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2025年5月17日に東京・NHKホールでワンマンライブ【HOSHIKUZU SCAT TOUR 2025“KMM”】を開催した。たくさんの仲間をゲストに招き、歌ありダンスありおしゃべりありの3時間以上に及ぶスペシャルなショーで、集まった満員の観客を魅了した。
2005年に新宿二丁目で結成され、今年20周年を迎えた星屑スキャット。“KMM”と3人のイニシャルを冠したこのツアーは5月7日の大阪・オリックス劇場公演を皮切りに、全国10都市で行われる。この日の会場は、毎年『紅白歌合戦』が行われることでもおなじみの“歌謡曲の殿堂”ともいえるNHKホールで、チケットは早々にソールドアウト。20年の長きにわたる活動での人気の定着ぶりが伺えた。
開演前の影アナを務めたのは、リリー・フランキーだ。「本日、アルバイトのシフトを入れてしまいまして、立ち会うことはできませんので、音声にてみなさんにご挨拶させていただきます」とジョークを交えつつ、「今回、20周年の記念ツアーでございまして、東京はNHKホールというこの場所で星屑が歌うことは、20年前に二丁目でお客さん1人、2人の前で歌っていたことを思うと感慨深いです。それもこれもみなさんが星屑をかわいがってくださったおかげです」と、メンバーに代わり感謝を伝えると、「本日はスペシャルメニューということで盛りだくさんの内容をお届けします。みなさまお楽しみください」と告げた。
開演時間を迎えると、ステージバックに「KMM」の文字が浮かび、やがてステージ上段にシルバーのドレスを纏ったミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵、メイリー・ムーが姿を現した。怒涛の歓声を受けて明るくなったステージで、「HANA-MICHI」からライブがスタート。エレクトロビートに乗って歌う3人が左手を上げただけで、ものすごい声援が飛び交う。ゴージャスな衣装で舞う3人からキラキラした光が放たれながらも、〈私たちの未来は いつも信号待ち〉と、哀愁漂うフレーズが耳に残る。4つ打ちのキックが刻まれて「la distanza」へと続くと手拍子が沸き起こり、4人のドラァグクイーンたちと共に情熱的な歌を届けた。
「私たちの結成20周年記念コンサートツアー“KMM”は大阪・オリックス劇場で幕を開けました。本日が2本目の公演となります。こちら東京渋谷NHKホール。早速、NHKホールの魔物にやられたようです(笑)」(ミッツ)、「初っ端からグッと団結心が高まったね」(メイリー)、「お互いを支え合おうというね」(和恵)と、どうやらオープニングで歌い損なった箇所があった様子。そんな自虐的なMCもご愛敬な3人は、「今日は最後までどうぞごゆっくりお楽しみください」と挨拶すると階段を降りてメインステージへ。The Good-Byeの隠れた名曲のカバー「浪漫幻夢(Romantic Game)」で、1人ひとりのソロ歌唱から1つに声を重ねて響かせる。さらに早くも昭和の大ヒット曲の代表格「聖母たちのララバイ」が飛び出した。和恵、メイリー、ミッツの順に珠玉のメロディを歌いながら、間奏では3声のスキャットを聴かせてオリジナリティを見せる。
いったんステージを下がると、ジャングルビートに乗ってライティングがステージを行き交う。曲は中森明菜の「TATTOO」だ。と思った瞬間ピタッと止まり、『中森明菜 Tribute Album “明響”』で星屑スキャットが参加している「TATTOO (T-Groove Remix)」へとトラックがチェンジ。黒いコスチュームで3人が登場してステージを広く使いながら歌い、曲の世界観をブーストしてみせた。最後はセンターに向かい合いハーモニーで締めくくった。ガラリとムードが変わり、くぐもったベースラインとシンセの寂し気な音像によるオリジナル曲「蜃気楼」では、メロウでサイケデリックな世界に観客を誘う。
