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モーニング娘。'16主演舞台【続・11人いる!】消えない慟哭/命懸けの大恋愛……号泣する観客続出

 6月11日~26日 京都劇場と池袋サンシャイン劇場にて、モーニング娘。’16主演 演劇女子部【続・11人いる!東の地平・西の永遠】が公開。号泣する観客が続出するほどの演劇を繰り広げた。

<“アイドル×演劇”ももクロ/TPD/アイスト/ブクガ……唸らせる作品続々>

 近年、アイドルグループの面々が演技に挑戦する作品は、ももいろクローバーZ主演映画『幕が上がる』(https://youtu.be/lM5rI8migz4)、東京パフォーマンスドールの演劇×ライブ【PLAY×LIVE『1×0』(プレイライブ ワンバイゼロ)】(https://youtu.be/tT7-Yew3l9A)、SUPER☆GiRLS、Cheeky Parade、GEMの選抜メンバーによる【Girls Street Theater 2015 座・花御代コンチェルト】(https://youtu.be/u1yDhCZL_-M)、出演&音楽:Maison book girlによるMOOSIC『マイカット』(https://youtu.be/TpfaOs0LxJo)等、観る者を唸らせる内容やクオリティのものが続々と発表されている。もちろん、話題性やステータスだけを求めて作られている印象を受けるものも少なくはないが、アイドルやそのフリークにとって演劇もまた無視できない表現及びコンテンツになっているのは確かだ。

<モーニング娘。主演舞台 この上ない絶望を切なく美しく描いた衝撃作も>

 そんな“アイドル×演劇”の世界で衝撃作を毎年提供し続けているのが、ハロー!プロジェクトの面々。古くは2006年に旗揚げされた劇団ゲキハロから、演技という広域で見れば初期のモーニング娘。主演映画からと、ハロプロとお芝居の世界の関係は長くて深く、卒業後に本格的に舞台女優になっていくメンバーも少なくない。そうした歴史と環境もあってか、ここ数年のモーニング娘。主演舞台は観る者を唸らせるどころか度肝を抜く、もっと言えばトラウマレベルの衝撃作も多く、大槻ケンヂ原作の【ステーシーズ 少女再殺歌劇】やスマイレージと共に主演した末満健一書き下ろし【LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-】等は、アイドルがヘヴィに死生観まで表現。愛する者との命のやり取りや集団自決(ひとりだけ死ねない)等、この上ない絶望を苦しいほど切なく、悲しいほど美しく描いている。

<【ネタバレ注意】号泣する人々続出! 佐藤優樹×石田亜佑美のあのシーン>

 さて、ここからはモーニング娘。’16主演 演劇女子部【続・11人いる!東の地平・西の永遠】について記したい(すでに千穐楽を迎えているが、この先に予想されるDVD発売まで内容を知りたくない人は、ネタバレ注意)。萩尾望都によるSF漫画をミュージカル化した同舞台は、モーニング娘。’16の11人全メンバーがWキャスト、天才マジシャン・原大樹監修のもとイリュージョンも披露、そして宇宙での星間における争いに登場人物たちが巻き込まれていく……という表現難易度の高い設定と、彼女たちにとっては過酷なチャレンジであったことは間違いないのだが、それでも11人は高い緊張感、観劇する人々の集中力を一切緩めないレベルの舞台を繰り広げていく。

 お芝居に対して苦手意識の強かった佐藤優樹(バセスカ)は、家臣や敵国の謀略によって星を追われる王様役を凄まじい覇気をまとって演じ、生き残る為の逃亡の果てに親友を失ってしまうシーンでは、まるで本当に愛する者に逝かれてしまったかのように、その後のシーンで声が掠れるほどの慟哭を表現。「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ! 私は死ぬのがイヤだった。でもこんなのもっとイヤだ! もっとイヤだ! イヤダァァァァァァァァ!」その泣き叫ぶ声は今でも耳から離れてくれない。また、その親友役を演じた石田亜佑美(フォース)は、国の命令で眼前のバセスカに拳銃を向けながら、愛する国や家族と親友のどちらしか守れない苦境に葛藤、その心情をボロボロになりながら吐き出し、その果てに銃口を自分に向けてしまう。泣き叫ぶ佐藤の腕の中で「戦争を終わらせてくれ」と絶命してしまうまでのシーンは、嗚咽する人も続出するほど会場中の涙を誘った。

