エンターテインメント・ウェブマガジン
夢心地なトラックとエッセイのように日常を切り取ったリリックで人気を博す、町田で生まれ育った巣ごもり系マイルドラッパー・ぜったくん。最新デジタルEP『shuttle 99』も注目を集める中、10月14日に東京・渋谷WWW X、10月29日に大阪・心斎橋Pangeaにてワンマンライブを開催した。
<ぜったくん3度目のワンマンにして初の声出し完全解禁>
2021年の自身初となるワンマンライブ【Good Feeling!!!】、2022年のワンマンライブ【WAKE WE UP!!!】と毎年秋に最高な音楽空間を創造してきたぜったくんの単独公演。今年は東京と大阪で【秋のワンマンライブ2023】と題しての開催となった。ここでは東京・代官山UNITで行われたライブの模様をレポートする。
◎ぜったくん「すっごい涙してる!」初ワンマンで盟友らバンド陣とボロ泣き──生涯忘れないであろう優しい夜
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/105778
◎ぜったくん、初のフルアルバム『Bed in Wonderland』を体現するワンマンライブ【WAKE WE UP!!!】大成功
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/116984
事前に「ワンマンはいつも通り、我が家に招待する感じのライブにしたいと思っているので、本当に友達の家に遊びに行く感覚で来てもらいたい」と話していたぜったくんだが、会場にはそのモードでリラックスしながらワイワイ賑わう満員のオーディエンスが集結。SUKISHA(b)、久保佑太(dr)、タケウチカズタケ(key)、KO-ney(mpc)、キミカ(cho)、おの(cho,MNP)、中嶋優(PA)といった豪華フルバンドで軽やかにお届けされる「ビュンビュン逃飛行」「サンダループ」のグルーヴに、誰もが共に体を揺らしながら口ずさみながら満面の笑顔を浮かべていた。それもそのはず。この日の公演は、ぜったくん史上初めて観客の声出しが完全解禁されたワンマンライブだったのだ。
「わたくし、ワンマンライブを初めてやったのが2年前で。そのときはコロナ禍真っ只中で、完全にみんなマスクして、声も絶対に出しちゃダメ。シーンとした中でみんなの心だけを受け取ってライブしている状態だったので……今日、声出しできて嬉しいです! ありがとう! やってみたかったことがあんのよ、声出しで。今日はあれができる」と、みんなと嬉しそうに「Say Ho~!」「Ho~!」「Say Ho~!」「Ho~!」「Say Ho!Ho!」「Say Ho!Ho!」「どいつもこいつもでっかい声でさ、わ、げぇ~!」「いぇ~い!」と長らく封印されていたヒップホップお約束のコール&レスポンスを繰り広げていくぜったくん。「めちゃめちゃ良いです。夢、叶いました!」
コロナ禍で不要不急の外出を控えるステイホーム。それを誰もが強いられてきたあの日々の中で、ぜったくんが自宅から発信していた楽曲の数々をおなじく家の中でキャッチして聴いて過ごしていたファンたち。今思えば、その期間にぜったくんの存在と音楽を知った人がたくさんいたわけで、そこで「いつか生で聴いてみたいな、ぜったくんと会ってみたいな」と思っていたみんなが徐々にライブに足を運ぶようになり、今ようやく声を交えながら共に音楽をたのしむ瞬間へ辿り着いたわけだ。言わば、ぜったくんとそのファンによるライブの形が初めて完成した瞬間。歓喜しないわけがない。テンションが上がらないわきゃないのだ。
<お笑いも演劇も含めたぜったくん流エンターテインメント>
そんな会えない時期から双方の絆を深めてきた「NiGHT SHiFTER」「Man Say Bien」「Bad Feeling」を心ゆくままに堪能したあとは、初の試みとして[マニュアル演奏メドレーゾーン]なるコーナーが用意されていた。
