、オンライン上で魅力的なことをやっていければいいですよね。」
ASAGI
「そうですよね。投げ銭以外では、自分たちに適したやり方でWEBチケットを一律の金額で販売してやればいいわけだし。アーティストのスタンスによって違うだろうから、いろいろ模索していけばいい。僕は自分の心に嘘をつかず、価格以上のものを提供していきたいと思ってて。だから、おそらくアーティスト各自の正義を貫いた上で、ファンの子も楽しめれば、それが正解。逆に、事情をよく知らない外からの見解では、必ずしもそれが不正解であるかどうかの判断はできない。今、この非常に苦しい音楽シーンでは普段はライバルだとしても有益な情報は共有し、音楽の未来のために支え合うべきなのかなって思います。だから、何度も言いますけど、lynch.が同時期に動いてくれていたのが心強かったんですよ。」
葉月
「ありがとうございます(笑)。」
目先のことだけをどうこう 言ってる場合じゃない

石田
「これは失礼な発言だと思うんですけど、今の状況下ではライヴハウスだけじゃなく、アーティスト自身も大変なわけじゃないですか。なので、“ライヴハウス以前に自分たちは大丈夫なの?”って思ったりもして。」
ASAGI
「全然大丈夫と言えば、それは嘘になります。だから、ライヴハウスの方も心配してくれて、今回のプロジェクトの呼びかけにも“アーティストも大変なんだから”って辞退されるところが結構あったんですよ。あと、“うちも大変だけど、他のライヴハウスを助けてください”とか。みんなが心配し合ってるんで、みんなと支え合って前向きな活動をやっていきたいと思いますね。そんな中、ファンの方々がたくさん曲を聴いてくれているおかげで、配信の上昇率がすごいのでとても嬉しいです。ただ、もちろん理想としては義務的に構えて聴くのではなく、本当に気軽に考えてもらって、聴きたい時に自由に聴き、それが自然と支援につながるっていうのが一番望ましいかたちですね。」
葉月
「生々しい話をすると、お給料的なものって僕らはすごく遅れて入ってくるんで、そういう意味では今は大丈夫です。まぁ、冬頃には貧乏になってるでしょうけど、その時はバイトすればいいかって(笑)。そんな中で今回のプロジェクトを始めたのは、目先のお金を気にするよりももっと大事にしないといけないものがあった…という感じですね。」
ASAGI
「そうだよね。今を乗り越えることもとても大事だけど、目先のことだけをどうこう言ってる場合じゃない。立ち行かなくなったら、一緒に何かバイトしようか?(笑)」
葉月
「ASAGIさんの会社でバイトさせてくださいよ(笑)。」
ASAGI
「じゃあ、いっそのことさ、これまで誰も見たことも聞いたこともないような、新しい時代のための未来型ライヴハウスを作ろうよ(笑)。」
石田
「いいですね(笑)。じゃあ、このへんでまとめたいと思うので、最後に読者へのメッセージをお願いします!」
葉月
「最初にも言いましたが、僕らはミュージックシーン…エンタメ文化を殺さないいようにやってますけど、本当の意味でエンタメが死ぬのって、みなさんが“必要ない”と思った時だと思うんです。だから、エンタメを救いたいと思ってくださっているのなら、その火を心から消さないでほしいです。そうすれば、また元の状態に戻せるチャンスが訪れるし、僕らも頑張れるので。」
ASAGI
「そうですね。エンタメに限らず、もう本当に全ての人が大変だと思うんですね。音楽って衣食住には関係ないけど、心の支えになるもの…それは僕自身がそうだったから、今回のこの記事でのプラスの思考や、前向きな内容、そしてチャリティーの輪がどんどん広がっていって、みんなが音楽を通して支え合えるようなかたちを目指して頑張っていきたいと思います。これからの未来で、あなたの大好きな音楽、そしてライヴを楽しむという希望を絶対に捨てずに、みなさんは今、何よりも自分自身を大切にすることを第一に心がけてください。僕らもみなさんに逢える日を楽しみにしながら、日々出来ることを前を向いて頑張ります!」
【D】全国ライヴハウス応援企画 『#LiveHouseNeverDie』

Dがこれまで出演した日本各地のライヴハウスへ、該当楽曲の配信収益からの10パーセントを自動分配。1ダウンロードにつき、またはサブスクリプションでは聴けば聴くほどサポートできる。
【lynch.】ライヴハウス支援企画 『OVERCOME THE VIRUS』

書き下ろした新曲を収録したCDを販売し、制作費を差し引いた全利益を“lynch.がこれまでに出演した全国全てのライヴハウス”に分配し寄付する。


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