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12月4日、大阪・オリックス劇場で【Wabi-Sabiライブショー 伝えたい歌が、たくさんたくさんアンデス山脈】が開催され、ライブレポートが到着した。
本イベントは、2023年11月に逝去したシンガーソングライター・KANが残した歌と思い出を共有したいという思いから、スターダスト☆レビューの根本要と馬場俊英がDJを務めるFM COCOLOのラジオ番組『Wabi-Sabiレディオ・ショー』が開催している。
出演は、スターダスト☆レビューの根本要、馬場俊英、K、トータス松本、槇原敬之の5人のシンガーたち。バンドメンバーには、神佐澄人(Key.)、馬場一嘉(Gt.)、柳原旭(Ba.)、菊嶋亮一(Dr.)、山本健太(Key.)が名を連ねた。KANはデビュー間もなく、FM COCOLOの姉妹局であるFM802の、アーティストが日替わりでDJを務める番組『FUNKY STUDIO 802 MUSIC GUMBO』に出演。その後はFM COCOLOでも、根本要とともに『KANと要のWabi-Sabiナイト』を担当。さらに、KAN、根本要、馬場俊英の3人がホストを務めるライブイベント【風のハミング】など、多数のイベントにも出演してきた。そんな数々の思い出を築いた特別な地・大阪で、彼が音楽活動と同じように大切にしていた“ラジオ番組のような雰囲気”のライブを、縁の深いアーティストたちが届けるのが【Wabi-Sabiライブショー】だ。
開演前には、音楽ライターで、FM COCOLO『おとといラジオ』のDJを務める森田恭子と、FM802/FM COCOLOでラジオディレクターを務める、塚越隆史が“思い出トーク”でステージに登場。森田は音楽ライターとして、塚越は先述の『FUNKY STUDIO 802 MUSIC GUMBO』や『KANと要のWabi-Sabiナイト』のディレクターとして、長年KANと交流を重ねてきた人物だ。「デビュー当時から惚れ込んだ人。楽曲がとにかく新鮮だった」、「番組前には野球やゲームをしたり、友達みたいな関係だった」など、‘80年代から続くKANとの思い出話は尽きることがなく、観客は興味津々で耳を傾けていた。
いよいよ本番。オープニングにKANの「Menuett fur Frau Triendl」が流れ、ぐっと会場の空気が締まるなか、まずは馬場俊英がステージイン。ギタリストの彼がさらりとピアノの弾き語りを披露するサプライズに、観客から感嘆の声が漏れる……と思いきや、椅子から立ち上がってもピアノの音色がまだ聴こえる。そこへ根本要がツッコミを入れにステージに登場するという、初っぱなから笑いたっぷりのパフォーマンスに観客も大喜び。続いて2人はユーモアたっぷりの「牛乳のんでギュー」で、美しいハーモニーを響かせる。根本要は「KANちゃんの3回忌に、大阪でこうやってコンサートが開催できてうれしい。KANちゃんのスピリッツはいつまでも残っている。彼の歌を歌い継いでこう。音楽だけでなく、語るべき話がいっぱいあるから」と、イベントに込めた思いを語った。
イベント前半はアコースティック編成で、出演者が1曲ずつ楽曲を披露。馬場俊英は5thアルバム『野球選手が夢だった』でKANの音楽と出合い、そこからハマっていったと思い出を語り、彼のメロディやリリックセンスが感じられる曲として「月海」をセレクト。馬場俊英の太くたおやかな歌声が優しく響く。根本要は「本当に変わったヤツで。でも人懐っこくて……。今日ここにいないことがおかしいんだよ」と、所属事務所の先輩後輩で、ラジオ番組の相棒であり、友人でもあったKANの不在を悔しみつつ、「何の変哲もないLove Song」で終わることのない愛の歌を、敬愛を込めて歌い上げた。
「みんなそれぞれ大好きな歌、伝えたい歌がある」。根本要が語っていたように、この日のステージでは、楽曲タイトルと発表年、歌詞がスクリーンに映し出され、披露される楽曲ごとに歓声や拍手を送り、観客はその思いを噛みしめるようにステージに見入っていた。Kは「こういう人間になりたい、こういうシンガーソングライターになりたいと思った」と、「Songwriter」を慈しむように、優しく、ピアノの弾き語りで。トータス松本は「KANさんは面白い人だったね」と振り返りつつ、「世界でいちばん好きな人」を力強い歌声で歌い上げた。
出演者同士のコラボでは、槇原敬之がKとともに「東京ライフ」を。さらにKは根本要とともに「赤字のタンゴ」を披露。KはKANとのユニット“K-KAN”などで共演も多く、同曲はピアノの連弾曲として共作したもの。KANらしいポップセンスと遊び心に満ちたリリックが詰まった楽曲で、KAN自身もライブで2度しか披露していなかったというレア曲だ。それを根本要とのコラボで聴けるとあって、ファンは歓喜の声を上げて大盛り上がり。
披露されるどの楽曲もKANが綴ってきた言葉の美しささ、心情の機微に触れる表現力が伝わってきて、思わず涙腺が緩む瞬間が何度も訪れる。でも、しんみりしてばかりではKANは喜ばない。馬場俊英はKANや根本要らと組んだSSKB ALL STARSのステージのために買わされたという学生服を身にまとい、『ときどき雲と話をしよう』を歌うなど、あらゆる場面で遊び心を見せていくのが、このイベントの醍醐味でもある。
