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『ベースの日』が制定されて10年を記念したスペシャルイベント【THE BASS DAY 10th Anniversary Groove-Method LIVE】が、11月10日東京の恵比寿ガーデンホール、翌11日大阪のZepp Nambaで開催された。
本イベントは2015年よりスタートし、これまで東京で6回開催。今年は11月10日東京公演を経て、大阪では初開催となった。今回ホストをつとめたのは、ベーシストの丸山隆平(SUPER EIGHT)と休日課長(ゲスの極み乙女、DADARAY、ichikoro、礼賛)。大阪公演ではゲストベーシストに亀田誠治、TOKIE、やまもとひかる(Aooo)、ゲストボーカルにReiを招き、スペシャルでグルーヴィーな夜を展開した。本記事では、大阪公演の模様をレポートする。
平日夜にも関わらず、会場はフロアも2階席も人でいっぱいだった。定刻になり、会場が暗転。丸山と休日課長にピンスポが当たり、ふたり向き合ってグローヴァー・ワシントンJr.の名曲「Just the Two of Us」を奏で始めた。主旋律とバッキングをスイッチしつつ、ひとりずつベースを鳴らしていく。ベーシストが並んで演奏する貴重な光景、同じフレーズを弾いていても、当たり前だが運指やスタイルに個性が出る(ふたりとも指弾きだった)。そんな場面を目の当たりにできる、これぞベースの日の醍醐味だ。オーディエンスは集中力高く、響き渡る低音に耳を澄ます。そしてバンドメンバーも演奏にジョイン、一気に厚みの増したアンサンブルの中で繰り出されるソロプレイや、ギターとの絡み合いにも圧倒された。キメと照明がマッチしたアウトロの演出も見事で、演奏が終わると客席からは大きな拍手と歓声が湧き上がった。
「皆さん盛り上がってますか! ベースの日始めます!」と休日課長が挨拶。ここからはホストふたりの所属グループ、バンドの楽曲でギアをアップしていく。SUPER EIGHTの「“超”勝手に仕上がれ」では、ゴキゲンなサウンドに乗って丸山のベースボーカルが炸裂。<今夜ベースの日当日、11月11日 10th Anniversary楽しもうぜ♪>とお見舞いしたラップに休日課長とのスラップの応酬と、早速見どころ満載だ。
続くゲスの極み乙女の「猟奇的なキスを私にして」では、キレのあるバンドアンサンブルが一層うねるグルーヴを作り出す。ベースを置いて歌う丸山の高音ボーカル、渾身の休日課長のベースソロ、複雑な構成をさらりとこなすメンバーのハイスキルな演奏にもグッときた。
丸山と休日課長は、今年4月からFM COCOLOにて『木下グループ Groove-Method』を週替わりで担当している。丸山が「ラジオ聴いている人ー?」と問うと多くの手が上がり、「聴いてない人はできる限り今日観て、聴いていただけると。色んな音楽をベーシスト目線でお送りしてます」と宣伝。そして「今日は10周年記念ですから、特別な夜にしたいと思います」と意気込んだ。
メンバー紹介の後は、東京公演に引き続き、ゲストボーカルのReiが登場。Reiは「ベース好きとベーシストが楽屋にいて、オタクトークが止まらない。私は見ての通りギターボーカルなんですけど、噂には聞いていたベースの日にお呼びいただき光栄です。私は自分の作品を作る時、必ず弾いてほしいベーシストを決めてベースラインを書き下ろしたり、それに伴ったアレンジをするんです。今日は十人十色のベーシストが見れて楽しみなので、皆さんもベースフェチになって帰ってください」とベース愛を語る。
演奏されたのは、SUPER EIGHTの「稲妻ブルース」。選曲したRei曰く「ジャズ、ファンク、ロックがミクスチャーされて、ベースの色んなジャンル感が溢れた曲」とのことで、グルーヴ渦巻く大迫力の音の波に包まれた。また、Reiの纏う華やかさとギターや歌に宿るエネルギーにも驚かされる。彼女に牽引されて、丸山や休日課長はもちろん、バンドメンバーもぐんぐん熱が上昇していったのが印象的だった。「ざー! やって、ぶわー! やって、さーって去っていった!」と関西人らしくオノマトペ全開で興奮気味に語った丸山の感想通り、風のように雷のように花のように、珠玉のパフォーマンスで魅せたReiだった。
