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2023年7月15日、the GazettEが最新アルバム『MASS』を提げた一連のツアーのファイナル公演【the GazettE LIVE TOUR2022-2023 MASS “THE FINAL”】を東京・日本武道館で開催した。
彼らが日本武道館のステージに立つのは約8年ぶり。そして、この日のライブは久しぶりとなる声出し可の公演。コロナ禍真っ只中の2021年にリリースされた『MASS』の楽曲たちがファンの声援と一つになることがついに実現したという意味でも特別な一夜となった。
会場が暗転し、メンバーが登場すると、この日を待ちわびていたファンの声援が瞬時に会場中に響き渡る。いざ「BLINDING HOPE」が始まると、その重厚で壮大なバンドサウンドが武道館を揺らしていく。1曲目から凄まじい迫力だ。そのままアルバムと同様に「ROLLIN’」に突入すると、クラップやジャンプ、そしてヘッドバンギングの嵐がフロアに巻き起こる。安心感すら覚えるこの力強いオーディエンスのパワフルな暴れっぷりもさすがだ。
一体感を生むグルーヴが印象的な「NINTH ODD SMELL」を終え、RUKIのMCへ。
「ツアーファイナル、日本武道館へようこそ!8年ぶりにここに帰ってきました。このツアー、今日が声出すの初めてじゃん?思った以上に感動した(笑)。今日は規制も何も無いからさ、声枯れるまでいけよ!気合い入れてかかってこい!」
そこから、RUKIのボーカルテクニックが光るアグレッシブな「DAWN」で獰猛に駆け抜け、戒のパワフルなドラムが牽引する「HOLD」で会場の熱量をさらに爆発させていく。「裏切る舌」ではライブ感と艶めかしさが共存し、「NOX」では特徴的に取り入れられたストリングスがヘヴィネスと心地よく混ざり合う。
怪しげな「13STAIRS[-]1」が始まるとイントロでどよめきが起きる。そこに続く形で、轟音の中を漂うような不思議な浮遊感を覚える「DRIPPING INSANITY」、そしてまるで蜘蛛の巣のようなレーザー演出が楽曲のミステリアスさを引き立てていた「濁」とダークな楽曲が立て続けに繰り出され、会場が漆黒に染め上げられた。
直前の空気から一転、壮大で幻想的な「THE PALE」、そして麗と葵が奏でるアコースティック・ギターの音色が温かく沁みる「MOMENT」と『MASS』の中でもメロディアスな楽曲が心に訴えかけてくる。この表現力の幅広さもthe GazettEのライブの大きな魅力と言えるだろう。
「みんなは分からないかもしれないけど、武道館に立った人はみんな言うと思う。みんなの声が上から降ってくるのよ。みんなの声に包まれてライブをやれてるわけだよね。それがたまらなく気持ちいいです」と久々に聞くファンの声援を噛みしめるようにRUKIが語る。「武道館は結構急な坂になってるので、たまに転げ落ちるという話も聞きます。気をつけてね。なにせ、みんなにはハッピーに帰ってもらいたいからね。だけど、暴れるのは辞めないぜ?」という言葉で会場の熱量がさらに上昇した気がした。
そして、RUKIの煽りから流れるように怒涛の後半戦がスタートした。「BARBARIAN」、「FRENZY」と『MASS』収録のスピードチューンを畳み掛けると、今度はおなじみのコール・アンド・レスポンスを経て「ATTITUDE」で大量のヘッドバンギングを誘発。こちらの体力を確実に削りに来ているような曲順だが、それが心地よい。
最終盤は前作『NINTH』から、シンガロングやクラップ、ジャンプなどライブの魅力が詰まっている「ABHOR GOD」を叩きつけ、パンキッシュな「UNFINISHED」でエモーショナルに疾走し、力強いメロディを響かせる形でステージを締めくくった。
アンコールに応え、まずは楽器隊の4人がステージに再登場。「また、こうしてみんなの声が聞けて本当に嬉しいです!ありがとうございます!もう、明日のことなんて考えなくていいから、今日はとことん、いけるとこまでいこう!」と戒が呼びかけ、久々の披露となった「GO TO HELL」に突入する。コール・アンド・レスポンス、そしてREITA(Ba.)の煽りが再び会場に火を付ける。
RUKIが合流すると、今度はインディーズ時代の名曲「赤いワンピース」と「貴女ノ為ノ此ノ命。」が投下される。どちらもイントロで悲鳴のようなどよめきが発生。前者では懐かしさも感じるファンの振り付け、後者では会場全体が一つになったような盛大な大合唱が印象的だった。
