<ライブレポート>yutori「また何かあったら帰っておいで」 4人の気遣いが輪を広げていく全国ツアーファイナル

2026年6月24日 / 12:00

 yutoriの全国ワンマンツアー【yutori ONEMAN TOUR 2026 “Bless you!”】の国内ファイナル公演が、6月7日、神奈川・KT Zepp Yokohamaで開催された。

 今回のツアーはミニアルバム『心の微熱』のリリースに伴い開催された。タイトルの「Bless you」は、誰かがくしゃみをした時にかける言葉で「お大事に」「大丈夫?」といった意味を持つ。この夜のyutoriもまた、それぞれの日々を生きる観客へ向けて、優しく語りかけるように音楽を届けた。

 なお、今回のツアーは、yutori史上最大規模のワンマンツアーでもある。SEが流れるなか、舞台袖からはメンバーの「せーのっ、オー!」という声が聞こえてきた。その掛け声に呼応するようにフロアから拍手が沸き起こり、会場の期待感は一気に高まっていく。

 やがてステージに姿を現した4人。スポットライトを浴びた佐藤古都子(Vo. / Gt.)が大きく息を吸い込み、1曲目の「君と癖」を弾き語りで歌い始めた。力強く、どこか切実さを帯びた歌声が会場を包み込むなか、内田郁也(Gt.)はタッピング奏法を織り交ぜたプレイで存在感を発揮。豊田太一(Ba.)はお立ち台の上からグルーヴィーなラインを、浦山蓮(Dr.)はスティックを打ち鳴らして手拍子を煽りながら躍動的なリズムを刻む。開放感に満ちたアンサンブルからは、4人の飾らない人柄までもが伝わってくるようだ。

 MCを最小限に抑えながら楽曲を次々と重ねていく構成には、ロックバンドとしての自信と成熟が感じられた。音を鳴らすだけで滲み出る人柄があり、歌うだけで伝わるメッセージがある。だからこそ言葉による説明は削ぎ落とされ、ライブはよりシャープになっていく。その中心にあるのは、佐藤の歌だ。「横浜、準備はいい? 2階席も準備はいい? いいね。ここにいる全員で最高の日にしよう」という観客への呼びかけが自然と様になるのも、彼女がフロントとしての頼もしさを確かに身につけたからだろう。もっとも、その姿は決して孤高のものではない。佐藤の背後には3人の存在があり、目の前には音楽を受け取る観客たちがいる。yutoriのライブに宿るヒロイズムは、4人のバンドであること、そして聴き手の存在を感じていることによって立ち上がるもの。そんな関係性のなかで、佐藤は誰よりも前に立ち、楽曲に宿る感情をその身に引き受けるように歌っていた。

「今ここにいる君が日々暮らしているなかで、うれしいことだけじゃなくて、嫌なこと、苦しくなるようなこともきっとあると思います。でも、その繰り返しの中にある小さな思い出を大切に、大事に持っていてほしいと、私は思います。」

 7曲目「安眠剤」を歌い終えたあと、佐藤が語ったその言葉は、ミニアルバム『心の微熱』に込められたメッセージとも重なる。熱や痛みを無理に消化しなくてもいい。割り切れない感情も、そのまま抱えていていい。そんなメッセージは演奏にも宿っていた。例えば、「生活」での激しく歪んだギターの音色。その響きは当初アンサンブルから少し浮いているようにも聞こえたが、楽曲が進むにつれて少しずつ音の中へ溶け込み、やがて大きなうねりの一部となっていく。まるで時の流れのなかで感情や記憶を受け入れていく過程を描いているような演奏だった。続く「愛してるって嘘ついた」では、軽やかな4つ打ちのビートと、感情を解き放つように楽器を掻き鳴らす場面が鮮やかなコントラストを描く。相反する響きが同居するそのアンサンブルもまた、複雑な感情を抱えたままでいいというyutoriのメッセージを体現しているようだった。

 バンドセッションを経て、ライブ後半ではアグレッシブな楽曲を立て続けに披露。ロックバンドとしての本能を解き放つような演奏でラストスパートをかけていった。10曲目「数%のハッピーエンド」から、佐藤のボーカルは一気に獰猛さを増す。語気を強め、時にがなり、巻き舌を交えながら、感情を叩きつけるように歌う。その熱量に呼応するように、内田、豊田、浦山も攻めのプレイを展開。「有耶無耶」では3人のソロ回しもあり、フロアからは次々と歓声が上がった。

