エンターテインメント・ウェブマガジン
ローラ・マヴーラのデビュー作『シング・トゥ・ザ・ムーン』は、かなり録音に凝った作りになっている。ローラ自身のヴォーカルは幾重にも重ねられているし、使われている楽器の数も多い。既知のアーティストを引き合いに出すなら、ビョークやピーター・ガブリエルの名前を挙げたくなるアルバムだ。
対して、ステージに現われたローラは、とってもチャーミングな女性だった。CDのジャケットやミュージック・ヴィデオで見られるキリリとした表情ではなく、ライヴを通して常に笑顔。ミステリアスな佇まいではなく、オーガニックで陽性のオーラに包まれている。ライヴでのローラを同様にたとえるなら、ヴァン・ダイク・パークスの楽団をバックにリンダ・ルイスが歌っているかのよう、とするのが正解に思える。
エレクトリック・ピアノを弾きながら歌うローラに加えてバンドは、ハープ、ヴァイオリン、チェロ、コントラバス、ドラムス、という編成。曲によってはその全員がバック・ヴォーカルをとり、ハンド・クラップで曲に高揚をもたらす。室内楽とUKソウルが出会ったような、実に独創的な演奏が聴かれる。
ローラがほとんど曲で、歌詞についてのエピソードを話していたのも印象深い。「フライング・ウィズアウト・ユー」は“自由”についての歌。「ファーザー・ファーザー」は“許し”についての歌。ローラがエレピの弾き語りで切々と歌った後者は、間違いなくこの夜のハイライトだった。
とにかく、歌声に説得力がある。決して押し付けがましいそれではない。ナチュラルなトーンなのに芯の強さがあり、反対に人間の弱さみたいなものまで表現してみせる。強さを表現したがるシンガーは数多いけれども、弱くても大丈夫なのよ、と歌ってくれるシンガーは、そうはいない。その点こそは、ローラ・マヴーラのいちばんの魅力に思える。
ライヴの中盤ではボブ・マーリーの「ワン・ラヴ」が歌われ、アンコールの最後には、指で弾かれるチェロだけをバックにしたマイケル・ジャクソンの「ヒューマン・ネイチャー」が、実に麗しく歌われたりもした。
きっと会場に集まった多くの人が、これからの活動がますます楽しみになった、と感じたことだろう。このライヴに接して、僕もローラの大ファンになったのだった。
TEXT:宮子 和眞
Photo:成瀬 正規
洋楽2024年5月7日
ラナ・デル・レイによる音楽フェスのヘッドライン・ステージを観たことがあるなら、彼女が多くのオーディエンスを魅了できるのは知っているだろう。そんな彼女が、現地時間2024年6月20日に米ボストンの象徴的なフェンウェイ・パークにて、アメリカで … 続きを読む
洋楽2024年5月7日
テイラー・スウィフトの「フォートナイト feat. ポスト・マローン」が2週目の首位を獲得した、今週の米ビルボード・ソング・チャート。 先週(2024年5月4日付)自身12曲目、初登場としては通算7曲目の1位を獲得した「フォートナイト」 … 続きを読む
洋楽2024年5月7日
アーネスト・グリーンことウォッシュト・アウトが、ニュー・アルバム『ノーツ・フロム・ア・クワイエット・ライフ』のリード・シングル「The Hardest Part」をリリースした。 多分野にまたがるアーティスト、ライター、ディレクターのポ … 続きを読む
洋楽2024年5月7日
テイラー・スウィフトの『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント』(TTPD)が2週目の首位を獲得した、今週の米ビルボード・アルバム・チャート。 先週(2024年5月4日付)、2,610,000ユニットという驚異的な数字を叩き出し、堂 … 続きを読む
J-POP2024年5月6日
PKCZ(R)が、2024年6月1日にニューアルバム『Put Your Hearts Up, Everybody Jump Up』を配信リリースする。 約7年ぶりのアルバム、且つ初の配信アルバムとなる今作には、過去にリリースされた「T. … 続きを読む