【2024年 米ビルボード年間アルバム・チャート】テイラー・スウィフト『TTPD』が制す、TOP10に4作を送り込む快挙

2024年12月14日 / 08:00

 2024年の米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”は、テイラー・スウィフトの『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント』(TTPD)が年間1位に輝いた。

 『TTPD』は、前作『ミッドナイツ』(2022年)から約1年5か月ぶり、通算11作目のスタジオ・アルバムで、週間チャートでは2ndアルバム『フィアレス』(2008年)から本作まで10作連続、再録プロジェクトの4作を含めて通算14作目の首位を獲得した。

 年間チャートでの首位獲得は、2018年の『レピュテーション』以来6年ぶりで、通算4作目。TOP10には、これでデビュー作『テイラー・スウィフト』から本作『TTPD』まで、11枚すべてのスタジオ・アルバムをランクインさせたことになる。そのうち『フィアレス』、『スピーク・ナウ』、『レッド』の3作がそれぞれ2年連続で年間TOP10にランクインしていて、『ラヴァー』と『1989』(再録盤を含める)、『ミッドナイツ』は3度目の年間TOP10入りを果たした。

テイラー・スウィフト 年間チャートTOP10記録
1st『テイラー・スウィフト』2008年/5位
2nd『フィアレス』2009年/1位、2010年/7位
3rd『スピーク・ナウ』2010年/9位、2011年/2位
4th『レッド』2012年/4位、2013年/2位
5th『1989』2014年/3位、2015年/1位
6th『レピュテーション』2018年/1位
7th『ラヴァー』2019年/4位、2023年/9位、2024年/9位
8th『フォークロア』2020年/4位
9th『エヴァーモア』2021年/4位
10th『ミッドナイツ』2022年/4位、2023年/2位、2024年/10位
11th 『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント』2024年/1位

 その『1989(テイラーズ・ヴァージョン)』は、再録アルバムの年間チャートとしては『レッド(テイラーズ・ヴァージョン)』の5位を上回り、今年の年間チャートでは2位にランクインしている。

『フィアレス(テイラーズ・バージョン)』2021年/33位
『レッド(テイラーズ・ヴァージョン)』2022年/5位、2023年/17位
『スピーク・ナウ(テイラーズ・バージョン)』 2023年/11位
『1989 (テイラーズ・ヴァージョン)』2024年/2位

 同じアーティストのアルバムが年間チャートで1位と2位を独占するのは、1967年にザ・モンキーズの『アイム・ア・ビリーバー』が1位、『恋の終列車』が2位にランクインして以来で、ソロ・アーティスト、女性アーティストでは初の快挙を達成した。なお、1998年の年間チャートは『タイタニック』のサウンドトラックが1位、セリーヌ・ディオンの『レッツ・トーク・アバウト・ラヴ』が2位にランクインしていて、『タイタニック』のサントラ盤をセリーヌ・ディオン名義とすると、この記録も含まれる。

 テイラー・スウィフトのアルバムは、その他にも『ラヴァ―』が9位にランクイン。『ラヴァー』は、昨年から今年にかけて大成功を収めた【The Eras Tour】の反響と、昨年6月に正式なシングルとしてリリースした「クルーエル・サマー」(年間12位)のヒットにより再ブレイクを果たし、今年のチャートでも再燃して上位にランクインした。前述の通り、本作の年間TOP10入りは2019年(4位)、2023年(9位)に続く3年目で、自己最多記録となる。

 昨年の年間2位にランクインした前作『ミッドナイツ』は、現地時間2024年2月4日に開催された【第66回グラミー賞】で<年間最優秀アルバム>を受賞した反響もあり、今年も引き続きロングヒットを記録。年間チャートでは10位にランクインして、こちらも2022年(4位)、2023年(2位)に続く3年目、同率の最多記録を更新した。

 年間TOP10に4作をランクインさせたのは、女性アーティストとして史上初、また全アーティストの中でも最多記録となる。TOP10以下には、『フォークロア』が14位、『レピュテーション』が22位、『スピーク・ナウ(テイラーズ・バージョン)』が28位、『レッド(テイラーズ・ヴァージョン)』が32位、『エヴァーモア』が41位に、年間TOP50に計9作をランクインさせている。

