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SKYEが10月8日に東京・恵比寿ザ・ガーデンホールにてライブを開催した。SKYEはメンバー全員が1951年生まれの同学年の鈴木茂(G)、小原礼(B)、林立夫(Ds)、松任谷正隆(Key)で構成される2021年10月にデビュー・アルバムをリリースした”新人”バンドだ。2022年7月には荒井由実、奥田民生、尾崎亜美らをゲストに迎え名古屋、大阪、東京でツアーを開催。この日のライブは10月6日より恵比寿ザ・ガーデンホールにて開かれている”EBISU JAM 2023″の一環でSKYEはDAY3に出演。これがバンド結成以来、初めての単独公演となった。
松任谷正隆から『今日は僕らは、ゆる〜くやるので、皆さんも楽〜うに聴いてください』で始まった新人バンドSKYEの初ワンマンライブ。先ずは挨拶代わりにとデビュー・アルバムに収録された4曲を演奏。メンバー4人は半世紀以上に渡って日本の音楽業界を支えてきた熟練揃い。1曲目の「Less Is More」は小原礼、「Dear M」は松任谷正隆、「Daydream」は林立夫、はっぴいえんどの未発表曲である「ちぎれ雲」は鈴木茂と、それぞれがリードヴォーカルを披露する。
小原から『新人バンドとしてデビューして2年経ちます。今、ニューアルバムを作っていて、8曲ぐらいは出来ている。これからしばらくは新曲やります。どうなるかわかんないですよと告げると場内から笑いが漏れる。SKYEがデビュー・アルバムをリリースしたのは2021年10月。集まったファンも、そろそろ新しいアルバムを聴きたいと思っていたところに、この新作情報。果たしてどんな曲になるのか、ここから始まる新曲コーナーに期待が高まる。
最初に演奏した「Too Old」は高齢者”あるある”を小原礼が描いたアップテンポのロックンロールナンバー。続いて、林が人生を綱渡りに例えた詞を、松任谷が曲を書いた「The Wire-walker」。ブラスをフィーチャーした60〜70年代の泥臭い洋楽ロック・テイスト漂う楽曲だ。これら新曲の演奏中は、超ベテランのはずの4人がどことなく緊張したようにもみえた。演奏を終え松任谷はどこかホッとした様子で『実は出番前に林と一生懸命に合わせてきたんです』と話し『そんなに悪くはなかったですか?』とおそるおそる客席に問う。これには大きな拍手が起こり、林も『暖かい拍手は明日への励みになります』と新曲の手応えに、こちらもホッとした表情を浮かべる。
次の2曲はバンドにとって新しい試みだったという。なんと4人がリレー形式で曲を作るというもの。まず詞を林が書き、Aメロ、Bメロ、サビを3人それぞれが書くという、まさに4人の共作。「Home Again」は松任谷の弾くピアノ・リフが印象的なミディアム・テンポのナンバー。次の曲は本年6月に配信リリースした現時点でのSKYEの最新曲「ラジオ」。シングルでは故・小坂忠の孫娘Raineがフィーチャリング・ヴォーカルで参加したが、今夜はホーン・セクションの市原ひかりが担当。FM COCOLOの春のキャンペーン用に書き下ろされ、リレー形式で書かれた最初の曲だそうで詞:林、Aメロ:小原 Bメロ:鈴木 サビ:松任谷が書いた。
新曲披露コーナーが終わると、林が本コンサートのサブタイトルの「Back to the Basics」を説明。『ここからは昔やった曲のセルフ・カバーです』と演奏されたのは細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆がメンバーの音楽ユニット、ティン・パン・アレーのファースト・アルバム「キャラメル・ママ(1975)」に収められた「JACKSON」。ビリー・エド・ウィーラーが1963年にリリースした曲で松任谷が英語詞を歌う。次は小原礼が在籍したサディスティック・ミカ・バンドのファースト・アルバム(1973)収録の「ダンス・ハ・スンダ」。小原のアグレッシブなボーカルとダンサブルな演奏で場内を圧倒。客席もやんやの大喝采で盛り上がる。
