<前編>布袋寅泰、魅せつけた宇宙一の“Super Hits”と重ねていく“History”「ようこそ、ライブハウス武道館へ!」

2024年12月16日 / 19:00

 布袋寅泰が、2024年12月6日と7日の2日間、東京・日本武道館にて【LIVE IN BUDOKAN ~The HOTEI~ “Super Hits & History”】を開催しオフィシャルライブレポートが到着。今回は、公演初日”The HITS”のレポートを紹介する。

 本公演は、”The HITS”、”The HISTORY”と銘打たれたコンセプトの異なる2デイズで、まさに「The HOTEI」というべき、オールタイムベストなセットリストで届けられた宇宙一のロックンロールショウであり、ステージを360度オーディエンスが取り囲んだ“ロックの聖地”、日本武道館はライブハウスだった。

<Day 1 “The HITS”>

 ゴージャスなゴールドベロアのスーツを纏った布袋が高らかにあげた右手。それを合図に「スリル」でパーティーの幕が上がる。ザッカリー・アルフォード(Dr.)の精確なビートの上に、布袋はタイトなストロークを重ねる。手にするギターはZodiac NEO Eternal Legacy HOTEI MODEL。ソリッドでブリリアントな響きが心地よい。メリハリを効かせたリズムでギターをかき鳴らし、太い歌声を響かせる布袋。<俺のすべては “おまえたち”のものさ><今夜世界は “俺たち”のものさ>と、この日だけの詞を歌い上げると大きな歓声が上がった。

 <Baby Baby Baby Baby……>のコーラスは、そのまま「BE MY BABY」のリフレインへと引き継がれる。重厚なアンサンブルにダーティーなギターリフが轟く。グッと重心の下がったグルーヴが会場を揺らす。ドラマチックにギターソロをキメた布袋は、ステージをぐるりと囲むスロープをゆっくりと回廊していく。「普段見られないアーティストのシルエットを見てほしい」とあえて入れたバックスタンドのオーディエンス、1人ひとりの顔を確かめるように。そしてそのまま、「Marionette」へ傾れ込んだ。日本のロックシーンに大きな衝撃をもたらした8ビートロックナンバーを悠々と、かつスリリングに披露した。

「やっと会えました。久しぶりの武道館は無観客ではなく超満員」

 未曾有のパンデミックに見舞われ、やむを得ず無観客ライブとなった2021年の武道館公演【40th ANNIVERSARY Live “Message from Budokan”】を思い出しながら、全国から集まったであろう満員のオーディエンスに感謝すると、持ち替えたZemaitisから凄まじいダウンピッキングによるエッジィなリフが炸裂した。「RUSSIAN ROULETTE」だ。バンドアンサンブルの波が緩急をつけながら武道館を襲う。

 ザッカリーのビートを軸にボトムを堅実的に支える井上富雄(Ba.)、布袋の左側にはこのギタリストありというべき黒田晃年(Gt.)、そしてバンドの頭脳である岸利至(Prog.)、長年布袋バンドに欠かせない面々だ。ザッカリーと布袋の邂逅は1996年、布袋がオープニングアクトを務めたデヴィット・ボウイのジャパンツアー、ここ武道館だった。そしてこれまでも要所要所のライブで布袋のビートを刻んできた。身体全体で魅せるリズムを打ち鳴らす重金属打楽器奏者、スティーヴ エトウ(Per).。2024年は能登半島復興支援のためのライブ、COMPLEX【日本一心】で布袋と共にステージに立ったが、遡れば布袋の初ソロライブである1988年の【GUITARHYTHM LIVE】を支えた旧友だ。そして今回布袋バンド初参加となるH ZETT M(Key.)はその風貌通り、道化師のごとく怪しくアクロバティックに鍵盤を操っている。そんな新旧の“HISTORY”を重ねてきた、スキルとエンタテインメントに満ちた強靭なメンバーが布袋の楽曲、このステージを彩っている。

 H ZETT Mの情熱的なチェンバロの調べから流麗なギターリフに紡がれ、「NOCTURNE No.9」へ。さらにフェンダー・エクスワイヤーのヴィンテージテイスト漂う極上のトーンで奏でられる「CIRCUS」と、異国情緒に溢れたナンバーが続いた。「ラストシーン」では、浮遊感のあるサウンドに乗せて柔らかいメロディをファルセットまで丁寧になぞる、ボーカリストとしての布袋の表現に会場は息を呑んだ。そんな同曲の余韻を断つ、斬れ味抜群のギターリフにハッとさせられる。「季節が君だけを変える」だ。シャッフルビートと刹那メロディが12月の哀愁の胸をえぐる。この上ない郷愁感に包まれた武道館であったが、イントロのシンセと無数の光によって近未来的な情景へと瞬く間に変わった「1990」。次々と投下されるキャリアの枠を超えた代表曲のオンパレードにオーディエンスの情緒は揺さぶられっぱなしである。そんな嬉しい悲鳴は大歓声と大合唱となって、武道館にこだまする。

