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レーベル『TOKYO RABBIT』代表の 堂野晶敬に訊く【前編】“進んだ先に何か待っているだろう”

(okmusic UP's)

平原綾香の「ソメイヨシノ」、クリス・ハートの「Still loving you 」、青柳翔の「泣いたロザリオ」をはじめ、数多くの著名シンガーに楽曲提供を行ない、幾つものヒット曲を生み出してきた、シンガーソングライター堂野晶敬。自身が中心となるTOKYO RABBITのバンド活動に加え、自らが代表を務める会社経営や配信中心のインディペンデント・レーベル『TOKYO RABBIT』も運営している。ハリウッドで活躍中の女優・祐真キキやモデル/タレントの野村日香理、男性シンガーSALTや仙台在住21歳の女性シンガー愛恵など、デジタルリリースを中心に活動をしてきた同レーベルだが、この1月25日には上述のTOKYO RABBITの新曲「東京」を含む3曲をデジタル配信した。
ユニークな経歴の中で 繰り返した挫折

『TOKYO RABBIT』は、もともと同名の法人を母体に運営されているもの。そこではミュージシャンに限らず各種法人や団体を含め、その音楽や映像のコンテンツの制作/提供やプロモーションやPRなどを請け負っている。そして、かねてよりそこに集ってきたアーティストたちの歌という作品のリリース環境が、この音楽レーベル『TOKYO RABBIT』と言える。

これらを運営する堂野の経歴はユニークだ。愛知県名古屋市出身の彼は高校時代はお笑い芸人として活動をし、以後、スキューバダイビングのインストラクターをしていたかと思えば、LAに渡りLos Angeles City College映画製作学部で映像制作を学んでいる。とはいえ、都度そこに挫折を覚え次々と進むべき道を変えてきたと語る。

「もともとはお笑い芸人になろうと思って、高校時代に名古屋の吉本の養成所に入ったんです。でも、芸人さんが舞台で我先にみたいに競い合う世界にどうしても付いていけず…。そこで挫折をし、映画制作に興味が移ったこともあり、海外で映画の勉強を始めたんです。映画こそ総合芸術と感じていましたから。その頃からですね、自身で音楽を作り始めたのは。最初は自身の映像に乗せる音楽作りでした。ところが、気づいたら興味の比重が音楽に移っていて。常に何かに挫折して、そこから何か違ったものを見つけ、まずはそれを信じ、とにかく進んでいく。振り返ると、昔から何も考えずに“進んだ先に何か待っているだろう”と漠然と信じて進んでいってますね(笑)」(堂野)

ここまでの話では、後の楽曲提供者でもある一面となかなか結び付きづらい…。

「日本に戻ってきて音楽活動を本格的に開始したんです。そこではメジャーからも声がかかるぐらいまでいきつつも、いかんせん当時は海外帰りの尖った野郎だったようで(笑)、上手く立ち回れなくて。その話も消え、バンドを始めたものの、それも上手くいかず。そこで一旦就職してサラリーマンになったんです。でも、そこでも挫折して。組織の中で上手く立ち回れなかったんですよね。そこからですね、“自分でもう一度音楽をやるしかない!”と腹を括ったのは。で、ソロ作品を作ったところ、それを評価してくださる方が現れ始めて。そんな中、平原綾香さんの曲のコンペで採用されたんです。そこから作家活動が始まりました。当時はレコードメーカーの専属作家として曲を量産してましたね」
血の通った音楽を提示する 『TOKYO RABBIT』を設立

彼は都度変わる方向性を“挫折”と称していたが、ある意味それは自分が本当にやりたいことを探し続けていった旅のようにも感じる。そこから再び自身の創作活動に戻った経緯にも触れてみよう。

「ほんと作家時代はいろいろと創作の勉強になり、今役立っていることも多いです。作家の仕事ってまずは楽曲のテーマがあり、それに沿った内容を曲化していくものが中心なんですよ。それなりの曲が出来るものの、どうしてもそれはコンペ概要に沿って表面的に形作られたもので、自分の真の心の内や想っていること、考えていることの中から生まれたものでないことに、ある種のジレンマもあったんです。そんな中、自作の曲でも心に残っている曲の多くは、誰か特定の相手に向けて捧げたり、自分が心の底から思ったり感じたものを率直に歌に託した曲ばかりだったことに想い当たって。やはり自分がなりたいものは作家ではなく、自分の中から沸き出たものを歌にしていくことなんだと改めて気づいたんです」

