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鬼頭明里が2月15日、神奈川・ビルボードライブ横浜にて【Akari Kito Billboard Live 2026】公演を開催した。
日向夏帆を演じた『ブレンド・S』から、竈門禰豆子役として大躍進を果たした『鬼滅の刃』まで。紛れもなく、名実ともに人気声優となった鬼頭。アーティスト活動の方も好調で、2025年10月に発表した3rdアルバム『Journey』はまさに快作。そこから次なる一手として選んだのが、2月22日開催のビルボードライブ大阪を含めた、全4ステージにわたる本公演である。
今回は新たな挑戦として、自身初となるアコースティック編成を組むことに。なじみの顔ぶれである西野恵未(Pf.)と魚住有希(Gt.)に加え、佐藤英莉香(Vn.)を迎えた4名で、心癒される特別なひとときを届けてくれた。本稿では、横浜公演1stステージの模様を振り返っていきたい。
ステージと客席。弦楽器のチューニングに、カクテルの氷が混ざる音が合わさったら始まりの合図。客席後方から鬼頭がゆっくり登壇すると、最初に歌唱したのが「Esquisse」。途中、スキャットを取り入れながら、穏やかで洗練された空間をますます演出していく。
まだ1曲目ながら、この時点で深く実感させられたのが、この会場と鬼頭の相性のよさ。自身のSNSで見せる姿などから、スタイリッシュなイメージのある彼女。カフェでの“ごはん”というより、こうした場所での“お食事”と表現すると伝わりやすいだろうか――ステージで着用していた、肩の装飾とスカートがとにかくボリューミーで、特に前者は「すごく意志を持っているくらい硬い」という。そんな黒色のドレス姿に相応しい雰囲気がここにはある、ということをまずは伝えたい。
そのうえで〈賞味期限一日の愛を使い捨てながら〉という歌詞ひとつとっても、せわしない毎日で小さな幸せを見つけていく様子は、どちらかといえば都会的で、彼女の年代感に近い価値観といえる。ここでの「Esquisse」や後述する「Nonfiction Nook」のように、鬼頭明里の音楽にはいま、ナチュラルな本人像がしっかりと反映されている。そんな“いまだからこそ味わいたい”音楽は、大人な雰囲気漂うこの日の会場と親和性が高く、一つひとつの言葉が持つ意味を大いに引き出してくれているようにも思えた。
そこから、キュートな方向にシフトチェンジした「Follow me!」、自身の持ち味であるミドルレンジが気持ちよい「any if」と、さまざまな声色を使い分けるなかで感じられたのが、彼女のトラックリストが持つ共通点。続く「Tiny Light」もそう。言葉を詰め込んだ印象の歌詞を、するっと滑らかに歌い上げていくのだ。
細かな粒度が求められるボーカルはいかにも同時代的である一方で、アコースティックアレンジとなると、曲のテンポ感をぐっと引き下げるのが通例。にも関わらず、今回はそれがほとんどなく、疾走感や焦燥感は原曲そのままに。鬼頭の澄んだ歌声にますます集中できるようにしながらも、決して展開がだれることはなかった。このあたりの見事な采配については、おそらく意図があるはず。ライブに向けた制作秘話など、全公演終了後に『鬼頭明里のふくみみラジオ』などで語ってもらえると信じたい。個人的にものすごく気になっている。
演奏の側面からも見ていくと、特に惹かれたのが5曲目「Star Arc」。細かな作り込みとして、1コーラス目のBメロにて演奏楽器をピアノだけに絞り、かつ歌声を際立たせるためにボリュームもぐっと下げていたのだが、2コーラス目では先ほどと違ってギターとバイオリンも加わるなど、曲ごとにさまざまな方法での展開の組み方がなされていた。
また9曲目「With a Wish」の話題を先取りすると、こちらもBメロでバイオリンがピチカート(親指や人差し指で弦を軽く引っ張る奏法)を挟み、通常では打ち込みで表現しているような背景音を生で再現することに。文章で記してもなかなか伝わりづらい部分があるのは否めないが、これがあるのとないのでは、曲の奥行きや彩りの豊かさがまったく変わってくる。褒め言葉としてのフィラーをギミック的に取り入れるなど、やはり細かな部分まで考えられてのアレンジなのだと、とかく考えさせられた。
最高楽曲「Nonfiction Nook」が披露されたのは、折り返しの6曲目。鬼頭が制作してきたなかでも屈指の名曲で、ウィスパーがかった歌声に心踊らされる。こちらも“いまの彼女だからこそ”な作品だとは「Esquisse」への言及部分で記した通り。歌詞の端々から、ナチュラルな本人像を感じられるところだ。なお、演奏時には天井のミラーボールに照明が当たり、着席形式ながらも、気持ちだけは客席をダンスホールに変えてくれていた。個人的に、ボーカル、アレンジ、演出、パフォーマンスのすべてにぐっと来たと書き残しておこう。
本公演には、1stと2ndステージそれぞれで日替わり曲も用意されていたのだが、今回でいえば歌唱した「Follow me!」と、8曲目「君の花を祈ろう」、11曲目「晴れ待ちノオト」がこれに該当する。ライブ全体を通して、歌唱後の拍手が特に大きかった「君の花を祈ろう」。タイトルに花とあるように、いままさに咲かんとするダイナミクスを大いに表現しつつ、直後に「ふふふっ」といつもの含み笑いでMCを始める姿が、まさに我々の想像する鬼頭明里なのであった。
他方、本公演で最も輪郭の丸い歌声を響かせたのが「晴れ待ちノオト」。間奏で会場を愛しさ感じる眼差しで見渡す姿も印象的で、まさに歌声同様の慈しみを覚えることに。なお、2ndステージでの披露曲は順に「Magie×Magie」「キミのとなりで」「Crescent Lullaby」だったと付け加えておきたい。
そのほか、ビルボードライブといえば期待が寄せられるのが、アーティストとのオリジナルコラボメニュー。今回の横浜公演では、鬼頭の好きな食材をすべて盛り込んだ「生ハムもスモークサーモンもモッツアレラも オレンジ風味のサラダ仕立て」と、アーティストカラーの水色をベースにしたソーダカクテル「果てのないJourney」の2品を用意(カクテルは大阪公演でも提供)。後者については飲むと舌が青くなり、本番前にめっちゃ歯磨きした、という本人からのこぼれ話も届けられ、会場の笑いをさらっていった。
「たまにはこういう雰囲気で、ゆったりライブするのも楽しいですね」。このひと言に、今回のライブのすべてが詰まっていた気がする。本人もそれを眺めるファンも、普段以上に自身をおしゃれに、そして大切に扱っていることが終始伝わってきた、あの空間。またいつかこんな幸せな日が巡ってきてほしい。そう思わされる、ちょっと特別な日曜日だった。
Text:一条皓太
Photo:Bromide,inc. 相澤一茂
◎セットリスト
【鬼頭明里 Akari Kito Billboard Live 2026】
2026年2月15日(日)神奈川・ビルボードライブ横浜 1stステージ
1. Esquisse
2. Follow me!
3. any if
4. Tiny Light
5. Star Arc
6. Nonfiction Nook
7. 深夜センチメンタル
8. 君の花を祈ろう
9. With a Wish
10. Fringed Iris
11. 晴れ待ちノオト
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