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5月22日、東京・すみだトリフォニーホール 大ホールにて【billboard classics「KREVA Premium Orchestra Concert -ENCORE-」~produced by 武部聡志】が開催された。
本公演は、昨年12月に開催された音楽プロデューサー・武部聡志プロデュースによる同オーケストラコンサートシリーズ第3弾の“アンコール公演”である。まさに一夜限りの奇跡の再演となった本公演をレポートする。
日本を代表する音楽プロデューサー武部聡志と日本HIPHOP界屈指のラッパーKREVAの共演。この両者に、クラシック界の若き才能・岩城直也が指揮するフルオーケストラを迎えてKREVAの楽曲の再構築を試みる。昨年12月、そんな画期的な趣向が、まさしく圧巻のパフォーマンスで繰り広げられた。それから5か月。まさかの再演が、しかも意外なほど早々に実現したのだ。
定刻になると、満員の観客の前に、まずは岩城率いるNaoya Iwaki Pops Orchestraのメンバーがステージに登場。チューニングを経て、ほどなく「Overture」がスタート。曲は1984年公開の同名映画のテーマ曲「ネバーエンディング・ストーリー」(リマール)。意外な選曲に意表を突かれる。そのやさしく荘厳な旋律が、KREVAのバンドから参加のドラマー・白根佳尚のリズミカルなプレイを合図に展開されると、シックな装いの武部とサングラスをかけたKREVAが登場し、「Forever Student」へ。なるほど、“ネバーエンディング(終わることのない)”からの“Forever(永遠)”という心憎いリレーションである。KREVAのラップのバックで、雄々しくも美しい、まさに映画音楽のようなダイナミックな旋律が奏でられ、締めは昨年同様、KREVAがサングラスを外しての決めポーズで観客を沸かせる。
ここで武部が観客への挨拶とともに今宵のメンバーを紹介。次いでKREVAが「早かったですね、再演(のオファー)。前回の打ち上げの席で『やりましょう!』って」と笑わせ、「それぐらいの熱量でいただきましたので、倍返しでやりたいと思います!」と意気込みを語る。「前回、作っちゃったみたい……新たな“基準”を!」というMCから「基準」、さらに「No Limit」を立て続けに繰り出していく。
ここから全編にわたってのオーケストラの演奏は、ときにKREVA原曲のアレンジや歌(ラップ)のメロディと乖離した別の旋律を鳴らすかと思えば、やがてリリックよろしくKREVAとの<神がかり的?>な迫力を創出し、観客を圧倒していく。そのスペクタクルかつアクロバティックな音の洪水に、先程のKREVAのMCは、決して曲名とかけただけではなかったのだと改めて思い知る。いや、“基準”どころか、この再構築されたKREVAナンバーは、ちょっとした“発明”とさえ言ってもいい。それほどのクオリティと説得力と独立性が音圧に宿っている。演者一同が、そして前回の公演を観た観客の多くが、再演を待ち望んだ理由がよく分かるというものだ。
しかし、生のステージにはハプニングも付き物。「No Limit」の途中、KREVAのマイクの音が出なくなってしまうアクシデントが。演奏後、KREVAは聴こえなかった分のリリックをアカペラで歌い上げ、「こんなすばらしいお客さんがいれば今日は何があっても絶対に大丈夫」と語って、フルートの音色が軽快な「C’mon, Let’s go」に突入。だが、ここでまたもやまさかのマイクアクシデントが起こった。これにはたまらずKREVAもパフォーマンスを中断。ところが、それを察した観客一同が瞬時に歌詞の続きを手拍子とともに大合唱する。強い結束力とあたたかいフォローに演者たちも感動しきりに。ここでKREVA、会場近くの江戸川が地元であり、近隣の亀戸でかつてお店を営んでいたという2024年に逝去した実母のエピソードを語り、「お母さん、来るのはいいんですけど、邪魔しないでもらえますか!?」と会場を和ませると、気を取り直して再び「C’mon,Let’s go」を歌い、無事完走した。
「こんなすばらしいステージで、これだけの皆さんに支えられながらライブをできるのは、やっぱり武部さんが誘ってくれたからだと思います。ありがとうございます。」「(再演)早くない?と思ったんだけど」と武部への謝辞を伝えると、KREVAは「(幼少の頃)丸井で長袖の服を買ってもらった」と会場の最寄り駅である錦糸町における母との思い出を披露し「居場所」に繋げた。繊細にして折れない心模様を描いたリリックと寄り添うようなオーケストラのエモーショナルなサウンドと武部のピアノがひたすら美しい。さらに思わず身を委ねて聴き入ってしまうようなやさしさを湛えた「瞬間speechless」から、さらに弦楽で美しく眩いまでにアレンジされた「アグレッシ部」を届けて第1部を閉じた。
20分間の休憩を挟んでの第2部は静寂のなかで響き渡る武部のピアノを合図に「EGAO」でスタート。白根の電子ドラムが淡々とリズムを刻むなか、やるせない日常を支える<笑顔>のかけがえのなさを歌うリリックがホール中に沁み渡るように広がっていった。さらに麗しいハープの音色から雄大なアレンジの「成功」へ。途中、岩城の鍵盤ハモニカのプレイやジャジーな味付けの間奏を経由しつつ、夢見るようなメロディとKREVAの力強いラップのコントラストが、やがてドラマチックなシンクロを迎える構成に思わず息を呑む。
さらにモーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の旋律とくれば、もちろん次の曲は「国民的行事」。サンプリングしていたネタが生で流れるなかでのラップは、原曲の再構成でありながらも一周して本来鳴らされるべき姿でもあるかのようなド・ハマり感。KREVAもボーカルの語尾を敢えてのオペラ調で張り上げるという遊びを加えつつのパフォーマンスに、曲が終わった瞬間、場内から盛大な歓声と拍手喝采が巻き起こる。
ここでMC。「武部さんのピアノ、いいわぁ」とKREVAが振れば「KREVAのお客さんはほんとにあったかいね」と武部が返し、「ほんとに俺のおかげ(笑)」とKREVAがおとす。そして武部楽曲とKREVAのスペシャルなマッシュアップをお届けと、「もらい泣き×Link」をパフォーマンス。オーケストラの「もらい泣き」とKREVAの「Link」フロウが生み出す無二のメランコリックがリスナーと未来を約束するようなナンバーとして奏でられた。そこから岩城とのMCを挟んで、「(心を合わせないと)ムズいドラムレスの曲」というKREVAの前置きに、岩城が「KREVAさんなら大丈夫。エキスパートだから」と答えて「Expert」へ。弦楽とピアノによるバラードのような演奏に一言一言をしっかりと語りかけるようなKREVAのラップが観客の心に強く訴えかける。
KREVAは改めて武部、岩城への謝辞を語ると、前回がクリスマスシーズンだったことから「どんな季節でも求められれば求められる音楽を奏でていきたい」と、夏を代表する一曲「イッサイガッサイ」をせつなくも軽やかなリズムで披露し、ラストはこの日一番のスペクタクルなオーケストレーションによる「音色」で本編を締めた。
盛大度MAXな観客の手拍子に応えてアンコールでは、当時武部がアレンジに関わっていた初期の久保田利伸作品をKREVAが愛聴していたという縁から、「俺、ゴリゴリの武部チルドレンだったんじゃん(笑)」と、武部の流麗かつスリリングなピアノプレイから何と「流星のサドル×IWAOU」というサプライズ!!「流星のサドル」の原曲冒頭も歌い久保田へのリスペクトも忘れずに、まさに痛快にして爽快なスペシャルパフォーマンスが披露され、最後は「全員で一緒に演奏しましょう!!」と「Na Na Na」を手拍子で大合唱!! KREVAと観客の<Na Na Na>が場内いっぱいに響き渡り、最後は拍手喝采。“音楽”という言葉の文字通り、KREVAの“音”楽世界をすべての観客が余すことなく徹底的に“楽しんだ”一夜だったと感じられた。
前述のとおり、やはりこのコンサートにおけるKREVAナンバーの再構築は、ある種の“発明”だと思う。本公演には、いわゆる“ヒップホップとオーケストラの融合”という言葉から想定される感動の数値を何百倍も上回るそれがあったし、改めてKREVAのソングライティングの深みと強度を再認識させられる試みとしても有効だった。しかも、前回とは異なる再演ならではのサプライズを用意していた点もさすがだ。
フロントに立つKREVAのラッパーとして無二の存在感と華のあるメジャー感については言わずもがな、予想外のアクシデントが演者と観客の絆をより強固にした場面も含めて、この日はオーディエンスも本当にすばらしかった。また同時に、やはりライブ/コンサートの空気や仕上がりとは、演者と観客が一体になって初めて完成するものなのだという事実も改めて思い知らされた。あらゆる意味で音楽の多幸感が満ち溢れたスペシャルな一夜だった。ぜひ、また観てみたいし、さらに多くの観客に体験してほしいと感じるコンサートだった。
text:内田正樹
photo:岩田えり
◎公演情報
【billboard classics「KREVA Premium Orchestra Concert -ENCORE-」~produced by 武部聡志】
2026年5月22日(金)
東京・すみだトリフォニーホール 大ホール
OPEN 18:00/START 19:00
出演:
KREVA
音楽監修・ピアノ:武部聡志
指揮・編曲:岩城直也
ドラム:白根佳尚
管弦楽: Naoya Iwaki Pops Orchestra(NIPO)
<公演公式サイト>
https://billboard-cc.com/krevaXtakebe-encore
主催・企画制作:ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)
企画協力:KOUJOUSHIN
制作協力:ハーフトーンミュージック
協力:ローランド株式会社
後援:米国ビルボード、ビクターエンタテインメント株式会社、J-WAVE
<セットリスト>
1.Overture(ネバーエンディング・ストーリー)
2.Forever Student
3.基準
4.No Limit
5.C’mon, Let’s go
6.居場所
7.瞬間speechless
8.アグレッシ部
9.EGAO
10.成功
11.国民的行事
12.もらい泣き×Link
13.Expert
14.イッサイガッサイ
15.音色
EC1.流星のサドル×IWAOU
EC2.Na Na Na
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