MUCC、lynch.やキズらを迎えた主催イベント【LuV Together 2024】の公式レポート到着

2024年10月1日 / 18:00

 “はみだすことの出来る世界”は素晴らしい。日本の島国という閉鎖的な風土は、古くから「出る杭は打たれる」「雉も鳴かずば撃たれまい」「喬木風に折らる」といった言葉たちを生みだしてきた。それどころか多様性なる言葉がもてはやされるようになった現代でさえ、同調圧力という名の枷(かせ)がそこらじゅうで人々を苦しめているように感じられるほどだ。しかし、その一方で“はみだしてしまう”人たちを受容する“はみだすことの出来る世界”というのも実は確かに存在している。

 このたび9月16日にEX THEATER ROPPONGIにて、MUCCが開催したイベントライブ【LuV Together 2024】とはまさにそう呼べるような場で、トリを飾ったMUCCのフロントマン・逹瑯からは以下のような言葉が観衆へと告げられる一幕があった。

 「今日はここまで、出演してくれた全アーティストのライブを観てました。みんなめちゃくちゃ面白かったです。自分たちが呼んだバンドたちなんで、こんなこと言うのもアレなんですが、ほんとにヘンなバンドばっかりで(笑)。主催してる側なのにどの口が言ってんだ?っていうところはあるんですけど、観ててはいろいろ思うことがあったんですよ。多分、どう頑張ってもここに集まってるバンドは自分たちも含めて、そして今日ここに観に来たきみたちも、きっと世界の真ん中にはなれねぇんだなっていうことがよくわかりました。ただね、このどうしても“はみだしてしまう”自分たちと、この“はみだすことの出来る世界”が凄く好きだなぁと思ったし、あらためてこういう場所が絶対に必要だし、愛おしいなと思いました」(逹瑯)

 今年で結成27年周年を迎え、6月にはシングル『愛の唄』で3度目のメジャーデビューを果たしたMUCCは、今春から【MUCC TOUR 2024「Love Together」】と題した全国ツアーにいそしむこととなり、各地でキズ、NoGoD、甘い暴力、vistlip、ΛrlequiΩ、DEZERT、JILUKA、MAMA.、CHAQLA.、色々な十字架といった後輩たちをサポートバンドとして迎えながら、愛すべき“はみだしもの”たちによる宴を展開。

 そして、それらを経てのグランドツアーファイナル的に行われたのが今回の【LuV Together 2024】で、ここには世代こそ異なれど以前からMUCCとの縁を持っているアンティック-珈琲店-、YUKI-Starring Raphael-、lynch.、キズが集結することに。ちなみに、今回のライブタイトルとして使われていた“LuV”とはLoveをよりラフにしたスラングであり、この言葉はMUCCと今宵の出演バンドたちとの親しい関係性をそのまま表していた、とも推察出来そうだ。

 では、この日の1番手を担ってくれたアンティック-珈琲店-のレポートに関しては、17年前に逹瑯が某雑誌にて発言していた以下の言葉を記すところからまず始めるとしよう。 「ヴィジュアル系のセオリー、全く無視だもんね。こりゃ凄い!と思ったよ」(逹瑯) これはイベント【Over the Edge ’07 】を控える中で行われた、逹瑯、有村竜太朗(Plastic Tree)、みくによる鼎談の中で出て来たアンティック-珈琲店-に対しての印象を語った言葉だ。

 2003年に結成し、2007年にtakuyaとゆうきが加入して現体制となったアンティック-珈琲店-は、当時シーンの中でそれこそ盛大な“はみだしぶり”で話題を集めることになり、V系では定番のダークさや退廃的な雰囲気の真逆を行くポップにしてダンサブルなサウンドと、カラフルかつハジけたヴィジュアルを武器にブレイク。2010年代に入って原宿発の“Kawaii”文化が日本から世界へと大々的に発信されるよりも前から、アンティック-珈琲店-はいちはやく“カワイイは正義”の概念を体現してきたバンドだと言えるだろう。

 その後、2019年1月からは活動休止期間へと突入していた彼らだが、結成20周年を前にした22年6月に約3年半ぶりの復活を果たし、2023年1月にはZepp Hanedaでの【LIVE CAFE 20th Anniversary『令和で初NYAPPY o(≧∀≦)o』】を開催。今年1月には【LIVE CAFE 20th Anniversary Final NYAPPY FOREVERo(≧∀≦)o Thank you all caffekko thank you all staff】を、LINE CUBE SHIBUYAにて行ってもいる。

  「六本木、NYAPPY!みなさんお久しぶりです!!」(みく)

