<ライブレポート>玉置浩二、過去最大規模のシンフォニックツアー完走 沖縄の地に響いた珠玉の歌声

2023年6月30日 / 12:00

 今年でシリーズ9年目となる玉置浩二のシンフォニックコンサート【玉置浩二 LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2023 “Navigatoria”】ツアーファイナルとなる沖縄公演が、2023年6月3日に沖縄コンベンションセンターで、6月4日に那覇文化芸術劇場なはーとで2日間にわたり開催された。

 シリーズ最大規模の全18公演となった本ツアー【Navigatoria(道標)】は、2月に東京芸術劇場で幕を開け、ビルボードクラシックス初開催となる沖縄が千秋楽の地に選ばれた。台風2号の接近に伴い、一時は開催が危ぶまれたが、6月2日に予定されていた那覇文化芸術劇場での公演を2日後の6月4日に振り替えることで両会場での開催が叶った。日程の延期に伴い行われたチケットの再販売は受付開始からわずか数分で完売となり、沖縄においても本公演の注目度の高さが伺えた。

 沖縄公演で演奏を担ったのは琉球交響楽団。沖縄在住の楽団員を中心に構成されており、指揮を執るのは創設の準備段階から携わり、2016年からは音楽監督も務めている大友直人。今、大友が最も力を注いでいる楽団のひとつだ。本公演に先立って、各地の公演会場では琉球交響楽団の紹介コーナーが設置され、活動資金を支援するためのキーホルダーも販売されるなど、全国にその活動が広められていた。

 コンサートのオープニングを飾るのは玉置が平和への祈りを込めて作曲した管弦楽曲「歓喜の歌」。さざなみのように繰り返される祈りのモチーフがやがてひとつの大きな波となり、詰めかけた聴衆をオーケストラの壮大な響きの中に包み込んだ。その後、大友の誘いを受け、玉置が12年ぶりに沖縄の舞台に降り立つ。刹那、満員の観衆が息を呑む。まるで時が止まったような静寂に包まれた直後に場内の熱が一気に高まり、会場はこの日最初の熱狂に包まれた。

 シンフォニック公演では初披露となった「あなたがどこかで」は、安全地帯の最新シングル曲。ストリングスの優しい音色に呼応するかのように、玉置が紡ぐ繊細な歌声が、聴衆の心にあたたかな光を灯した。続く「Friend」では情熱と哀愁で聴く者の心を感傷的に呼び覚ます。この歌声の陰影こそが、玉置が稀代のヴォーカリストと呼ばれる所以なのだろう。

 第2部の冒頭では、沖縄公演のために用意された特別プログラム、琉球交響楽団による「沖縄交響歳時記 第三楽章 夏」の特別版が演奏された。ビルボードクラシックス公演でもお馴染みの作編曲家、萩森英明によって作曲された、沖縄民謡の旋律をふんだんに取り入れた琉響のオリジナル作品だ。琉球交響楽団は、地方オーケストラの中でもとりわけ地域密着型の楽団であり、沖縄の伝統的な音楽文化を尊重しながらクラシック音楽の演奏活動を続けている。この曲からどこか誇らしげな響きが聴こえるのは、そんな琉響だからこそなのだろう。

 本ツアーでライブ初披露となった「愛の戦友」では、オーケストラの重厚なサウンドとともに力強い歌声で懸命に愛を訴える玉置の姿が真に迫る。「ワインレッドの心~じれったい~悲しみにさよなら」と安全地帯の名曲をメドレーで歌い上げ聴衆の心を鷲掴みにした後、「JUNK LAND」では細かなビートに合わせ畳み掛けるように歌う玉置と雄大なオーケストラの響きが躍動感溢れるアンサンブルとなり興奮を掻き立てた。

