杏沙子、アルバム『フェルマータ』の世界観を再現したワンマン公演をレポート

2019年4月1日 / 15:00

3月30日(土)@東京・Shibuya TSUTAYA O-EAST photo by 川田洋司 (okmusic UP's)

杏沙子が3月30日(土)東京・Shibuya TSUTAYA O-EASTにて、『ワンマンライブ「fermata」supported by JTB』を開催。2月にリリースした1stアルバム『フェルマータ』の世界観を再現し、満員のオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んだ。

3月15日(金)の大阪・OSAKA MUSEに続いて行われた今回の公演は、バンマスに杏沙子の作品を数多く手掛ける山本隆二(Key)を迎え、森本隆寛(Gt.)、Keity(form LUCKY TAPES)(Ba.)、若山雅弘(Dr.)、Nona*(Key & Per & Cho)といった名うてのミュージシャンが杏沙子をサポート。

ライブは「アップルティー」「恋の予防接種」「とっとりのうた」をはじめとした1stアルバム『フェルマータ』に収録された11曲すべてのパフォーマンスに加え、メジャー未発表曲を含む全16曲、約2時間15分のステージとなった。また、ライブ終了後より、主要音楽ストリーミングサービスにて、今回のライブのセットリストがプレイリストで公開された。

杏沙子は書き下ろしの新曲「ケチャップチャップ」が、4月1日より『NHKみんなのうた(4-5月)』で放送スタート。4月10日(水)から主要ダウンロードサイト & 音楽ストリーミングサービスにて配信がスタートする事が発表されている。 さらに4月12日(金)25:39~放送の日本テレビ系「バズリズム02」に出演し、「アップルティー」を披露。また4月14日(日)には、神戸・トアロードアコースティックフェスティバル2019(12:15~、THE PLACE KOBE)へのライブ出演も決定している。
【ライブレポート】

3月30日(土)、東京・Shibuya TSUTAYA O-EASTにて杏沙子が『ワンマンライブ「fermata」supported by JTB』を開催した。O-EASTで杏沙子がワンマンライブを行なうのは、メジャーデビュー後初公演となった2018年9月15日に続く2度目。だが、そこから半年の間にフルアルバム『fermata』のリリースがあり(2019年2月13日)、オリジナル楽曲数が増えると同時に彼女の表現の幅も大きく広がった。それがそのまま反映され、前回よりも遥かに立体的で、楽しさ倍増の公演となった。

3月15日(金)の大阪・OSAKA MUSEに続いて行われた今回の公演をサポートしたミュージシャンは、山本隆二(Key)、森本隆寛(Gt.)、Keity(Ba.)、若山雅弘(Dr.)、Nona* (Key、Per、Cho)の5人。ファンキーなプレイに定評のあるLUCKY TAPESのKeityとビッケブランカのサポートも務める若山が柔軟にリズムをとり、iNtElogiQでギターを弾く森本がときに前にも出ながら切り込み、Nona*は鍵盤とパーカッションとコーラスで多様な楽曲に適した色付けをし、杏紗子の楽曲を多く手掛けてもいるバンマスの山本が落ち着きあるプレイでそれをまとめる。

そして主役の杏沙子はといえば、そのバンドの膨らみある音の上で自由に泳ぎ、楽しんでいる。そんな印象があった。メンバーたちに対する確かな信頼があり、それが彼女をどこまでも自由にさせていたと言ってもいいかもしれない。

順を追って書こう。エレクトロな感触の音が流れるなか、低い位置に設置されたミラーボールが回り出して、メンバーが登場。サポートメンバーたちは白のシャツと黒のパンツで揃え、あとから登場した杏紗子はブルーのワンピースにイエローグリーンのコンバース。アルバム『fermata』同様、オープナーは「着ぐるみ」だった。

前回のワンマンはややシアトリカルな演出による「クラゲになった日の話」(デビューミニアルバム『花火の魔法』に収録)で意表を突いた幕開けを見せたわけだが、今回はのっけから軽快なノリ。初めは中央に立って歌っていた杏沙子も曲の展開に合わせてステージ端へと軽やかに動く。2曲目は早くも現時点での代表曲とも言える「アップルティー」。この曲は現在、“JTBついてる! Hawaii キャンペーン”CMソングとしてオンエアされているが、もともとは2016年にインディーズで発表し、そのMVが中高生の間で大きな話題になったものだ。若山のドラムで勢いよく始まり、Nona*が観客たちに手拍子を促すと、まだ2曲目なのに会場の温度があがったように感じられた。