 キラびやかな16ビートの鳴り響く「メープルガンマン」で、EX THEATER ROPPONGIをいきなりダンスフロアにしてみせただけでなく、アンティック-珈琲店-とカフェっ仔(ファンの総称)にとっての合言葉「NYAPPY!」でも会場を一気に沸かせてしまう彼らは、2024年の今も相変わらずカワイイおまけにハッピーな存在にほかならない。2008年にリリースされたシングル曲をリテイクし、MVも新撮したという人気曲「Cherry咲く勇気!!」で締めくくられたこの日のパフォーマンスは、アンティック-珈琲店-にとって次へのステップとつながる大切な場となったのではなかろうか。

 なんでも、2025年春にはZepp Hanedaにて 【LIVE CAFE 21th spring NYAPPY】と題した2デイズライブを行うそうで、4月29日の公演には【サクラ咲く頃にまたこうしてみんなで「でっかくなって会いたいね」とo(≧∀≦)o】、翌30日については【昔を振り返っても明日は無いけど、ボクは忘れないo(≧∀≦)o】というサブタイトルがそれぞれつけられているとのこと。まだ夏が終わったばかりとはいえ、今から春が待ち遠しい。

 いやはや、油断も隙もあったものではない。転換およびサウンドチェックの最中で幕がまだ閉まったままの状態から、早くもオーディエンスの心をつかみにかかったのはYUKI -Starring Raphael-のヴォーカリスト・YUKIだった。

 「2番手には“オジサンの方の白塗り”がエントリーいたします。限られた時間ではございますが、みなさん最後までおつきあいのほど何卒よろしくお願いいたします」(YUKI)

 これは同日の出演者であるキズを意識しての言葉だったと思われるが、今回のイベントにおいて最もレア度とプレミアム感が高かったのは、間違いなくYUKI -Starring Raphael-の繰り広げた貫録あるステージングだったと言えよう。また、何故この場にYUKIが登場することになったのか?という経緯についても念のためここで少しふれておきたい。

 YUKIはそもそも1997年に始動したRaphaelのヴォーカリストであり、実はMUCCと同期の仲。メジャーデビューはRaphaelが1999年でMUCCは2003年、初の日本武道館もRaphaelは2000年でMUCCは2006年とズレはあったが、YUKIもMUCCも紆余曲折を経つつ同時代を懸命に生き抜いてきたアーティスト同士である。

 2001年に活動休止したRaphaelは2012年と2016年に復活ライブを行っているが、YUKIは2001年から2018年までriceとして活動し、その後はソロでの活動をすすめていく中で2021年夏に喉頭がん発覚。一時は歌うどころか話すのも難しかったというが、2022年春からは櫻井有紀としてのライブ活動を再開しており、なんと今春には“MUCCのYUKKEにとって3歳上の姉であり元バンギャのライター・輸血子”からのラブコールに応えるかたちで、初めてYUKI -Starring Raphael-としてのイベント出演をはたした。

 くわえて、今年8月の[バグサミ2024]ではBugLugの楽器隊を迎えてのYUKI -Starring Raphael-を実現したこともあり、今回のステージでは優&一樹( from BugLug)がギターパート、かねてより親交のあったRei&KAZAMI(from DazyStripper)がリズムパートを固めながら、しょっぱなの「Gebet~祈り~」を手始めに鉄壁のアンサンブルを提示してYUKIの歌をバックアップ。バラード「eternal wish」だけに限らず、時にはオペラ歌手のような発声も取り入れながらの浪々としたヴォーカリゼイションは、おおよそがんサバイバーとは思えないクオリティで、往年のRaphaelを彷彿とさせるゴージャスな衣装に白塗りメイクという出で立ちもあわせて、YUKIのレジェンダリーぶりは完璧だった。あげく、最後の曲として歌った名曲「夢より素敵な」のあとには…

 「待って。あと3分半ある。…イケる!だって、タイバンだもん。最後は散らかして終わらないと!!」(YUKI) と、Raphael-随一の煽り曲「人間不信」を急遽投下。つくづく油断も隙もあったものではない。流石。お見事。天晴れ!!!
 
