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杉本雄治(ONCE/ex.WEAVER)が、『ひとりぼっちを一緒に楽しもう』をコンセプトに掲げて2023年12月に立ち上げたライブシリーズ【Alone Together】初の試みとしてゲストボーカルを迎えた第6弾が、4月13日に神奈川・ビルボードライブ横浜で開催された。杉本にとって、ビルボードライブのステージに立つのはONCE名義のワンマンライブなどでは複数経験があるものの、このシリーズで初。終始温かな楽しいムードで、音楽の持つ力を様々な形で提示していく意欲的で刺激的なライブだった。本稿では2ndステージの模様をレポートする。
食事やドリンクを楽しむ観客の話し声、笑い声がさんざめく場内。定刻を迎え暗転すると、舞台上は海の底のようなダークブルーに照らされた。杉本が客席後方から登場し、拍手を浴びながらステージのセンターに辿り着くと一礼。ピアノの前へ座るとBGMが止み、最新曲「NEWDAY」を弾き語りし始める。歌声は明るく伸びやかで、曲の盛り上がりと呼応して照明演出も華やぎを増していく。歌い終わりの〈君が見たい今日を一緒に作ろう〉という歌詞に続けて、杉本は「ビルボードライブ横浜、最高の夜にしましょう!」と勢いよく呼びかけた。
「皆さん楽しんでもらってますか?」と尋ねると観客は大きな拍手で応え、「“一人で来たよ”って方?」との問いかけに多くの手が挙がる。「めっちゃいるやん。Alone、Alone、Alone」と客席を指差して笑わせた杉本は、「この空間にまだ慣れていない方もいるかもしれないので」と乾杯の音頭へ。杉本が飲んでいたのは本公演限定のオリジナル・カクテルで、「2つの“Alone”な味が混ざりあって“Together”するようなドリンクを」と会場側にリクエストしたという。
2曲目の「Nocturne」は物悲しく美しいワルツで、杉本の歌声は時折切なげに震え、この上なくエモーショナル。涙や雨を思わせる光の粒状の照明が幻想的で、ピアノ演奏は情熱的で躍動感だった。ONCEとしての記念すべき始まりの曲「Amazing Grace」へとなだらかに繋げると、澄んだピュアな歌声を披露。〈どんな時でもこの歌があるから〉というフレーズが胸に真っ直ぐ届いてくる。曲が終わると、“余韻から覚めたくない”というような静寂の後、熱い拍手が鳴り響いた。
ここでいよいよ、一人目のゲスト、神はサイコロを振らないの柳田周作(Vo.)を呼び込んだ。杉本が「去年の夏ぐらいに、LEGO BIG MORLのイベントにお互いゲスト出演して」と柳田との馴れ初めを明かすと、柳田は「“初めまして”と思えないし、ずっと仲良かった気がする」と相性の良さを語り、杉本は「弟?」と親しみを込めた合いの手を入れる。柳田は、杉本チームのスタッフもファンも「母のような目で(自分を)見てくれる。ひまわりみたいに柔らかい。(杉本が)引き寄せてるんですよ」と絶賛した。
セッションの1曲目は、スキマスイッチ「ボクノート」のカバー。柳田の希望だったそうで、「何もなかった少年が唯一続けられたのが音楽、という内容の歌詞が好きで」と選曲の理由を語った。「こんな素敵な“王子様”と出会えて、めっちゃ“生きていたいな”と。続けていて良かったな、という想いにさせてくれる曲。そんな最高の日が今日です」と柳田。オレンジ色の光に包まれて、柳田と杉本は交互に歌い繋ぎ、2番はその割り振りを逆にして、最後は美しいハーモニーを聴かせた。窓の格子の影を思わせる照明に切り替わり始まった2曲目は、2020年、コロナ禍による閉塞感と孤独にシンクロしてヒットした、神はサイコロを振らないの名バラード「夜永唄」。杉本のしっとりとしたピアノに乗せて、柳田はそっと囁くように歌い始める。それぞれの独唱、ハーモニー、ユニゾンとバリエーションを付けながら、二人は声を混ざり合わせていく。心の根底に、こういったひとりぼっちの感覚を宿している繊細な柳田と杉本だからこそ好相性なのだろう。そう納得させられるコラボレーションだった。
柳田を送り出した後、杉本はアコースティック・ギターを構え、「愛とか恋とか」を披露。メッセージ性の強い言葉を連ねた“杉本流幸福論”とでも呼びたい、アグレッシブなアップナンバーだ。中盤で観客に求めたクラップと、足元のルーパーで即時録音したギターのカッティングをリズムとし、その上にメロディアスなギターソロを重ねていく。この曲の杉本は息継ぎすら切迫感に変える“ロックシンガー”然とした佇まいで、ライブ前半のエレガントなピアノ奏者の顔とは全く違った一面を覗かせた。「ありがとう!」と挨拶して曲を終えると、場内に沸き起こる拍手と歓声。一瞬の静寂のあと再びピアノへ戻ると、ピンスポットに照らされながら朗らかなメロディーを奏で始め、「この手」のイントロへと繋がっていった。人の手が生み出す様々な形の愛を歌った温もりに満ちたラブソングで、【Alone Together】というライブコンセプトに似つかわしく、ビルボードライブのムードにもしっくりと馴染んでいた。杉本の歌声の、とりわけ中低音が魅力的に響いたのも印象深かった。
