水曜日のカンパネラ、河口湖ステラシアターにて幻想的で自由奔放なエンタメショーを披露

2018年7月9日 / 21:00

6月30日(土)@河口湖ステラシアター (okmusic UP's)

関東甲信地方が観測史上最速で梅雨明けした翌日の6月30日(土)、そして7月1日(日)の2日間にわたって、水曜日のカンパネラの今年いちばん大きなワンマンライヴとなる『水曜日のカンパネラ・円形劇場公演』が山梨県・河口湖ステラシアターで開催された。ここでは初日の模様をレポートする。

当日は快晴に恵まれ、青空が顔を覗かせた。オープンの1時間前、遺跡のような佇まいの河口湖ステラシアターの敷地内に早々と多くのお客さんが到着。アートユニット「skydiving magazine」デザインによるこの日のためのグッズなどが並ぶ売り場も大いに賑わう。入場してロビーを抜けると、古代ローマ劇場に似た半円形/すり鉢状の空間が現れ、席に着けば舞台が悠々と見下ろせる形だ。ステージにはサッカーボールをかたどったような金色のオブジェ(コムアイ曰く「バリのお寺をイメージした」そう)が設置。ステージと客席の間にあるオーケストラピットにはなんと水を溜めて池が作られ、錦鯉や金魚がスイスイと泳いでしまっている。やたらとシュールな光景に期待も高まる中、コムアイの影アナ前説を経て、開演時刻は近づく。そして、辺りにスモークが立ち込めてきた。

撮影: SAKI YAGI/取材・文:田山雄士
関東甲信地方が観測史上最速で梅雨明けした翌日の6月30日(土)、そして7月1日(日)の2日間にわたって、水曜日のカンパネラの今年いちばん大きなワンマンライヴとなる『水曜日のカンパネラ・円形劇場公演』が山梨県・河口湖ステラシアターで開催された。ここでは初日の模様をレポートする。

当日は快晴に恵まれ、青空が顔を覗かせた。オープンの1時間前、遺跡のような佇まいの河口湖ステラシアターの敷地内に早々と多くのお客さんが到着。アートユニット「skydiving magazine」デザインによるこの日のためのグッズなどが並ぶ売り場も大いに賑わう。入場してロビーを抜けると、古代ローマ劇場に似た半円形/すり鉢状の空間が現れ、席に着けば舞台が悠々と見下ろせる形だ。ステージにはサッカーボールをかたどったような金色のオブジェ(コムアイ曰く「バリのお寺をイメージした」そう)が設置。ステージと客席の間にあるオーケストラピットにはなんと水を溜めて池が作られ、錦鯉や金魚がスイスイと泳いでしまっている。やたらとシュールな光景に期待も高まる中、コムアイの影アナ前説を経て、開演時刻は近づく。そして、辺りにスモークが立ち込めてきた。
突如流れ出す「ラー」のイントロでざわめきが起こるとともに、課せられる“コムアイを探せ”ミッション(笑)。いた!“ふたを開けて”と歌いつつ、客席中段の東側(ステージで言うと下手)から現れたコムアイ。こんな感じでいつの間にやらライヴは始まっている。そのまま観客の近くをまずは大胆に練り歩いていくのだけれど、よく見ると場内のあちこちに照明チームがスタンバイ!そう、まるでスナイパーのように潜んでいて、楽しく踊りながらガッツリ走りながら光をアナログで送ったり、特殊フレームを振り回して効果的に当てたり、反射をうまく使ったりと、臨場感ある演出で忠実に主演をアシストする彼らの動きは、特筆しておきたいほど終始すばらしかった。

