<ライブレポート>RADWIMPS、国内公演で実証した日本ならではのライブの良さとリスナーの体に染みついた楽曲の存在

2024年4月26日 / 18:00

 RADWIMPSが4月13日と14日に神奈川・ぴあアリーナMMで【The way you yawn, and the outcry of Peace [Asia]】を開催した。

 現在ワールドツアーを開催中のRADWIMPSは、3月の中南米ツアーを経て、4月~5月にかけてはアジアツアーとして、日本を含むアジア7つの国と地域を巡っていく。この記事では、ツアー4日目である4月14日の神奈川・ぴあアリーナMM公演をレポートする。

 2023年のアジアツアーではライブハウスをまわったが、今年のアジアツアーの会場は各国のアリーナ。ステージに登場した野田洋次郎(Vo. / Gt. / Pf)、桑原彰(Gt.)、武田祐介(Ba)、サポートの森瑞希(Dr)、エノマサフミ(Dr)が最初に鳴らしたのは「人間ごっこ」で、ドラマティックなバンドサウンドが早速観客に届けられた。また、ミュージック・ビデオを彷彿とさせるコンテンポラリー・ダンサーによるパフォーマンスも、楽曲のカラーをより際立たせている。

 続いては「NEVER EVER ENDER」。フィジカルの快楽に直接訴求するエレクトロ・サウンドに、言語の壁を超える音楽のマジカルな力を思い知らされた。ここで、これまでライブの終盤に演奏されることが多かった「おしゃかしゃま」が早くも登場。野田の指揮の下、メンバーがソロ回しを行うのはライブでおなじみの光景だが、今ツアーでは、ツアーのメインビジュアルを使用した映像演出もシンクロした。田名網敬一によるアートワークには、「日本のバンドとして、プライドを持って世界へ出て行こう」というRADWIMPSの思いが込められているとのこと。そんなアートワークに、最新が最高のメンバーのプレイが重なっているのが痛快だ。

 「石川での追加公演が発表されましたが、元の予定では早くも、日本は今日で最後です。思いっきり出して帰ろうと思います。準備はできてるであろうな!?」という野田の一言を挟み、その後も様々な曲が披露される。中にはメンバー自ら「ちょっと懐かしい曲」と紹介していた曲もあったが、どの曲でも野田がマイクを離れたり、視線を少し上げたりすれば、サビに限らずAメロでもBメロでも自然とシンガロングが起こった。それはRADWIMPSの曲がリスナー一人ひとりの体に染みついている証であり、RADWIMPSの音楽をお守りに普段暮らしている人が今この場所に集まっているのだと、あらためて感じさせられる。圧巻の光景だ。海外のオーディエンスはライブですごく盛り上がると聞くけど、日本だって負けてないんじゃないかと思わせられる。

 「地元ということもあって、最高にアットホームな空気でできてます。来週から荒波に出るから、これに慣れすぎると……(笑)」と野田。そして「1曲、一緒に歌ってもいいですか?」という提案とともに、メンバー3人がアリーナへ伸びる花道の先端のサブステージに移動する。観客の声をより近くで感じられる場所から演奏したのは、【18祭】のために制作され、そのオリジナルver.として今年新録がリリースされた合唱曲「正解」で、全編にわたってシンガロングが響いた。曲が終わると、観客はメンバーに対して、メンバーは観客に対して拍手する。とても温かい光景だ。

 前月に中南米ツアーをまわったRADWIMPS。「向こうの声援って怒号みたいで、凄まじいものがあったんですよ。だけど日本の俺らもとんでもない力を持ってるんだってことを、ここいらで発揮しませんか? どうだい?」と野田が問うと、観客も積極的にリアクション。「よっしゃ!」と臨んだ後半は、炎がバンバン上がる中での「なんちって」からスタートした。

 その後も、ダンサーによるパフォーマンスや、サブステージにやってきた野田がステージごとせり上がる演出がインパクト大の「G行為」、スクリーン内で光が瞬く中、美しい旋律を紡ぐインスト曲「涙袋」、観客がスマホライトを灯し、会場全体が星空のようになった「スパークル」と名場面が続く。

 ライブのラストに向けて曲数を重ねていくなか、MCでは野田が、スマホを忘れて2時間ライブを楽しめること、今しかないこの瞬間を肉眼で受け止めようとしてくれることが日本のオーディエンスのいいところとしつつ、「かけがえのない時間を共有できている」と実感を語った。そして「いいんですか?」では場内が明るくなり、誇るべきオーディエンスの存在も照らされる。観客による「いいんですか?」の合唱に、野田が「いいんですよ」と歌を重ねて成り立つコミュニケーションが温かい。