さらに、セットチェンジ中には出演者勢揃いでトークショーも展開。根本要が「もういいじゃん! 悪口でも何でも♪」とラジオ番組さながらに切り出すと、KANにまつわる喜怒哀楽たっぷりのエピソードが次々と飛び出し、観客は大笑い。また、KANの“リリックセンス”をテーマにしたトークでは、彼ならではの言葉の選び方について「ひとひねりに、さらにひねってくる!!」「こだわりが計り知れない」と誰もが絶賛。出演者それぞれが、KANとの思い出や楽曲制作の裏話を笑いたっぷりに語り合った。
イベント後半はバンド編成のステージに。K、馬場俊英、根本要は、この日のイベントタイトルが歌詞に登場するダジャレ尽くしの「サンクト・ペテルブルグ~ダジャレ男の悲しきひとり旅~」で会場を盛り上げる。槇原敬之は「歌いたくなる曲を」と「REGRETS」を披露し、根本要がコーラスで参加するという贅沢なステージを展開。‘90年代、FM802のラジオ番組で、KANと隔週でDJを担当していた槇原敬之。互いにピアノ弾きのシンガーソングライターとして活動していたこともあり、当時は交流が少なかったものの、「(イベントのために)選曲をしていくことで、イチファンだったんだと気付けた」と思いを吐露。「(難しい)無茶な曲を選んだけど、どうしても歌いたかった」と語り、強い愛の誓いを綴ったバラード曲「死ぬまで君を離さない」を、優しく、時にブルージーに歌い上げた。根本要は渾身のギタープレイと共に、「すべての悲しみにさよならするために」を熱唱。馬場俊英、Kのコーラスも詞世界に込められた思いを一層強く感じさせ、堪らず天を仰ぎながら涙する観客の姿もあった。
根本要は「みんなで事あるごとに歌っていきたい」と、KANの楽曲をこれからも歌い継いでいきたいと思いを語る。トータス松本、槇原敬之がメインボーカルを務めた「まゆみ」に込められた歌詞に、根本要の思いが重なって見えるようで、KANがこのステージにいないんだと、改めて胸に強く刺さってくる。
この日のイベントを機に、出演者たちは改めてKANが綴った詞世界に魅了されていた。トータス松本は「いつもまじめに君のこと」の歌詞について、「読むほどに味わい深い、不思議な歌詞」と絶賛。それでも、KANとラジオで共演した当時、「『愛は勝つ』のイメージがあったから、連発するダジャレに困った……」と、笑いを誘うエピソードで観客を笑顔にさせる。馬場俊英は「歌詞の途中からKANさんの哲学が満載!! 歌うたびに感動する」と、共作した「ロックンロールに絆されて」をロックバンドのボーカリストでもある根本要、トータス松本の3人で歌う。<ジョンやポールと同じ職業♪>の歌詞に嬉しそうな表情を見せる。KANの馬場俊英への思いも感じられる世界観に魅せられ、観客も拳を突き上げてステージを盛り上げていく。
本編最後は「大合唱で終わりたい!」と、「よければ一緒に」。楽曲が進むほどにKANワールド全開となるこの曲。誰もがKANに届けとばかりに大きな声で歌い、会場が優しい空間に満ちていく。
アンコールでは、出演者全員がKANのライブでお馴染みだった天使の羽を背負って登場。「せっかく12月だから。切なくなっちゃうけど、6人で歌いたい♪」と、KANのコーラスパートを加えて歌ったのが「KANのクリスマスソング」だ。まさかの5人+KANのステージが楽しめるだけでなく、歌詞を間違うシーンもあって、“おかわり”ステージも楽しめたのも、思いがけないクリスマスプレゼントとなった。
最後に根本要が「同じ音楽を作る仲間として、やり残したことはいっぱいあるはず。でも、彼が世に出してくれた歌を歌い継いで、あいつの凄さを何度も噛みしめられるのはうれしい。大合唱で、あいつに届くように歌えたら」と語り、出演者全員で名曲「愛は勝つ」へ。楽しい、悲しい、優しい、寂しい。誰もがさまざまな感情を抱きながら、KANが残した素晴らしい音楽を歌い継いでいこうと、ありったけの声で大合唱し、ステージは終了。
ステージを去る間際、イベントのホストである根本要と馬場俊英は「KANさんの楽曲の素晴らしさを、ここに集まった全員で再確認して、噛みしめられて良かった」、「音楽には神様がいる。僕らは神に捧げるように、心の全てを吐き出すように、曲を作ったり、歌ったりしているけど、あんなに素直に心を現せたヤツはいなかったよね。最後に大きな拍手をあいつに贈ってほしい」と語り、KANへ愛と感謝、賞賛の大きな拍手が贈られ、3時間以上に及ぶステージの幕が閉じた。
なお、本イベントの模様をFM COCOLO『Wabi-Sabi レディオ・ショー』にて12月13日18時よりオンエア、さらに2026年3月には音楽専門チャンネル『歌謡ポップスチャンネル』でもライブ映像のオンエアが決定している。
TEXT:黒田奈保子
PHOTO:田浦ボン/ハヤシマコ
◎番組情報
FM COCOLO『Wabi-Sabi レディオ・ショー』
毎週土曜日 18:00~19:00
DJ:根本 要/馬場俊英
https://radiko.jp/share/?sid=CCL&t=20251213180000
歌謡ポップスチャンネル
『Wabi-Sabiライブショー 伝えたい歌が、たくさんたくさんアンデス山脈』
2026年3月放送決定
https://www.kayopops.jp/feature/wabi_sabi/
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