ここで二人目のゲスト、フレデリックの三原健司を招き入れる。杉本も三原も兵庫出身であり縁深く、二人はまるで漫才コンビのようなテンポ感のやり取りでのっけから観客を笑わせる。杉本はオファーの理由として「ピアノのイメージがいちばんない人が健司だった」と明かし、「一緒にステージに立つのは、六本木VARIT.以来10年ぶりぐらい。こういう形でできるのは信じられない」と感慨深そうに語った。
セッション曲を披露する前に三原は、「歌心なるものを大事にしているバンドなので。自分が大好きなアーティストさんの曲を」とコメント。1曲目は中島みゆきの「空と君とのあいだに」のカバーだった。フレデリックの音楽性とは一見かけ離れているように思えたが、情感たっぷりに表現する三原の歌声を聴くと、選曲がすんなりと腑に落ちた。二人は交互に歌い繋ぎ、時には重なり、互いに個性の異なる歌声を響かせ合っていく。続いて2曲目はフレデリックのナンバーをカバー。杉本が奏でる、寄せては返す波のようなピアノプレリュードに乗せて三原は「フレデリックにとって大事な曲の一つ。“とても大好きだ”と言ってくださって。『愛の迷惑』という曲です」とタイトルコール。杉本は踊り出さんばかりに身を揺らしつつリズミカルにイントロを演奏し、客席からクラップが起きると三原は「ありがとうございます」と感謝を述べて歌い出した。事前のMCで、「ギターのイメージが強いダンサブルな曲を、ピアノでやったら面白いだろうなって」と選曲理由を語っていた杉本。三原が伸びやかに歌い、それを受けて杉本の歌も演奏も勢いを増していき、その相乗効果を繰り返しながらグイグイと盛り上がっていく、エモーショナルなセッション。杉本は鍵盤のアタック感が際立つプレイを見せ、この曲の持つ生命力や躍動感をピアノで見事にリアレンジしていた。大拍手の中、三原は杉本とグータッチしてステージを去った。
「ビルボードライブでのライブ、僕自身は何回目になるんだろう? ありがたいなと思うけど、それが当たり前になってしまって。でもふと、“当たり前じゃないな”って」と語り始めた杉本。仕事に追われる毎日や世界情勢にも言及し、今を生きる多くの人が抱えているであろう「“幸せ”って思えない」リアルな感情に寄り添いながら、「今日改めて、“皆のおかげで音楽できてるな”って。ふと気付かせてくれるのも、音楽なんですよね」と実感を述べた。「今日は平日だし、仕事が終わって来てくれてる人もいますよね? 音楽が“スイッチ”になったらうれしいなと思いながら届けていました」とこのライブを振り返り、この2、3か月の考えから生まれたという新曲を披露した。
イントロの小気味よいピアノの高音域のリフレインは、水面に反射する光のように煌めくイメージを想起させ、聴いた瞬間に心が洗われた。歌詞には、先述のMCで語ったような想いの丈が飾らない率直な言葉で綴られており、今この同じ時代を生きている杉本の、人としての等身大がひしひしと伝わってくる。音楽を通じてファンに寄り添い、リアルな感情を共有し、コミュニケーションを深めようとしている真摯さに胸打たれる本編ラストだった。
アンコールでは、7月17日に【Alone Together vol.7】を広島のライブジュークで開催することを告知。柳田と三原を再び招き入れて、「今回、(ゲストがこの)二人で良かった。今までは一人だったんですけど、最高のライブになったので」と感謝を伝え、ONCEの「夢でもし逢えたら」を3人で披露した。杉本に立ち上がるように呼び掛けられた観客は手拍子しながら思い思いに身を揺らしている。天井ではミラーボールが輝き、ステージと客席をまるごと眩い光で包み込んでいて、その幸福な情景は、ライブが終わった後も心に残り続けている。
最後は杉本を中心に三人で並び、深々とお辞儀。二人を先に送り出して一人残った杉本は「最高の仲間と、皆さんのおかげで今日は最高の夜になりました。皆さんありがとうございました!」と挨拶。親密な空間で、次々と見せ場が押し寄せ、あっという間に過ぎ去ったひとときだった。終始音楽の魔法に守られているような、温もりに満ちたライブ体験であると同時に、【Alone Together】というライブシリーズが一段飛躍を遂げたステージであり、何より、杉本雄治という表現者の新章の幕開けを予感させる、重要な一夜だった。
Text by 大前多恵
Photo by Shima
◎セットリスト
【杉本雄治『Alone Together vol.6 in Billboard Live YOKOHAMA』Guest Vocal:三原健司(フレデリック)&柳田周作(神はサイコロを振らない)】
2026年4月13日(月)神奈川・ビルボードライブ横浜2ndステージ
1. NEWDAY
2. Nocturne
3. Amazing Grace
4. ボクノート
5. 夜永唄
6. 愛とか恋とか
7. この手
8. 空と君とのあいだに
9. 愛の迷惑
10. 新曲
EN1 .夢でもし逢えたら
◎公演情報
【杉本雄治 Alone Together vol.7】
2026年7月17日(金)広島・ライブ ジューク
OPEN 18:30 START 19:00
チケット:4,500円(お土産つき、入場時別途ドリンク代)
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