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絶叫上映おかわり! 映画『ベイビー・ドライバー』の爆走ナンバー5選

ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲 (okmusic UP's)

「小唄どどいつなんでもできてお約束だけ出来ぬ人」なんて切ない恋の都々逸がありますけれども、それはさておき、今回は映画『ベイビー・ドライバー』の劇中で使用されている、ドライブ感あふれるヒットナンバーをピックアップします。アカデミー賞3部門にノミネートされた同作は、悪の組織に天性のドライビングセンスを買われ、強盗犯を逃すことを仕事にしているベイビーの恋とスリリングなドライブテクニックを描いています。ベイビーとその周囲の魅力的なキャラクターもさることながら、音楽が音楽たり得る要素や様式が脈打ったまま登場人物の心音や銃声や破壊音と踊るように歌うように共振する痛快さが素晴らしく、冒頭から涙を抑え切れません。実は池袋の新文芸坐ではこの映画の『爆走絶叫上映』なる企画まで実施されたらしいのですが、残念ながら私は参加できながったので、ぜひもう一度やっていただきたいのです! 欲を言えば『フジ』とか『サマソニ』の裏あたりで!
「Bellbottoms」(’94) /The Jon Spencer Blues Explosion

まずは大盤振る舞いで公開中の冒頭6分間のカーチェイスから、ジョンスペのアルバム『Orange』の収録曲を。メンバーの強盗が終わるまで待機しているベイビーがこの曲に合わせてエアギターを弾いたり車体を叩いたり、ワイパーを起動させてみたり映画の舞台となるアトランタの高層ビルを見上げたり、ヴォーカルのシャウトを真似たりという牧歌的な場面から、曲調とテンポが唐突に速度を上げて警察の追撃を振り払ってポーカーフェイスに逃走するカーチェイスに切り替わる爽快感。重心高めの躍動的なベースラインや跳ね回るようなドラミングと、タイヤの摩擦音やエンジンの息吹と同期するオープニングの贅沢さがたまりません。
「Egyptian Reggae」(’77) /Jonathan Richman & the Modern Lovers

『爆走ナンバー』と銘打っておきながら申し訳ないのですが、こちらは爆走シーンで使用されている楽曲ではなく、ベイビーが諸事情により加担させられている悪の組織の秘密の会議の場面で流れているインスゥルメンタルです。アメリカ東海岸出身のジョナサン・リッチマンと彼が率いたモダン・ラヴァーズ。“エジプシャン・レゲエ”というタイトルとは相反してねっとりとしたレゲエ成分は希薄ですが、軽妙なギターのカッティングの連なり、小気味いいパーカッションとディレイたっぷりの銅鑼の音色が、知る由もない異国のからりとした砂丘を想起させます。このリズムとベイビーが買ってきたコーヒーの紙コップがテーブルの上にトン、トトトンと着地する気持ち良さがいいのです。
「Neat Neat Neat」(’77) /The Damned

パンクの三大始祖の1組、ダムド先生のアルバム『地獄に堕ちた野郎ども』から。ベイビーは幼少時に遭った事故の後遺症により耳鳴りに悩まされており、それをかき消すために常にイヤフォンで音楽を聴いているのですが、彼ならではのこだわりが垣間見えるのがこの曲がかかるシーン。仲間たちが車から降りる瞬間と、イントロのベースソロからけたたましい叫びとシンバルがバチッとはまるタイミングを見計らって指示を出すのです。その後も瞬き分の間隙も与えることなく、3分足らずの曲の中に追っ手から逃げ回る場面やら仲間が警察に銃をぶっ放さないよう見事なハンドルさばきを披露するくだりに到るまでを流れるように詰め込む情報量の多さとスピード感には毎回息を飲みます。
「Hocus Pocus」(’71)/Focus

しかし、ベイビーとて彼の天賦の才を見出した悪の組織のボスの言いなりのままで終わるわけではなく、終盤いよいよ初めて車を使わずに自分の足で逃げ出すのです。そこでかかるオランダのプログレバンドFocusのこの曲! 邦題は“悪魔の呪文”ですが、ハードロックなミドルテンポのパートから、重厚なオルガンとヨーデルを用いたユーモラスなスキャットやつむじ風のごとく吹き鳴らされるフルートの音色が織りなす奇妙さへの展開は大いに魔術性をはらんでいます。さらにここで仲違いしたメンバーたちがショッピングモールの駐車場で警察と凄まじい銃撃戦を繰り広げるのですが、乱れ飛ぶ銃弾と被弾する車体の音がまた楽曲と絶妙に絡み合うのです。
「Brighton Rock」(’74)/Queen

劇中では車色や登場人物が立ち寄るさまざまな場所の照明などで“赤と青の対比”が多用されているのですが、それはそれで置いておいて、クライマックスの最後の対決を飾るのが、クイーンのアルバム『シアー・ハート・アタック』に収録されているこの曲! 駐車場の青いライトを浴びるベイビー、車内の真っ赤な明かりで浮かび上がるかつて仲間だった男の不敵な笑み。ふたりの男の対峙する一幕と、フレディ・マーキュリーの美麗なハイトーンヴォイスとブライアン・メイの野性的かつドラマチックなギターソロが、完全に合致して鳴動しているのです。否が応でも盛り上がるのです。音楽がストーリーを盛り上げるための効果的な素材というよりは、明確に共生して闘争して共鳴するこの作品の『爆走絶叫上映』が1回こっきりになんて本当にもったいない話だと思うので、どうかおかわりのご検討を…。
TEXT:町田ノイズ
町田ノイズ プロフィール:VV magazine、ねとらぼ、M-ON!MUSIC、T-SITE等に寄稿し、東高円寺U.F.O.CLUB、新宿LOFT、下北沢THREE等に通い、末廣亭の桟敷席でおにぎりを頬張り、ホラー漫画と「パタリロ!」を読む。サイケデリックロック、ノーウェーブが好き。

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