次なるベーシストはやまもとひかる。14歳でベースを始めた彼女は2018年よりYouTubeでベース演奏動画の投稿を開始、2019年にベース&ボーカル・アーティストとしてデビュー。現在はAoooのメンバーとして活躍している。1曲目はキタニタツヤがプロデュースした自身のソロ1stシングル「DOGMA」をパワフルに投下。曲が始まるや否や放たれた休日課長とのフルパワーのスラップ合戦は、もう圧巻。真っ直ぐに突き抜ける歌声とガッツのあるベースプレイが痺れるほどにカッコ良い。5弦ベースを難なく操るスキルの高さだけでも凄まじいのだが、スラップしながら歌うという難易度の高いテクを惜しげもなく披露した。
「好きな曲を」と木村カエラの「Yellow」をひとりでカバーした後は、やまもとと丸山のツインボーカルで、DAOKO × 岡村靖幸の「ステップアップLOVE」を贅沢コラボ。丸山は岡村靖幸を意識した腰つきと歌い方でノリノリで歌唱。ベーシストだけでなく、俳優や歌手としても活動する彼のマルチプレイヤーぶりが際立つ。最後は休日課長も加わり、やまもととのツインベースでフィニッシュした。
続いて「ベースの日おめでとうございます」と、にこやかに現れたTOKIEは、待ち時間をのんびりと過ごしたそうで「演奏モードになりきれていない自分がいたりする」とふわり微笑むも、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ の「ステッピン・アウト」のイントロでギターがわななくと、黒髪のロングヘアを揺らしながらエレキベースをガンガン弾いていく。このギャップはたまらなく、歌うように高低を行き来するベースプレイにただただ圧倒された。ギター、ドラム、キーボードと濃厚に絡み合う様は、まさに楽器で会話しているようだ。あまりの神々しさに、TOKIEと向き合ってベースを弾いた休日課長が跪く場面もあった。
丸山のボーカルでロカビリーにプレイした、TOKIEが所属するフィメールバンド・THE LIPSMAXの「Miss Bunny」に続き、ひときわ大きな歓声が上がったのは、同じく丸山がボーカルを担った『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の「Sugar Daddy」。TOKIEが選曲を悩んでいたところ、丸山からこの曲の歌唱動画が送られてきたそうだ。丸山は、2022年に同作品のブロードウェイミュージカルの主演を務めた経験がある。ロックバージョンで奏でられた今回は、ヘドウィグになりきった丸山が妖艶に身体をくねらせたり跪いたり、舞台のワンシーンを再現するように魂を込めて歌い上げる。<どう? TOKIEのベース味わってる? あたしこんなところに呼ばれるなんて思ってもみなかった>というセリフパートを聴いたオーディエンスは大歓喜。丸山のパフォーマンスからは、彼がどれだけ楽曲の世界観を大切にしているかがよく伝わってきた。
続いては、ベースの日の発起人のひとりである亀田誠治が登場。小6まで吹田で育ったという亀田は「10年前に始めたベースの日が大阪でできるなんて最高に幸せです。ここからめちゃくちゃはじけていく時間にしたいと思います!」と再びReiを呼び込み、中学生の亀田少年が聴いて痺れたというザ・ナックの「My Sharona」をとびきりロックに披露。フロントマンとしての存在感を放つReiのパワー、ボトムを支えつつも粒立った亀田のグルーヴィーなベース、それらを包括しつつも楽曲を彩るバンドアンサンブルが三位一体となって、とてつもない生命力が漲った。亀田は「いくつになってもベースを弾くのが楽しいんですよ。ハッピー“ベース”デーです!」と破顔。【THE BASS DAY LIVE】の意義がこの言葉に表れている気がして、じんとした。
今年デビュー10周年を迎えたReiが集大成として作り上げた「SODA!」のレコーディングには、CHICのジェリー・バーンズがベースで参加した。「ベースがすごく活きている曲なので、亀田さんのバージョンで聴いていただけたら」というReiの期待と願いが詰まったこの曲の躍動感たるや。時に正確で時にパワフル、時に優しく緩急のついた亀田のプレイには積み上げたキャリアと実力が凝縮されていた。
