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昨年9月にアルバム『fragile Report』をmaximum10からリリースし、メジャーデビューを果たした2人組ロックバンド、Nikoん。同年10月からは、アルバム購入者が無料で入場できる47都道府県ツアー【アウトストアで47】を開催し、その最中にも新たなツアーを次々と発表。全国のライブハウスでさまざまなバンドと競演しながら、約4か月で80本近いライブを重ねてきた。そうした日々の総決算とも言うべき“ALL TOUR FINAL”の単独公演「ふたり。」が、3月21日に東京 渋谷・Spotify O-EASTで行われた。
神々のゴライコーズによる開場中のサプライズアクトがサブステージで幕を閉じると、間髪入れずにNikoんのライブが始まる。暗がりの場内に響いたのは、秒針の音、そして「退屈」「嫌なわたし」「つくっては捨てて」「つくって忘れて」といった、「fragile report」の歌詞の断片を引用したマナミオーガキ(Vo, Ba)のサンプリングボイス。その声が空間をじわじわと侵食していくなか、オオスカ(Vo, Gt)とオーガキがステージに現れた。
ふたりにスポットライトが落ち、最初に鳴らされたのは、もちろん「fragile report」だ。オオスカがつまびくオリエンタルなギターリフに導かれ、オーガキの伸びやかな歌声が広がる。遅れて登場したサポートメンバーの東克幸(Dr)のドラムが加わり、その詩的なアンサンブルは、リジッドな輪郭を備えたポストパンクへと変貌する。
「こんばんは、Nikoんです。よろしく。東京に帰ってきたぜ!」
オーガキが短く挨拶し、続いて投下されたのは「bend」。赤い照明の下、どこか郷愁を帯びたメロディと、ポストロック的な構築性を持つアンサンブルが交差し、曲は緊張感を孕みながら前へ前へと進んでいく。ハスキーでありながら芯の太いオーガキの声は、この曲のメロディをいっそうくっきりと浮かび上がらせる。
そこから「nai-わ」へとなだれ込み、グルーヴィーなリズムの上でオーガキのボーカルが心地よいフロウを描く。そこへ、空間を切り裂くようにオオスカのエレキギターが差し込まれ、楽曲に緊張をもたらしていく。続く「ghost」では、ネオサイケやポストパンクを彷彿とさせる耽美なサウンドが、オーディエンスを深い闇へと引きずり込む。曲の後半、オオスカがメタリックなギターソロを、体をねじり、ステップを踏みながら全身で放つ。それに応えるように、オーガキも頭を激しく振りながら高速のベースラインを叩きつけていく。
そして「Vision-2」へ。オーガキが描き出す点描画のようなベースフレーズの上を、オオスカのアンビエントでサイケデリックなギターが漂っていく。そこに官能的なボーカルが重なることで、楽曲は青白い炎のような熱を帯びていく。後半、ギターソロを合図にドラムとベースが一気に噴き上がり、薄暗い照明の中でオオスカのギターが唸る。その音に照らし出されるようにして立ち上がる彼の歌声もまた印象的。少年性を残したハイトーンボイスは、どこか危うさや狂気を孕んでいる。曲が終盤へ向かうにつれアンサンブルはさらに加速し、オオスカは時折、獣のような雄叫びを漏らしていた。
「珍しく緊張しています」
オオスカが意外なひと言を残し、始まったのがhitomiへの提供曲「Tokey-Dokey」。ローファイなサンプリングフレーズから、ほとばしる轟音とポップネス、退廃とユーモアが同時に存在する中毒性の高いサウンド、まさにNikoんにしか鳴らせないものだろう。そこから「sleepwell」を経て「smile」へ。ベースは休符を巧みに使いながら独特のグルーヴを生み出し、オオスカは滑らかなフロウでその上を泳いでいく。流麗なアルペジオが空気を整えたかと思えば、次の瞬間にはディストーションをまとったギターが唸りを上げ、その落差が強烈な推進力を生んでいた。
ここでオオスカは、今回の47都道府県ツアーを振り返りながら、この数か月で自分の内側に起きた変化について静かに語り始めた。2ndアルバム『fragile Report』を携えて各地を回るなか、強い自分でいられる時もあれば、どうしようもなく弱くなる時もあったという。「でも振り返ってみると、ただ『強くあろう』としていた頃には、かえって大切なものを見失っていた気がする」とオオスカ。今は、「弱さ」があるからこそ見える景色、わかることがあると語った。
さらに彼は、ツアー中に長く疎遠になっていた父親の訃報に接したことにも触れた。大阪のホテルで曲作りをしている最中に連絡を受けたこと。弱っていく父と再会し、音楽だけで生きている今の自分を、ようやく本人に伝えられたこと。それは返事の有無とは別のところで、オオスカにとって確かな節目になったのだろう。葬儀当日はツアー日程と重なり参列できなかったが、それでも母に背中を押されてステージへ向かったという。
そのうえで、彼がオーディエンスに言いたかったのは「強いふりをし続けなくていい」ということだった。「しんどい時はしんどいと言っていい。悲しい時は悲しいと言っていい。好きなものは好き、最高なことは最高、最悪なことは最悪だと、ちゃんと言葉にしていい。ひとりで抱え込まず、助けてくれる友人や居場所を求めていい。そういう時に戻ってこられる場所が、ライブハウスであってほしい。自分たちはここにいるから、どうしようもない時はまた来てくれ」
