『シャイン・ア・ライト』ブライアン・アダムス(Album Review)

2019年3月6日 / 12:00

 カナダ・オンタリオ州キングストン出身。今年の11月に還暦を迎えるポップ・ロック界の生きるレジェンドこと、ブライアン・アダムス。1980年、アルバム『ギヴ・ミー・ユア・ラヴ』でデビューし、1983年にリリースした3rdアルバム『カッツ・ライク・ア・ナイフ』が米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で8位をマークする大ヒットを記録。翌1984年の4thアルバム『レックレス』で初の全米1位を獲得し、本作からのシングル「ヘヴン」も、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で初のNo.1に輝いた。

 1987年リリースの5thアルバム『イントゥ・ザ・ファイヤー』が7位、1991年の6thアルバム『ウェイキング・アップ・ザ・ネイバーズ』も最高6位まで上昇し、4作連続の全米アルバムTOP10入りを果たす。後者からのシングル「アイ・ドゥ・イット・フォー・ユー」は、1991年の年間シングル・チャート1位に輝き、人気はピークに達した。以降、ロッド・スチュワート&スティングによるタッグ・ソング「オール・フォー・ラヴ」(1993年)、「リアリー・ラヴド・ア・ウーマン」(1995年)が、アメリカ、カナダの両チャートで首位に輝くが、90年代後半は勢いが失速し、主な活躍は母国カナダに限定された。

 とはいえ、「ブライアン・アダムスの音楽は終わった」と嘆くファンがいるわけではなく、チャートでの評価はあくまで時代の移り変わりによるもの。2015年リリースの前作『ゲット・アップ』でも、“まだまだ現役”であることを証明し、高い評価を得ている。2017年の来日公演も大好評で、日本での人気も健在だ。本作『シャイン・ア・ライト』は、その『ゲット・アップ』から約3年半ぶり、通算14枚目となるスタジオ・アルバム。近年の作品は、どこか落ち着いてしまったような印象を受けたが、本作では“ロッカー”としての復帰を見事果たしている。

 ブライアン・アダムスの凄いところは、ソングライターとしての才能はもちろん、80~90年代当時の高音をほぼそのまま維持していること。女性にくらべ、男性の声帯は衰えにくいが、とはいえ高い声は出難くなるもの。この伸びのある高音を60歳手前にして出せるだけでも、快挙といえる。それも、ライブ活動を途切れさせることなく続けてきた賜物だろう。

 先行シングルとしてリリースされたタイトル曲「シャイン・ア・ライト」は、ポップのみならず、ロックやR&Bシーンでも引っ張りだこのエド・シーランをソングライターに迎えた意欲作。エドの作品の中では、ダンスホールを取り入れた「シェイプ・オブ・ユー」や、泣かせのバラード「パーフェクト」といった大ヒット曲ではなく、「キャッスル・オン・ザ・ヒル」のような、フォーク・ポップに近い音作りで、ブライアン・アダムスに“合わせ”にいった感じもする。エドにインスパイアされた感じを、そのまま引用したスタイリッシュなポップ・ロック「ザ・ラスト・ナイト・オン・アース」もかっこいい。

 2曲目の「ザッツ・ハウ・ストロング・アワ・ラヴ・イズ」は、ジェニファー・ロペスとのデュエット曲。いわれなければ、J.Loだと気づかない方も多いのでは?というくらい、彼女の作品では決してみせないアンニュイなボーカルを披露している。お得意のラテンやR&B系統ではなく、こちらも“ブライアン寄り”のエモーショナルなロック・バラードに仕上がっている。この曲や、ピアノベースのシンプルなメロウ・チューン「トーク・トゥ・ミー」では、ブライアン氏にしか出せない“泣き”の旋律に注目していただきたい。

 スピード感あるカントリー・ロック「パート・フライデイ・ナイト、パート・サンデイ・モーニング」~「ドライヴィング・アンダー・ジ・インフルエンス・オブ・ラヴ」、ライブ映えしそうなミディアム・チューン「ノー・タイム・フォー・ラヴ」、ロッカーらしいシャウトを唸らせる「アイ・クッド・ゲット・ユースト・トゥ・ディス」、エイティーズにタイムスリップした「ノーバディーズ・ガール」など、全盛期を彷彿させるロックチューンも満載。

 一方、この年齢だからこそ醸し出せる「オール・オア・ナッシング」や、前作のテイストに近い「ドント・ルック・バック」、アコースティック・ギターで弾き語る、ボブ・ディラン風の60’sロック「ウイスキー・イン・ザ・ジャー」など、アダルト・コンテンポラリーも充実している。日本盤ボーナス・トラックの「アイ・ヒア・ユー・ノッキン」も好曲。

 歳を重ねるたびに増していく色気含め、「こんなオヤジになりたい」の代表格、ブライアン・アダムス。「歳とったね~」なんて、まだまだ言わせない。

Text: 本家 一成


音楽ニュースMUSIC NEWS

【FUJI ROCK FESTIVAL ’24】ラインナップ第5弾発表、レイ/ジーザス&メリー・チェインら9組の出演決定

洋楽2024年4月26日

 2024年7月26日~28日にかけて新潟県・苗場スキー場にて行われる【FUJI ROCK FESTIVAL ’24】のラインナップ第5弾が発表された。  今回出演が決定したのは、【ブリット・アワード2024】史上最多の6部門を … 続きを読む

菅田将暉、3rdアルバム『SPIN』7月リリース決定&予約受付スタート

J-POP2024年4月26日

 菅田将暉が、3枚目となるオリジナルアルバム『SPIN』を7月3日にリリースすることが決定した。  2017年から本格的に音楽活動を開始した菅田将暉。2019年リリースの「まちがいさがし」は、ストリーミング3億回再生を突破し、その年には『第 … 続きを読む

ハンバート ハンバート、秋のツアー【ハンバート家の秋の三夜】開催決定

J-POP2024年4月26日

  ハンバート ハンバートが、次回ツアーとなる【ハンバート家の秋の三夜】の開催を発表した。   “東京は空調の効いたホールで、名古屋は距離の近いライブハウスで、大阪はスズムシの鳴く野音で”をテーマとし、三所三様のツアーを楽しめる内容となって … 続きを読む

NHK『ジブリのうた』幾田りら/JO1/高畑充希/つじあやの/手嶌葵らが「ジブリパーク」から名曲お届け

J-POP2024年4月26日

 「ジブリパーク」で出演者らがジブリの名曲を披露する音楽特番『ジブリのうた』が、5月7日19時57分よりNHK総合にて放送される。  「愛・地球博記念公園」(愛知県長久手市)内にある「ジブリパーク」は、スタジオジブリ作品の世界を表現した5つ … 続きを読む

RM、2ndソロ・アルバム『Right Place, Wrong Person』を5/24にリリースへ

洋楽2024年4月26日

 BTSのRMが、2枚目のソロ・アルバムのリリースを発表した。プレス・リリースによると、『Right Place, Wrong Person』(ライト・プレイス、ロング・パーソン)は現地時間2024年5月24日にリリースされる予定で、“オル … 続きを読む

Willfriends

page top