 【The Eras Tour】の反響を受けては、今年1月の週間チャートで『1989(テイラーズ・ヴァージョン)』が1位、『ミッドナイツ』5位、『ラヴァー』が6位、『フォークロア』が10位に、4枚のアルバムを同時(同週)にTOP10入りさせる快挙も達成した。

 年間3位にランクインしたモーガン・ウォレン『ワン・シング・アット・ア・タイム』は、1位に初登場した2023年3月18日~6月3日付まで12週連続で首位を独占して、2週間後の6月24日~7月8日付まで3週間首位をキープした後、10月14日付で14週間ぶりに返り咲き、昨年の年間チャートでは堂々の1位を獲得。今年に入ってからは1月20日付、2024年2月10日付、3月16日付の3週間1位を獲得して、通算19週目に首位獲得記録を更新した。

 19週という記録は、2011年から2012年にかけて通算24週間をマークしたアデルの『21』以来の最長記録で、自身の記録としても前作『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』(2021年1月23日~3月27日付)が達成した10週を大きく上回り、自己最長記録を更新している。

 Billboard 200の集計が始まった1956年3月以降、首位獲得週が19週を上回ったアルバムは『ワン・シング・アット・ア・タイム』が史上12作目で、カントリー・アルバムに限定すると、1991~92年に18週を記録したガース・ブルックスの『ローピン・ザ・ウィンド』を上回る最長記録を達成した。

 男性カントリー・シンガーのアルバムが2年連続で年間TOP3入りするのは、自身の前作『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』が2021年の年間1位、2022年の年間3位を獲得したのに続く2度目の快挙で、その前作『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』は、2023年が5位、そして今年も8位にランクインして、4年連続の年間TOP10入りを果たしている。同じアルバムが4年連続で年間TOP10入りするのは『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』が史上初のタイトルとなる。

 また、2018年4月にリリースしたデビュー・アルバム『イフ・アイ・ノウ・ミー』も、2020年の年間チャートで29位、2021年が36位、2022年が35位、2023年が34位、そして今年も58位に5年連続で100位内にランクインした。

 男性カントリー・シンガーでは、モーガン・ウォレンの他にもザック・ブライアンの『ザック・ブライアン』が年間7位にランクインしている。本作は、2023年9月9日~16日付の2週間首位を獲得して、今年の7月まで非連続で粘り強くTOP10に居座り、集計期間終了まで60週以上TOP30にランクインした。本作からのシングル「アイ・リメンバー・エヴリシング feat. ケイシー・マスグレイヴス」も、ソング・チャート“Hot 100”の年間9位にランクインする大ヒットとなり、シングルでも初の年間TOP10入りを果たした。

 ザック・ブライアンは、前作『アメリカン・ハートブレイク』も2023年の年間8位にランクインさせていて、2年連続で年間TOP10入りする快挙を達成した。また、最新作『ザ・グレート・アメリカン・バー・シーン』も今年の7月20日付で最高2位を記録して、スタジオ・アルバムとしては3作連続でTOP5入りをしている。その『アメリカン・ハートブレイク』は今年の年間チャートで13位、『ザ・グレート・アメリカン・バー・シーン』は53位にランクインした。

 その他のカントリー・アルバムでは、今年の2月5日に逝去したトビー・キースのベスト盤『35 Biggest Hits』(年間88位)、ビヨンセの『カウボーイ・カーター』(年間21位)、ポスト・マローンの『F-1 トリリオン』(年間62位)、ジェリー・ロールの『ビューティフリー・ブロークン』が週間チャートで1位を獲得している。『ビューティフリー・ブロークン』が1位に初登場した年度をまたいだ10月26日付のチャートでは、2014年以来10年ぶりにカントリー・アルバムがTOP10に5作ランクインする珍しいチャート・アクションも展開した。

 カントリー勢が大活躍する一方、ヒップホップ・シーンからはドレイクの『フォー・オール・ザ・ドッグス』が年間5位にランクインしている。

 『フォー・オール・ザ・ドッグス』は、2023年10月21日付で1位に初登場した後、デラックス盤のリリース効果により12月2日付で返り咲き、2週目の首位を獲得。TOP10には3月まで約5か月間ランクインして、集計期間終了までTOP40には50週以上ランクインした。

 週間チャートでの首位獲得は、本作がドレイクにとって通算13作目、年間チャートでは以下に続く通算8作目(10回目)のTOP10入りとなる。過去10年間では前述のテイラー・スウィフトに次ぐ2番目、男性アーティストとしては最多記録を更新した。

