<ライブレポート>LiSA“声出し解禁ツアー”完遂「最高な幕開けを何度でも迎えよう!」

2023年12月28日 / 18:00

 LiSAが12月17日、東京・東京ガーデンシアターにて【LiVE is Smile Always~LANDER~】ファイナル公演を開催した。

 同ツアーは、2022年11月発売の6thアルバム『LANDER』を携えて、今年9月より全国14都市を巡ったもの。約4年ぶりの“声出し解禁ツアー”ということで、セットリストは新旧問わず、とにかく歓声を上げられる楽曲を選んだとは、本人が公演中のMCで語ったところ。この日の会場には、下は5歳、上は75歳までのファン、もといLiSAッ子が年代幅広く参加(75歳のお姉さまは「結構発光するタイプ」なオレンジ色のサイリウムを振っていた)。その全員で、前日の初日ステージまでを含む、過去18公演の熱量をすべて受け止める空間だった。

 ライブ冒頭から驚かされたのが、1曲目がまさかの「NEW ME」だったこと。同楽曲は『LANDER』でもラストナンバーなだけに、てっきり終盤に披露されるものかと想像していた。が、1コーラス目は逆光の光に照らされて、LiSAの姿がまだ見えない状態のなか、ステージから〈目を輝かせて 楽しいことを見つけられてる?〉と、あまりにもピュアな問いかけが投げかけられる。この日、LiSAの口から最初に出てきた言葉が、これだ。思わず、会場の誰もが一瞬、心をドキッとさせ、同時に“自分はどうか?”と顧みてしてしまったのではないだろうか。そんな役割を担う曲順だったとしたら至極納得だし、最初からクライマックス。陳腐な言葉だが、もう、メッセージ性の塊である。

 2曲目「紅蓮華」では、生音のピアノサウンドが、モチーフの“蓮”が持つ可憐さや切ないイメージ、そしてなによりも焦燥感を駆り立てる。LiSAは歌唱中、我々もこの楽曲を背負う当事者であると訴えんばかりに、客席の一人ひとりを指さし、鋭く視線を合わせる。サビ前の〈どうしたって!〉を客席の声に託すと、〈消せない夢も〉からは自ら歌唱。再び〈運命を〉のパスで、会場一体の〈照らして〉を浴びると、その想いを受け取り、渾身のヘドバンで応える。圧巻でしかない楽曲のパワーに、本当に一瞬一瞬に見入ってしまったし、同時に背筋が正される想いだった。

 言わずと知れた、テレビアニメ『「鬼滅の刃」竈門炭治郎 立志編』オープニングテーマ。ただもし、「紅蓮華」をアニメのみで耳にした視聴者であれば、LiSAが“運命を?”と、大きく煽りながらこのフレーズを歌うことも、ここまで客席が一体となってレスポンスをすることも。ライブでこれほど“化ける”とは思わないはず。想像を上回ってくるからだ。ぜひこの“紅蓮”の光景を目撃してほしいと強く願ってしまったし、正直に語れば「紅蓮華」と“もう一曲”は、この日のホール規模では、スケール感が追いついていないとさえ感じた。

 この“もう一曲”とは、アンコールで披露された「炎」。本当にライター失格だと内省するしかないが、「炎」については“LiSAの高い歌唱力”など、持ち合わせている言葉で語り切ることができない。確かなことがあるとすれば、歌唱後に30秒近く、客席からの拍手が鳴り止まなかったこと。そして、LiSA自身もそれを瞳を潤ませながら受け止めて、しばらくの間、動けなかったこと。そのすべてに、「炎」とはなにかが集約されていた。

 ひとつだけ付け加えるならば、弔いの意志を持つこの楽曲が、月日が経ち、楽曲が歌い続けられ、多くの人々へと伝播したことで、LiSAが見せる歌声の表情に“救済”の意味が備わったような気がした。LiSAはこの後のMCで、本ツアーを終えることに「あれから時が経って、季節がたくさん変わって。私自身も、世界も、新しくなって」「こんなに最高な今日を迎えにきた私たちを誇りに思います」と感謝を示し、深々と一礼をしてくれたが、あの作品は我々にとって、コロナ禍で毎日を諦めない“救い”となった。そんな意味で「炎」に感じた新たな印象と、『鬼滅の刃』という作品の持つ意味が重なるような感情を抱いた。

