DEZERT、千秋(Vo.)生誕祭'25【セイオン!!】MCで本人「心の底から幸せ」 ライブレポート到着

2025年3月6日 / 16:40

 DEZERTが、千秋(Vo. / Gt.)のバースデイ当日である3月2日、東京・Spotify O-EASTにて【一ノ瀬千秋生誕祭’25「セイオン!!」】を開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けする。

 昨年12月に、バンド史上初となる日本武道館ワンマンライヴを成し遂げたDEZERT。大舞台でのライヴを終えた彼らは、すでに次を見据えた活動をスタートさせており、2月には過去アルバムを復習する企画ワンマン【「study」】を4日間にわたり開催。さらに本公演の前日には、ライバル的存在であるキズとの初めてのツーマンライヴ【キズ×DEZERT This Is The “VISUAL”】に出演していた。

 その興奮も冷めないうちに行われたのが、毎年恒例の千秋生誕祭。今年は2時間40分にもわたる長時間ライヴとなったが、最も印象に残ったのは、とにかく楽しそうにステージを飛び回る主役の姿。後のMCで「心の底から幸せ」とまで述べた最高にハッピーな夜の模様を、ここに記しておきたい。

 黒を基調とした衣装でメンバーが一人ずつ登場すると、満員のフロアには怒号のような歓声が響き渡る。ひときわ大きな歓声に迎えられた千秋は、「今日を選んでくれてありがとうございます。最高の夜にしましょう!」と開口一番高らかに叫んだ。1曲目は、「TODAY」。先に記した武道館公演を始め、数多くのステージのラストを飾ってきた曲だが、千秋バースデイでは幕開けを担うことが多い。真っ先に届けた<生きててよかった そう思える夜はきっとここにある>というメッセージは、誕生日という特別な日に贈る観客への感謝と、これから始まる一年でまた“生きていてよかった夜”を作っていくんだという決意表明だったのかもしれない。

 ライヴのボルテージを一気に上げたのは、「心臓に吠える」。真っ赤なライトが照らすステージで凶暴な音を放つ4人と、それに共鳴してヘッドバンギングの嵐を巻き起こす観客。まるでDEZERTを先頭に暴れ回る猛獣の集団のようだ。「今日ここに集まった皆さんは大正解。俺たちが証明してやるから! これが俺たちの正しい音だ!」と千秋が宣言し、本公演のタイトルでもある「「セイオン」」へ。剥き出しのロックサウンドとデスボイスで荒々しく提示されるDEZERTの正義は、観客の魂を揺さぶる。その証拠に、フロアの声と拳の勢いはどんどん激しくなっていく。

 前半のハイライトとして記しておきたいのは、2021年の千秋バースデイぶりに披露された、未音源化の新曲。陰鬱かつメロディアスで、闇の中に一筋の光が差し込む情景を想起させる絶妙なバランスは、まさにDEZERTならでは。過去曲に改めて向き合い、さらにアップデートされたパフォーマンスに、フロアからは盛大な拍手が送られた。

 「Hopeless」では、Miyako(Gt.)が鮮烈なディストーションを掻き鳴らすと、腕を回して準備運動していたSORA(Dr.)は凄まじい圧の爆音でリズムを刻み、Sacchan(Ba.)は凶暴なベースと繊細なピアノの両方を操る。そして、その中心で全身を使って咆哮する千秋。この曲で4人が織りなす重厚なサウンドは、DEZERTというバンドの強さを肌で感じさせてくれる。

 メンバーのソロパートから始まった痛快なアッパーチューン「殺されちゃう」、ハードなサウンドとシャウトで熱狂を生む「インビジブルビリーヴァー」を続けて披露。この辺りからステージは千秋のダンスフロアも兼ねた空間となり、文字にし難いシュールな動きで踊ったり、メンバーも巻き込んで高く飛んだりと絶好調。DEZERTの音楽を先頭に立って楽しむ彼につられて、観客のテンションも急速に上がっていき、フロアには熱気が漂い始めた。