 「本当に最高です。そんな輝きを顔面から溢れる君にはきっとすごい力があるから。明日からも生きてこうぜ。頑張ってこうぜ」と語ったところで、残すところあと1曲。ラストソングに選ばれたのは、2013年リリースの楽曲「針と棘」だ。野田にとっては「どうして身近な人を傷つけてしまうんだろうと、自分が嫌になった時に作った曲」で、選曲の理由については「人の言葉はどこに向かっていくのかなと、十何年前よりもさらに思ったりして」とのこと。曲中で4回繰り返される〈言葉の針を 抜いてください/心の棘を 剥いてください〉というフレーズ、ファルセットで歌われた最初の3回は儚い祈りのようだったが、地声を張り上げながら歌われたラストは腹の底からの叫びのようだった。メンバーがやりたい曲を好きに選んでいったという今ツアーのセットリスト。人間として人間を生きているからこその愛憎、その先の希望を信じる気持ちを歌い続けているRADWIMPSが、海を越えて、全ての隣人に届けたいメッセージが伝わってくるエンディングだった。

 客席からの声に応えてメンバーが再登場。すると、まず野田がこの日のライブについて「音楽と一体になれた瞬間がいっぱいあった」と語り、「俺はまだまだ、大きな音楽の海の砂浜を掘っているくらい。沖にも出られずに命を終えるんだろうなと思います。たとえ浅瀬でも、自分だけの音楽の海を探求していきたいなと心から思っています」と宣言した。

 そうして始まったアンコールの1曲目は、野田のソロ名義で3月にリリースされた「EVERGREEN feat.kZm」で、客演のkZmもサプライズ登場。kZmは中学生の頃からRADWIMPSを聴いていて、メールアドレスに「セツナレンサ」と入れるほどのファンだったらしく、野田は「20年続けてるとこういうご褒美みたいなことがあるんですね」と共作および共演を喜ぶ。さらに「これからの日本、多様性があっていいと俺は思ってて。面白い才能がたくさん出てきていて、kZmもその一人で、彼が作った音楽に俺も刺激を受けてて。いろいろな音楽がある国こそ豊かだと思う」としつつ、kZmをはじめとした新世代のアーティストへエールを送った。そして「ここからは料金に含まれていないので、好き勝手やりたいと思います」とメンバーいわく「おそらく誰も期待していないであろう曲」=「グーの音」を披露したあとは、3人がそれぞれ挨拶。

「最高でしたね。みんなからもらったパワーを世界にぶつけてきます。今日はありがとうございました!」(武田)
「みんな、どうもありがとうございました! これからアジアをまわって、一回り大きくなって日本に帰ってきます。また一緒にライブ盛り上がりましょう!」(桑原)
「また会おうぜよ! 俺は叶わない約束は嫌だから、その時まで健康で、ハッピーでいてください。泣くことよりなるべく笑うことの多い、そんなお互いの人生でありましょう」(野田)

 そして「なんでもないや」でライブは終了……と思いきや、「今日が最高だったから、特別にもう1曲やろうか」とドラムロールが始まった。嬉々としてコール&レスポンスに応じるオーディエンス。大音量の声に、マイクを通さず「ありがとう!」と伝えた野田のギターリフから始まったのはもちろん、「君と羊と青」だ。紙吹雪が舞う中、みんな笑顔で大団円。「もう1回!」コールをなかなか止めない観客も、観客一人ひとりの笑顔を確認して嬉しそうにしている桑原や武田、客席にハートを送ったりピースサインを掲げたり投げキッスしたりしていてなかなか捌けない野田も、名残惜しそうにしていたのが充実のライブの証だった。

Text by 蜂須賀ちなみ
Photos by ヤオタケシ

◎ツアー情報
【RADWIMPS WORLD TOUR 2024 “The way you yawn, and the outcry of Peace” [Asia]】
4月6日(土)・7日(日)東京・国立代々木競技場 第一体育館
4月13日(土)・14日(日)神奈川・ぴあアリーナMM
4月21日(日)成都・Dong’an Lake Sports Park Gymnasium
4月24日(水)広州・Baoneng Guangzhou Arena
5月1日(水)マニラ・Smart Araneta Coliseum
5月7日(火)香港・AsiaWorld-Expo Hall 10
5月11日(土)シンガポール・Singapore Expo
5月15日(水)台北・Taipei Music Center
5月19日(日)ジャカルタ・Jakarta Convention Center Exhibition Hall B
5月23日(木)バンコク・UOB LIVE
5月25日(土)・26日(日)ソウル・SK Olympic Handball Gymnasium
6月15日(土)石川・石川県産業展示館 4号館 ※追加公演


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