 ライブ序盤に話を戻そう。3曲目にして、早くも最高楽曲「コズミックジェットコースター」が届けられる。ここで新鮮だったのは、まだライブが始まって間もないにも関わらず、バックバンド&コーラスの“わんたんにゅーめんず”が、LiSAと同じくフロントに集まり、自由に動き回っていたこと。このときの、最強のボーカルと、最強のバンドメンバーが集まってしまった感たるや。原曲に比べると、かなり骨太なロックアレンジとなりつつ、ウェービーかつ、ピロピロとしたキッチュなサウンドのキーボードが、タイトル同様の“コズミック”なイメージを強調してくれる。冗談抜きで、血圧が上昇している感覚を覚えた。

 「最高に楽しんでいきましょう、ピース!」というライブ恒例の挨拶を挟み、ドラムのカウントを目にして、“あのBPMはもしや……”と察してしまった「アコガレ望遠鏡」。仲間の輪に入りたいが、一歩を踏み出せない。心の柔らかいところをぎゅっと締め付ける歌声は、本当に先ほどまで「紅蓮華」を歌っていたのと同じ人物だとは思えぬほど。細い腕の裏側で目元を隠し、特徴的な笑顔と八重歯を覗かせる姿が、楽曲の主人公と重なるようだった。

 この「アコガレ望遠鏡」や「紅蓮華」など、ライブ序盤はさまざまなジャンルの楽曲が入り乱れるように披露され、その様子はさながら、宇宙船から色とりどりな惑星を眺めて、その表面に上陸(ときには不時着?)するかのようだった。

 具体的には、ラメ加工のエレキギターを担ぎ、心の鬱憤を清々しさに昇華した「シャンプーソング」。都会のネオン街を思わせるボカロック調のサウンドで、リリックをハイテンポで敷き詰めていく「dis/connect」。会場に集まった全員の胸ぐらに掴みかかる勢いで、歌い終わりに「バカ野郎ー!」と叫び、フラストレーションを爆発させてもなお、満足しない表情で首を投げ出していた「悪女のオキテ」。一曲ごとの飛距離がものすごい。

 ライブ中盤になると、「DJ YK」こと、ゆーこー(Ba.)がマイクを握る。ここからは、わんたんにゅーめんずの全員に対して、彼が今回のツアーの感想を尋ねる恒例の質問コーナーに。すると、衣装を新たにしたLiSAがしれっと登場すると、ステージ前方の椅子に座り、メンバーの回答に厳しい視線を向けたり、“とあるアイテム”を使ってツッコミを入れたり……。

 このコーナー続きで、“とあるアイテム”が大活躍したのが、10曲目「た、い、せ、つ Pile up」。この楽曲が本当に最高だった。なぜなら、LiSAが満面の笑みで、サンプラーを鳴らしまくっていたから。

 このサンプラーには「やった~」や「CLAP!」「いっきま~す」など、多種類のサウンドを設定しており、形状はドラム型。バッドで叩くと同時に光り、なおかつステージ後方の映像演出が同期的に切り替わるという優れもの。タム代わりにバコバコと鳴らすLiSAの姿を見られる日がやってくるなんて。全国のビートメーカーに勇気を与える光景だった。

 そこから先は、会場全員の乗ったロケットが大気圏を突き抜けて、一気に着陸に向かうようなスピード感ある展開に。15曲目「REALiZE」では、無数のレーザーが会場の上下左右に張り巡らされていたが、この一本一本の光線が白色で、さらに定番の点滅方式ではなく、各一点集中で定点点灯されていたことが気になった。おそらく、日本語吹替版主題歌を務めた映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』に合わせて、太い蜘蛛の糸が張られた空間を演出したのだと思う。見事。またこの日最も、リズムに合わせてコールをする気持ちよさを実感したのが、疾走感こそ“高まり”と言わんばかりの「Thrill, Risk, Heartless」。