 「“Super Hits”。“Super”かどうかわからないけど、“Hits”かどうかもわからないけど。それなりに売れた曲もあるけど、そういうことじゃなくて、あの日のキミのハートを“Hits”した曲、誰かのハートに刺さる曲、それが俺にとっての“Hits”だと思う」そう布袋は語った。そして、キャリアを振り返り「僕ひとりで積み上げたものじゃありません。ヒムロック(氷室京介)、まっちゃん(松井常松)、まこっちゃん(高橋まこと)、その前はもう2人メンバーがいました。その仲間たちと一緒に夢を追いかけて……」と昔のバンドメンバーへ想いを馳せながら、吉川晃司と掲げた【日本一心】に賛同してくれたファンへの感謝を続けた。

 「僕の夢はギターと共に世界を旅すること。この曲はその夢を叶えてくれた、世界中を飛び回ってくれた曲」と紹介されたのは「Battle Without Honor or Humanity」。サスティナーとアーミングを駆使して繰り出されるフレーズはまるで布袋の声のようであり、ギターが身体の一部であるかのように操っていく様に目を奪われる。聴覚と視覚、両方で魅了するギタリスト、布袋寅泰の唯一無二のスタイルをまざまざと魅せつけた。そして、MAN WITH A MISSIONとのコラボ曲「Give It To The Universe」、『北斗の拳 201X』のテーマソング「STILL ALIVE」を続けた。新旧楽曲が織りなす“Super Hits”である。

 「音楽には魔法の力があって、その曲を聴くとタイムスリップして……」布袋が口を開いた。「世の中なんてクソ喰らえ、と思っていた若い頃に作った曲。長い年月が過ぎても、幼馴染みのような、家族のような、恋人のようなキミたちと一緒に抱きしめ合えるなんて、とても幸せなことだと思っています」。そんな言葉のあとに届けられた「さらば青春の光」と「SURRENDER」。90年代初頭、布袋が30代になったばかりの頃に書かれた2曲だが、60代になった現在の布袋によってより深みと説得力が増す歌になったと感じた。布袋自身もいつにも増して詞を噛み締めるように歌っているように見えたのは気のせいではないだろう。そして「バンビーナ」だ。2021年に公開された『THE FIRST TAKE』によって、時代を超えてダンサブルな熱狂を生んだことも記憶に新しい。ギターソロもダックウォークも華麗にパフォーマンスし、興奮と昂揚を重ねていく。

 ラストスパートは、唐突に刻まれるビートによって導かれる。風のようにそよぐ耳馴染みの良いギターサウンドが響いた。「B・BLUE」である。この2デイズ、BOØWY楽曲では当時のメイン機材であったローランドのギターアンプ“JC”が使用されていたことを付け加えておきたい。懐かしくも聴き慣れたコーラスの掛かった抜けの良い音。クリアな音圧をしっかり保つ程良い輪郭が、あの頃を思い出させてくれる。

 間髪入れずにシュレッドなギターのイントロを弾き出した。<“金曜”の夜さ 連れ出してあげる>に大きく沸いた「恋をとめないで」。<Don’ t stop my love>のシンガロングが武道館の天井を突き破るように大きく響き、本編ラストは、「Dreamin’」。布袋に負けじと、オーディエンスも声が枯れるほど歌いに歌った。

 布袋がテレキャスター、黒田がストラトキャスターを抱えた「Stereocaster」で始まったアンコール。鬼気迫るギター2本のバトル、そして前のめりのギターに対して引き戻そうとするリズムセクションのせめぎ合いがスリリングだ。バンドメンバー紹介を挟んだ各々のソロタイムを設けられ、強力で個性に溢れたメンバーであることをあらためて思い知らされた。

 「C’MON EVERYBODY」、「GLORIOUS DAYS」と、『GUITARHYTHM』からのデジタルビートとヒューマングルーヴがクロスオーバーする楽曲が立て続け演奏され、最後の最後に贈られたのは「POISON」。蠱惑的なギタリストの毒薬に会場が酔いしれた。 

TEXT:冬将軍(fuyu-showgun)
PHOTO:Michiko Yamamoto


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