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史上最高とも言えるであろうバンドに在籍した後、ミュージシャンは次に何ができるのだろうか。【アカデミー賞】受賞歴を持つ映画監督モーガン・ネヴィルによる2026年のドキュメンタリー『マン・オン・ザ・ラン』は、まさにその問いに答えようとする作品だ。ポール・マッカートニー、彼の家族、そして彼にとって2つ目のバンドであるウイングスの未公開映像を交えながら、ネヴィルはザ・ビートルズのフロントマンからソロ・アーティスト、そして新たなグループのリーダーへと至るポールの苦難の道のりを描き出している。
物語はおよそ1968年から1980年を舞台としており、マッカートニーが妻リンダと増えていく家族とともにスコットランドの人里離れた農場で暮らし、新たに手にした自由をどうすべきか思い悩むところから始まる。ザ・ビートルズはすでに解散していたが(ポールいわく、それはジョン・レノンの発案だった)、世間はまだそのことを知らなかった。
本編を通じて、『マン・オン・ザ・ラン』はポールが再び全米のアリーナでヘッドライナーを務めるまでの道のりと、そこに至るまでに経験した数々の困難を映し出す。率直な姿勢を貫く本作は、ポールのソロ作品の多くが批評家に酷評されたこと、ジョン・レノンの殺害、日本で短期間投獄された経験、そしてザ・ビートルズを訴えるという大胆な決断にも臆することなく向き合っている。
ステラとメアリー・マッカートニー、ミック・ジャガー、デニー・レイン、ローレンス・ジューバー、クリッシー・ハインド、ジョー・イングリッシュといった重要人物、そしてポール本人が本作のためにエピソードを語っている。1998年に亡くなったリンダも、アーカイブ映像やボイスオーバー、写真を通じていくつものエピソードを伝えている。
現在Amazon Primeで配信中の本作は、現地時間2026年9月28日に米ロサンゼルスのアカデミー映画博物館で上映され、上映後には映画監督のジャド・アパトーが司会を務め、マッカートニーとネヴィルによるQ&Aが行われた。以下はその対談を要約・編集したものだ。
アパトー:ポール、誰かに「ウイングスの[ドキュメンタリーを]作りましょう」と言われたら、「いいね、人生のあの時期をじっくり掘り下げたい」と思いますか? それとも「うわ、勘弁してくれ」と?
マッカートニー:いや、あの時期は好きだよ。まあ、今となってはいい思い出だね。ザ・ビートルズの後に何をすればいいのか。ザ・ビートルズが解散する。それまで唯一の仕事だったのに、それがなくなってしまう。クビになったようなものだよ。それでウイングスだったんだ……どうすればいいか模索していたんだね。映画を見てもらえば分かるように、僕らはうまくやった。ちょっとめちゃくちゃではあったけどね。でも、うん、いや、あの時期は好きだよ。
[ザ・ビートルズを離れたことに]加えて、アレン・クラインというビジネスマンがいて、彼は基本的にザ・ビートルズから金を盗んでいたんだ。そう思っていたのは僕だけだった。他のメンバーは、「彼が大好きだ」と思っていた。
アパトー:どうして彼らはそんなに愚かだったんでしょう? 正直、ビジネス関係者たちは彼がちょっと怪しい人物だと分かっていたと思うんですが。
マッカートニー:理由はこうだ。彼とミーティングをすると、「何が欲しい? ニューヨークの男、何が欲しい? 何が欲しいんだ? 100万ドルか?」「ああ」「よし、くれてやる」となる。
彼は何でも約束するけど、実行はしなかった。でもその一方で、僕にはこいつが詐欺師だと分かっていた。僕対他のメンバーという構図になってしまって、それが最悪だった。音楽を作るうえでメンバーとぶつかることはあったけど、それは大丈夫だったんだ、「いや、これが正しいと本当に思うんだ」とか言えたからね。それで僕が同意するか、彼らが同意しないかで、そうなったら彼らのやり方に従う。比較的簡単に解決できた。でもこれは突然、僕らがそれまでに稼いだすべて、稼いだお金のすべてがこの男の銀行口座に入ろうとしていた。だから本当に闘うしかなかったんだ。
アパトー:しかも相手は親友ですよね。つまり親友たちを訴えることになる。
マッカートニー:まさにそうだった。「よし、アレン・クラインを訴えよう。あいつをやっつけてやる」と言ったんです。僕の弁護士はリンダの父親と兄で、僕は、「よし、やろう。あいつをやっつけよう」と言った。でも彼らは、「彼はどの契約の当事者でもないからそれはできないよ。契約の当事者はザ・ビートルズだけだ」と言うんです。「だからザ・ビートルズを訴えるしかない」と。僕は、「そんなことできないよ」と言った。それが何か月も続いた。「無理だよ。まず世間が僕の敵に回るだろうし、僕自身も自分の敵に回ることになる。いい考えじゃない」と思った。結局、それしか方法がなかった。やるしかなかったんだ。
アパトー:若い頃に驚くべきことを成し遂げても、その後の人生で二度とそこに近づけない人はたくさんいます。あなたにとって、それは恐怖でしたか?