 「ストロベリー・シンドローム」は、武道館や【「study」】で“育ててきた”という甲斐あって、完璧に揃ったコール&レスポンスからスタート。千秋がフロアに背中を向けてSORAと共にドラムを叩いたり、SacchanがMiyakoのギターに手を伸ばして弾いたりと、さらにカオスなステージに。疾走感あふれる「カメレオン」では、曲中に倒れたマイクスタンドを直しに来たスタッフを千秋が全力でハグ。本日の主役から周囲の人への溢れんばかりの愛が垣間見えた、なんとも微笑ましい光景であった。

 また、演奏頻度の少ない楽曲を組み込んだ多彩なセットリストも、観客を大いに喜ばせた。撮影OKとなった「insomnia」では、観客がスマホを向ける中、切なくもどこか優しいメロディをソウルフルに歌い上げる千秋。ヴォーカルとしての力量が迸る姿と、3人の紡ぐ洗練されたサウンドは、カメラ越しにもきっとリスナーの心を震わせることだろう。

 ライヴが終盤に差し掛かったところで、千秋が改めて今の思いを言葉にする。

 「本当に幸せだと思っています。心の底から。もうチャレンジなんてしなくていいんじゃないかっていうぐらい、満たされてる。でもまたすぐ風呂の栓みたいに抜けて、その繰り返し。でもあなたの人生のお手伝いができること。僕が音楽をやる理由にあなたがいること。それが、僕が音楽をやっているすべてです。(中略)本当はお前らの夢とか目標とか教えてほしいんだけど、そうもいかねぇから、声や素振りや、その“気”を、これからもステージに送り続けてくれよな!」(千秋)

 そう伝えてから届けたのは、武道館で配布した約束の曲「オーディナリー」。<君の夢も 君の色も 君の音も 君の苦しみも 僕には聞こえないけれど 確かに手は伸ばしている>という歌詞は、彼らが真っすぐにオーディエンスへ向き合う正しい姿をそのまま現しているようだ。観客は拳を上げ、声を張り、その思いを真摯に受け止める。そして「「不透明人間」」で再び熱狂を生み出し、本編は終了となった。

 アンコールは、「飼育部屋」から始まり、「包丁の正しい使い方~思想編~」、「包丁の正しい使い方~実行編~」、「包丁の正しい使い方~終息編~」と“包丁三部作”を続けてプレイ。惜しげもなく披露されるレア曲の数々に歓喜した観客は、ステージに向かって一斉に飛び、頭を振り乱し、ウォール・オブ・デスでぶつかり合う。途中、体調不良になった観客がスタッフに運ばれていく中、千秋が「気にすんなよ! また待ってるぜ」と優しく声をかける場面もあった。

 互いに満身創痍の中で迎えたラストは、「「君の子宮を触る」」。千秋の先導で観客はサビをシンガロングする。これまで数々のライヴでプレイしてきたハードなナンバーだが、この日はとても温かく響き渡り、多幸感に満ちた空間を作り上げていた。観客との絆を感じる感動的なエンディングと共に、ライヴは幕を下ろした。

 ここで満たされた幸せな気持ちは、日常生活の中で少しずつ抜けて消えていってしまうのかもしれない。しかしDEZERTは、その音楽と言葉で、何度でも希望を注ぎ続けてくれる。それが彼らと一緒に人生を歩むということなのだろう。そんな絶対的な信頼性を強く感じた夜であった。

Text by 南明歩
Photo by Megumi Iritani

◎セットリスト
【一ノ瀬千秋生誕祭’25「セイオン!!」】
2025年3月2日(日)東京・Spotify O-EAST
01. TODAY
02. 心臓に吠える
03. 「セイオン」
04. 再教育
05. 肋骨少女
06. 新曲
07. Hopeless
08. 殺されちゃう
09. インビジブルビリーヴァー
10. Stranger
11. ストロベリー・シンドローム
12. メリーさんの自殺未遂
13. カメレオン
14. insomnia
15. 蝶々
16. オーディナリー
17. 「不透明人間」
EN1. 飼育部屋
EN2. 包丁の正しい使い方~思想編~
EN3. 包丁の正しい使い方~実行編~
EN4. 包丁の正しい使い方~終息編~
EN5. 「君の子宮を触る」


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