 容赦のなさは良い意味で折り紙付き。ホームであってもアウェーであっても一貫して猛攻の姿勢を崩さないlynch.は、この夜も聴衆たちを片っ端から的確に仕留めていくことになり、その手腕にはさらなる磨きがかかっているように見受けられた。

 「LuV Together !ようこそ、処刑台へ!!」(葉月)

 冒頭からキラーチューン「GALLOWS」で鋭く斬り込んできた彼らは、思えば9月4日に【TOUR’24 THE FIERCE BLAZE】のファイナルを東京ドームシティホールで終えたばかり。ライブバンドとしての高い実力については万人が認めるところであるうえ、ツアー終わりでガッツリと“仕上がった”タイミングでのこの闘いは、lynch.にとってかなり有利だった可能性が高い。よって、ベーシスト・明徳のスラップが炸裂する「CREATURE」では場内全体にヘッドバンギングの嵐が巻き起こったほか、最新音源『FIERCE-EP』のリードチューンとしてツアー中も大活躍していた「EXCENTRIC」においては観客らが力強く拳を振り上げ、ライブとしての熱量は高まるばかり。

「lynch.です、よろしくお願いします。イベントが久しぶりなので、こう見えてガチガチに緊張しています(笑)。あれはいつだったかな?確か1年以上前に逹瑯さんから私に「9月16日って何してる?来年」というLINEが来まして。めっちゃ先やなぁと思いながらも「多分まだなんにもないですよ」と返しましたら「了解」とだけ来て「何か言えよ!」と思い、そこから何か分からないままで今日が来ました(笑)。嘘です、凄いこの日を楽しみにして来ました!!」(葉月)

 しれっと逹瑯の特徴ある口調をマネしながらこのように話した葉月は、結局のところ緊張の表情など微塵もみせることなく着実に果たすべきことを遂行し、なかばワンマンライブかのような空気感をこの場に生みだしていたと言っていい。悠介が刺激的なヴォイスワークで曲に強いインパクトを与えていた「斑」、玲央が奏でるエッジーなギターが高い殺傷力をいかんなく発揮していた「INVINCIBLE」、晁直のタイトでいて躍動感のあるドラミングが映えていた「MIRRORS」など、それなりに限られた曲数ではあっても全編が見せ場だったと感じられたほど。

 また、lynch.のライブになくてはならないものとなっている「pulse_」では六本木のド真ん中にあるこの場所で、いあわせたほぼ全員がこの曲に対するお約束のコール《ヤリタイ!ヤリタイ!ヤリタイ!ヤリタイ!》を一斉唱和する非常に治安のよろしい状況が出現しつつ、最後の「EVOKE」ではエモいシンガロングも発生。 12月29日にZepp Nagoyaにて行われるライブ【XX act:1 20th ANNIVERSARY LIVE 「THE IDEAL」】を皮切りにして、2025年は終始【lynch. 20th ANNIVERSARY PROJECT】を実行していくというlynch.の容赦なき日々は、きっと尊き祝福の日々ともなっていくに違いない。

  “はみだしもの”とはまた少し意味が違うのかもしれないが、今回の[LuV Together 2024]に出演したMUCC、アンティック-珈琲店-、YUKIの在籍していたRaphael、lynch.が、いずれも日本武道館でのワンマンライブを経験しているアーティストであることを前提にした場合、キズは唯一“これからそれを経験することが決まっているバンド”だ。彼らが2017年に始動してからは、約半分の日々がコロナ禍で占められていたという現実も多少は勘案すべき点かもしれない。

 つまり、キズにとって今回のイベントは強大で偉大な先輩ばかりを相手取ったやや分の悪い勝負だったと言わざるを得ないところがあるのだ。しかも、生憎この日ヴォーカリスト・来夢は喉のコンディションを崩してしまっていたというではないか。1曲目の「リトルガールは病んでいる。」を歌いだした時点から、彼がいつもと異なる様子であることはすぐにわかった。

 ただし、これは来夢の名誉のためにも名記しておこう。今やベテランの域に達しているヴォーカリストたちとて軒並み数々の修羅場をくぐり抜けて来ているのも事実で、生身の人間である以上はその時々の体調によって必ずしも万全でいられた時ばかりとは限らない。その昔には、あの逹瑯が「喉の強いヴォーカリストが羨ましい…」とボヤいていたのを聞いたこともある。ましてや、キズの場合は楽曲キー的に来夢の限界値に近いところを敢えて狙っているフシがあり、そこから生まれる緊迫感がキズの音楽に唯一無二の説得力を与えているきらいもなくはない。逆に言うと、凡百の歌い手ならば同じような状況の場合ヒューヒューと気管から空気を漏らすくらいが関の山なのでは??

