<ライブレポート>キー(SHINee)、不気味さも取り込んだ様々な表現で魅了した【2025 KEYLAND : Uncanny Valley】東京初日

2025年12月2日 / 19:30

 SHINeeのキーが、2025年11月29日と30日に、東京・国立代々木競技場第一体育館にて【2025 KEYLAND : Uncanny Valley in TOKYO】を開催した。今年ニューアルバム『HUNTER』をリリースし、9月の韓国公演を皮切りにアジア各地を回り、12月には初のソロ北米ツアーも控えるキーのパフォーマンスを見ようと多くのシャヲル(ファンの愛称)が会場に訪れた。本稿では初日公演のレポートをお届けする。

 開演時間になると「Runaway」が会場に流れ、パールアクアグリーンのライトスティックが一斉に光り、キーの登場への予感に観客たちのテンションがどんどん上がっていく。次いで流れる映像では、明るくワクワクするような「Runaway」から一転して不穏な雰囲気が漂い、ファンタジーの魔王のようなシルバーを基調にした衣装を身に纏うキーが映し出された。

 ステージにかかっていた紗幕が開くと、ステージ中央上部に魔王ルックのキーの姿が。“不気味の谷”という意味を持つコンサートタイトルなだけあり、怪しげで恐ろしささえ感じるキーから繰り広げられる1曲目は「Strange」。ダークな世界観の曲に合わせて会場を睨みつけたり、不敵な笑みを浮かべたりと妖美な表情を見せる。サビで繰り返される“Strange”というフレーズに合わせて取られる挑発的なポーズも相まって、早くも会場中の視線がキーに釘付けになった。

 メインステージに舞い降りたキーは「Helium」を披露。前曲の緊張感をほどくようにグルーヴィーな音楽に乗ってキレのあるパフォーマンスを見せた。本公演はバンドによる生演奏があったのだが、3曲目「CoolAs」では、原曲の持つファンキーなベースがさらに強調され、サビ前のキラキラとしたシンセサイザーがゴージャスな雰囲気を放つ。続く「Want Another」では、アグレッシブなダンスとピースサインのような中毒性のあるポーズで確実に見る者の興奮を掻き立てていく。楽曲終盤には炎が上がる演出もあり、序盤とは思えないほどの盛り上がりに。

 ロックアレンジが施された「Killer」のパフォーマンスでは、キーが〈I’m the killer〉と歌い、マイクを客席に向けると“Killer”と観客が応え、彼も満足そうな表情を浮かべる。さらに「Guilty Pleasure」、最新曲「HUNTER」のパフォーマンスへ。ダンサーとの協働が多いこの楽曲では、序盤のダンサーに体を預け引きずられる振り付けから、サビのゾンビのようなダンスまで見所が詰まっていた。楽曲最後のスクリーンには唇を噛み刺激的な表情のキーが映る。ここまで序盤7曲を完璧な世界観を持って走り切った。

 「皆さん、元気でしたかー?」と、パフォーマンスとは打って変わって柔らかな表情でMCタイムへ。観客が元気よく応じると「うん、元気そう」と笑いながら嬉しそうに呟く。「慣れているものを見ているのに急に不気味になる」という【Uncanny Valley】に込められたコンセプトの説明や、この日のドレスコードであった観客たちの赤い服の装いに触れ、7年前のクリスマスに開催された日本初ソロライブに思いを馳せた。この日の演奏を支えるバンドメンバー紹介や、「Killer」をみんなで歌えて嬉しかったという話まで常に楽しそうな表情を見せていた。

 MC終盤、次曲で一緒にやりたいというステップ練習が始まった。足踏みしながらクラップをして段々揃ってくると「『千と千尋の神隠し』のあれに見える(笑)」と観客をススワタリに見立てて笑いを誘う。「Heartless」の曲が始まると、練習したステップとともに、スクリーンに韓国語の発音をカタカナで表記した歌詞も映し出され、会場に歌声が響いた。サビ前のウインクをしながら指を立てるポーズもバッチリと決まった。

 続く「Good & Great」「Pleasure Shop」ではキーの柔らかな笑顔が弾けるステージだった。特に「Good & Great」では、シャヲルたちの掛け声が会場一丸となってキーに届けられる楽しい空間に。掛け声に参加するとキーを応援しながら自分自身も肯定していく、まさにポジティブな呪文を唱えられる楽曲だ。続く「Pleasure Shop」でも淡いカラーに照らされた舞台と思わず体が動き出してしまうような軽快なビート、キーの柔らかな歌声が合わさり心地のいい時間となった。

 VCRで「GLAM」の音楽とバンド、ダンサーのパフォーマンスを堪能すると、そこには衣装を変えたキーの姿が。淡いピンクのユニフォームを着たスポーツミックスなスタイルで、ハイトーンな歌声が光る「Picture Frame」と力強いペアダンスが特徴の「Another Life」を披露。