“今日はみんな、いろんな日常から抜け出してここに来ていると思うけど、この時間は日常を忘れて踊ってもいいんじゃない? 楽しんでいきましょう!”。杏沙子が短くそう宣言すると、曲は「ユニセックス」へ。アルバムで聴くそれよりもダンサブルな面が強調されたアレンジで、観客たちも自然と手を挙げ左右に振り出した。途中、ハンドクラップを観客たちに“表情で”促す杏沙子。彼女の場の掌握力は、そういうちょっとしたところにも表れる。

“改めまして、杏沙子ワンマンライブ『fermata』にようこそ。来てくれてありがとう! 奥まで見えるよ~。嬉しい!”。そう言って大勢の観客が目の前にいることの喜びを表現した杏沙子は、アルバムタイトルとなった『フェルマータ』の意味についても説明。“その記号をタイトルにしたのは、アルバムを作っていく上での姿勢とか音楽への向き合い方を表わしたかったからで。何にも縛られず、自由に、直感に正直になって作ったから、というのがひとつ。もうひとつは、ここにいるみんなにも自由に、何にも縛られず楽しんでほしいなという思いがあってタイトルに付けました”。さらには“みんな、私に似てるなって思っていて。絶対みんなと友達になれるって思うの。みんな真面目でしょ? 生きててあんまり弾けることってないでしょ? だから今日は一緒に弾けて、みんなの生活に大きな余韻を残す、そんなライブにしていきましょう!”と。そうしたフレンドリーでどこか姉御っぽくもあるMCで、初めからステージの上と下とに壁などなきものとして進めていくあたりも杏沙子らしさと言えようか。

だが、何が起こるかわからないのもまたライブの面白さ。「マイダーリン」に続く5曲目「よっちゃんの運動会」で“それ”は起きた。高速ドラミングを中心に、タイトル通りまさしく運動会のような忙しさで展開していくこの曲の途中、杏沙子が鍵盤ハーモニカを吹こうとしたら、その吹き口が外れていたのだ。構えたものの、吹き口がなくて吹こうにも吹けない。「え?」と声を出し、「こんなこと、ある?」と言って吹き口を探しに楽器の置いてあった場所へ戻る杏沙子。曲が無情にも進んでいくなか、ようやく吹き口を探し当てた杏沙子は慌てて立ち位置へ。しかし、そんなハプニングに取り乱して曲をストップさせたりするではなく、鍵盤ハーモニカでの後半部分をどうにか吹いたあと、しっかり気を取り直して堂々と歌い切ったのは大したものだ。また、歌い終えたあとに「吹こうとしたら、吹き口ないし(苦笑)。今日、めっちゃ気合入れて持ってきたのに……。もう一回やりましょう!」と言って吹けなかった鍵盤ハーモニカ部分を再演奏。こうしたハプニングの回収ぶりにも度胸のよさが感じられ、結果的にライブの自由度もより強調される形となった。

愚痴から生まれたという次のファンキーな曲「ダンスダンスダンス」では、杏沙子は曲途中でボイスパーカッションを披露。また自らトランペットも吹奏して観客たちを驚かせた。さらに後半のある部分をロングトーンで歌って声量の豊かさまでもアピール。1曲のなかに初披露の技がいくつもあり、自分のやれることはとにかく全部やってみんなを楽しませるのだというエンターテインメントの心意気がそこに集約されているようでもあった。その曲を歌い終えた杏沙子は「は~、すっきりした」と充実の表情。因みにトランペットは高校で3年間吹いていて、今回6年ぶりに吹いたのだそうだ。

ライブはそのあと「チョコレートボックス」「半透明のさよなら」「おやすみ」と、ミッドテンポからスローへ曲調を変化させながら進行。「半透明のさよなら」では「アップルティー」や「マイダーリン」の溌剌としたヴォーカルとは真逆とも言える気怠さが表われ(この曲の後半でも杏沙子はトランペットを吹き、ジャジーなムードを加味した)、無伴奏の歌からやがてピアノだけが静かに加わるバラード「おやすみ」ではひとりの女の子として強がる部分と素直な思いとを情感豊かに歌い上げた。

サポートメンバーそれぞれの個性を浮き上がらせたお遊びのコーナーを挿み、ここから後半戦へ。ミニアルバム『花火の魔法』に収録された「流れ星」、ライブを始めた頃から歌い続けているカバー曲「青春という名の季節」と疾走感のある曲を続け、次の「花火の魔法」では観客たちがタオルを大きく回して杏沙子の弾んだ歌に応えた。