 「学生時代に超カッコいいMUCCっていうバンドと出会いまして、めちゃくちゃコピーもしましたし、めちゃくちゃコピー曲ライブもしましたね。今は超カッコいい、キズっていうバンドをやってます。よろしくお願いします。MUCCを聴いて育った僕らがダサいわけありません!心で受け取ってください。そして、今日は声が出ません。今日がラストライブだと思って、ちゃんとその心に留めて帰れ!!!」(来夢)

 この率直な言葉から始められた「銃声」では、来夢がアコギを弾き語りながら演奏していくことになり、そのフォーキーな要素を含んだ響きからは確かにMUCCから受け継いだものとも受け取れるある種の遺伝子を感じることが出来た。そればかりか、ドラムのきょうのすけが叩き出す情熱的な律動、ベースのユエが唸らせる生々しいベースフレーズ、繊細さと激しさを絶妙にあわせもったreikiのギタープレイと、彼らがライブバンドとしておりなす音像には満身創痍の来夢をしかと支える頼もしさが満ちていたのだ。

 かくして、〈この命もくれてやろう〉という1節から始まる6分超えの大曲「鬼」では幸運にも来夢に人ならざる者の力が宿ったのか、驚異的な底力をみせての完唱を実現。この貴重な体験を糧と礎にし、彼らは2025年1月6日に行われる[キズ 単独公演「焔」]で得られるはずの新しい経験をもって、必ずや未だ見ぬ超次元へ到達すると確信する。
     
 情けは人の為ならず。ともすれば、この言葉は「ヘタに情けをかけるとその人の為にならない」という誤解釈をされてしまいがちだが、本来は「人に情けを掛けておくと、巡り巡って結局は自分のためになる」ということを意味している。要するに、これは利他の精神が宿った言葉ということになるだろうか。

 結成27年周年の節目にシングル『愛の唄』で3度目のメジャーデビューを果たし、今春から始まった【MUCC TOUR 2024「Love Together」】と、今回の【LuV Together 2024】でMUCCが紡ぎ続けてきたのは、まさに利他の精神を地でいくもの。音楽に対する愛を基盤にしながら、共闘している同志たちと手を取りあい、せめぎ合い、高めあうことで“Together”してきた”MUCC の深き愛。この夜のEX THEATER ROPPONGIで彼らが見せつけてくれたのは、それそのものだった。と同時に、愛とは清廉潔白なだけのものではなかったりもする。愛には翳りを帯びた部分や、ドロリと澱んだ部分、どうにも矯正の利かない歪んだ部分も出てくることが往々にしてあり、MUCCは初期の頃から…いや、正しくは初期の頃こそ愛の暗部を意図して表現していた印象が強くある。そして、そのあたりの三つ子の魂は今回「サイレン」のエンディング部分を〈愛に死のう〉ではなく〈愛の唄を〉と逹瑯が歌い替え、そこからエログロの概念をも呑み込んだ渾沌たる「愛の唄」へと繋げてみせるくだりで、令和最新型にブラッシュアップされ顕示されていたような気がする。

 逹瑯がガイコツマイクをつけたポールを華麗にさばきながら歌い、ミヤが粋でスリリングなフレーズをかき鳴らし、YUKKEがアップライトベースを弾き倒したジャジーなシャッフルチューン「1979」の秀逸さもなかなかで、アルバム『是空』の収録曲=20年以上も前の2003年にリリースされた曲とは思えないくらいに、それをもMUCCは今の音としてきっちりと奏でるところに痺れたのは筆者だけだろうか。その直後に最新シングルのカップリング曲「Violet」を持ってきても、何の違和感もなくするりと聴けてしまうのもMUCCの凄みを感じるところで、いかなる時代の曲でも新しいとか懐かしいとか以上に「やっぱりどれもちゃんと今のMUCCの音だなぁ」という説得力を先に感じられるところが、なにしろMUCCはツヨツヨなのである。

 「MUCCで最後になりますが、みなさん疲れたでしょ?俺もずっとみんなのライブ観てて、凄く楽しんでしまったので疲れました(笑)。でも、これで最後なんで全部置いて帰ってください。じゃあ、ちょっと次の曲はジャンプしてもらおうかな」

 ということで、先ほどのlynch.・葉月に対するマネ返しのかたちで「全員でジャンプ大会しようと思います!いいですか!!」と逹瑯が叫び、始まったのは「G.G.」。ところが、そうした葉月モノマネはひとつの呼び水でもあったようで、次曲にはアルバム『惡』に収録されていた「眩暈 feat.葉月(lynch.)」が待ち受けていた。以前にもこの曲はMUCCのライブに葉月がゲスト参加するかたちで披露されたことがあったのだが、今回の場合は逹瑯がやたらと例の《ヤリタイ!ヤリタイ!ヤリタイ!ヤリタイ!》をはさみこんで来るところが遊び心満載で最高だった(笑)

