<ライブレポート>ザ・クロマニヨンズ、“生”で加速する熱気と高揚感で満たした【HEY! WONDER 2024】東京公演

2024年3月14日 / 18:00

 ザ・クロマニヨンズによる、最新アルバム『HEY! WONDER』を引っ提げた全国ツアー【HEY! WONDER 2024】。コンパクトなライブハウスから3,000人収容のライブホールまで様々な規模の会場を回る全43公演の同ツアーが、2月16日の埼玉・HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1を皮切りにスタートした。

 ザ・クロマニヨンズはリリースツアーでニューアルバムから全曲、曲順どおりに披露することを信条としている。だが、ただシンプルに曲順どおりに披露するだけではないのが、4人の遊び心だ。アルバムの前半の楽曲を“A面”、後半を“B面”とレコードに紐づけ、ツアー7公演目となる東京・Spotify O-EASTでもレコードをひっくり返す瞬間の高揚感や、アルバムを聴いているときにリスナーが感じる“終わってほしくない”という気持ちを満たすギミックが凝らされていた。アルバムで描かれた物語とライブならではの躍動感が融合する、―充実感あふれるライブだった。

 真島昌利(Gt.)、小林勝(Ba.)、桐田勝治(Dr.)に続き、甲本がステージに登場すると、「オーライ! ロックンロール!」の掛け声を合図に「あいのロックンロール」でライブがスタート。楽器陣はエネルギッシュでファストなパンクサウンドを打ち鳴らし、甲本はメロディーをはみ出して叫ぶように歌う。そこに観客の歌声が加わり、会場にはみるみるうちに歓喜の渦が巻き起こった。

 ライブに赴いた際、音源では気付かなかった楽曲の魅力が見えてくる経験をした人は少なくないだろう。この日もその瞬間がいくつもあった。「大山椒魚」の曲中にタイトルをコールする箇所で“魚(うお)”が“ウォー!”という叫び声に置き換わる様子は痛快で、「ゆでたまご」はブレイクやミュートが多用されているため、精度の高い生演奏で聴くと凛々しく鋭い楽曲であると思い知る。それ以降もライブだからこそ感じられる音楽の醍醐味が、瑞々しくはじけていた。

 5曲立て続けに披露すると、甲本は「よく来てくれた!」と観客に笑顔を見せる。「どこで観ても楽しめるようにロックンロールは作られているので、安心して最後まで自分の場所で楽しんでいってください」という彼の言葉には客席から大歓声が起き、「普通のことを言いました……」と照れ笑いするシーンは幸福感に包まれていた。そんな朗らかな空気のなか桐田と甲本がアイコンタクトを取り、ボディ・パーカッションを始めて「恋のOKサイン」へ。ユーモラスでありながらピュアでロマンチックなムードのなか、アルバムのA面を締めくくった。

「B面やる前に別の何かをやろう」という言葉の後は、長きにわたり愛され続けている楽曲を畳みかける。リリース後もライブで磨き上げられている曲のため、よりしなやかで自由な演奏が繰り広げられた。真島のギターと甲本の唄によるイントロで、小林と桐田が思いのままに音に乗る場面も微笑ましい。過去曲を褪せるどころか現在進行形の青春で彩るサウンドスケープは、隅々まで妥協しないからこそ成し得る芸当なのだろう。クールで熱い小林、チャーミングでありながら思い切りのいい音でリズムを着地させる桐田、密度が高い音色を空間に焼き付ける真島、それぞれのパワーが滞りなく突き抜ける様子は風通しがよく爽快だ。

 過去曲でレコードを裏返すと、アルバムのB面がスタート。「メロディー」では甲本が一言一言に熱を込めるように歌い、〈無限にあなた”〉という詞に合わせて客席に手を差し出すさまも美しい。「くだらねえ」は4人の緊張感のある音と佇まいに、一瞬たりとも目が離せなかった。ザ・クロマニヨンズはどの曲でも全員が主人公を張るような気魄に満ちているのが特徴的だ。だからこそ観客は、身を預けるように曲に描かれた世界に入り込むことができる。マイナーコードで構成された「SEX AND VIOLENCE」はスリリングかつ妖しげなスパイ映画の中に迷い込むような感覚に陥り、3人のコーラスに乗せて甲本がブルースハープを響かせる様子は華やかなアクションシーンを観ているようだった。

「不器用」で会場を優しく包み込むと、「(アルバムの)最後の曲は最後にとっておきます。最後の曲になるまでに、何かが何個かあるぜ!」という甲本の掛け声と同時に、顔を見合わせた3人が一気に音を鳴らして再度過去曲を畳みかける。真島もステージのへりまで出てプレイし、ドラムのつなぎの最中に真島と小林がクラップをするなどして、観客との一体感もさらに高めていった。セッションとコール&レスポンスからなだれ込んだ「ナンバーワン野郎!」はこの日いちばんと言っていいほどの大合唱が起きる。3人と観客による歌と、爆音のロックンロールの中心で踊る甲本の姿には、楽しいという感情がほとばしっていた。

 甲本が「このアルバムをみんなといろんなところでやるのはすごく楽しい。今日も最高でした」と感謝を告げ、「男の愛は火薬だぜ~『東京火薬野郎』主題歌~」で本編の幕を下ろすと、アンコールでは『あいのロックンロール』のカップリング曲「SEX AND DRUGS AND ROCK’N’ROLL」などを華々しく演奏し、約90分の熱演を締めくくる。終始パワーを繰り出していくステージでありながら、ステージを下りるその瞬間まで、彼らが我々に疲れを見せることはなかった。すべてが稀有で、だけど自然なザ・クロマニヨンズ。『HEY! WONDER』を携えた旅が、今後さらに熱量を帯びて加速していくことを予感させる一夜だった。

Text by 沖さやこ
Photo by 柴田恵理

◎公演情報
【HEY! WONDER 2024】
2024年2月29日(木) 東京・Spotify O-EAST


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