ドレイク 年間チャートTOP10記録
『テイク・ケア』2012年/3位
『イフ・ユーアー・リーディング・ディス・イッツ・トゥー・レイト』2015年/4位
『ヴューズ』2016年/2位
『モア・ライフ』2017年/5位
『スコーピオン』2018年/2位、2019年/6位
『サーティファイド・ラヴァー・ボーイ』2021年/5位、2022年/9位
『ハー・ロス』2023年/4位
『フォー・オール・ザ・ドッグス』2024年/5位

 ドレイクとのビーフで話題を呼んだフューチャーとメトロ・ブーミンのジョイント・アルバム『ウィー・ドント・トラスト・ユー』は、年間15位にランクイン。本作は、4月6日付で1位に初登場してから6月まで約2か月TOP10に滞在して、集計期間終了までTOP40に29週間ランクインした。週間チャートではフューチャーが通算9作目、メトロ・ブーミンは4作目の首位を獲得。アルバムの初登場と同週に1位にデビューした本作からのシングル「ライク・ザット」も、年間チャートで14位にランクインしている。また、本作の続編となる『ウィー・スティル・ドント・トラスト・ユー』も、4月27日付で1位に初登場して2作連続で1位を獲得した。

 その他、上位には、16位にトラヴィス・スコットの『ユートピア』がランクイン。昨年の年間チャートでは、リリースから集計期間終了までわずか3か月弱という短い期間だったにもかかわらず10位にランクインして、今年の集計期間でも引き続き上位をキープしたことで、2年連続のTOP20入りを果たした。これまでには、前作『アストロワールド』が2018年の7位、2019年の8位に、2年連続でTOP10入りしている。

 R&Bアルバムでは、シザの『SOS』が昨年に続き2年連続で年間TOP10にランクインした。『SOS』は、1位に初登場した2022年12月24日付~2023年3月4日付まで、非連続で通算10週間の首位を獲得。R&B/ヒップホップ・アルバム、R&Bアルバムにカテゴライズされる作品としては、ドレイクの『ヴューズ』以来、女性アーティストの作品としてはマライア・キャリーの『マライア』以来の最長記録を達成して、2023年の年間チャートでは3位にランクインした。今年の集計期間中も、2023年10月から2024年5月までTOP10に滞在し、ランクイン総週は最新のチャートまで通算100週間を超えるロングランとなっている。

 女性R&Bシンガーのアルバムが年間チャートでTOP10入りするのは、ビヨンセの『レモネード』が4位、リアーナの『アンチ』が5位にランクインした2016年以来で、2年連続でTOP10入りするのは、ジャネット・ジャクソンの『ジャネット』が1993年の4位、1994年の8位にランクインして以来、30年ぶりの快挙となる。

 女性アーティストの作品では、その他にオリヴィア・ロドリゴや今年ブレイクしたチャペル・ローンなどの新星が上位にランクインした。

 年間12位にランクインしたオリヴィア・ロドリゴの『ガッツ』は、昨年の9月23日付で1位に初登場してから12月までTOP10にランクインした後、今年の1月から3月までは圏外にランクダウンしたが、3月末に5曲を追加したデラックス・エディション『ガッツ(スピルド)』をリリースしたことで、4月6日付で再び2位に浮上。2月からスタートした【ガッツ・ワールド・ツアー】の反響もあり、集計期間終了まで57週間ランクインした。年間チャートでは、2021年の2位、2022年の8位を2年連続で記録した『サワー』に続く2作目、3回目のTOP20入りとなる(週間チャートではいずれも1位を獲得)。

 年間18位にランクインしたチャペル・ローンは、4月に開催された【コーチェラ・フェスティバル 2024】や、6月に開催された【ガバナーズ・ボール】でのパフォーマンスが大きな反響を呼び、大物アーティストからもSNSで称賛されたことで話題を集めた、米ミズーリ州出身のシンガー・ソングライター。本作『ザ・ライズ・アンド・フォール・オブ・ア・ミッドウェスト・プリンセス』は、フェスの出演効果を受けて登場12週目での6月22日付で初のTOP10入りした後、8月24日付で最高位となる2位まで到達。9月22日にはリリース1周年を記念した各フィジカルがリリースされたことで、再び同2位にジャンプアップした。