続く「小野妹子」でもフットワーク激軽のコムアイは、来てくれた人ひとりひとりを歓迎するかの如く客席を歌いめぐる。最後方を駆け抜け、ついには普通なら演者が使わないであろう天井裏の足場へと登ってしまう。“パンにはやっぱり遣隋使”なんて歌詞もさることながら、観客が一様に彼女を見上げる画もスーパー不可思議だ。あっ、音響ブース付近にケンモチヒデフミとDir.Fの姿を確認!そんなことを考えているうちに“厚岸、厚岸、厚岸、厚岸、アッケシケシケシケシ……”と「シャクシャイン」がクールなライヴアレンジで滑り込んでくる。いやー、ぜんぜんステージに降りてこないのに盛り上がっていて面白い。結局は3曲を歌い歩き、オーディエンスの筋肉をうまくほぐして、「一休さん」でついに舞台へ辿り着いたコムアイ。とんちを利かせたラップを繰り出しつつ、“虎虎虎”のあたりからはワイルドなダンスも見せてくれるのだった。
ステージ中央であぐらをかきながら、「こんばんは、水曜日のカンパネラと言います。よろしくお願いしまーす!いろんなお客さんが来てて、いい感じですねえ」とリラックスした様子であいさつするコムアイ。池の錦鯉にも触れ、仕込みで現地に来てから「ここに水入れられるかもよ!?」みたいなノリで急遽作ったことを明かす。「今日はいっぱい美しい景色を用意してます。普段だと自分がどういう人間か自信がないですけど、この時間くらいは愛をたっぷり届けますんで楽しんでいってください」。
去年3月の日本武道館ワンマンが終わったあと、1stアルバム『クロールと逆上がり』の曲を聴いていたところ、いい感触があったというコムアイは「忘我してるような音楽ができたらと思うんで、ひさびさに引っぱり出してやってみます」と話し、スタンドマイクで「マチルダ」「ゴッホ」を披露。魔法陣のような光の柱に囲まれて歌う演出の中、ひんやりした声とミニマルビートも相まって、脳内はスーッと清らかになる。
代表曲「桃太郎」のコスモを感じるハウスミックス、獰猛かつ妖しいコムアイのきびダンスでいよいよ没入。雷雲を彷彿とさせる音像の「ウランちゃん」が投下されれば、音の籠り具合も抜け具合も面白いステラシアター独特の反響により浸れる。この環境でバキバキの重低音トラックをやるアーティストもなかなかいないだろうし、こういうアプローチが“ガラパゴス”っぽいのかもしれない。先に述べた照明チームの丹精込めた仕事ぶり、総天然色の神歌「ユタ」でも漂っていた野性的なムード、しばしば大きく伸びをするコムアイの仕草にしてもそう。メディアアートみたいなサイバーさとは一線を画す、きっぱりと背を向けたパフォーマンスだったと思う。
ひと時の静寂を経て始まった「愛しいものたちへ」では光量を絞り、ピンポイントで感性に訴える表現にトライ。水滴の音、コムアイの倍音成分がオーディエンスの受動器官を刺激する。ステージの縁に座って五円玉を池へ投げ入れる彼女、水面に映る光と影の揺らぎ、波紋が美しい。そして「西玉夫」でいよいよその中へ足を踏み入れ、「クラーケン」になると果敢に踊ってみせる。“アザラシ”“蛸”に思いを馳せるかのように。一方、ステージには緑の蛸バルーン(ビニール)が現れ、いびつに大膨張。蛸が暴れ狂っているみたいな演出、暴風雨や洪水をイメージさせる音塊に圧倒されつつも、奇抜なエネルギーの充満が心地よかったりもした。
「マトリョーシカ」を歌いながら、中央のPA席に向かって再び観客の間へと入っていくコムアイ。周囲がすっぽり闇に包まれ、蛸バルーンも彼女を追って客席を転がる。水のパートを奥ゆかしく締め、いよいよクライマックスへ。新作ミニアルバム『ガラパゴス』からの楽曲がどんどん飛び出す。ループが気持ちいい「南方熊楠」の途中で「ライト兄弟」をインサートしてまた戻るという流れに、「見ざる聞かざる言わざる」へのノンストップ繋ぎと緑黄色ライトが鮮やかに映えるさまに、会場は大いに沸き上がり、外国人のファンを含めて踊り狂わずにはいられない人たちが続出!「贏政」ではドラムンベースの効いたトラックに乗せて光MAXのトランス状態に達し、特大元気玉みたいな極彩色の光に照らされて躍動するコムアイが非現実的で神々しい。

