<ライブレポート>The BONEZ×SiM、対極ながら似た者同士が激しくぶつかり合った【REDLINE TOUR 2023】

2024年2月1日 / 18:00

 2023年9月から全11箇所で開催されたJMS主催ライブイベント【REDLINE TOUR 2023】。全国各地にてロックバンド/グループの熱演が繰り広げられた同ツアーのファイナルを飾ったのはThe BONEZとSiM、ジャパニーズ・ラウドロックシーンの権威同士のツーマンライブだ。SiMのメンバー2名の体調不良により2024年1月17日の恵比寿ザ・ガーデンホールへと変更された同公演、会場は約2か月越しとなる“太陽”と“悪魔”の邂逅を存分に満喫しようと、開演前から興奮が立ち込めていた。

 先攻はThe BONEZ。会場が暗転すると同時にフロアからは待ち焦がれていたと言わんばかりの歓声が起こり、JESSE(Vo./Gt.)が「Love Song」を歌い出すと肩車に乗っていた観客たちは一斉にダイブを始めた。ダイナミックで華やかな立ち回りと、ヘビーでありながらも隅々まで清々しいサウンドスケープ。「Rusted Car」ではT$UYO$HI(Ba.)とKOKI(Gt.)もステージを自由に往来しながら演奏し、JESSEが締めくくりの歌詞を「ようやくREDLINE」に変えて歌い上げると、観客もその言葉に自分の気持ちを重ねるように大声で応えた。彼らのライブはモッシュやダイブ、爆音と言った刺激的な面だけでなく、琴線に触れるメロディや観客が一糸乱れず綺麗にワイパーをするなど、キャッチーな面も多数持ち合わせている。バンドの明朗さは、瞬く間に様々な垣根を溶かしていった。

 ZAX(Dr.)が「REDLINEお待たせやでー!! SiMのファンも俺らのファンもひとつになれるか?」と呼びかけると、ステージ中央に躍り出たT$UYO$HIがベースソロを弾き始め「We are The BONEZ」「Step up」と畳みかける。一貫して観客と対等のコミュニケーションを取り、観客の感情のうねりが大きくなるのと比例して4人のパフォーマンスのスケールも勢いを増していった。「Adam & Eve」ではJESSEが「そっち行っていいか?」と観客の手に支えられながらフロアの中央へと進む。演奏しながらその様子をステージから見守るメンバーも穏やかな笑みを浮かべ、会場全員がJESSEの勇姿を歓迎した。

 バンド名を“JESSE and THE BONEZ”から“The BONEZ”に変更して初めてのライブが【REDLINE TOUR 2013】であったことをT$UYO$HIが振り返ると、JESSEもライブハウスならではの楽しみ方が戻ってきた喜びなどを語り、イベントを存分に楽しもうと呼びかける。彼がギターボーカルスタイルで披露した「Thread & Needle」と「You and I」ではさらに増した音圧で会場を突き動かし、観客同士が肩を組んでシンガロングする様子を見守る4人の表情と眼差しはとても優しかった。

 「SUNTOWN」ではフロアでライブを観ていた子どもたちをステージに上げ、「この子たちがライブハウスに来る年齢になるまで、俺らでこの場所を楽しんで守ろうぜ」と呼びかける。子どもたちがステージ前までやってきたダイバーと次々とハイタッチしていく様子も非常に微笑ましい。ラスト「New Original」の混み上がる思いを全身で伝える4人の渾身のパフォーマンスは、音楽で世界平和が実現できると心の底から信じていることが十二分に伝わってきた。その思いが伝播してか、観客のウォール・オブ・デスも花火のように爽やかだ。このエネルギーはすべて、攻撃力ではなく包容力。広がる光景のすべてにぬくもりが宿っていた。

