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ビートルズ解散後のポールを語るとき、つい「成功したウイングス」の物語へと急いでしまう。だが本作が映すのは、その手前──自信を失い、スコットランドで沈み、家族に支えられながらの「小さな実験」から立ち上がっていく時間である。そうした彼の紆余曲折を追ったドキュメンタリー映画、『ポール・マッカートニー:マン・オン・ザ・ラン』の劇場特別上映が決定した。
本作は、2月27日よりAmazon Prime Videoにて独占配信される予定だが、それに先駆けての劇場上映は2026年2月19日、全世界同日で一日限定。日本でもTOHOシネマズ シャンテほか全国で特別上映される。本作のメイン劇場であるTOHOシネマズ シャンテの座席販売が完売したことを受けて、急遽、2月19日の朝に追加上映が決定した。22日には一回限りの追加上映も決まっているという。また、ミッドランドシネマ名古屋空港でも好調な売れ行きを記録し、19日に上映回数が急遽増えるという大盛況ぶりだ。さらに劇場版には、ポールとモーガン・ネヴィル監督による約11分のボーナス対談映像が追加されており、これは配信版では観られない。
『ポール・マッカートニー:マン・オン・ザ・ラン』は、ビートルズ解散後にポールが迎えた大きな転換期と、新たに結成されたバンド=ウイングスの誕生から消滅までの、激動の10年間をとらえた作品である。1969年9月、ジョン・レノンからグループ脱退の意向を告げられたポールは、失意のままスコットランドの農場で酒浸りの日々を送る。そして、当時のパートナーだったリンダ・マッカートニー(1998年4月17日逝去)のサポートにより、再び楽器を手に一人多重録音に挑戦。その実験的な音源を集めた彼の初ソロ作『マッカートニー』は、当時こそ酷評されたが、のちに多くのミュージシャンから高く評価される「ローファイミュージック」の先駆けともいえる内容だった。
その後、ポールはリンダと共にバンド、ウイングスを結成。大学のキャンパスを巡る小規模なツアーを経てバンド一発録り的なアルバム『ワイルド・ライフ』(1971年)をリリースしたり、フェラ・クティに触発されアフリカはナイジェリアへ飛び、そこでレコーディングした素材をもとに完成させたコンセプトアルバム『バンド・オン・ザ・ラン』(1973年)で、全英・全米ともにセールス1位を記録したり、かと思えば1980年1月の来日ではマリファナを持ち込み9日間勾留された後に国外退去処分を受けるなど、波乱万丈の日々を送ることになる。
本作『ポール・マッカートニー:マン・オン・ザ・ラン』では、そんなポールの歩みを本人はもちろん、リンダや2人の子供たち、ウイングスのメンバー、そして生前のジョンや、その息子ショーン・レノンらの証言とともに紹介していく。なかでも特筆すべきは、リンダのインタビューがふんだんに使われていること。『マッカートニー』制作時や、ウイングス結成時のエピソードなど、これまでポールによる述懐は多く紹介されてきたが、本作ではそこにリンダの視点が加わることによって、当時の様子がさらに立体的に浮かび上がってくるのだ。
現在は映像作家としても知られるメアリー・マッカートニーや、ファッションデザイナーのステラ・マッカートニー、そしてショーン・レノンといった、「当事者の子ども世代」による証言も貴重。1980年12月8日にジョンが殺害されたとき、その訃報を自宅で聞いたポールがどんな様子だったのか。また彼がジョンの死後、初めて公の場に姿を現したときの様子がなぜ「非情だ」とバッシングされてしまったのか。時を経てその息子・娘たちが見解を語るシーンは胸に迫るものがある。
個人的にはポールが「曲作り」のプロセスについて語るシーンがとても印象に残った。世界を遮断するように部屋にこもり、心の奥底に向き合いながらコードを鳴らす。すると音が、まるでパンくずのように「次の一歩」を指し示してくれる──。悩みがあれば、曲の中で向き合う。それは彼にとって「究極のセラピー」であると語るポールに勇気づけられるクリエイターも多いはずだ。
もちろん、初公開となるホームビデオや音源、貴重なアーカイヴ映像やライブ映像、リンダやポールが撮影した写真の数々も豊富に使用されている。コアなファンだけでなく、ビートルズ解散後のポールについて詳しく知りたい若い世代にとっても必見の内容だ。
なお、1日限定の劇場版には監督によるポールへのおよそ12分間のインタビューが収録されている。作品本編でも「登場」するゆかりのアイテムを、ネヴィル監督が次々と見せ(日本にまつわる「歴史的な品」も登場!)、それについてポールが懐かしそうに振り返る映像は感動的。こちらは配信では見られないので、ぜひ劇場に足を運び、ポール・マッカートニーの「音楽」を臨場感あふれる大スクリーンで体験してほしい。
Text by 黒田隆憲
(C) Paul McCartney under exclusive licence to MPL Archive LLP. / Photographer: Linda McCartney(1枚目)
(C) MPL Communications Ltd / Photographer: Clive Arrowsmith(2枚目)
(C) Paul McCartney under exclusive licence to MPL Archive LLP. / Photographer: Linda McCartney(3枚目以降)
〈劇中使用楽曲〉
SILLY LOVE SONGS – DEMO
THE LOVELY LINDA
MINETEEN HUNDRED AND EIGHTY-FIVE
MAYBE I’M AMAZED
UNCLE ALBERT / ADMIRAL HALSEY
HEART OF THE COUNTRY
LONG HAIRED LADY
TOO MANY PEOPLE
I’VE GOT A FEELING
RAM ON
GO NOW
BIG BARN BED
MY LOVE
MRS. VANDEBILT
BAND ON THE RUN
ALL OF YOU
SOILY
LISTEN TO WHAT THE MAN SAID
VENUS AND MARS
JET
LET’EM IN
LIVE AND LET DIE
SILLY LOVE SONGS
MULL OF KINTYRE
ARROW THROUGH ME
WHIT A LITTLE LUCK
WONDERFUL CHRISTMASTIME
COMING UP
WATERFALLS
LET ME ROLL IT ほか
◎公開情報
『ポール・マッカートニー:マン・オン・ザ・ラン』
2026年2月19日(木)一日限定、世界同日公開
★劇場のみ独占フッテージあり
★来場者限定ポストカードプレゼントあり
監督:モーガン・ネヴィル
出演:ポール・マッカートニー、リンダ・マッカートニー、メアリー・マッカートニー、ステラ・マッカートニー、ジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター、ザ・ビートルズ、デニー・レイン、デニー・セイウェル、スティーブ・ホリー、ローレンス・ジュバー、ウイングス、ショーン・オノ・レノン、ミック・ジャガー、クリッシー・ハインドほか(アーカイブ・フッテージ含む)
(c)2026 WINGS MUSIC LIMITED.
https://www.culture-ville.jp/manontherun
◎リリース情報
『マン・オン・ザ・ラン』 オリジナル・サウンドトラック
2026/2/27 RELEASE
UICY-16386 3,300円(tax in.)
<日本盤のみ>
英文解説翻訳、歌詞対訳付、SHM-CD仕様
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