新たにおの(cho)をメンバーに加え、文字通り同期を使用しないマニュアル演奏でひとつの物語(ある青年の1日)を紡いでいくのだが、まずは「今日も気になるあの子に電話するみたいですよ」と、気になるあの子を演じるキミカと「何してたの?」「ごはん食べてた」「何食べたの?」「高麗人参」「すごいトリッキーなものを食べてるんだね。健康重視なんだ」「そう。基本、そう」「今度、高麗人参食べにいくよ。真夜中の電話ってすごい楽しいね」みたいな感じでコント風味の電話トークをしながら「Midnight Call」をお届け。その後も、ふたりがデートの約束をしてドライブしながらハッピーな結末に辿り着くまでの物語に興じながら「sleep sleep」「レンタカー」「味噌つけてキュウリ食べたい」といった楽曲たちを挿入歌のように披露していく。
ぜったくんは、いわゆるインディーズ時代から電話コント的な演出をライブに取り入れており、本人いわく「そういう小芝居をずっとやっていて、当然ウケるときとウケないときがあるんですよ。それで「あのときはなんでウケたんだろう? 間が違ったのかな?」と考えてみたり」と試行錯誤しながら積み重ねてきたのが、今回の[マニュアル演奏メドレーゾーン]はそれのひとつの集大成とも言えた。みんなで歌って踊るだけでなく笑ったりドキドキしたり自分の日常と重ねて共感したり、そういうお笑いも演劇も含めたエンターテインメントをナチュラルにやってのけるのもまた彼のライブの魅力である。今回、町田の花火大会で味噌つけてキュウリ食べたふたりがこの先どうなるのか。ふたりで高麗人参を食べる日はやってくるのか。ぜひ新作としてまたライブでお届けしてもらいたい(笑)。
<「めちゃくちゃ楽しいわ。みんなのおかげだよ」>
ライブ後半では、あるバイト先の人が「私の恋って一方通行なんだよね」と言っていて、それに想いを巡らせて生み出した「一方通行、片側車線」を最新EPからお届け。片側車線を走る想い人とはどうしたってランデブーできない──そんな車を最近購入した今のぜったくんならではの発想が反映されている、切ないラブソングに身も心も委ねていると、今度は「ビタミンCの曲でございます。みんなストレス社会で生きてる。でも、ビタミンCってめっちゃストレスに効くんですって」と「orange juice」を歌い出し、日常の中で疲弊した心を癒していく。まさしく“夢心地なトラックとエッセイのように日常を切り取ったリリック”で構成された、僕らの生活に密着した楽曲たち。それをもってみんなを「なんて日だ」と思うほど元気にしてみせる。ぜったくんの日常がここにいる人々の日常と重なり合うことで、少し前に進んでいけそうな感覚になる音楽空間。なんて有意義なライブなんだろう。
その有意義さはぜったくんも感じていたようで、「ライブのことがあんまり好きじゃなかったときがあって。自分を見られることもそんなに好きじゃなかったりとか。MCミスったなとか、音程外してたなとかも思うし。でも、今日変わったよ。ありがとう。めちゃくちゃ楽しいわ。みんなのおかげだよ」とコメント。そして、本編最後の最新EP『shuttle 99』表題曲から始まったキラーチューンの畳みかけ(「Gaming Party Xmas」「温泉街」「Parallel New Days」「人間」)では、ちょっと早いクリスマスパーティーではしゃいでいたら、kou-keiも乱入する形で温泉街にも連れて行ってくれて、気付いたらみんなを新しい日々へと突き進ませる特急列車に乗せてくれて、最終的に「人間です!」とエモーショナルに叫び合っているという、ぜったくんにしか創りえないテーマパークを思い存分堪能させてくれた。それこそ「shuttle 99」の歌詞にある「あれもいいな これもいいな」と思えるちっちゃな夢やしあわせをたくさん見つけられた、この上なくハートフルな時間であった。
<泣きそうになるぐらい愛しい世界>