「また何かあったら帰っておいで。嫌なことがあっても、うれしいことがあっても、帰っておいで。これからもyutoriはあなた一人のために歌うから。ずっとここで音楽を鳴らしてます。また会おう。約束だよ。」

 そんな言葉を届けたあとに演奏された「スピード」は、この日のライブが伝えようとしていたものを象徴する一曲だった。続く「煙より」では、メンバーが実に晴れやかな表情でフロアを見つめていた。浦山はドラムを叩きながら全力でコーラスし、佐藤は「あなたの声、聞かせて」と観客に呼びかける。豊田は一人ひとりの顔を見ようとステージ前方まで歩み出る。ここに来るまでの道のりは人それぞれ。それでも同じ空間を共有していることの尊さを感じさせる時間だった。そして、本編ラストは「僕らは孤独だ」。佐藤は演奏の前に、「あなたの心の中に孤独を怖がるあなたがいるなら、この歌を送ります」と告げ、私たちは孤独なままでも繋がれるという事実を、音楽で確かめていった。

 2曲を披露したアンコールでは、秋の対バンツアー開催を発表。さらに佐藤が、自身が音楽を始めたきっかけについて「友達はいたけど、家に居場所があまりなかった」「歌を歌っている時の自分は好きになれた」と打ち明けたほか、そんな自分を見つけてくれたメンバーやリスナーへの感謝を語った。そして「また何かあったら帰っておいで。あなたが日々悩むことだったり、苦しむことには、きっと意味があるから。心の熱をお大事に」と呼びかける。それは、嬉しいことも苦しいことも抱えながら生きる一人ひとりへ向けた、yutoriなりの「Bless you」だった。

 このあとyutoriは、初の海外単独公演となる台北、ソウル公演へと向かう。「また何かあったら帰っておいで」と歌う場所は、これからさらに広がっていく。

Text by 蜂須賀ちなみ
Photos by エド ソウタ

◎ツアー情報
【yutori 2MAN TOUR2026「対 vol.2」】※各公演ゲスト後日発表
10月25日(日)京都KYOTO MUSE
11月2日(月)宮城MACANA
11月13日(金)愛知THE BOTTOM LINE
11月21日(土)大阪BIGCAT
11月29日(日)東京Spotify O-EAST


音楽ニュースMUSIC NEWS

ディス・イズ・ローレライ、疾走感あふれる新曲「Billy Came Back」公開

洋楽2026年6月24日

 ウォーター・フロム・ユア・アイズの中心人物として知られるネイト・エイモスのソロ・プロジェクト、ディス・イズ・ローレライが、ニュー・アルバム『The Singer In My Band』を2026年9月11日に<Matador Record … 続きを読む

【ビルボード】“ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20”、椎乃味醂「ハーモニー」2週連続首位に

J-POP2026年6月24日

 2026年6月24日公開(集計期間:2026年6月15日~6月21日)のBillboard JAPAN “ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20″で、椎乃味醂の「ハーモニー」が首位を獲得した。  「ハー … 続きを読む

Audible、染井為人の最新作『硝子のマンション』を6/24より配信開始

J-POP2026年6月24日

 Amazonオーディブル(以下、Audible)は、書籍発売日と同日の6月24日より染井為人の最新作『硝子のマンション』の配信を開始する。  本作は、マンションを舞台に、隣人たちの日常に潜む恐怖を描くクライムサスペンスだ。舞台となるのは、 … 続きを読む

デュラン・デュラン、ナイル・ロジャースとタッグを組んだ最新曲「Free to Love」のリミックス集配信

洋楽2026年6月24日

 デュラン・デュランは、40年以上にわたりナイル・ロジャースと名曲を生み出してきたが、その勢いは2026年も続いている。  現地時間2026年6月26日、バンドはロジャースとタッグを組んだ、ダンス・ファンク・ナンバー「Free to Lov … 続きを読む

キース・リチャーズ、ザ・ローリング・ストーンズが従来型ツアーをやめる可能性を示唆

洋楽2026年6月24日

 キース・リチャーズが、ザ・ローリング・ストーンズは従来型ツアーから常設公演へと軸足を移す可能性があると示唆した。移動による身体的な負担が、バンドのライブ活動における最大の障壁になっているという。  アンカット・マガジンに対しキースは、「ツ … 続きを読む

page top