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インタビューを通して、YENAが最も多く口にした表現は「楽しい」だった。明るく軽快なエネルギーのロッカーから、アニメ『満月をさがして』の主人公まで。現在、YENAにとって最も楽しいことは、ソロアーティストとして自分自身をプロデュースすることだ。
K-POPシーンにおいて、YENA(チェ・イェナ)の存在はひときわ特別だ。2018年5月に放送され、大きな話題を呼んだサバイバル番組『PRODUCE 48』で初めて姿を現した彼女は、「代わりのきかない人になる」と宣言した。その言葉どおり、今のYENAはまさに自分だけの物語を鮮やかに描き続けている。
オーディション番組から誕生した12人組グループ「IZ*ONE」では、リードボーカル、ダンサー、そしてラッパーとして活躍。2021年4月の解散後、一部のメンバーはIVEやLE SSERAFIMとして再デビューしたが、YENAはソロの道を選んだ。2022年1月にリリースされたソロデビューアルバム『SMiLEY』には全5曲が収録され、タイトル曲「SMILEY (Feat. BIBI)」は彼女特有の明るいエネルギーに満ち、音楽番組で1位を獲得した。
「振り返ってみると、当時は目標や計画が明確ではなかったと思います。ただ、自分にできる最善を尽くすこと、そしてソロとしてのスタートがまったく新しい出発であるということは分かっていました。今でもアルバムを出すたびに、一度原点に戻って取り組んでいる感覚です」とYENAは語った。
その後、ソロアーティストとして4枚のEPと国内外合わせて6枚のシングルを発表したYENAは、“多彩”という言葉だけでは語れない挑戦を続けてきた。「SMARTPHONE」ではゲームのヒーローに変身し、3枚目のミニアルバム『GOOD MORNING』では卓越したパフォーマンス力を見せ、2024年9月リリースのシングル「NEMONEMO」では、繰り返されるサビやボーカロイド風ボーカルエフェクト、アニメファンなら気づくサブカル的要素を随所に散りばめ、“YENAコア”を爆発させた。
さらに、最新作「Being a Good Girl Hurts(優しいって言葉が一番嫌い)」のステージコンセプトは、アニメ『満月をさがして』から着想。原作者の種村有菜は、YENAのためにアルバムジャケットを手がけた。
そして、2025年1月から5月にかけて、韓国、日本、マカオ、台湾で開催された1stソロコンサート【“四角からはじまる異世界!” 旅行】は、タイトルに至るまでライトノベルの影響が色濃く反映された。9月に日本で行われた【私はSTAR!】コンサートも同様で、アニメやゲームへの愛を隠さず見せるYENAのキャラクターと自然に重なり、K-POPファンとアニメファンの双方に深い印象を与えた。
しかし、このようなコンセプトやサブカルチャーへの嗜好がYENAの魅力そのものを決定づけるわけではない。サバイバル番組出演当時はパフォーマンスやラップで注目を集めていたYENAだが、今では卓越したボーカリストへと成長を遂げている。4th EPは、YENAが持つボーカリストとしての魅力に焦点を当てた作品でもある。「特定のイメージで見られることに不安はありませんか?」という質問に、YENAはこう力強く答えた。
「そういった境界や偏見に対する恐れはまったくありません。自分が幸せで、好きなことをして、しかもそれを通じて誰かにポジティブなエネルギーを届けられるなら、最高じゃないですか!」
コンセプトに自分を合わせるのではなく、確かな実力を土台に“やりたいこと”を自由に広げていくソロアーティスト。それこそが、今のYENAの姿だ。やりたいことが多すぎて毎日が楽しい——そんなYENAの世界へ、喜んで招かれてみるのも悪くない。
――7月にリリースされた4枚目のミニアルバム『Blooming Wings』の映像を拝見しました。歌声がとても繊細で美しくて、驚きました。
YENA:自分の声が好きだと思ったことはあまりなかったんです。でもそう言っていただけると自信がつきますね。ボーカリストとして一番欲張りなのは、いろんなジャンルに溶け込める色を持つことです。曲のムードに合わせて自分の魅力を表現できる声でありたいと思っています。
――K-POPアーティストは音楽ジャンルだけでなく、ビジュアルやパフォーマンスなど、常に新しいことに挑戦し続けなければなりませんよね。YENAさんは本当に多彩な表現を見せてきたアーティストだと感じます。新しい挑戦をするとき、どんな気持ちで臨んでいますか?
YENA:ただ、すっごく楽しいです(笑)!
――迷いがないですね(笑)。そんなYENAさんでも、不安を感じた挑戦はありますか?