 後攻SiMはまずSHOW-HATE(Gt.)、SIN(Ba.)、GODRi(Dr.)が登場し最新アルバムの表題曲「PLAYDEAD」のイントロを弾き始めると、やおらMAH(Vo.)がステージに現れる。タイトルコールのスクリームを合図に、フロアが一斉にヘッドバンギングを始めた。胸に渦巻く苦しみや切なさを滲ませたような重厚感のある音は、この場にいる一人ひとりの心の内側を解放していくようだ。感傷的で激情的なサウンドスケープとシンガロングが胸に迫った「The Rumbling」、煽情的なキラーチューン「Blah Blah Blah」を続けざまに届け、一気に会場をSiMの空気へと塗り替えた。

 自身とSHOW-HATEの体調不良により公演が延期になった旨を詫びたMAHは、振り替え公演を実現させたThe BONEZとREDLINEに多大なる感謝を示す。そして観客に「力を持て余して来てくれたお前ら、今日はとことんやろうぜ!」「手洗いうがいをしっかりしような! そんな曲を持ってきました」とジョークを織り交ぜたMCから「Amy」へとつないだ。声色を巧みに織り込んだボーカル、SINによるステージセンターでのパフォーマンス、自由で斬新な展開とアレンジなどでさらに会場を巻き込んでいく。ダークでありながら痛快なのは、スマートにユーモアが織り交ぜられているからだ。天邪鬼なそれとエモーションで会場を翻弄する様子は非常に小気味よい。

 MAHは能登半島地震に触れて被災者を思いやると、【REDLINE TOUR】が行う募金活動に触れ「(日常を送っている)みんなも小さいことをやっていけばいいと思う」「余裕がある人は周りの人を助けてください」と続ける。そしてこの場に集まった観客に「思いっきり楽しもう」と呼び掛け、「DO THE DANCE」「KiLLiNG ME」と本編ラストまで会場の隅々までをかき回した。

 アンコールで今年結成20周年を迎えることを明かすと、「僕らもお客様あっての商売ですから、これからはカスタマーズボイスを取り入れ、神対応できるバンドにならなくてはいけない」と力強く好青年風に語り、観客にリクエストを募る。予定している楽曲のタイトルが観客から挙がらず、すべて「お断りします」とはねのけるものの、奇跡的に最後に指名した観客が曲名を的中。さらにテンションを上げて「JACK.B」を披露した。

 【REDLINE】がモッシュやダイブを楽しめるように環境作りをしていること、ザ・ガーデンホールは柵がないフラットなフロアであることに触れ、ラストの「f.a.i.t.h」では「徹底的にやれ!」とウォール・オブ・デスを促す。どうやらSiMがこの会場でライブをするのは初とのこと。新しい遊び場を見つけた少年のような彼らの高揚感が、さらに観客を無邪気に突き動かしたと言っていいだろう。止まらない歓喜の声と拍手のなか4人がステージを去り、【REDLINE TOUR 2023】は華々しく幕を閉じた。

 ここに集まった全員は、協力しながらそれぞれの音楽の楽しみ方を尊重していた。それが実現できるのも、アーティストが観客を信頼し、観客一人ひとりが自分以外の人間を慮ることができるからである。ダイブやモッシュに興じる人、前方エリアでダイバーを綺麗に流す人、最前列でフロアに足を踏み入れた演者を必死に支える人、壁にもたれかかりながら演奏を楽しむ人、最後列で音に身を委ねる人、それぞれが健やかな表情を浮かべているのも印象的だった。ライブハウスでできる音楽の楽しみ方のすべてが、この日美しく花開いていた。それはThe BONEZ、SiM、そして【REDLINE】が長い年月を掛けて育て、守り続けてきた文化と言っていいだろう。

 仲間や音楽への情熱を包み隠さず真っ直ぐに伝えるThe BONEZと、ひねくれたヒールを買って出るSiMという、対極ながら似た者同士のツーマンライブ。両者と信頼関係を築き上げてきた【REDLINE TOUR】だからこそ実現した、熱く爽快な一夜だった。

Text by 沖さやこ
Photo by Taka”nekoze photo”

◎公演情報
【REDLINE TOUR 2023】
2024年1月17日(水)
東京・恵比寿ザ・ガーデンホール


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