MCでは、「厳しい時代を越えて築き上げてくださった先輩たちがいるから、私たちもこうやって今NHKホールに立てています」(和恵)と、NHKホールのステージに立っていることの尊さについて語る。続いては、この日配信開始となったFODオリジナルドラマ『トラックガール2』の主題歌となっている新曲「adDRESS」を初披露。ユーロビート調の疾走感溢れるサウンドに乗って、80’s全開のフリと共にマイクスタンドで歌う姿には、かつて「英国のSUPREMES」と呼ばれた3人組BANANARAMAを彷彿とさせる懐かしさが滲む。
暗転すると、ステージには星屑スキャットとは違う3人が。大歓声を受けて登場したのは、エスムラルダ、ドリアン・ロロブリジーダ、ちあきホイみからなる新宿二丁目発のユニット・八方不美人だ。オリジナル曲「愛なんてジャンク!」で喝采を浴びると、「続いては、今日配信がスタートしました、星屑スキャットと八方不美人のコラボ・シングル、ユーミンの名曲『真珠のピアス』です」と紹介すると、上階にトレンチコート姿の星屑スキャットの3人が現れる。6人による歌唱、シティポップ・サウンドと緩やかな旋律、ギターのカッティングも心地よく、最後は全員が横一列に並んで、いにしえのコーラスグループばりのハーモニーを聴かせた。八方不美人がステージを後にすると、リズムに合わせてクラップが自然発生した。6人のドラァグクイーンとともに総勢9人で魅せたオリジナル曲「ご乱心」の熱唱で、最初のクライマックスを迎え、休憩タイムへ。そんな間にもステージでは、ドラァグクイーンの胡蝶蘭が新宿二丁目仕込みのショーを見せて楽しませた。
ミッツが青、和恵が緑、メイリーが赤のドレスでライブ再開。「星屑スキャットにようこそ~!」と二丁目のゲイバー風味な挨拶とともに、歌謡テイストたっぷりな、いしだあゆみの「今夜は星空」を歌い、バックには過去の映像が映し出され、ノスタルジックな雰囲気が漂う。「20年ぶりに『歌憐バー 星屑スキャット』が戻ってまいりました」とミッツが結成秘話を語り出した。2005年3月、和恵がミッツに「新宿二丁目で生歌の歌謡曲イベントができないか」と持ち掛けたのがきっかけだという。その頃、昭和レトロブームもあり、阿久悠の作品が再評価されるなど、歌謡曲のムーブメントが起こっていたことから、「歌憐バー・星屑スキャット」という名前のイベントとして始めたところに、それを観たメイリーが加入、いつの間にかグループとして捉えられるようになったという。ミッツが「だから、私たちは結成した覚えは一切ないんです」と告白すると客席は爆笑となった。それがいつの間にか「星屑スキャットのみなさん」と言われるようになり、あるときステージにマイクが3本あったことで “3人組ごっこ” ができる、ということで「私たちは、歌舞伎町でキャンディーズになりました!」(和恵)と、ここで歌い出したのはキャンディーズの「キャンディーズ」。曲中、「ロマンチストな私ミッツ!」「ちょっとボーイッシュな和恵!」「ちょっぴりセンチなメイリー!」と、本家のセリフをもじって自己紹介。バックに映し出されたキャンディーズ風のレトロファッションはとてもおしゃれで、まるで『明星』の表紙のようだった。「ボーイ・ハント」では、この曲のオリジナルであるコニー・フランシスを日本語カバーしたスパーク3人娘(中尾ミエ、伊東ゆかり、園まり)の再結成時を3人組の参考にしたことを明かすなど、グループの歴史を知ることができた。
ここで、星屑スキャットのライブで生音が入ることは珍しいということで、バックミュージシャンを務めるギタリストの石垣健太郎、そして長年、作曲・編曲を務める“4人目のメンバー”中塚武(Key)が紹介された。石垣がアコースティックギターを、中塚がピアノを弾いた「君だけに」では、観客にスマホのライトをつけるように呼び掛けて、会場中に光が揺れる中、3人の原点の1つともいえる少年隊の歌を再現した。
「君だけに」は、影アナを務めたリリー・フランキーとの出会いのきっかけだったとのエピソードから、リリーがエルビス・ウッドストック名義で作詞した「新宿シャンソン」を紹介する。「みなさんに育んでいただき、かわいがってもらった曲。20年前のうら若きあの頃の自分たちに聴かせたいし、もし20年後も歌っていたらそのときはまた、ジジイになった私たちの『新宿シャンソン』を聴いてください」(ミッツ)。そんなユーモアたっぷりに思いを込めた歌唱は、うつろな街のネオンをバックに心象風景を歌い上げた、名場面となった。