YENA:「Love War (feat. BE’O)」は、実は少し心配だった部分もありました。でも今でもたくさんの方々に愛されている曲なんです。新しいことに挑戦していい反応をもらえると、自分の中で確信が強くなる気がします。もともとステージパフォーマンスをする予定の曲ではなかったんですが、反響が大きくて授賞式で特別ステージを披露することにもなりました。
――2018年にグループとしてデビューし、2022年からはソロアーティストとしての道を歩み始めました。当時の心境を、今振り返ってみるといかがですか?
YENA:あの頃を振り返ると、明確な目標や計画があったわけではなかったと思います。グループの活動が終わった状況の中で、「とにかく自分にできることを精一杯やろう」と思っていました。ソロとしてのスタートは、まったく新しい出発だということも分かっていましたし、「チェ・イェナとして新しい道を切り開いていこう。きっと楽しいはず!」という気持ちもありました。今でもアルバムを出すたびに、「また原点に戻るような気持ちで臨もう」と思いながら制作に取り組んでいます。
――YENAさんの挑戦の中でも、YouTubeチャンネル『MMTG(文明特急)』とのプロジェクト“ナンジョンスン・バンド” での活動は欠かせませんね。ジェジェさん、AKMUのスヒョンさん、そしてIZ*ONE時代の仲間であるクォン・ウンビさんと4人でバンドに挑戦しました。
YENA:最初は「絶対無理でしょ!」って思いました(笑)。だってそれまでベースを触ったこともなかったんです。しかもその時期はコンサートやアルバムの準備、ドラマ撮影まで重なっていて、本当に忙しかったんですよ。1か月後にはステージに立たなきゃいけなかったので、誇張じゃなく寝る時間もないくらい練習していました。だから最終的に「寝るのをやめよう!」って決めたんです(笑)。そしたらできるようになっていって、「やればできないことなんてないんだな」って実感しました。すごく成長できた経験でしたし、やり遂げた後の余裕とか楽しさも感じました。今でもベースは続けています。何事も始まりが一番怖くて難しいものですけど、私は少なくとも“始める”という一歩を踏み出したので。たとえ少し無謀なスタートだったとしても(笑)。
――そのおかげで、Official髭男dismの「Pretender」をフルで披露することもできましたよね。9月に東京と大阪で開催された日本公演でも、YOASOBIやtuki.などさまざまなカバーを披露していました。
YENA:本当に楽しいです。コンサートやファンミーティングでは、その国に合わせたカバー曲を用意するんです。もともとアニメが大好きなので、いろんな作品を観てきました。作品ごとにキャラクターやスタイルが違うように、私のステージでもそんな多彩さを感じてもらえたらうれしいなと思っていて。だからこそ曲のジャンルも幅広く作りたいし、ステージやコンサートの演出もバラエティ豊かにしたいんです。そういう部分に気づいてもらえたときは、本当にうれしいですね。
――さまざまなコンセプトに挑戦する中で、やりがいを感じることはありますか?
YENA:もちろんです! 本当にありがたいことに、ほぼ100%自分の意見が反映された衣装やコンセプトに挑戦させてもらっているんです。いろんな試みを通して、「自分はどんなときに一番幸せを感じるのか」を学びながら、自分の方向性をつかんで楽しく活動できるようになりました。もし少し自分に合わないコンセプトがあったとしても、それをどう自分らしく表現して新しい魅力に変えていけるかを考えるのも楽しいですね。これから先、自分がどんなことに挑戦できるのか――それを想像するとワクワクします。
――次の活動もすでに発表されていますね。ボーカロイド・初音ミクのフィーチャリングです。初音ミクが韓国アーティストの楽曲にフィーチャリングするのは初めてのことだそうですね。この出会いが実現した経緯には、どんなストーリーがあるのでしょうか?
YENA:最初に曲を聴いた瞬間から、「これは絶対に面白いコラボになる!」と思いました。初音ミクと私がどのように出会ったのか、その背景や世界観までも作品の中に描かれているんです。
――初音ミクはなぜYENAと一緒にやりたいと思ったのでしょう? 今年11月にはアジアツアーの最後の公演として韓国で来韓する予定ですね。
YENA:これまで私が積み重ねてきたこと、その“本気”が伝わったのかもしれません。そして、これは本当に新しい挑戦ですよね。もちろん大事なのは、私がそれをしっかりやり遂げられるかどうかですが――すべての要素がぴったり噛み合って、新しいもの、意味のあるものを世の中に届けられた時、そしてそれを多くの人が楽しんでくれた時ほど、うれしい瞬間はないと思います。
――BIBI、BE’O、MIRYOなど、これまで多くのアーティストがYENAさんの楽曲にフィーチャリングとして参加してきましたね。一方で、今年はBTSのJINさんのソロ曲「Loser (Feat. YENA)」で、初めてご自身がフィーチャリングとして参加しました。どんな経験でしたか?