 Billboard 200では初週で上位にランクインする作品がほとんどだが、本作のように下位から上昇してTOP10入りするのは珍しいケースで、登場12週目以降で初めてランクインしたのは、年間4位にランクインしたノア・カーンの『スティック・シーズン』が登場29週目に100位から3位にジャンプアップした2023年6月24日付以来となる。

 その『スティック・シーズン』で今年ブレイクしたノア・カーンは、米バーモント州出身のシンガー・ソングライターで、本作は2022年10月にリリースした3作目のスタジオ・アルバム。同年10月29日付で14位に初登場した後、2023年6月9日に7曲を追加したデラックス盤とアナログ盤をリリース効果により、6月24日付で3位にランクインした。さらに今年の2月9日には、新曲9曲を追加したデラックス盤がリリースされたことでポイントが再び上昇し、2月24日付で3位に浮上。最新のチャートまでは100週間以上ランクインしている。

 こうしたデラックス盤や数種類のフィジカルをリリースする戦略は今年も引き続き実施されていて、CDに封入された種別のグッズやデザインの異なるカバー・アート、期間をずらしてアナログ盤をリリースするなど、様々な戦略でチャートの上位を狙うアーティストが多かった。これは、3月9日付でNo.1デビューを飾ったTWICEの『With You-th』や、8月3日付で1位に初登場したStray Kidsの『ATE』など、K-POPのアーティストにも多くみられる傾向で、年間1位に輝いたテイラー・スウィフト『TTPD』も、様々なパターン別のフィジカル、デジタル・ダウンロードをリリースしたことで上位に長くランクインした。

 また、上位にランクインした作品はいずれもストリーミング数が高いアルバムで、『TTPD』(全31曲)や『ワン・シング・アット・ア・タイム』(全36曲)、ノア・カーンの『スティック・シーズン』(全30曲)、シザの『SOS』(全25曲)など、曲数の多いアルバムはストリーミングの再生回数が多く稼げるため、上位に長くランクインできる傾向にある。

 そういった傾向からみると、ビリー・アイリッシュの『ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト』は収録曲数が全10曲と少なく、リミックスなどをリリースしていないのに年間チャートで11位にランクインしたのは快挙といえる。また、最新のチャートで上位にランクインしているサブリナ・カーペンターの『ショート・アンド・スウィート』(年間26位)も、全13曲で通算4週間首位を獲得していて、次年度のチャートでも引き続きヒットを持続することが予想される。

 その2作や今年上位にランクインしたアルバムからは、いずれもヒット・シングルが輩出されていて、トラックによるユニットもアルバムのヒットに大きく貢献した。年間38位にランクインしたテディ・スウィムズの『アイヴ・トライド・エヴリシング・バット・セラピー(パート1)』からは、今年の年間1位を記録した「ルーズ・コントロール」が、23位にランクインしたアリアナ・グランデの『エターナル・サンシャイン』からは、「yes, and?」と「we can’t be friends (wait for your love)」の2曲のNo.1が輩出され、アルバムのヒットに繋げている。

 2024年の米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard200”は、テイラー・スウィフトがまさに無双状態だったというべく大活躍を遂げ、チャートを大いに荒らしたが、ビヨンセやポスト・マローンがジャンルを解体したり、ヒップホップ勢が名物であるビーフで作品をヒットさせたり、ビリー・アイリッシュやチャペル・ローンといった個性的な新星が時代を切り開いたりと、一方に偏らないチャート・アクションが展開された。また、フリートウッド・マック(34位)やエルトン・ジョン(35位)、エミネム(37位)、クイーン(47位)、故ボブ・マーリー(51位)等のレジェンド・アーティストたちの名盤、ベスト盤もロングヒットが続き、ランキング総週の記録を塗り替えたのも、今年のチャートの醍醐味だった。

Text:本家一成

◎【Billboard 200】2024年 年間チャートTOP10
1位『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント』テイラー・スウィフト
2位『1989(テイラーズ・ヴァージョン)』テイラー・スウィフト
3位『ワン・シング・アット・ア・タイム』モーガン・ウォレン
4位『スティック・シーズン』ノア・カーン
5位『フォー・オール・ザ・ドッグス』ドレイク
6位『SOS』シザ
7位『ザック・ブライアン』ザック・ブライアン
8位『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』モーガン・ウォレン
9位『ラヴァー』テイラー・スウィフト
10位『ミッドナイツ』テイラー・スウィフト

集計期間:2023年10月28日付~2024年10月19日付チャート


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