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ことし結成40周年を迎え、2024年は年頭から精力的な活動を続けているPERSONZ。デジタルシングル「FLOWER OF LOVE」を1月に配信したのを皮切りに、2月には「DEAR YOU」、3月27日には第三弾シングル「EVERY DAY IS A NEW DAY」を配信開始。また、アニバーサリーツアーとして3月からの<「HAPPY BLOOMING TOUR」PERSONZ neo ACOUSTIC SESSION>と、6月21日Zepp Nagoyaからスタートする<「40th FLOWERS」 PERSONZ 40th Anniversary Tour 2024>という、スタイルの違う2つのツアーも発表しファンを喜ばせた。
3月8日の京都文化博物館から4月20日の佐賀浪漫座まで続く全7本の<HAPPY BLOOMING TOUR PERSONZ neo ACOUSTIC SESSION>は、タイトル通りPERSONZの楽曲をネオアコースティックサウンドで奏でるライブシリーズ。各地の重要文化財や歴史的建造物を会場に、通常のバンドサウンドとは一味違うアプローチで2022年にも開催され好評を博したライブで、今回も同様のコンセプト。とはいえ、つねに進化しているPERSONZのこと。ただのアコースティックバージョンで済ませるはずもなく、前回よりさらにアイデアや遊び心、チャレンジが詰まった“neo”なステージを魅せてくれたのであった。そんな今回のツアー、5本目となる横浜公演の模様をレポートしたい。
開演時刻となり照明が落ちると、大きな拍手の中メンバーが登場。JILLはスパンコールがキラキラまばゆいロングドレスにジャケット。男子チームも細身のパンツとジャケットやシャツなど黒を基調にしたコーディネート。キメ過ぎずラフ過ぎず、だけどクールという、本ツアーの温度感がビジュアルからも感じられる。すぐには演奏をスタートせず、まずは今回のツアー前半を振り返り「どの会場も素晴らしかった。古い建造物には山形の郷土館文翔館のようにスタンディングNGの会場もありますが、今日は大丈夫」とJILL。赤レンガ倉庫は、戦後米軍に接収されたり一時期は落書きだらけの廃墟状態だったがリニューアルされて復活したと、建物の歴史にも触れる。きっと他の会場でも建物の長い歴史に敬意を表して解説しているのだろう。そして「1月から初の試みとしてデジタルシングルを配信しています。バンドサウンドで聴いてくれた方もいると思いますが、ネオアコだとこんなふうになるんだ!と楽しんでもらえたら」(JILL)と、曲を紹介。新曲「FLOWERS OF LOVE」からライブはスタートした。赤いヘッドフォンを着けた藤田勉は、テーブル状にセットされたパッドを手で叩いてリズムを刻む。4弦フレットレスのエレキベースで的確なビートを繰り出す渡邉貢、おニューだというエレアコギターでクリーンなサウンドを響かせる本田毅。全体的に抜けの良い軽やかな音作りで、JILLの歌声もよりフレンドリーな雰囲気だ。
続くMCでJILLはデジタルシングル第三弾「EVERYDAY IS A NEW DAY」のテーマに触れ、「ヘミングウェイにインスパイアされることも多いんですが、「老人と海」に出てくる漁師のように不漁が続いていてもいつも網の準備をしていないと魚は捕れない」と示唆に富んだトークを。そして、モスクワで起こったテロについては「あってはならないこと。コンサート会場でのテロなんて」と心を痛めている様子を見せたが「でも、ここは愛にあふれています」と前を向いた。
冒頭にも書いたとおり楽曲アレンジのアイデアは実に多彩で、次の曲が始まるたび驚きの連続。本田の発案でクイーンっぽくしたという楽曲は、裏のリズムを刻むバスドラとフォーキーなギターがどこか郷愁を感じさせる。演奏後にJILLが「クイーンの…「39」だっけ? 「99」?」とボケると「それはTOTO」とすかさずメンバーからツッコミが入る場面も(笑)。まだツアー途中のため詳細については避けるが、JILLがパリージョ(スパニッシュカスタネット)を取り入れてラテンアレンジに仕上げた楽曲も秀逸だった。心浮き立つようなグルーヴを醸し出す楽器チームもさすがだし、両手の親指にパリージョを装着してフラメンコダンサーのようにリズムを刻むJILLのカッコよかったこと! フィンガースナップのような動作でカリカリッとした音をはじき出すのだが、彼女の舞うような動きとパーカッシヴなリズムが一体となって、特別なインパクトを与えてくれた。
「今日は横浜だけの曲をやります」と紹介されたのは「deja vu」。ウッドブロックを思わせるパーカッシブなリズムと、指弾きによるフレットレスベースならではのポワーンと包み込むサウンドとのコンビネーションがとても気持ち良い。これまた横浜だけで演奏された曲「ひまわり」では、アコースティックサウンドながら、キレの良いカッティングとダウンピッキングで刻むベース、シンプルな8ビートというロックバンドならではの魅力を表現。手を腰にあて「背筋を伸ばしたひまわりのような」と歌うJILLの姿が、夏の日射しの中で咲き誇るひまわりの力強さに重なって見えた。
「いろんな曲があるなぁ、PERSONZ。でも定番の曲もそのままじゃ面白くない。一筋縄ではいかないですよ」という言葉通り、後半の楽曲も驚きのアレンジに。長年のファンほど「えっ、あの曲がこんなアレンジに?!」と驚くこと請け合いのナンバーも繰り出され、演奏後のJILLは「この曲がロカビリーテイストになるとはね。聴いてるみんなを見てても“やられたな”って顔をしてて、そういうのってバンドにとってもカンフル剤になる」と満足げな表情。