YENA:これまで私が曲を作る立場として、多くの方にフィーチャリングをお願いしてきたので、その気持ちがよくわかるんです。「この曲はあなたじゃないとダメなんです」という強い思いを込めて、本当にその楽曲にぴったりな人にお願いするんですよね。今回のアルバムに収録された「Anything But You(君さえいなければいい)」は、最初からMIRYO先輩を思い浮かべながら作った曲でした。そうやって必然性がある方にお願いすることで、フィーチャリング自体に説得力が生まれると思うんです。だからこそ、JIN先輩からフィーチャリングの依頼をいただいた時は本当に驚きました。「どうして私なんだろう?」と思ったんですが、曲を聴いた瞬間にすぐにわかりました。「あ、だから私に頼んでくださったんだ」って。そして「これは絶対にやらなきゃ」と心の底から思いました。
――例年、YENAさんをよく知る仲間たちは、YENAさんを「努力家で、常に忙しく動き回っている人」と口を揃えて表現します。どんな原動力がYENAさんを動かしているのでしょうか?
YENA:私は、本当に「いいもの」「もっとかっこいいもの」を作りたいんです。会社でのミーティングや作業風景をお見せする機会はこれまであまりありませんでしたし、コンテンツとして出すものも、きれいに編集されたヒーリング系のものが大半でした。でも、いつか機会があれば、私が実際に作業している過程も見ていただきたいと思っています。ファンの方々もまだあまり見たことのない私の姿ですね。ただ、まだそのタイミングではないと感じています。もっとかっこよく、すごいものが生まれる時――そのときに、作業過程のエピソードとしてお見せできたらと思っています。
――ソロアーティストとしてキャリアを重ねると、一人で決断しなければならないことも増えます。難しい決断を迫られたときは、どう対処しますか?
YENA:私は、とにかくやります。決断が難しいからといって何もしないわけでも、誰かに聞いた通りにやるわけでもありません。これまで積み重ねてきた経験をもとに、まずやってみるんです。もし結果が思わしくなければ、「間違いノート」を書きます。何が問題だったのか、なぜ難しかったのかを整理して、もう一度新しいことに挑戦するんです。だってやることは本当にたくさんありますから!
――こうしたYENAさんのステージを楽しむ姿勢や、自信はどこから生まれると思いますか?
YENA:私はステージが本当に大好きで、愛しています。でも、ステージに立つにはまず曲が必要ですよね。自分で作ったり、創作したり、自分が好きなものや自分に合うものを探して悩む時間――そういう努力や考えがステージに反映されるからこそ、ステージ上で一番自信を持てるんじゃないかなと思います。ステージに立つときは、本当に自信にあふれています。そして、私のその姿を見た人がどんなエネルギーを受け取るのか、その意図がぴったり合った瞬間が一番幸せです。
――アニメだけでなく、ゲームも好きだと伺いました。そういった要素は、ビジュアルやコンセプトにも表れますよね。特定のイメージが固定されることに不安はありませんか?
YENA:全くありません。確かにアニメやゲームは主流文化ではないかもしれませんが、実際に楽しんでいる人はたくさんいます。私を通じてその世界に興味を持つ人もいるかもしれませんし、そのことに関して恐れや偏見は全くないです。自分が幸せで、好きなことをして、それを通して人にいいエネルギーを届けられる――これって最高じゃないですか!
――ソロアーティストとして、またチェ・イェナ自身にとって、ロールモデルや指標となる存在はいますか?
YENA:プロデュースを手がける方々を本当に尊敬しています。ZICOさんやi-dleのソヨンさんは、自分のチームや音楽をプロデュースするだけでなく、ほかのアーティストにも作品を届けていますよね(※ZICOは現在BOYNEXTDOOR、ソヨンはBaby DONT Cryをプロデュースしている)。私自身をプロデュースするだけでも簡単ではないのに、その大変なことを成し遂げる方々を見ると、「人間の能力ってどこまで可能なんだろう」と、本当に感心せずにはいられません。
――人間の能力の限界まで考えているんですね(笑)。
YENA:ちょっと面白いですよね(笑)。でも、何かを想像したり考えたりしていると、本当に終わりがないんです。
――そんなYENAさんが、これから見せたいことや、応援してくれる人たちに約束できることは何ですか?
YENA:私のステージを見に来てくださるなら、その日だけは世界で一番楽しく、幸せにしてあげられる自信があります! 本当にありきたりで、見慣れたような構成ではなく、全く新しいもの、フレッシュな衝撃を体験してもらえるはずです。だから、ぜひYENAのコンサートに来てください。絶対に、ぜひぜひ!
Text by LEE MAROO
Photos by YOUNG BAE
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