そこで始めたのが法人『TOKYO RABBIT』なのだが、この社名の“RABBIT”は童話『不思議の国のアリス』に出てくるウサギを指す。同物語同様、日常に退屈さを覚えている人たちの手を引っ張り、不思議な世界で一緒に遊ぼうと誘う、そのコンセプトから名付けたとのことだ。

これまでのリリース作品は内容もさまざまだ。各人、堂野が作った楽曲を歌いながらも、そのサウンドアプローチや各位持ち前の特性を活かした歌唱とともに、各々しっかりとしたオリジナリティーを醸し出しているものばかりだ。

「その辺りこそ、作家時代に培ってきたものが活かされています。しっかりコミュニケーションを取りながら作っていることもあり、各人の胸の内を知りつつ、それに合わせたものを的確に提示できるというか。いわば各人に沿いながらも、自分もその人に成り切って各曲提供しています。そんなことを語るとプロデューサ―的な役割に映るでしょうが、そのような意識はまったくなくて。音楽のプロデュースこそしますが、自身のプロデュースはあえて各位に任せています」

基本、このレーベルTOKYO RABBITは、経理や事務、宣伝などを除いて堂野ひとりで運営されている。

「少人数で運営をしているので、行なう作業や業務も煩雑ですが、逆に、より血の通った音楽を徹底的に作り込めるメリットもあります。介在や媒体を通さず、よりフェイス・トゥ・フェイスでダイレクトに想いを楽曲に込められる。そういった意味でも配信リリースは有効です。CDに比べリリース対応もギリギリまで可能だし。おかげさまで毎回納得のいくまで作り込んでます」
心を映し出した音楽を作って 発信していきたい

では、レーベルとして目指しているものはどんなことだろう?

「所属している各人が音楽面でも確立し、音楽活動もきちんとできる環境作りですね。結果、携わるアーティスト、ミュージシャン全員がレーベルの音楽活動だけでご飯が食べられるようになるのが理想です。いろいろなタイプのシンガーがいるので、きっとみなさんの琴線に触れる者もいるでしょうから。ぜひそれを見つけていただき、リスナーもともに一緒に大きくなっていきたいです」

“みんながやりたいことがやれる会社が目標”と力強く語る堂野。反面、課題的には発信やプロモーション、欲している人がここに辿り着ける導線みたいなものも明確に強化していきたいとも語る。より信憑性やブランド力のアップや確立、それから自らの発信力は、これから同レーベルを拡大/拡張していくためにも急務となりそうだ。

「今はどうしてもレーベル単独の発信力が弱いこともあり、各アーティストの発信力やインフルエンス力に頼ったり委ねたりが大きいですが、そんな各人のトピックに頼らずに、“このレーベルは間違いない!”とレーベル丸ごとで気に入ってもらえる存在が理想です。今後も一曲一曲、心込めて音楽を作っていきたいし、発信していきたいですね」

そんな中、いよいよ満を持して自身率いるTOKYO RABBIT名義で配信EP『東京』をリリースした堂野。そこには上述で語られていた“心を映し出す音楽”と自身の数々の挫折が生み、それらを経なければ語れないドラマが内包されたものとなっている。【後編】ではその辺りをさらに詳しく伝えてみよう。
text by 池田スカオ和宏
■レーベル『TOKYO RABBIT』代表の 堂野晶敬に訊く【後編】

https://okmusic.jp/news/318058/
配信EP『東京』
2019年1月25日(金)配信

<収録曲>

M-1 東京

M-2 Before Brand New Day

M-3 Why did I

◎配信先:iTunes Store、Apple Music、Spotify、Amazon、LINE MUSIC、Music.jp、Oricon、AWA、SHAZAM、OTOTOYなど、各配信サイト。

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