 リリース時に独特なレトロな世界観を見せた「BAD LOVE」は、ギターが咆哮するアレンジが施されていた。マイクを持つ手を振り上げながらステージを練り歩き、ハイトーンボイスを聴かせるスター性全開のキー。その後続く「Gasoline」では、客席からの情熱的な掛け声と、それに応えるようにキーが闘志を燃やした力強いダンスと歌を見せ、会場のボルテージはマックスに。

 あんなにもギラギラとした楽曲の直後でもMCになると朗らかで、キュートな様子を見せる。「楽しんでますか?」と声をかけると観客からはエネルギッシュな返事が届き、思わずキーも笑いながら「皆さん喉元気ですね! 明日日曜日だから……?」と冗談を言う。後半になり変わった衣装に触れてピンクのユニフォームは日本で初めて見せると嬉しそう。自身はピンクなのにドレスコードはレッドなことに実は「特別な理由はなくて」と、終始観客を笑わせながらMCタイムが進む。

 最近のキーは年末を忙しく過ごしているそうだ。忙しすぎて、今回日本でのプライベートな写真はコンビニで撮ったものだけになってしまっているそう。話はコンビニで何を買っているのかという話題に。「居酒屋にある、枝豆をフライにした……」と、商品名を忘れたキーにすかさず客席から「ミーノ!」と返答があり、「そうそう!」と生のコミュニケーションが取られている様子も愛おしい。

 また、この先控えているアメリカツアーの意気込みや、同日にSHINeeメンバーのテミンが千葉で公演していることにも触れ、普段隣にいるとなかなか伝えられないメンバーへの感謝の気持ちを示した。そして、残り2曲となった本編に名残惜しそうにしつつも、アンコールを匂わせ「最後みたいな演技をしてくださいね。くくく(笑)」とイタズラっぽく笑いながら最終セクションのパフォーマンスへ繋いだ。

 手を胸に当てながらすがるように歌う仕草が、切ない気持ちにさせられる「Novacaine」。最後の楽曲「Trap」でも感情を込めて歌う姿が際立つ。楽曲終盤では1曲目「Strange」で降りてきたステージに戻りゆっくりと上昇しながら、仰向けに倒れ天高く手を伸ばすシリアスで幻想的な締めくくりを見せた。

 本編が終わると、すぐファンたちの“キム・キボム”コールが始まる。最初はまばらだったが、ドラムがリズムを刻み始めると足並みを揃えてステージ裏のキーに声を届ける。テンションも最高潮になったところでアンコール曲「Imagine」が始まった。本編とは一変して、コンサートグッズをふんだんに使用したストリートスタイルの衣装に、猫耳のニット帽で登場し、観客たちもその可愛らしさに思わず歓声を上げる。リラックスした雰囲気で指ハートなどのポーズを見せ、銀テープも発射され魔法にかけられたような煌びやかな空間に。
 
 猫耳ニット帽姿を見たファンが「かわいい」と何度も言うとキーも照れてはにかむように笑う。また、着用していたフリースのフードに仕込んでいた緑色のボクシリ(キーの公式キャラクター)もお披露目し、会場のシャヲルたちにご挨拶してみせた。緊張感さえ漂うような完成度の高いステージが続いただけあり、アンコールのリラックスした雰囲気のキーに一層心を奪われる。

 そして、キーからシャヲルたちへ思いがけないプレゼントが。2026年に開催される日本オリジナルホールツアーのお知らせだ。いつもより近い距離で会えることを楽しみにしており、バラエティやショーのようなステージを届けたいと話していた。また、ここでは言えないけれどホールツアーに合わせて“何か”を頑張っているとファンの期待を膨らませる発言も。

 写真撮影を終え、ダンサーを1人ずつ紹介すると最後の曲紹介へ。「【Uncanny Valley】は最後にこの曲を歌うために走ってきた」と話し、観客たちの目や、笑顔を見ながら歌うと宣言。最終曲「Lavender Love」の冒頭ではキーが「ありがとうー!」と叫び、終始客席に向けて微笑みかけたり、手を振ったり、ハートを作るなど退場する最後の最後まで笑顔の絶えない多幸感あふれるステージで本公演は幕を閉じた。

 終演後の帰り道では今回のコンサートの感想と今後待っているホールツアーを楽しみにする観客たちの声がたくさん聞こえてきた。今回の公演では不気味さも可愛さもかっこよさも全てを取り込んだパフォーマンスで観客を魅了した。来るホールツアーもきっとキーとシャヲルの思い出に残る夢のような公演になるに違いない。

Text by 山下実紗
Photos by 田中聖太郎写真事務所

◎公演情報
【KEYLAND JAPAN HALL TOUR 2026 (仮)】
2026年3月13日(金)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
2026年3月15日(日)東京・NHKホール
2026年3月22日(日)広島・上野学園ホール
2026年3月26日(木)愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
2026年4月11日(土)千葉・千葉県文化会館 大ホール
2026年4月12日(日)千葉・千葉県文化会館 大ホール
2026年4月29日(水・祝)石川・本多の森 北電ホール
2026年5月2日(土)大阪・グランキューブ大阪(大阪国際会議場)メインホール
2026年5月4日(月・祝)福岡・福岡サンパレス
2026年5月6日(水・祝)神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール


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