 「今日のライブを見てて、もうひとつ思ったことがあります。この場所はおまえたちに求められて出来上がってるのか、それともうちらがおまえたちを作ったのか、よくわかんないなと思いつつ。でも多分そんな境界線なんてなくて、おまえたちが俺たちだし、俺たちがおまえなんだなって思ったので、“この場所”をずっと残していきたいと思います。これからもよろしくお願いします。一緒に歌おう!」(逹瑯)

 当レポートの最初で書きだした、逹瑯の「このどうしても“はみだしてしまう”自分たちと、この“はみだすことの出来る世界”が凄く好きだなぁと思ったし、あらためてこういう場所が絶対に必要だし、愛おしいなと思いました」に続いたこれらの言葉と、ここから歌われた「ニルヴァーナ」の中の〈壊れた世界の隅っこで 僕らは空を見上げてる〉という歌詞がリンクした時、たとえ「世界の真ん中にはなれねぇ」のだとしても、それでいいと素直に思えたのはMUCCの放つ音が優しく温かい包容力を持っているからだ。MUCCは決してキレイゴトや建前を歌おうとはしないバンドだからこそ、信用が出来る。「絶望」や「断絶」や「遺書」を生み落としてきた一方で、それでも〈悲しみは沈み ほら 夜が明ける〉と歌ってくれるから、癒やされもするし受け止められる。

 ついしみじみと「ニルヴァーナ」に聴き入っていたものの、気付け時計の針は21時過ぎ。16時の開演からあっという間に5時間以上が経っており、いよいよこの【LuV Together 2024】も佳境へと向かっていくことになった。まずは逹瑯から“お祭りBOY”と紹介されて登場したキズのreikiが、MUCCの面々とともに「蘭鋳」で大暴れ。客席フロアにもモッシュピットが出現したうえ、リフトからのクラウドサーフ(コロダイ)も大量発生。

 「さっき葉月がイベント久しぶりって言ってたけど、ほんとイベントって減っちゃったよね。でも、ありがたいことに今回ソールドアウトしたし。こういうイベント、またやるわ!リア充が集まるこのギラギラした街・六本木で、今この時間にいっっっちばん眩しいのは“ここ”だろ?そうだよな!!」(逹瑯)

 この“はみだし者たちの宴”たる【LuV Together 2024】を締める曲として選ばれていたのは、これぞはみだし者たちにとってのアンセムと呼んでいいくらいの「大嫌い」で、関係者向けの事前資料には前曲に続いてのreikiにくわえ、来夢、みく、YUKI、明徳の名前のみが参加者として記載されていたにも関わらず、いざ曲が始まってみるとこの夜の全出演者がEX THEATER ROPPONGIの舞台上でこの盛大な宴をそれぞれのやり方で堪能していた。みんなちがってみんないい、という言葉がこれほど似合う図もない。

 かえすがえすも“はみだすことの出来る世界”は楽しくて素晴らしいことしきり。逹瑯がのたまったとおりに、もしまた[Love Together]もしくは[LuV Together]が執り行われることになったあかつきには、今回ここに参加することが出来なかった“あなた”ともぜひTogetherしたいものだ。

Text:杉江由紀
Photos:冨田味我、折田琢矢

◎公演情報
【LuV Together 2024 】
2024年9月16日(月/祝)EX THEATER ROPPONGI
SETLIST

1.アンティック-珈琲店-
M-1 メープルガンマン
M-2 スノーシーン
M-3 テケスタ光線
M-4 千年DIVE !!!!!
M-5 YOU
M-6 Bonds~絆~
M-7 Cherry咲く勇気!!

2.YUKI -Starring Raphael-
M-1 Gebet~祈り~
M-2 症状3. XXX症
M-3 Holy mission
M-4 eternal wish
M-5 夢より素敵な
M-6 人間不信

3.lynch.
M-1 GALLOWS
M-2 CREATURE
M-3 EXCENTRIC
M-4 斑
M-5 INVINCIBLE
M-6 MIRRORS
M-7 OBVIOUS
M-8 pulse_
M-9 EVOKE

4,.キズ
M-1 リトルガールは病んでいる
M-2 傷痕
M-3 銃声
M-4 平成
M-5 地獄
M-6 鬼

5.MUCC
M-1 睡蓮
M-2 娼婦
M-3 サイレン
M-4 愛の唄
M-5 1979
M-6 Violet
M-7 G.G.
M-8 目眩 w/ 葉月 from lynch.
M-9 ニルヴァーナ
M-10 蘭鋳 w/ reiki from キズ
M-11 大嫌い w/ アンティック-珈琲店- / YUKI-Starring Raphael- / lynch. / キズ


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