全開の照明で表現を爆発させたあとは一転、再び極小の光を纏って「かぐや姫」。先日出演したTBSテレビ『A-Studio』では生の弦アレンジパフォーマンスが話題を呼んだが、ステラシアターにおいてはとてもシンプルな佇まいで歌声を届けていた。さっきのド派手な演出とは対極であるにもかかわらず、それでも歌がものすごく活き活きと聞こえてくるのは、水曜日のカンパネラのショーが五感を楽しませてくれている証と言えよう。時空の旅の終着を報せるかの如く、アウトロでコムアイはステージ後方の扉奥へと姿を消した。
気付けば最後の曲だった。夜のステラシアターは涼しい風が吹いている。ステージ後方がゆっくり開くと、緑の芝生と森が現れ、芝生の上には炎を灯したたくさんのキャンドル。コムアイの姿もある。ここまで表現してきた水、風、光、闇に加え、最後は炎をバックに「キイロのうた」を粛然と披露。草木の香り、燃える匂いに鼻腔がくすぐられるシチュエーションもいい。やがて、精霊のように火の中心へ入っていくコムアイ。深々とお辞儀をし、最後に感謝の言葉を述べた。

「今日はお越しくださって、ありがとうございました。すごい数の人たちが完璧なチームワークでショーを支えてくれてます。そして、こんなに遠いところまでこんなにお客さんが来てくれるとは思わなかったです。本当に、いつもありがとうございます」
アンコールはなし。引き締まった潔いショーだった。DI:GA ONLINEのインタビュー(https://www.diskgarage.com/digaonline/interview/82837)で「情報/カロリー過多のだだ漏れな演出じゃなく、もっとツボを突く表現がしたい」「みんなが耳を澄ませる状態を作りたい」と語っていたコムアイだが、彼女自身少なからず手ごたえのある公演になったのではないかと思う。歌のパワー、腰や耳などを喜ばせる没入感、チームで作り込んだ舞台美術に音響に照明が圧倒的だったし、新作ミニアルバム『ガラパゴス』のナンバーはライヴの転換点、ピークの役割をしっかりと担っていた。映像の類をほとんど使わず、ダンサーを従えなかった点も攻めたポイントのはず。富士山の姿ははっきりと拝めなかったものの、夜空には星がきれいに輝いていて、素敵な余韻が十分すぎるくらいにありました。

幻想的で自由奔放な、堅いものをほどくエンタメショーを終えた水曜日のカンパネラ。11月からは東京、大阪、北海道、沖縄の全国4都市で『Galapagos Tour』を開催する。さらなる酩酊と恍惚、非現実の世界を求めて。

撮影: SAKI YAGI/取材・文:田山雄士

【セットリスト】

01.ラー

02.小野妹子

03.シャクシャイン

04.一休さん

05.マチルダ

06.ゴッホ

07.桃太郎 Remix(Cosmic ver.)

08.ウランちゃん

09.ユタ

10.愛しいものたちへ

11.西玉夫

12.クラーケン

13.マトリョーシカ

14.南方熊楠〜ライト兄弟〜南方熊楠

15.見ざる聞かざる言わざる

16.贏政

17.かぐや姫

18.キイロのうた
【ライブ情報】

『ガラパゴス ツアー』

11月07日(水) 東京・新木場STUDIO COAST

11月10日(土) 北海道・札幌ファクトリーホール

11月30日(金) 大阪・味園 ユニバース

12月08日(土) 沖縄・那覇ナムラホール

<チケット>

スタンディング¥4,500(税込)

オフィシャル先行受付:7月2日(月)21:00~7月15日(日)23:59

■受付URL:http://w.pia.jp/t/wed-galapagos/

一般発売:9月08日(土)10:00~


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