続いてはソロコーナーへ。今年亡くなったいしだあゆみへの想いが感じられたミッツの「ブルー・ライト・ヨコハマ」、和恵はソロアルバム収録の内山田洋とクール・ファイブの楽曲「思い切り橋」を、そしてメイリーはとてつもなく大きな花を思わせる真っ赤なドレスで松山恵子の「だから云ったじゃないの」を熱唱して大喝采を受けた。3人で歌う「嘘でもいいから」で、20年を振り返るブロックを終えた。
NONA REEVESの西寺郷太プロデュースの「BAD PARADISE」をBGMに、ドラァグクイーンの6人(枝豆順子、穴野をしる子、渦潮つば子、ディタ・スターマイン、JuJu Luv Doll、プリズム)がファッションショーを展開。鋭利な照明を浴びながらランウェイを、思い思いのファッションを纏いウォーキングし、ポージングする彼らの姿は、まさにドラァグクイーンの真骨頂。ある意味ドラァグクイーン界の異端児であった星屑スキャットのステージで、こうして若きクイーンたちによる日本のドラァグ文化の伝統芸能を同時に堪能する。もしかするとこのミクスチャーこそが、20年前に3人が思い描いた壮大な「ごっこ遊び」の絵面だったのかもしれない。
お揃いのフリンジーなメタリックドレスにチェンジした3人は「星屑スキャットのテーマ」で華やかに後半戦へ。デビュー曲「マグネット・ジョーに気をつけろ」、「半蔵門シェリ」と、ダイナミックでカラフルなライブアンセムで盛り上げると、客席で振り合わせするファンの姿も。「まだまだ続きますよ!」とミッツが呼び掛けて、「コスメティック・サイレン」をパワフルに歌うと、再び少年隊の「仮面舞踏会」でさらに場内はヒートアップ。“BABY COME ON DON’T STOP THE MUSIC”でライティングが変わり3人を照らす痺れるシーンも。「ANIMALIZER」まで続いたエキサイティングなメドレーの後は、「まだまだ歌ってもいい~!?」(メイリー)と、松田聖子の「青い珊瑚礁」へ。熱いアレンジと爽やかな歌声が広がっていくスケールの大きな1曲となっていた。最後はお約束曲「REMENBER THE NIGHT」でスクリーンに「KMM」と繰り返し描かれる中でステージを降りた。
アンコールの声にすぐに応えてステージに登場したのは、なんと星屑スキャットよりも先輩格であるダイアナ・エクストラバガンザ。どよめく観客を前に、「マイ・ウェイ」の岩谷時子訳詞バージョンで迫力の歌声を聴かせると、途中で八方不美人がコーラスに加わった。カジュアルな衣装に着替えてステージに戻った星屑スキャットの3人は、ゲストのダイアナ、八方不美人、胡蝶蘭を紹介。5人がそのままステージの階段に腰掛けて見守る中、同時間帯に日本武道館でライブをやっている竹内まりやに触れて、「ちょうど今頃、武道館で同じ曲が歌われているかも。負けないように今夜も心を込めて」と、竹内まりやの「駅」を歌唱し、胸にグッと迫る見事なボーカルアンサンブルで酔わせた。ラストは、様々な場面や楽曲でステージを彩ったドラァグクイーンたちも呼び込んで、出演者勢ぞろいの「Absolutely Adorable」で締めくくる。大盛り上がりのエンディングでは、すべての出演者を改めて紹介して3人の挨拶へ。
「今年はいろんな土地をまわって、みなさんと楽しい時間を送りたいと思います。また機会がありましたら足を運んでいただけたら幸いです! 本当に今日はありがとうございました!」(ミッツ)
「こんなにたくさんの人にお祝いしていただいて、幸せです。20年前は、こんな景色が見られるとは思いませんでした。それはひとえにみなさまの応援と、そして私の忍耐のおかげです(笑)。また遊びにいらしてください!」(和恵)
「続けろとも、やめろとも言われず、何のプレッシャーもなしに続けられた20年。こうやって足を運んでくださったみなさんが私たちを支えてくれたんだと思います。ありがとうございます。当分やめません! ついてきてください!」(メイリー)
最後は3人揃って客席に深々と一礼して、27曲3時間にわたる盛りだくさんの大ボリュームで観客を目一杯楽しませた祝祭を終えた。
Text by 岡本貴之
Photos by TOMO (TWEETY)
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