 そこからの「ADAMAS」や「ROCK-mode」には、もう誰も勝てない。特に「ROCK-mode」のギターリフは、本当に発明としか言い表せない高揚感を湧き上がらせるし、今回は大サビ前、ゆーやん(Dr.)以外のわんたんにゅーめんずとLiSAがステージ上の階段を上がり、客席に背を向けた状態からくるりと振り返ると、全員がまさかのサングラス姿に。しかも、いくちゃん(Gt.)はギラギラの装飾衣装に、カウボーイハットを。PABLO(Gt.)に至っては、ヒップホップヘッズであれば誰もが一度は見たことがあるだろう、あの“赤色のマネーガン”で万券をばら撒き散らしている。「ROCK-mode」に、よい意味でのパーティ感、もとい“治安の悪さ”が混ざると、これほどの無敵感を放ってくれるのか。

 本編最後に歌い上げたのは、“いつか幕が開ける日を願って作った”という「dawn」。今回のツアーをもって、約4年間にわたる〈永い夜〉にようやく終止符を打つ瞬間が巡ってきた。曲中や歌い終わりには「また一緒に歌ってくれて本当にどうもありがとう! こんな最高な幕開けを、一緒に迎えてくれて本当にどうもありがとう!」「この先、どんな長い夜がまたやってきても、私たちでまた、最高な幕開けを何度でも迎えよう!」と、渾身の想いで我々の心を震わせてくれた。こちらこそ、ありがとうの気持ちでしかない。

 印象的な本編最後の一曲。この位置で「dawn」が披露された意味はとても大きい。この楽曲然り、この日のツアーファイナル然り、何度でも“久しぶり”や新鮮な感覚を抱いた今回の【LiVE is Smile Always~LANDER~】。改めて本編を振り返っても、とにかく激動な流れ続きで、最後にどこに着陸をするのか予想もつかなかった。それでも我々は気づけば、LiSAとともに新しい幕開けの場所に立っていた。

 アンコール後しばらく。「来年も遊びたい?」と、ニヤニヤ顔を見せるLiSA。絶対になにかのサプライズを用意してきている……。気になる全貌は、2024年4月19日と20日、東京・日本武道館にて【LiVE is Smile Always~i SCREAM~】を開催するというビッグニュースだった。13周年の幕開けを派手に祝い、派手に叫ぶべく、当日までに喉のコンディションを整えておくべし、というお達しも。本人に代わり、こちらで情報共有とさせていただく。

 この日最後の楽曲は、ツアータイトルにちなんで「ジェットロケット」。すると間もなく、LiSAが客席に飛び出し、ファンの間をくぐり抜けながら、頭を撫でて、ハグをして、マイクを向けて歌のお手伝いを求めて、ハイタッチをして、お手製のグッズを見て「すごっ!」と声を上げて……と、とてつもない近距離で祝福をばら撒いていく。まるで、ツアーファイナルの喜びを分かち合うべく、LiSAッ子と一緒に作った幸せのアーチ。そこから、客席最前列を爆走で行っては戻り、ハイタッチを繰り返して、ステージまでの階段に足を掛けたころには、もうへとへとで腕を使ってなんとか上がりきったくらいだ。

 最後には、会場一体となり“ラララ”のシンガロングもあったのだが、LiSAが歌い終わりを宣言してもなお、客席から“まだ全然歌えますけど?”という熱い想いが滲み出ていて、ほかのアーティストと比べても本当に珍しい、スタミナとバイブス無尽蔵なファンの集まるタイプのライブだと思ってしまった。それもそのはず。暗闇の先で、LiSAと見つけた“新しい自分”は、いままででいちばん強いのだ。

Text:一条皓太
Photo: Viola Kam (V’z Twinkle)

◎公演情報
【LiVE is Smile Always~LANDER~】
2023年12月17日(日) 東京・東京ガーデンシアター 

▼セットリスト
01. NEW ME
02. 紅蓮華
03. コズミックジェットコースター
04. アコガレ望遠鏡
05. シャンプーソング
06. dis/connect
07. 悪女のオキテ
08. 赤い罠(who loves it?)
09. 逃飛行
10. た、い、せ、つ Pile up
11. シフクノトキ
12. 一斉ノ喝采
13. 1センチ
14. say my nameの片想い
15. REALiZE
16. Thrill, Risk, Heartless
17. ADAMAS
18. ROCK-mode
19. dawn

<アンコール>
20. 炎
21. ジェットロケット

 ◎公演情報
【LiVE is Smile Always~i SCREAM~】
2024年4月19日(金)、20日(土) 東京・日本武道館


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