シンディ・ローパー、ファッション業界と音楽業界はクリエイターを“搾り取っている”と語る「いったいどれだけ金が要るっていうの?」

2026年10月20日 / 15:00

 シンディ・ローパーにとって、故郷の米ニューヨークのボナムスで現在開催中のオークション兼展示会【スーツケース・オブ・メモリーズ】は、単なる思い出巡りではなく、警鐘でもある。

 米ビルボードをはじめとする数媒体に自らオークション出品物を案内した後、シンディは、「ファッションのものはシェアすることがすごく大事なんです。インスピレーションになるから。これはスプレーで塗って、あれは安全ピンでつなぎ合わせて作ったんですよ」と述べ、「今はこれをやるのにすごくいいタイミングだと思う。私たちはこれだけ企業化されてしまったんだから、かつての自分たちを振り返るのはいいことです。80年代のロックンロール・ファッションを振り返ってみれば、あれは個人の表現の時代だった。無理やり型にはめられようとしている今の時代こそ、思い出すか、あるいは刺激を与える時なんです」と続けた。

 【スーツケース・オブ・メモリーズ】という名称は、1984年に米ビルボード・ソング・チャート”Hot 100″で首位を獲得した「Time After Time」の歌詞から取られている。同曲は、大ヒットしたデビュー・アルバム『シーズ・ソー・アンユージュアル』から生まれた4曲のTOP5ヒットの一つだ。今回の出品物の数々は、シンディの主張を色鮮やかに、声高に証明している。DIY作品(彼女とScreaming Mimi’sのオーナー、ローラ・ウィルスが破いた新聞や雑誌で作った、象徴的な”True Colors”のスカート)もあれば、オートクチュール(ステージで着用したヴィヴィアン・ウエストウッドの衣装)、音楽史の一片(第1回【MTVビデオ・ミュージック・アワード】に着ていったチェック柄のドレス)、さらにはお下がり(「Girls Just Want to Have Fun」のミュージック・ビデオで着ていたレオパード柄のパジャマは、彼女の祖母のものだった)まである。そのほかにもゴールド・ディスク、ミキシング・ボード、靴、家具、人形、手書きの歌詞、そしてあふれんばかりのアクセサリーが並んでいる。

 【スーツケース・オブ・メモリーズ】は、ライブ・オークションが行われる現地時間2026年10月22日まで一般公開されており、オンライン・オークションは10月23日まで受け付けている。突飛で目を見張るようなルックで80年代を定義づけたシンディにとって、ファッションは人生の一部であるだけでなく、家族の歴史でもある。「家族が(米国に)渡ってきた時、最初の親戚はお針子でした。それで生計を立てていたんです」と、イタリア系の彼女は家族について語り、「みんな裁縫ができて、型紙を手に取ってアレンジできた。お下がりをもらっても、相手を見て採寸すれば、まるでその人のために作られたみたいに仕上げられたんです。母のそういう才能には、今でも驚かされます。叔父はガーメント・ディストリクトで裁断師をしていて、引っ張りだこのパタンナーになり、その後は婦人用コートのデザイナーになった。私は(N.Y.の)ファッション・インダストリーズ高校に行かされました。それが私の運命だと家族は思っていたから。でも私は歌いたかった。ミュージック&アート高校にどうしても行きたかったんです」と振り返った。

 言うまでもなく、音楽の道はうまくいった。Hot 100で首位を獲得し、【グラミー賞】と【トニー賞】を受賞したこのシンガー・ソングライターは、2025年に【ロックの殿堂】入りを果たしている。10代のシンディはファッション・インダストリーズ高校を成績不審により退学になったものの、その後ファッション界に与えた多大な影響は、音楽界への絶大な影響に迫るほどだ。だからこそ、彼女がファッション業界の現状に警鐘を鳴らせば、それなりの重みを持つ。

 「巨大な企業が、クリエイティブな小さな会社を買い取って、クリエイターたちが締め出されてしまう。あるいは故アレキサンダー・マックイーンみたいな人に、年に12回もショーをやらせたりする」と、彼女は2010年に自ら命を絶った革新的なクチュリエに触れながら語る。そして、「それがどれだけの作業量か分かりますか?そんなことをしたら、その人たちを搾り尽くしてしまう。(ジョン・)ガリアーノみたいに正気を失うか、ドラッグやアルコールに走るかのどちらかですよ、しばらくするとコーヒーじゃもう効かなくなるから。問題はそこなんです。どうしてそこまで強欲にならなきゃいけないんですか?」と彼女は問いかけ、「すべてを均質化してしまったら、もう創造性なんてなくなる。それがこの一連のことの危うさです。いったいどれだけ金が要るっていうのか?もう億万長者でしょ」と述べた。

 彼女は、その企業的な考え方や、四半期ごとに前期を上回らなければならないという発想が音楽業界にもたらす弊害も目の当たりにしている。「株主はクリエイターじゃない」と彼女は断言しつつも、銀行業もクリエイティブな分野になり得ると付け加える。「人を搾り尽くせば、すべて台無しになります。マイケル(・ジャクソン)が(『スリラー』を)3,500万枚売った時、彼らはそれを特別な現象とは捉えませんでした。チャートを持ち込んで、”じゃあ来年は……”などと言ったんです。はあ?!車を作ってるんじゃないんですよ。あれは起きたことであって、毎年起きるってわけじゃない。大人になって、そんなに強欲で近視眼的になるのはやめなさい」と彼女は述べた。

 ここ数十年で、彼女は億万長者や企業がマンハッタンの創造的な活気を押しつぶしていく様子も見てきた。「物価が高くなりすぎると、街から若者が集まるエリアがなくなってしまう。そうなると街は退屈になります。ここはかつて“眠らない街”でした。でももう違う。あれほど素晴らしかったこの島は“仕事の島”になってしまって、悲しい。グリニッジ・ヴィレッジがただの大学の寮じゃなかった頃を覚えています」と彼女は言う。

 それでもファッション界には、今もシンディにインスピレーションを与え続けるクリエイターがたくさんいる。「もちろん今でもヴィヴィアンが好きだし、ジャン=ポールも大好き。1985年に彼から買ったコートは今も持っていて、絶対に、絶対に手放しません」と彼女は話す。オークションに出さずに手元に残したもう一つの私物は、「Girls Just Want to Have Fun」のMVに登場した家具だ。「自分でペイントしたから、それは取っておきました」と言う。

 良くも悪くも、クローゼットの大掃除ともなったボナムスのオークションによって、彼女は思い入れのある品をいくつか意図せず手放すことにもなった。彼女は、「全部に目を通したわけではなくて、他の人に手伝ってもらったので、手放すつもりのなかったものがいくつか紛れ込んでしまいました。でも仕方ないですよね?ある程度経ったら、過去に縛られてしがみついていちゃいけない。共有すべきなんです」と話している。


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