そして思わずReiの口から笑いが漏れ出るほどのウキウキが伝わってきたのは、東京事変の「透明人間」。作曲者である亀田の生演奏でこの曲を聴けるなんて、本当に最高すぎる。ラストの口笛パートは丸山が担当し、会場を湧かせたのだった。
亀田は「呼んでくれてありがとう。大好きな仲間と一緒にできて幸せだったなぁ」と感謝を述べる。それを受けて丸山は「改めてこれヤベェな」と呟き、東京事変の亀田を見てベーシストを追いかけるようになり、ゲスの極み乙女も好きになった、と自身のベース遍歴を口にする。休日課長もまた、最初にコピーしたベースフレーズがTOKIEのもの(RIZE『カミナリ』/2000年)だったりと、ベーシストとしての歩みの中で多大な影響を受けた人と同じステージに立てた喜びを噛み締めているようだった。
ここでしばしのトークパート。やまもととTOKIEを交え、5人のベーシストによるベース座談会が行われた。この日使用した実機についてや「ベースあるある」など、ベース話に花が咲いた。
楽しい時間はあっという間。いよいよ終わりの時が近づく。総勢9人の全員参加で披露されたのは、休日課長の選曲によるザ・ビートルズの「Helter Skelter」。ベーシスト5人で一斉に弾く音が、ものすごい重みを伴って鼓膜を震わせる。圧巻のステージで、目と耳が足りないという贅沢な悩み。忘れることができない体験として脳裏に焼きついたこの時間は、間違いなくこの日一番のハイライトだった。
Reiに2日間の感想を訊かれ、休日課長は「憧れのベーシストと一緒にできて感無量です」、2年目から【THE BASS DAY LIVE】を見守っているという丸山は「10周年のベースの日でふさわしい時間を皆さんが作ってくれたんじゃないかなと思います」とそれぞれ想いを口にする。
ラストはRei、丸山、休日課長とバンドメンバーで、椎名林檎の「丸の内サディスティック」、小沢健二の「今夜はブギーバック(feat.スチャダラパー)」、そして1曲目で披露された「Just the Two of Us」へと奏でられるメドレーで締め括る。出演メンバーがステージを後にし、最後は丸山と休日課長のふたりに。ライブの始まりと同じく、ふたり向き合って丁寧に弦を弾くと、たっぷりと余韻を残してステージを去った。
こうして【THE BASS DAY 10th Anniversary Groove-Method LIVE – Osaka】は大団円で終了。この日だけのアレンジがふんだんに盛り込まれた特別で贅沢なパフォーマンスの数々は、どこを切り取っても輝いていた。
Text:久保田瑛理
Photo:ハヤシマコ
◎公演情報
【THE BASS DAY 10th Anniversary Groove-Method LIVE – Osaka】
2025年11月11日(火)大阪・Zepp Namba
<セットリスト>
M1 Just the Two of Us feat.Bill Withers(Grover Washington Jr.)
M2 “超”勝手に仕上がれ(SUPER EIGHT)
M3 猟奇的なキスを私にして(ゲスの極み乙女)
M4 稲妻ブルース(SUPER EIGHT)
M5 DOGMA(やまもとひかる)
M6 Yellow(木村カエラ)
M7 ステップアップLOVE(DAOKO x 岡村靖幸)
M8 ステッピン・アウト(John Mayall&the Bluesbreakers)
M9 Miss Bunny(THE LIPSMAX)
M10 Sugar Daddy(『Hedwig and the Angry Inch』よりNeil Patrick Harris)
M11 My Sharona(The Knack)
M12 SODA!(Rei)
M13 透明人間(東京事変)
M14 Helter Skelter(The Beatles)
M15 丸の内サディスティック(椎名林檎)~今夜はブギーバック(小沢健二 featuring スチャダラパー)~Just the Two of Us feat.Bill Withers(Grover Washington Jr.)
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