ここでRUKIが「今日やっと数年ぶりにみんなの声が聞けて本当に嬉しかったです。ありがとう。今までの想いはSNSとかじゃなくてこのステージで話すと決めていたから、少し聞いてください」と語り始める。コロナ禍に入り、それまでの当たり前が突然すべて奪われていくような感覚になったこと。そんな日々にも終わりが来ると信じて希望を込めて創った作品が『MASS』だということ。バンド活動にかける想いと覚悟、そしてファンへの感謝を真摯に話すRUKI。「(the GazettEが)どんな時も強い気持ちでいれた理由、自分たちのバンドの在り方を貫けた理由はたった一つだけです。それは、ここにいるお前ら、みんなが居たからです。それに尽きます。このバンドを信じて、それをカッコいいと思ってついてきてくれる人がこの武道館いっぱいにいるんだよ。みんなを心から愛してるし、世界一カッコいいファンだと誇りに思います」という言葉は会場にいた全員に届いただろう。「改めて、ここまでついてきてくれて、the GazettEを愛してくれて本当にありがとう」というメッセージには会場全体から拍手が鳴り響いた。
そして、MCの感動的な余韻を吹き飛ばすように戒のドラムと共に始まったのは「INSIDE BEAST」。そのダンサブルなデジロックサウンドでフロアを揺らすと、今度は「Hyena」で爆走。突進するような破壊力のリフがエネルギーを爆発させる。だが、まだアンコールは終わらない。狂乱的ヘヴィチューン「UGLY」がさらに追い打ちをかけるように始まり、会場はヘッドバンギングの海と化す。バンドもファンも持っている力を振り絞るかのように暴れている光景は圧巻だ。最後に、このバンドのライブにもはや欠かせない楽曲となっている「TOMORROW NEVER DIES」で大団円を迎え、バンドはステージを去った。
自然とダブルアンコールを求める声が聞こえてくる。久しぶりの声出し、そしてこれだけのパフォーマンスを観たのだから、それは当然かもしれない。メンバーが再登場すると、RUKI以外の4人もそれぞれ『MASS』のツアー、そしてこの武道館公演に対する想いをフランクにオーディエンスに伝えた。中でも特にREITAの「この長いツアーで、制限ばかりあったにもかかわらず、全力で楽しんでくれたみんなには感謝しかありません。ここ数年、思い通りにいかないことも多々ありましたけど、改めてライブの魅力に気付かされました。俺たちの特別で大切な場所はこれからも守り続けるので、ついてきてください」という言葉は個人的に特に感動を覚えた。
RUKIが「初めて俺らがこの武道館に立ったときに最後に演った曲です。聞いてください」という紹介からインディーズ時代のシングル「未成年」が始まる。切なさがあふれるメロディが涙を誘う初期の名曲で、過去にも節目のライブにおいてファンに感動を与えてきた楽曲だ。そして、正真正銘のラストに選ばれたのは『MASS』の収録曲から「LAST SONG」。コロナ禍での様々な想いや願いをかけてきた壮大な音像はフィナーレにぴったりだ。<彷徨う声 此処で またあの日の様に叫んで>という歌詞がこの日解禁された声援を想起させる。このクールでヘヴィなサウンドで大ボリュームの日本武道館公演は幕を閉じた。
「センキュー武道館!」
声援と共についに完成形を見ることができた『MASS』という作品の世界観だけでなく、the GazettEというバンドの持つ信念、そしてファンとの絆が色濃く現れた、忘れることのできない感動的な一夜だった。終演後に発表されたクリスマスライブ、そして2024年のリリースに対する期待感は増す一方だ。
Text:Haruki Saito
Photos:田辺 佳子、上溝恭香、日吉純平、林 雅子
◎公演情報
【the GazettE LIVE TOUR2022-2023 MASS “THE FINAL”】
2023年7月15日(土)東京・日本武道館
<セットリスト>
SE. COUNT-10
1. BLINDING HOPE
2. ROLLIN’
3. NINTH ODD SMELL
4. DAWN
5. HOLD
6. 裏切る舌
7. NOX
8. 13STAIRS[-]1
9. DRIPPING INSANITY
10. 濁
11. THE PALE
12. MOMENT
13. BARBARIAN
14. FRENZY
15. ATTITUDE
16. ABHOR GOD
17. UNFINISHED
アンコール
18. GO TO HELL
19. 赤いワンピース
20. 貴女ノ為ノ此ノ命。
21. INSIDE BEAST
22. Hyena
23. UGLY
24. TOMORROW NEVER DIES
ダブルアンコール
25. 未成年
26. LAST SONG
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