<命懸けの大恋愛 工藤遥の覚悟の叫び 小田さくら「愛してる!!」熱唱>

 そんな絶望の中でバセスカを必死に助けようと奔走する主人公の工藤遥(タダ)と、その恋人役の小田さくら(フロル)は、どうしても重くなりがちなストーリーの中で本物のカップルのように立ち振る舞い、誰にでも優しいタダに嫉妬するシーンなどは幾度となく我々をほっこりさせてくれた。その一方で、タダから「これ以上危険な目に遭わせたくない」と別れを告げられた際の、小田さくらの「愛してる 愛してる 愛してる 愛してる!! 俺はお前を愛しているんだ!」といったストレートな想いを爆発させる熱唱(この曲「好きだから・・」は『演劇女子部「続・11人いる!東の地平・西の永遠」オリジナルサウンドトラック』に収録)。人質として捕らえられたフロルを救う為に「僕の指を切ってくれ。フロルが痛い思いをするぐらいなら、こんな指……いくらだってくれてやる!」と叫んだ工藤遥の熱演など、2人の命懸けの恋愛に幾度となく泣かされた人も多かったことだろう。

<11人それぞれに見せ場あり! 役を通して発揮した個性やスキル>

 また、神官・オナを演じた譜久村聖の美しすぎる舞い、周囲を圧倒的な包容力で飲み込んでいく佇まい。宇宙大学の教官・石頭&宇宙連邦の情報部員・レッドを演じた生田衣梨奈の、生徒たちを守るために一切ひるむことなく敵軍を追い払ってみせたり、バセスカたちをアクロバット付きの殺陣で守ってみせるイケメンぶり。西の地の平和団団長・ローンを演じた飯窪春菜の、戦争を終わらせる為に放ったクライマックスのセリフ。フォースの優しい妹・チュチュを演じた牧野真莉愛の、復讐に燃える際の豹変ぶり。バセスカたちを救う為に大臣に剣を振るったアマン伯爵役・野中美希、純粋ゆえに誤った正義の道を選んでしまったドゥマー役・羽賀朱音の表情。そして、偽りの国王トマノを演じた尾形春水の、絵に画いたようなダメ王族キャラと、どのメンバーもその役を通して個性やスキルを発揮。全員Wキャストということでここに記した以外の役も演じており、そのタイトさは想像を絶するレベルだったと思うが、何度でも観たいと思わせる演劇作品を全員で創り上げていた。

<岸本ゆめの(つばきファクトリー)演じるレッド 若手も次々続々>

 なお、今作には、つばきファクトリーから山岸理子、小片リサ、岸本ゆめの、浅倉樹々、ハロプロ研修生から橋本渚、高瀬くるみ、演劇女子部から石井杏奈、小野田暖優も出演。壮大なストーリーやベテラン女優の汐月しゅう、未沙のえるの迫真の演技に押し潰されることなく、何役にもわたって舞台を駆けずり回りながら活躍した。特に岸本ゆめの演じるレッドの男声や剣さばきはお見事。やがて工藤や生田と肩を並べるイケメンになるのでは、と思わせるほど惚れ惚れする演技を見せた。そんな若手も次々続々と育っているハロー!プロジェクトの演劇女子部。彼女たちの作品を観ずに“アイドル×演劇”の世界は知れず語れず。すでにDVDリリースされている過去作品も驚愕&感涙必至の内容となっているので、ぜひとも片っ端からチェックしてもらいたい。

取材&テキスト:平賀哲雄

◎演劇女子部【続・11人いる!東の地平・西の永遠】
原作:萩尾望都『続・11人いる!東の地平・西の永遠』(小学館刊)
脚本:坪田文
演出:西森英行(Innocent Sphere)
出演:モーニング娘。’16、山岸理子(つばきファクトリー)、小片リサ(つばきファクトリー)、岸本ゆめの(つばきファクトリー)、浅倉樹々(つばきファクトリー)、橋本渚(ハロプロ研修生)、高瀬くるみ(ハロプロ研修生)、石井杏奈(演劇女子部)、小野田暖優(演劇女子部)、汐月しゅう、未沙のえる

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