鈴木は、はっぴいえんどの2nd 「⾵街ろまん(1971)」収録の「花いちもんめ」と、ティン・パン・アレーの「キャラメル・ママ」に収録された「ソバカスのある少⼥」の2曲を披露。自身のヴォーカルとギターをじっくりと聴かせる。松任谷は大学生の頃、林に誘われ狭山にあった小坂忠の自宅に行き、そのまま小坂のバックバンド「フォージョーハーフ」のメンバーに加入。これが松任谷のミュージシャンとしてのキャリアの始まり。ここで披露されたのは1972年8月の東京郵便貯金会館でのライブ・アルバム「もっともっと(1972)」に収められた「からす」。スタジオ録音と違って失敗が許されない一発録りの現場に初めて参加し、大いに緊張したと松任谷が当時を振り返る。この日のコンサートには客席に小原礼がいて、サポートに鈴木茂が参加していたそう。この1972年8月にSKYEのメンバー4人が偶然だが同じ場所にいたのだ。まさにこのコーナー最後に相応しい曲である。リード・ヴォーカルは松任谷が担い、昨年亡くなった小坂忠への追悼も込めて「Back to the Basics」コーナーを締めた。
SKYEの魅力は全員がリードヴォーカルを取れるのに加え、熟練技ともいうべき卓越した演奏にある。サポートに3人編成のホーンセクションが入るが、殆どの曲はマニピュレーターもいれずステージで出す分厚いサウンドを4人だけの楽器で演奏する。半世紀以上に渡って音楽業界の第一線を走ってきた彼らならではだが、ステージではそんな素振りをみじんも見せず、リラックスした表情で演奏を続ける。これが実にカッコいい。「Back to the Basics」コーナーが終わるとラストまでは再び、ファースト・アルバム収録曲に戻る。ここからはアップチューンを中心に5曲を畳み込んで本編は終了。
アンコール冒頭、松任谷から『あと何枚出来るかわからないけど、僕らが年寄りの星になれるよう頑張っていくので、みなさんも付いてきてね!』とSKYEの活動継続が告げられると、客席からは大きな声援と拍手が沸き起こる。アンコール1曲目は壮大なナンバー「Always」。最後はオーディエンス全員がコーラスに参加し客席の盛り上がりも最高潮に。普通は(アンコールは)1曲なんですが『もう1曲やっていいですか?』と松任谷が申し訳なさそうに切り出す。もちろんお客さんに異存は無く『もっと!』の声が会場を埋める。『最後はしんみり終わろうかな?』と、演奏されたのはバラード・ナンバーの「BLUE ANGELS」。松任谷の情感を込めたヴォーカルで場内をうっとりさせ、SKYEの初ワンマンライブは幕を降ろした。SKYEの「〜Back to the Basics〜」コンサートは、このあと10月13日(金)にビルボードライブ大阪でも開催される。
text by 石角隆行
【セットリスト】
01. Less Is More
02. Dear M
03 .Daydream
04. ちぎれ雲
新曲コーナー;
05. Too Old
06. The Wire-walker
07. Home Again
08. ラジオ featuring 市原ひかり
Back to the Basicsコーナー(収録アルバム/発売年);
09. JACKSON (al”キャラメル・ママ/ティン・パン・アレー”1975年)
10. ダンス・ハ・スンダ (al”サディスティック・ミカ・バンド”1973年)
11. 花いちもんめ (al”⾵街ろまん/はっぴいえんど”1971年)
12. ソバカスのある少⼥ (al”キャラメル・ママ/ティン・パン・アレー”1975年)
13. からす (al”もっともっと/⼩坂忠とフォージョーハーフ”1972年)
14. Reach Out To The Sky /15.どちらのOthello /16.川辺にて/
17. マイミステイク/18.ISOLATION
<ENCORE>
19. Always
20. BLUE ANGELS
※M01〜04、M14〜20=1stアルバム『SKYE』収録曲
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