<ライブレポート>リンキン・パーク再始動! 新章を余すことなく披露したロンドン公演

2024年10月7日 / 21:00

 リンキン・パーク再始動のニュースが世界中を駆け廻った時、我々ファンは、その衝撃とともに最初に何を感じただろう。将来が不透明なまま無期限の活動休止に入ったこのバンドに関する一片の報道に、狂喜乱舞する人もいれば、疑心暗鬼に陥る人もいただろう。そして、それがどのように受け止められようとも、すべてのファンが共通して抱いた疑問・懸念はひとつ、新ボーカリストは誰なんだ?

 2017年のチェスター・ベニントンの死から7年、リンキン・パークが還ってきた。長い沈黙を破り今回バンドがアナウンスしたのは、新たなメンバーを加えた新体制、そして通算8枚目となるスタジオ・アルバム『FROM ZERO』のリリース、さらにはこのアルバムタイトルを冠にしたワールド・ツアーだった。あまりにも突然のニュースに頭が追い付かないファンも多かっただろう。筆者もその一人だったが、幸運なことに、今回のツアーのロンドン公演に足を運び、その一部始終を観ることができた。
 
 会場となったのは、2000年にミレニアム・ドームとして建設されたO2アリーナ。キャパシティー2万人の大型室内ベニューだ。実は2017年、チェスターが亡くなる直前にリンキン・パークはここでプレイしている。そういう意味では、バンドにとってもファンにとってもメモリアルな意味を持つ場所といえるだろう。
 
 リンキン・パーク再起動に関しては、先にも述べた新メンバーの加入が大きく貢献している。マイク・シノダは、ボーカルのエミリー・アームストロングとドラムのコリン・ブリテンに関して、「『リンキン・パークのセッションをやるからバンドに入ってくれ』と言ったことはない。ただ曲を書こう、って言っただけさ。いろんな人とセッションをして、作業をしているうちに、自然と物事が見えてきたんだ」とすべてがオーガニックに進んだことを打ち明けている。しかし、チェスターのレガシーを引き継ぐことのできるボーカルがなどいるのだろうか? 結論から言うと、その懸念は完全に杞憂に終わった。エミリーは、チェスターが表現する脆弱性と獰猛さを、彼女なりの方法で構築し、曲の本質や内省的なメッセージをまったく損なわない轟音で伝えることができるのだ。
 
 セットは「Somewhere I Belong」からスタート。マイクの軽快なラップに続いてエミリーが力強いボーカルを発した時点で、場内に満ち満ちていたオーディエンスの期待と興奮が一気に爆発。ここにいる皆が新生リンキン・パークを受け入れたことが一瞬で感じ取れた。続く「Crawling」で、エミリーは「皆でコーラスを歌うんだよ!」と叫び、マイクをオーディエンスに向けた。拳を掲げてそれに応えるオーディエンスは力の限りに声を張り上げる。アリーナの中央にセットされた長方形のステージを縦横無尽に走り回るエミリー。ギター、キーボード、ボーカリストというマルチタスクをシームレスに移行していくマイク。そして、その脇を固める新旧メンバーたち。そこにはリンキン・パークがいて、25年のキャリアで生み出した名曲を次々と私たちに思い出させた。そのなかでも、エミリーは今回ピアノ・バラードとして披露された「Lost」で儚くも力強い優美さを見せ、観衆を魅了した。
 
 後半、エミリーは、鮮やかな声のグラデーションで「Numb」歌い上げ、内なる葛藤を吐露。続く大曲「In the End」ではオーディエンスがシンガロングする中、クラウドに飛び込んだ。そしてマイクの攻撃的な高速ラップとラウドロックの轟音をフィーチャーした「Faint」ではアリーナ全体が両手をかざし、歌い、踊った。
 
 リンキン・パークは、自分たちを改新しながらも、『ハイブリッド・セオリー』や『メテオラ』時代のエネルギーと攻撃性を維持し、これまで知られてきたサウンドのタッチポイントを織り交ぜながら、いまだ新しいものを探求している。それは、今回披露された新曲「The Emptiness Machine」(UKチャート4位)、「Heavy Is The Crown」(この日午後4時にリリース)が、既に人々を惹きつけ、バンドに新しい風を吹き込みながらもセットに難なくブレンドしていたことが証明している。
 
 最後にマイクは「このショーが終わらなければいいのに」と言った。筆者が今回のショーから得た最大のものは、メンバーがステージに立つことを、名曲を再びオーディエンスとシェアできることを、純粋に心から喜び楽しんでいるように見えたことだ。
 
 「旧章は素晴らしいものだったし、僕らはその章を愛していた。そして今、バンドはある挑戦に直面している。もし別の声でゼロから始めるとしたら、どうする?」とマイク・シノダはBBCのインタビューで語った。

 旧章を駆け抜け愛した者、そして不在だった7年の間に彼らを知った者、それぞれが何かしらの思いを胸に訪れた今夜のギグ。リンキン・パークは、過去を消すことを一切せずして、そのどちらのオーディエンスもが共鳴できる、エモーショナルなショーを繰り広げ、彼らの新章を余すところなく披露してくれた。

 メンバー6人のケミストリーとダイナミズム、そして高いライブ能力をまざまざと見せつけた全27曲(※インタールード除く)、2時間強のショー。新生リンキン・パークの、未来への新しいチャプターは始まったばかりだ。

Text:近藤麻美
Photo:jamesbridlephoto

◎公演情報
【FROM ZERO WORLD TOUR 2024】
2024年9月24日(火)
イギリス・ロンドンO2アリーナ

<セットリスト>
1.Somewhere I Belong
2.Crawling
3.Lying From You
4.Points of Authority
5.New Divide
6.The Emptiness Machine
7.Creation Intro B
8.The Catalyst
9.Burn It Down
10.Waiting for the End
11.Castle of Glass
12.Joe Hahn Solo
13.Empty Spaces
14.When They Come for Me / Remember the Name
15.Keys to the Kingdom
16.Given Up
17.One Step Closer
18.Break/Collapse
19.Lost
20.Breaking the Habit
21.What I’ve Done
22.Kintsugi
23.Leave Out All the Rest
24.My December
25.Friendly Fire
26.Numb
27.In the End
28.Faint
29.Encore:
30.Resolution Intro B
31.Papercut
32.Heavy Is the Crown
33.Bleed It Out


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