マッカートニー:うん、一人になること自体がすごく怖かったと思う。いつもグループという結束があったのに、どうやってやっていくか、どうやって違うものにするかを自分で考えなければならなかった。そこが肝心だった。「ザ・ビートルズっぽい曲をもっと書いて、それを真似することもできる。そうしたらビートルズのカバー・バンドみたいになるだろう」と思ったからね。
アパトー:振り返ってみると、『ラム』は名盤とされています。ある種のインディー・ロックや宅録の始まりだとさえ考える人も多い。でもあの作品が攻撃された当時、人々がありのままに楽しめなかったことに打ちのめされましたか?
マッカートニー:うん、そうだと思う。特別なものを作れたと思っていたけど、批評家はそう思わなかった。批評家というのは批評するもので、彼らは僕を批評した。新しい家族とこのレコードにあれだけの希望を抱いていて、「これはいいレコードだ」と僕は思っていた。最悪なのは、僕がそれを真に受けてしまったことだ。批評家の言うことを聞いて、「彼らが正しいのかもしれない。分からないな」と思ってしまった。何年もの間、あまりいいアルバムじゃないと思っていた。そんなある日、甥の一人がやって来て、「ねえ、おじさんのアルバムで一番好きなのは”ラム”なんだ」と言った。「え?」って思って。それで急にまた好きになったんだ。
アパトー:あの時期がジョン・レノンを苛立たせたのはなぜだと思いますか?彼がプライマル・スクリーム療法に取り組んでいた一方で、あなたは楽しんでいた、その楽しげな雰囲気のせいでしょうか?何が彼の癇に障ったと思いますか?
マッカートニー:よくある話だよ。というか、僕はジョンが大好きだったし、今も大好きだし、これからもずっとそうだ。彼が何を言おうと、何をしようと関係ないし、実際に関係なかった、15歳の頃から知っていたから。彼は僕の知り合いのイカれたやつで、本当に尊敬していたんだ。
13歳半くらいの頃……いや、もう少し年上で僕が15歳、彼が16歳半の頃って、残酷で機知に富んでいて、まさに的を射ているタイプのやつがいるだろ。そういう人に憧れて、「すごい、本当にかっこいい」と思う。僕はずっとジョンはすごくかっこいいと思っていたし、今もそう思っている。でも、物事によっては本当にどうしようもないバカになることもあった。素敵なやつだったよ。それに彼の人生を見れば、彼がおかしくなるだけの理由がある。彼にはたくさんのひどいことが起きたから。
アパトー:「また別のバンドを始めたい」と思い立ったのは、どの瞬間でしたか?
マッカートニー:テレビでジョニー・キャッシュを見ていたら、彼がカール・パーキンスや、僕らが大好きだったカントリー系のミュージシャンたちとバンドを組んでいた。「わあ、ジョニーがバンドを組んだのか。なんて素晴らしいアイデアなんだ!」と思って。リンダの方を向いて、「やってみない? バンドを始めようか? 君も入る?」と言った。
彼女が音楽教育を受けたことがなかったのは分かっていたけど、「まあ、ザ・ビートルズの僕らだってそうだったし。何も知らなかったんだから」と思ったんだ。でもコードをいくつか覚えて、一緒に学んでいった。そこが素晴らしかったんだ。一緒に階段を上っていった。彼女はそのことでずいぶん非難されたし、僕もずいぶん非難された。ミック・ジャガーなんか、「あいつ、嫁さんをバンドに入れて何やってるんだ?」なんて言ってね。ふざけるなよ。あいつに何の関係があるんだ。
アパトー:あなたたち2人とデニー・レインは、シンガーとして本当に素晴らしいブレンドでした。あのサウンドにある種の魔法があると分かっていましたか?
マッカートニー:今聴くと、「すごいな」って思う。特にリンダの声は本当にいい。とても興味深い味わいを加えている。忘れちゃいけないのは、当時はオートチューンなんてなかったから、彼女はちゃんと正しく歌わなきゃならなかったということ。聴き返してみると、すごくいいと思う。素晴らしいブレンドだった。
最終的に、僕らはザ・ビートルズと同じことをした、上達したんだ。地道に続けて、最後には本当に良くなった。米国に来て、キングダムだか何だか[キングドーム]をソールドアウトにして、最後にはいいショーを見せられるようになった。でも、それには大変な努力が必要だったよ。
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