<レポート>期待の新人7人組グループ、ディセンバー・テンが初来日 100名限定ショーケースで黄色い歓声が飛び交う

2026年4月13日 / 20:00

 かつては欧米のポップ・ミュージック界の定番的存在だったにもかかわらず、すっかり姿を消してしまったボーイズグループ。K-POPの勢いが衰えない中、もはや彼らは求められていないのではないのか? 居場所を失ってしまったのではないのか?

 世間に飛び交うそんな声に異を唱えて、お馴染みのプロデューサー、サイモン・コーウェルが新たに送り出したディセンバー・テン(December 10)がこのたび初来日し、4月1日に東京・渋谷PLEASURE PLEASUREにて完全招待制のショーケース・イベントを敢行した。

 英国人のクルーズ(4月3日に20歳に)、ダニー(17歳)、ヘンドリック(19歳)、ジョン(17歳)、ジョシュ(17歳)、ニコラス(17歳)、唯一のアイルランド人のショーン(19歳)から成るこの話題のグループ誕生の経緯については、ご存知の通り、詳細な記録が残されている。そう、昨年12月にネットフリックスでストリーミングが開始された『サイモン・コーウェル:Who’s the Next? (Simon Cowell: The Next Act)』は、『アメリカン・アイドル』や『Xファクター』の審査員を務め、ワン・ダイレクションを筆頭にウエストライフ、リトル・ミックス、フィフス・ハーモニーなどなど数多のポップスターを育ててきたサイモンが、オーディションを通じて7人のメンバーをセレクトするプロセスを描く、計6話のドキュメンタリー・シリーズ。最終話に至るまでには結束を固め、大手レーベルとの契約を手にした彼らは、今年1月末に「Run My Way」でデビューを果たし、3月にセカンド・シングル「Angel」を送り出した。その傍らでプロモーション・ツアーをスタートし、各地を旅したのち、日本にもやって来たというわけだ。

 客席の前方は抽選で選ばれた早耳のファン(一見したところ若い女性ばかり)、後方はマスコミや音楽関係者によって埋められたPLEASURE PLEASUREのステージにメンバーが姿を見せると、悲鳴のような歓声が上がる。自己紹介に続いて、まずは「きっとみなさんも彼らを愛してくださるはず」と訴えるサイモンからのサプライズ・メッセージがスクリーンに映し出され、Q&Aのセクションへ。日本のファンを前にした気分を訊ねられたダニーは「僕らに日本人のファンがいるなんて知らなかった! クレイジー!」と素直な驚きを表し、ジョンは来日に際して「こんにちは」「ありがとうございます」「愛してます」の3つの言葉を覚えてきたと明かす。他方のニコラスは「食事が美味しいことは言うまでもないけど、みんなの前に立っている今この瞬間が最高」と日本での体験について語り、ショーンはグループとしての目標を問われて、「自分たちらしさを失わないようにしてファンと固い絆を維持したい」と回答。

 こんな調子でひと通りトークが終わったところで、各自の名前をカタカナで記した法被を日本のレーベルから受け取った彼ら、その昔ザ・ビートルズも初来日を祝して同じような法被をプレゼントされたと聞いて大喜びだ。

 続く後半は、いよいよパフォーマンスの時間。ふたつのヴァージョンで聞かせてくれた「Run My Way」、ずばり“エンジェル”として指名したファンをステージに招いて歌った「Angel」、イン・シンクの大ヒット・シングルをダウンテンポに再解釈した「Bye Bye Bye」(彼らがグループとして初めて正式に録音した曲でもある)、まだ正式にリリースされていない新曲「Bad For Me」、ジャスティン・ビーバーの曲をギター弾き語りにアレンジした「DAISIES」、さる1月に全英1位に輝いたDjoの「End of Beginning」の計6曲を披露し、グループとしての独自性を印象付ける。というのも彼らは、全員が歌い手としての確かなスキルと魅力を備えているだけでなく、インストゥルメンタリストでもあり、7人で14の楽器をプレイできる。ステージでは曲ごとに編成を変えて、例えばジョンはキーボード、ヘンドリックとショーンはギター、ニコラスはベース、ジョシュはドラムスとパーカッションを担当しながら歌い、バンドとしても機能するフレキシビリティを誇るグループなのである。現時点ではジュリアン・ブネッタら売れっ子ソングライターが曲を提供しているものの、本人たちが曲作りに関わるようになるのは時間の問題だろう。

 ではサウンド志向はどうか? まだはっきりしたことは言えないのだが、元気なポップロック路線の「Run My Way」、ソウルフルなバラード仕立ての「Angel」、マイナーコードのダンサブルな「Bad For Me」といった具合にタイプが異なるオリジナル曲から察するに、これからもジャンルは多岐にわたりそうだ。しかも、オペラ歌手としても活動していたショーンから聖歌隊出身のジョンまで音楽的背景は様々で、出自も多様なメンバー(ダニーはインド系、ニコラスはブラジル系、ジョンはナイジェリア系……)を擁していることから、今後さらに幅広い影響源が作品に反映されるのではないかと思う。

 歌い手としての7人の個性も、パフォーマンスを観ているとより明確に浮かび上がってくる。ブレない声でほぼ全曲の歌い出しを託されているジョシュ。甘めの声でハーモニーでも重要な役割を果たすジョン。少しクセのある唱法でぐいぐいリードするダニー。外見と同様に華のある歌を聞かせるニコラス。ピュアな美声を誇るショーン。いかにもロックシンガー的なヘンドリック。歌唱だけでなくダンスでも魅せるクルーズ。そんな彼らは、スムーズなマイクリレーを見せつけ、ハーモニーを紡ぎ、随所に屈託ないMCを挿んで、手をつないだり肩を組んだりしながら仲睦まじく我々をエンターテインし、初めて訪れる国でパフォーマンスをするエキサイトメントに背中を押されるようにしてコンパクトなセットを走り切る。そして、ラストを飾った「Run My Way」をオーディエンスと合唱すると、並んで一礼して、ステージを後にしたのだった。

 『Who’s the Next?』の中でサイモンは、グループが成功する可能性は10%以下だと現実の厳しさを率直に語っていたが、まだ彼らのストーリーは始まったばかり。これからの展開をじっくり見守りたい。

Text by 新谷洋子


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