『コンフェッション・オブ・ア・デンジャラス・マインド』ロジック(Album Review)

2019年5月15日 / 18:00

 2014年のメジャー・デビュー以降、毎年コンスタントに新作をリリースし続ける白人ラッパーの代表格=ロジック。

 その功績もすばらしく、米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”では、デビュー作『アンダー・プレッシャー』(2014年)が4位、2ndアルバム『インクレディブル・トゥルー・ストーリー』(2015年)が3位、3rdアルバム『エブリバディ』(2017年)で初のNo.1獲得を果たし、前作『YSIV』(2018年)も1位は逃したが、最高2位を記録。これまでリリースした4枚のスタジオ・アルバムは、全てTOP5入りするという快挙を遂げている。

 なお、2016年発表のミックステープ『ボビー・タランティーノ』は同チャート12位どまりだったが、R&B/ヒップホップ・チャート、ラップ・チャートではいずれも2位まで上昇し、続編となる『ボビー・タランティーノII』(2018年)は、Billboard 200、R&B、ラップの主要3チャート全てで1位に輝いている。

 本作『コンフェッション・オブ・ア・デンジャラス・マインド』は、前作『YSIV』からおよそ8か月という短いスパンで発表した、通算5作目となるスタジオ・アルバム。今年3月には、小説作品となるサウンドトラック・アルバム『スーパーマーケット』もリリースされたばかりだが、本人が断言していた通りアルバムが立て続けにリリースされている。

 1月にリリースされた第一弾シングル「Keanu Reeves」は、ロジックの作品では欠かせない存在となった音楽プロデューサー=シックス(6ix)との共作で、自身が白人と黒人のハーフであることを踏まえて綴った、人種差別と成功までの過程を“ロジックらしい”表現でラップする意欲作。なお、タイトルの「Keanu Reeves」は俳優のキアヌ・リーヴスを指しているが、彼をディスっているワケではなく、映画『マトリックス』でキアヌが演じたネオを称えたもの。歌詞の中にも登場するシックスは、その他のタイトルも全てのプロデュースを担当している。

 3月に発表した第二弾シングル「Confessions of a Dangerous Mind」は、サウンド、リリック共に攻撃的だった前曲とは対照的な、おセンチ・メロウ。といっても、ハイエナ野郎とか「ネットの中傷なんてクソ」とか言っちゃってるんだけど……。人気ラッパーとして活躍し続ける中での、不安や不満、この先のビジョンなどを歌った曲で、「何か」に攻撃され血まみれになるという、衝撃のミュージック・ビデオも話題となった。サウンドは90年代っぽい横ノリで、聴き心地良い。

 そして、アルバム発売1週間前に公開されたばかりの新曲「Homicide」が、現在大ヒット中。この曲は、同じ白人ラッパーのトップに君臨するエミネムをフィーチャリング・ゲストに迎えたナンバーで、最新の米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”では5位に初登場し、「1-800-273-8255」に続く2曲目のTOP10入りを果たした。

 「Homicide」のウリは、何といっても念願の(?)コラボレーションとなった、両者による高速ラップの掛け合いだ。若手ラッパーのヌルいパフォーマンスを「ラッパーもできないクソ野郎」とののしりつつ、巧みなラップを聴かせちゃうところが、何とも意地が悪い。また、曲も書けない「誰か」や、ゴーストライターを雇って「成りすまし」してる“イケてない”ラッパーたちも、散々にけなしまくっていたりと、まさにホミサイド(殺人)級。ロジック&エミネムの醍醐味が強調された、本作の目玉曲といえるだろう。

 エミネムに続き、同じ白人ラッパーのGイージーが参加した「Commando」も傑作。クールなトラックに乗せて叩き出すのは、自身等の名声・成功、そして女性への屈辱的な批判。歌詞の中には、ジャスティン・ビーバーやマイケル・ジャクソンも登場する。次に収録されたグッチ・メインとのコラボ曲「Icy」では、金への執着心を歌ったり、続くウィズ・カリファをフィーチャーした「Still Ballin」では、女性軽視するような卑猥なワードを繰り返したりと、相変わらずのヤンチャっぷりを発揮しているし、カニエ・ウェストをディスる一面も……。

 ウィル・スミスとのコラボレーション「Don’t Be Afraid to Be Different」は、ベルギーのダンス・ユニット=テクノトロニックによる「Pump Up the Jam」(1989年) をサンプリングした、80年代後期のニュージャック~オールドスクール風のヒップホップ・チューン。大坂なおみ選手とのロマンスが囁かれた、YBNコーデー参加の「Mama / Show Love」には、KRS・ワンの「Mad Crew」(1993年)が使われていたりと、往年のヒップホップ・ファンも十分楽しめる内容になっている。後者のプロデュースは、おなじみフランク・デュークスが担当した。

 サンプリング曲では、ジャマイカのレゲエ・シンガー、シスター・ナンシーの「Bam Bam」(1982年)を使った「Bobby」も、懐かしさと斬新さが相まったな好曲。レゲエとヒップホップが融合したユルめのトラックに乗せて、父親や生い立ちについてラップ。エンディング曲「Lost in Translation」は、90年前期の米NY~ブルックリンを彷彿させるトラックで、最後、日本語によるナレーションで「最高だったでしょ?もし、ロジックをお気に召さないのであれば、耳をふさぐか、帰っていただいて結構!でも、本当は彼のことが気になって仕方ないんだよね?」とリスナーを挑発しつつ、感謝の弁を述べる粋な演出が含まれている。

 その他、ビヨンセの『レモネード』(2016年)参加で注目された、米カリフォルニアの音楽プロデューサー=HAZEが手掛けた「Wannabe」や、「44 More」等を担当したイルマインドによる「Clickbait」、ドイツのプロダクション・デュオ=キュービーツが手掛けた「Pardon My Ego」等、ロジックらしい傑作が揃っている。これまでリリースしたどの作品も、個性溢れる良いアルバムだったが、本作はキャリアの中でも攻撃性、サウンドセンス共にピカイチといえるのでは?自身3作目となる全米首位獲得にも期待。

Text: 本家 一成


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