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もはや定番のシックでアダルトなステージ。ボビーのロマンティックな歌声で真夏の宵をゴージャスにくつろいで。

 今宵のキーワードは、スタイリシュ&メロウ――。

 真夏の『ビルボードライブ東京』にアダルトでシックな音楽の摩天楼を再現してくれるボビー・コールドウェル。熱心な日本のファンの期待に応えて、今年も来日してくれた。彼のライブが洗練されていて聴き応えがあるのは、すでに百も承知の事実。何度観ても色褪せることのないボビーのライブは、都会的でありながら、どこかトロピカルなリゾート感覚も併せ持っているのが特徴であり、他のAOR系ミュージシャンと一線を画しているところ。そんな特徴を持ったボビーが、今年も僕たちの期待に120%応えてくれるゴキゲンなライブを展開してくれた。

 ステージに彼が上がると会場全体が上気し、眩いばかりの演奏が始まる。5人の辣腕メンバーを従えながらも、あくまでもジェントルでスタイリッシュな姿勢は崩さないボビーだが、ほんの一瞬、影響を受けているスティーヴィ・ワンダーやボズ・スキャッグスのようにソウルフルでエモーショナルな表情を垣間見せてくれる。それこそがボビーのライブの真骨頂であり、彼のルーツが透けて見える貴重な瞬間なのだ。

 来日回数も多い彼のことだから、日本のファンの心理もしっかり読んだ、実にツボをついた演出を楽しませてくれる。我々としては名ドメーヌが丹精込めて作ったワインのように、安心して酔い痴れることができるわけだ。

 果たして今年のライブはどうか――もちろん悪いわけがない。大幅にイメージが変わるわけもない、ある意味ではコンサバティブなライブながら、聴きどころ満載の充実した内容。「スペシャル・トゥー・ミー」や「風のシルエット」といった代表曲もまんべんなく聴かせてくれて、ゴージャスな演奏もしっかり身体に響いてくる。印象的なメロディ、心にグッと来る歌詞。こんなに高品質なライブを続けているボビー・コールドウェルというアーティストは、本当に音楽に対して真摯な人なのだと思う。

 どの曲にも追憶感覚に溢れた甘く切ない響きがある。そして、ちょっとビターな隠し味も。まるで、彼の歌う楽曲は人生の喜怒哀楽をさりげなく感じさせてくれる“人生賛歌”のようにも聴こえてくる。だからこそ、何度観ても、また観に来てよかったと感じさせてくれるのだろう。しかし、アメリカでももはや“大御所”の彼が、これだけ頻繁に来日してくれるのは、きっと彼にとっても日本が特別な場所だからだろう。

 デビュー当時、アメリカよりも早く日本のリスナーが彼の実力を認め、ブレイクした経緯。そんな昔の経験を彼は忘れていない。だからこそ、日本を愛し、“特別な場所”として頻繁に来てくれるのだろう。ファンにとっては、とても嬉しいことだ。年齢を重ね、60代に入った彼の歌は渋みと説得力を増し、単にお洒落なだけの音楽とはまったく別の次元に到達しつつある。躍動的に歌うスタンダード・ソングはもちろん、オリジナル・ソングのエヴァーグリーンな魅力は、まさに彼と同時代を生きることができた偶然に感謝したい気持ちになる。今宵もそんな気分が胸いっぱいに広がり、ライブの醍醐味を存分に味わわせてくれたボビー。

 去年の秋にもリポートしたと思うが、今宵もまたボビーの深みを増した音楽に身体を預け、心から堪能した。彼女や奥さんと親密な夜を過ごしたいなら、絶対のオススメ。東京では22日と23日、大阪では27日~29日にライブが予定されている。真夏のひとときをロマンティックに彩ってくれる彼のライブはマストだ。

◎ボビー・コールドウェル公演情報
ビルボードライブ東京
2015年7月21日(火)~23日(木)
ビルボードライブ大阪
2015年7月27日(月)~29日(水)
More Info:http://billboard-live.com

Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。猛暑の到来。夏バテ防止に欠かせないのがウナギだけど、今年はぜひともウナギと一緒にカリフォルニアのジンファンデルや南イタリアのプリミティーヴォといった赤ワインを楽しんでみて。ウナギの甘辛い濃厚なタレにピッタリだから、ちょっと驚き。これで夏バテは解消間違いなし!

Photo: jun2

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