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L’Arc~en~Cielが、3月7日に東京・国立代々木競技場 第一体育館で【ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND】を開催した。
2024年2月8日の国立代々木競技場 第一体育館を皮切りにスタートしたアリーナツアー【ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND】。当初、全国4か所10公演をまわる予定だったが、全チケットがソールドアウトしたことを受け、追加公演が決定し、全国6か所15公演をまわるツアーとなった。
時を戻せば、直近のアリーナツアーは新型コロナウイルスの影響を受けて途中で中止となった2020年の【ARENA TOUR MMXX】だった。ここでは事前に聴きたい楽曲のアンケートを募集。実際に、多く演奏されてこなかった楽曲がセットリストに組み込まれていた。しかし、今回は“UNDERGROUND”というタイトルとともに“これまで披露の機会が少なかった楽曲群を掘り起こし、スポットを当てる”というコンセプトを事前に提示。どんな楽曲が出てくるのか、SNSでは予想が飛び交った。
ライブの構成は三部構成となっており、それぞれのパートで大きな見せ場が展開された。最後にhyde(Vo.)が「当時のCDを聴くと恥ずかしいなって思うんですよね。今ならもっとうまく、面白く表現できるのに」と語っていたように、現在のL’Arc~en~Cielが表現するUNDERGROUNDな楽曲たちは深化を極めていた。
会場内のステージは、前述した【ARENA TOUR MMXX】や【30th L’Anniversary TOUR】(2020年)、【30th L’Anniversary LIVE】(2021年)に引き続き、円形の回転式センターステージを踏襲していた。客席との距離もかなり近く、オーディエンス全員を正面にして歌を届けることができるセッティングだ。
ステージのLEDスクリーンには、暗闇の森に降り注ぐ雨の様子が映し出されている。段々と会場の照明が暗くなっていくと拍手が巻き起こった。オープニングムービーでは、そんな森の中に佇む古城の中に4人が入り込む。そして、地面に刻まれた“UNDERGROUND”の紋章に光を放ち、4人の前にそびえたつ大きな扉が開かれた。
すると、妙幕がかかったステージに4人が登場。約10年ぶりに演奏される「THE BLACK ROSE」(2007年)でライブが始まった。別日では「All Dead」が1曲目に据えられているのだが、一音目が同じなため、ある意味裏切りの演出だ。L’Arc~en~Cielの遊び心もここに詰まっている。シルエットと音だけで4人を追いかけた後は、妙幕が剥がれ落ち、ken(Gt.)の突き刺すような音色が響く「EXISTENCE」(2005年)へ。hydeは黒を基調とした衣装を纏っている。kenは気持ちよさそうに見上げて、ギターソロへ。そしてL’Arc~en~Cielの中でもハードロックな「THE NEPENTHES」(2000年)で猛追。kenの繰り返されるフレーズと、yukihiro(Dr.)の変拍子を支える巧いドラムの中、tetsuya(Ba.)のサムによるスラップがどんと重くのしかかる。そんなダークな雰囲気の中で「砂時計」が続いたことには驚いた。リバーブの効いたkenのギターが会場全体に広がり、hydeの抑揚ある歌声が共鳴する。Bメロからベースとドラムが合流し、そのままサビへと流れる一連のサウンドには痺れた。hydeは所々にがなり声を入れたり、表情を変えたり、歌詞に沿った仕草を入れていく。
約24年ぶりの演奏となった「a silent letter」(2000年)。静寂の中に広がるギターの音色でオーディエンスの心を落ち着け、「Ophelia」(2005年)を投下する。ここではhydeのサックスによるイントロが披露された。L’Arc~en~Cielのhydeとしてサックスを披露したのは、2008年に演奏された「LORELEY」以来16年ぶり。中々聴くことができないhydeの甘い大人な音に酔いしれるオーディエンス。kenも座りながらノリノリでコードを弾き倒していく。そして何よりもそれぞれが熱いジャジーなフレーズを弾き、4人の音に隙間がない。L’Arc~en~Cielの凄さを目に焼き付け、第1幕を締める「Taste of love」(1993年)へ。繰り返される混沌としたベースフレーズを弾き倒すtetsuyaにスポットライトが照らされる。楽曲に合わせてインディーズから愛用するZONのベースを弾く姿も一段と輝いて見えた。さらに、GoProをベースに取り付けて、手元がモニターに映し出される。ステージ下からのカメラワークでは、エキスパンドメタルから覗くhydeの姿や、yukihiroの足元も。ステージのリアルさが伝わり、28年振りに蘇った楽曲の神髄を全身で堪能することができた。