「(ネオアコースティックコンサートは)“この曲ってこんなだったんだ…”って、じっくり聴いてもらえるチャンス」と、JILLが小ぶりのリングベルを手に演奏された楽曲は、ほぼ1/2のテンポに生まれ変わったスローアレンジ。ゆっくりしたテンポで聴くことで、メロディーの良さやコード進行の展開など、曲のポテンシャルというか持ち味がはっきり見える。いつもライブで口ずさむくらいよく知っていたはずなのにこんな一面も隠し持っていたんだと、その曲に改めて出会い直したような気分だ。
本編ラストの曲では、JILLのソウルフルな歌唱に圧倒された。ゴスペルを想起させるような、自由で力強くてソウルフルなフェイク。演奏前のMCでは、彼女の別プロジェクト“三味線JILL屋”が平塚八幡宮で奉納演奏を行うことに触れ、「神様の前で演奏するって、自分と向き合うこと。そこには真実の自分がいる」と持論を述べたJILLだが、この時の歌にも確かに聴く人の心を動かす何かが降りていたように思う。目に見えない、形にならない波動みたいな歌のエネルギーを言葉で説明するのは難しいが、どんな場所や時代に生きていても敬虔な気持ちを抱いた時に誰しもがここに到達するんじゃないかと思わせる、国や文化を越えた祈りのような歌だった。
アンコールのMCでJILLは、全ての人にいつか訪れるであろう“急な別れ”について語った。「ある日突然存在がなくなってしまう。自分たちもあとどれくらいバンド活動できるのかなとか考えることもあって。「DEAR FRIENDS」は友達に書いた曲でした。「DEAR YOU」は“あなた”に書いた曲です」と思いを語り、最新シングル曲「DEAR YOU」を演奏。ふだんの会話のようなシンプルでわかりやすい言葉で書かれた歌詞だが、伝わってくるメッセージは紛れもないPERSONZの歌。喋っている言葉も歌う時の歌詞も同じテンションで、一貫してブレないというのは実はすごいことだ。曲の最後でつぶやくように歌われた「I Will Never Forget You」というワンフレーズが胸に刺さる。歌い終わったJILLは「泣いても絶対崩さずに歌うと決めてました。でも今日はちょっと込み上げちゃいましたね」と吐露したが、観客は大きな拍手で応える。そして「次の曲は一緒に歌ってくれないかな」と演奏されたのは「DEAR FRIENDS」。いつものビート系サウンドではなくしっとりしたアレンジで、この曲の元気成分よりも切なさのほうが際立って感じられる。観客と交代で歌うような形で進んでいき、JILLは端々にフェイクを入れて今の気持ちを綴っていくのだが、それはまさにこの日だけの“ライブ”演奏だった。とくにアウトロの「I Will Try. One More Try Again. We Will Try〜」というフェイクは、目の前のファンへ語りかけている言葉そのもので、心から頼もしく感じられた。
「すごく胸に来たライブでした。みんなもたくさん泣いてね。大丈夫。涙は乾くから」と温かい言葉を贈ったJILL。感動的に締めくくるのかと思いきや、彼女は思い出したように「そういえばみんな、もしかして2時間座ってた? 立つ?」と予定になかったアンコール3曲目「7 COLORS (Over The Rainbow)」をサプライズプレゼント。観客は笑顔で手拍子をしたり体を揺らしてリズムをとったり。サビや間奏部分で手を左右に振る場面では、カラフルなサイリウムを手にしているファンもいたが、“この曲を演奏するかどうかもわからないのにサイリウムを持ってきていたんだなぁ”と考えると、さっきのJILLのMC“いつも準備をしてないと魚は捕れない”という言葉を思い出して、クスッとしながらもなんだかヘミングウェイのストーリーが腑に落ちた気がした。
40周年を迎えながらも、まだまだ進化を続けるPERSONZ。6〜7月の<「40th FLOWERS 」PERSONZ 40th Anniversary Tour 2024>では、どんな最新型PERSONZを見せてくれるのか、ワクワクと期待感が確信を増したネオアコースティックコンサートであった。
写真:アンザイミキ/取材・文:舟見佳子
【ライブ情報】
『「40th FLOWERS」
PERSONZ 40th Anniversary Tour 2024』
6月21日(金) Zepp Nagoya
開場18:15 開演19:00
6月23日(日) Zepp Osaka Bayside
開場16:15 開演17:00
7月05日(金) Zepp Fukuoka
開場18:15 開演19:00
7月06日(土) 広島JMSアステールプラザ 中ホール
開場16:45 開演17:30
7月12日(金) Zepp Sapporo
開場18:15 開演19:00
7月14日(日) 仙台PIT
開場16:15 開演17:00
7月15日(月祝) 高崎芸術劇場スタジオシアター
開場16:15 開演17:00
7月20日(土) 高知県立県民文化ホール グリーン
開場17:00 開演17:30
7月21日(日) Zepp Haneda
開場16:15 開演17:00
<チケット>
一般 S席8,000円、A席4,000円、高校生以下1,000円(消費税込み)
『「HAPPY BLOOMING TOUR」
PERSONZ neo ACOUSTIC SESSION』
※終了公演は割愛
3月30日(土) 酒心館ホール(神戸)
開場16:30 開演17:00
4月20日(土) 浪漫座(佐賀)
開場17:00 開演17:30
<チケット>
S席7,000円 A席4.000円 高校生以下1,000円 (消費税含む)全席指定
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