が、まだライブは終わらない。なんとあの世界中で愛されているギターリフをぜったくん自ら演奏する形でジャクソン5「アイ・ウォント・ユー・バック」を披露し、そのまま『ふむふむ』のテーマソングとしてもお馴染みの「キンコンカンコン」へ移行。この曲のレコーディングに参加した馬場小学校の子供たちの歌声もしっかり流しながら、ここに集いしみんなも一緒に歌いながら、ちょっと泣きそうになるぐらい愛しい世界を完成させてみせた。
そして、機長の帽子をかぶったぜったくんが「この代官山UNITという機体に乗って、皆さんの帰るべきところへ着陸します。皆さんがここで過ごした時間は永久に忘れないでしょう。僕も忘れません。機長として最後に聞きたいのは……楽しめたかい? すげぇ楽しめたかい?(もちろん大歓声)ありがとう。機長としての誉れです。ということで、最後は機長としてみんなを送り届けるぜ!」とオーラスに披露したのは、2021年も2022年もワンマンライブのクライマックスを飾ったあのナンバー「Catch me, Flag!!?」。みんなで筋肉痛になるぐらい全力で楽しげに飛び跳ねまくりながら、2021年にも2022年にも負けない爆発的な多幸感と共に【秋のワンマンライブ2023】を締め括ってみせた。「ありがとう! みんな気を付けて帰るように!」
次回はまた来年の秋だろうか。いずれにしてもぜったくんと彼の音楽を愛する者たちのストーリーは今後も続いていく。愛車・shuttle 99を手に入れ、今年は曲を書きまくっているそうなので、きっとまた互いの日常を重ね合う音楽体験をいっぱいさせてくれるはずだ。今後のぜったくんにもぜひ注目してもらいたい。
取材&テキスト:平賀哲雄
◎ぜったくん【秋のワンマンライブ2023】
2023年10月14日(土)代官山UNIT セットリスト:
01.ビュンビュン逃飛行
02.サンダループ
03.NiGHT SHiFTER
04.Man Say Bien
05.Bad Feeling
06.Midnight Call
07.sleep sleep
08.レンタカー
09.味噌つけてキュウリ食べたい
10.一方通行、片側車線
11.orange juice
12.なんて日だ
13.shuttle 99
14.Gaming Party Xmas
15.温泉街(feat. kou-kei)
16.Parallel New Days
17.人間
En1.ジャクソン5からのキンコンカンコン
En2.Catch me, Flag!!?
洋楽2024年11月22日
故マック・ミラーの遺族が、2020年にリリースされた最初の遺作アルバム『サークルズ』の5周年を記念して、2枚目の遺作アルバムをリリースする予定だ。『サークルズ』は、2018年に急逝したミラーが生前に制作していたアルバムだった。 米ピッツ … 続きを読む
J-POP2024年11月22日
Eveが、TVアニメ『アオのハコ』エンディングテーマとして書き下ろした「ティーンエイジブルー」のミュージックビデオを公開した。 現在配信中の本楽曲は、11月27日発売のニューアルバム『Under Blue』にも収録される。 ◎映像情報 … 続きを読む
J-POP2024年11月22日
TM NETWORKのドキュメンタリー映画『TM NETWORK Carry on the Memories -3つの個性と一つの想い-』が、2025年春に劇場公開される。 1984年4月21日に、シングル『金曜日のライオン』でデビュー … 続きを読む
J-POP2024年11月22日
モーニング娘。’24の一発撮りパフォーマンス映像『モーニング娘。’24 – 恋愛レボリューション21 / THE FIRST TAKE』が、2024年11月22日22時にYouTubeプレミア公開される。 一発撮りのパフォー … 続きを読む
J-POP2024年11月22日
tuki.が、2025年1月8日に1stアルバム『15』を発売する。 同作は、tuki.が15歳を迎えるまでに作ったという楽曲が収録されたアルバム。「晩餐歌」をはじめ、「一輪花」「サクラキミワタシ」「ひゅるりらぱっぱ」といった既発曲のほ … 続きを読む