そう語るオオスカに、大きな歓声が送られるなか始まったのが「step by step」。彼がリードボーカルを務め、オーガキの高速ベースと、アクセントを大胆にずらしていく東の幾何学的なドラミングが、組んずほぐれつのリズムアンサンブルを形成する。体を弓のようにしならせながら、ヘヴィなサウンドを放つオオスカ。かと思えばスタンドマイクを掴んで咆哮。まるで本能をむき出しにしたような音の塊が、真正面から襲いかかってくる。オーディエンスもまた体を揺らし、拳を突き上げ、頭を激しく振りながら、その轟音とひとつになっていた。
続く「靴」では、トレモロのかかったオオスカのギターが印象的なリフを鳴らし、そこへオーガキの歪んだベースが滑り込む。さらに東のブレイクビーツさながらのドラミングが絡み合い、強烈なグルーヴを形成。そのうねりの上で、オーガキが切々とメロディを歌い上げていった。
さらに「doubt」では、オオスカのミュートカッティングを合図に、緊張感に満ちたアンサンブルが立ち上がる。そして紫の幻想的な照明の下、始まったのが「dried」だ。ストップ&ゴーを繰り返すブレイクビーツ的なリズムの上に、オーガキの歪んだシンコペーション・ベースが重なると、バンドは一気に加速。カオティックな音塊の中心から突き抜けてくるのは、オーガキの切ないファルセットだった。
間髪入れず飛び込んできたのは、キラーチューン「さまpake」。冒頭から弾けるような推進力を湛え、サビで反復される“サンデー”のフレーズが、週末の午後を吹き抜ける風のように耳をかすめていく。オーガキが朗らかに旋律を運ぶ一方で、オオスカのギターが鋭く斬り込み、楽曲に独特のざらつきを与えていく。この「瞬間」に立ち会いたくて、彼らのライブに足繁く通っていると言っても過言ではい。しかも、ふたりのユニゾンボーカルを存分に味わえるのも、この曲の大きな魅力だ。
続く「とう~ばっと」では、東が叩き出すヘヴィかつファンキーなリズムの上を、マナミオーガキのグルーヴィーなベースリフが滑走し、そこもオオスカのギターが複雑なシンコペーションを刻み込んでいく。ストロボが激しく点滅、クライマックスでは3人が向き合いながら音を投げつけ合う。その切迫したやり取りに、オーディエンスも歓喜の表情で応えていた。
「(^。^)// ハイ」は、ゴスペル風のコーラスに導かれてスタート。大サビでは、そのコーラスをフロア全体でシンガロングし、爆発的な高揚が会場を満たしていった。そして、「Fly,」のイントロが鳴らされた瞬間、フロアからは「いいぞ!」という声が飛ぶ。オオスカの声の繊細さがひしひしと伝わってくるこの曲では、ギターリフの不思議な浮遊感がとりわけ印象的だった。聴いていると、ふっと身体が地面から離れるような錯覚に陥る。
さらに「public melodies」では、オーガキの優しい歌声が会場を包み込む。オオスカのギターは激しく、ときに暴力的ですらあるのに何故だか妙に人懐こい。東の機関銃のようなドラミングに圧倒されているうちに、気づけば最後の曲「グバマイ!!」へ。自然発生的なシンガロングが巻き起こり、会場は再び強固な一体感に包まれた。
“ALL TOUR FINAL”を終え、ようやくひと息つくのかと思いきや、すぐさま次のとんでもないイベント(全国津々浦々から47バンドを東京に集める2DAYSイベント)を発表したNikoん。止まったらそのまま壊れてしまうのではないかと思うほどの速度で活動を重ねていく彼らは、そうでなければ決して見えない景色を、今まさにつかもうとしているのかもしれない。
Text by 黒田隆憲
Photo by 稲垣ルリ子
◎公演情報
【リキッドルームで47~ぐんゆうかっぽ~】
2026年8月3日(月)・4日(火)
OPEN 11:30 / START 12:00 ※予定
東京・恵比寿LIQUIDROOM(建物内に3ステージ予定)
チケットはイープラスにて4月4日(土)12:00より最速先行予約スタート
【群雄割拠】
2026年5月18日(月)東京・下北沢 SHELTER
2026年5月19日(火)東京・下北沢 SPREAD
2026年5月20日(水)東京・吉祥寺 WARP
2026年5月22日(金)東京・下北沢 ERA
全公演 OPEN 19:00 / START 19:30
2026年6月29日(月)大阪・難波 BEARS
2026年6月30日(火)大阪・梅田 Hardrain
2026年7月01日(水)大阪・心斎橋 火影
2026年7月02日(木)大阪・北浜 雲州堂
2026年7月03日(金)大阪・心斎橋 CONPASS
全公演 OPEN 19:00 / START 19:30
2026年7月06日(月)鹿児島・鹿児島 SR HALL
2026年7月07日(火)鹿児島・鹿児島 SR HALL
2026年7月08日(水)鹿児島・鹿児島 SR HALL
2026年7月09日(木)鹿児島・鹿児島 SR HALL
2026年7月10日(金)鹿児島・鹿児島 SR HALL
全公演 OPEN 18:30 / START 19:00
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