そして、「初めて自分で作った曲であり、自分の背中を押すために作った曲」だというインディーズでのデビュー曲「道」を、「今日はこの曲を過去の自分に向けて、思い返すつもりで歌おうと思います」と話した上で歌唱。杏沙子の原点となったこの曲を山本隆二の繊細なピアノに乗せて歌っているとき、彼女の頭のなかにはハッキリと“あの頃”の自分が浮かび、確かにその像に語りかけているイメージがあったに違いない。現在の杏沙子が現在の思いで“あの頃の自分”に歌った「道」。その純度の高さが心をうった。

その「道」から間をあけず、アルバム『フェルマータ』の核となった「とっとりのうた」へ。“自分のためだけに自分の曲を書こうと思った”とインタビューで話していたその歌は、彼女の思いのなかで「道」と繋がり、丁寧な歌唱表現から杏沙子の故郷の景色がイメージできた。またミラーボールが回り出すと、それは飛行機の最終便で東京へ向かう際の窓からの夜景にも重なっていることが感じ取れた。感動的なバラード2曲だった。

本編を「とっとりのうた」で終え、アンコールに応えて黒地の『fermata』Tシャツに着替えて再登場したメンバーたちと杏沙子。“じゃあ最後はみんなで恋の病にかかろうか?!”と言ってアルバムのリード曲となった「恋の予防接種」の演奏がクラシカルなピアノからスタートし、ほかの楽器が加わって曲が弾みだすと、杏沙子は1番を自由に動きながら歌い、2番をMVと同じあの振り付けで踊って歌ったのだった。また曲の途中にメンバー紹介を挿み、彼女はカウベルで音を鳴らしたりも。そのまま続けて“みんなまだ元気あまってるでしょ? ラスト、一緒に行くよ~!”と叫んでこの日最後の曲「天気雨の中の私たち」に突入すると、杏沙子は軽やかに跳ねたり途中でメンバーたちに絡みに行ったりしながら、楽しい気持ちをそのまま表現。全部出せたという充実感と開放感、“ライブ最高!”、“ライブ楽しい!”といった思いの全てをそこに乗っけて放っていた。

“私はカメレオンになりたいと思っていて。いろんな気持ちをいろんな声で表現したい。曲のタイプに合わせて、声を操れるようになりたいんです”。デビュー時にインタビューした際、彼女はそのように話していたものだが、このライブで印象的だったのもやはり曲ごとに変化する彼女の歌唱方、多様な声の使い方だった。『fermata』というアルバム自体が多様な楽曲の並ぶものだったわけだが、その制作を経て、早くも彼女は自身の目標に近づいている。そう思えたし、声の出力と伸びが前回より増しているとも感じられた。賑やかで、楽しくて、だけどジンとさせる説得力も大ありの約2時間15分。ここからの展開がまた一段と楽しみになってきた。

photo by 川田洋司

text by 内本順一

【セットリスト】

1. 着ぐるみ 

2. アップルティー

3. ユニセックス

4. マイダーリン

5. よっちゃんの運動会 

6. ダンスダンスダンス 

7. チョコレートボックス 

8. 半透明のさよなら

9. おやすみ

10.流れ星

11.青春という名の季節

12.花火の魔法

13.道

14.とっとりのうた

<ENCORE>

15.恋の予防接種

16.天気雨の中の私たち

■セットリスト再現プレイリスト URL

https://jvcmusic.lnk.to/asako_20190330
アルバム『フェルマータ』
2019年2月13日発売

【初回限定 ぐるぐるリングノートデラックス盤】

VICL-65093/¥3,200+税

<収録曲> ※初回限定盤/通常盤共通

1. 着ぐるみ

2. 恋の予防接種

3. ユニセックス

4. チョコレートボックス

5. よっちゃんの運動会

6. ダンスダンスダンス

7. アップルティー

8. 半透明のさよなら

9. 天気雨の中の私たち

10. おやすみ

11. とっとりのうた

<配信情報>

◆2月12日(火)よりアルバム『フェルマータ』収録全曲

iTunes Store、レコチョクほか各DLサイト&Apple Music、LINE MUSIC、Spotifyほか主要音楽ストリーミングサービスにて配信スタート

アルバム『フェルマータ』配信サイトまとめURL

https://lnk.to/Fermata

◆2月12日(火)より「恋の予防接種」MVフルバージョン

iTunes Store、レコチョクほか映像ダウンロードサイト&Apple Music、Youtube Musicほか映像ストリーミングサービスにて配信スタート

「恋の予防接種」ミュージックビデオフルバージョン配信サイトまとめURL

https://jvcmusic.lnk.to/yobousessyu_mv

【通常盤】(CD)

VICL-65094/¥2,700+税、


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