ブレイクタイムでは、シンセアレンジを施したオープニングBGMをバックに、ポリゴンで造られた古城や4人の3Dグラフィックがモニターに映っていた。「東京―!」と勢い良く張り上げた「Voice」(1993年)。ステージを縦横無尽に駆け回っているhydeだが、左手にマイク、右手では歌詞の世界を丁寧に描いている。そのまま「flower」「Vivid Colors」とメジャーな楽曲でステージを鮮やかにしていく。
「ライブが始まる前から興奮してくるのが伝わってきてね、俺も興奮している。いっぱい可愛がってあげるよ」とhydeが語ると、大きな歓声が巻き起こる。「今日はあの頃を取り戻そうぜ!」とカッコ良くタイトルコールを告げて「It’s the end」(1999年)へ。hydeのタンバリンとyukihiroのスネアの共鳴、そして哀愁溢れるkenのギターはいつ聴いても心地良い。その後に披露された「Cureless」(1995年)も28年振りに蘇った楽曲だ。kenの鋭くハイトーンな音色にtetsuyaの<夢遊病のように時を刻む針をさがしても>というコーラス、そこに吐き捨てるように<見つからない>と切なさの残るバースを刻むhyde。95年の雰囲気はそのままに、深みが増した音に感動させられたオーディエンスは沢山いただろう。「Blame」(1994年)では、ここにきてyukihiroが少し微笑みを見せているようにも感じた。kenとtetsuyaが掛け合うようなアウトロもいつもより激情的に聴こえる。そんな第2幕の最後は「叙情詩」(2005年)だ。<なびく鮮やかな君が僕を奪う>と胸の前に手を当てて優しく歌うhydeがいた。
幕間では「THE L’ArQuiz」のコーナーが展開された。今回は3択から、正解に紐づいた色をL’ライトで選択するというもの。高難易度の問題が出題され、かなりのドエル(L’Arc~en~Cielのファン呼称)がどんどんと絞られていく。正解者はスクリーンに抜かれるが、老若男女、そして海外の国旗を持ったオーディエンスの姿もあった。
そして、「GOOD LUCK MY WAY」の前奏と共にスクリーンには再び古城が映し出される。どんよりとしていた空も晴れ渡り、周りに花が咲いていく。自然と手拍子が起こり始めたところで、衣装を一新した4人がステージの花道に再び登場する。終盤戦はシングルを中心とした構成で展開されていった。yukihiroの激しいドラムロールで始まりを告げる「Killing Me」。hydeはカメラを掴み、近距離で様々な表情を見せ、オーディエンスを煽る。そして、ラストパートは<崩れない>と歌いながら横たわるという、相反するパフォーマンスをしたことも面白かった。「NEXUS 4」ではkenが飛び跳ね、上機嫌の様子だ。そんなkenの後ろにhydeがそっと近づいてkenが逃走する。hydeがステージの柱からkenを見つめるというドラマチックな場面もあった。
本日初のロングMCでは、ステージに設置されたAI同時通訳機能まで話が広がっていく。朗らかなトークの後は「まだまだ続くけどBye Bye」と次の楽曲へと繋いだ。
hydeがyukihiroの背面にそっと立ち、「ミライ」を歌い上げる。コロナ禍から紡いできたこの楽曲は、今回から声出しの解禁によって合唱が実現した。<oh, glory day our hearts forevermore>と会場に響き渡っていく。まさにその景色は、「ミライ」がL’Arc~en~Cielの新たなアンセムソングとして確立していることを実感した瞬間だった。「Link」で盛り上げた後は、「またいつかここでやりたいですね。何年経ってもまだまだ進化することができる。またいつか古い曲をやることがあったらいいな」と前向きな言葉を残したhyde。ラストは「MY HEART DRAWS A DREAM」で有終の美を飾った。
何年経っても色褪せない。そんな一言で表しきれない楽曲がL’Arc~en~Cielの中に存在している。今回の“UNDERGROUND”では、そのことを再認識させられた。hydeがぼんやりと言っていたように、他の楽曲たちもきっと演奏されることを信じて、これからの活動を首を長くして待ちたい。
Text by Tatsuya Tanami
Photo by Hideaki Imamoto/Takayuki Okada/Yuki Kawamoto/Hiroaki Ishikawa/Tomohide Sodeyama/Viola Kam
◎公演情報
【ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND】
2024年3月7日(木)
東京・国立代々木競技場第一体育館
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