 「夏の終りのハーモニー」で感動的なフィナーレを迎え、万雷の拍手に応えてアンコールは、琉球交響楽団の演奏によるベートーヴェンの交響曲第6番「田園」からはじまった。次第に玉置の代表曲である「田園」へと変容する秀逸なアレンジメント。駆け足で姿を現した玉置を見るや聴衆は総立ちとなり、「愛はここにある、沖縄にある」と歌詞を替えて歌った最後のフレーズで盛り上がりは最高潮に達した。続く2曲目のアンコール「メロディー」の終盤、玉置はマイクを置き、観客ひとりひとりに語りかけるように歌う。生の歌声から一音一音のエネルギーを直に感じ、会場は底知れぬ感動に包まれた。この歌声に心を震わせない者はいない。

 いつまでも鳴り止まないスタンディング・オベーション、歓声、そして沖縄ならではの指笛。玉置は幾度もカーテンコールに応え、そして共にステージに立った大友直人と琉球交響楽団に惜しみなく賛辞を送り続けた。2015年に行われた初のシンフォニック公演から共演を重ねてきた玉置と大友、そして大友とともに歩んできた琉球交響楽団という三者が同じ舞台でひとつの音楽を奏でる、まさに奇跡の一夜と呼ぶにふさわしい公演だった。

 「愛を、世界の平和のために」。沖縄の地で玉置が歌い上げた祈りの言葉は、この日の感動とともに間違いなく聴衆の胸に刻まれたことだろう。そこに新たな伝説が生まれ、愛と平和を道標に掲げた彼の旅は続いていく。

◎公演情報(終演)
【玉置浩二 LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2023 “Navigatoria”】
セットリスト
M1 歓喜の歌
M2 あこがれ~ロマン
M3 GOLD
M4 キラキラ ニコニコ
M5 MR.LONELY~All I Do~サーチライト
M6 あなたがどこかで
M7 Friend
M8a ドビュッシー作曲:小組曲より 行列(管弦楽版)※沖縄公演を除く
M8b 萩森英明作曲:沖縄交響歳時記 第三楽章 夏(特別版)※沖縄公演のみ
M9 愛の戦友
M10 行かないで
M11 ワインレッドの心~じれったい~悲しみにさよなら
M12 JUNK LAND
M13 夏の終りのハーモニー
EC1 田園
EC2 メロディー

2月23日(木・祝)東京芸術劇場 コンサートホール
2月24日(金) 東京芸術劇場 コンサートホール
3月4日(土) フェスティバルホール
3月5日(日)フェスティバルホール
3月15日(水)愛知県芸術劇場 大ホール
3月23日(木)福岡サンパレス ホテル&ホール
3月30日(木)東京国際フォーラム ホールA
4月13日(木)高崎芸術劇場 大劇場
4月24日(月)札幌文化芸術劇場 hitaru
4月25日(火)札幌文化芸術劇場 hitaru
4月28日(金)兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
4月29日(土)兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
5月5日(金・祝)熊本城ホール メインホール
5月15日(月)フェスティバルホール
5月16日(火)ロームシアター京都 メインホール
5月25日(木)東京ガーデンシアター
6月3日(土)沖縄コンベンションセンター 劇場棟
6月4日(日)那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場 ※台風接近のため2日(金)から延期

https://billboard-cc.com/classics/tamaki-navigatoria/

台風2号の接近に伴うチケット払戻しを受付けています。
(払戻し受付期間:2023年6月21日(水)10:00から7月12日(水)23:59まで)


音楽ニュースMUSIC NEWS

故マック・ミラー、遺作AL『バルーンリズム』が『サークルズ』5周年記念日にリリース決定

洋楽2024年11月22日

 故マック・ミラーの遺族が、2020年にリリースされた最初の遺作アルバム『サークルズ』の5周年を記念して、2枚目の遺作アルバムをリリースする予定だ。『サークルズ』は、2018年に急逝したミラーが生前に制作していたアルバムだった。  米ピッツ … 続きを読む

Eve、TVアニメ『アオのハコ』EDテーマ「ティーンエイジブルー」MV公開

J-POP2024年11月22日

 Eveが、TVアニメ『アオのハコ』エンディングテーマとして書き下ろした「ティーンエイジブルー」のミュージックビデオを公開した。  現在配信中の本楽曲は、11月27日発売のニューアルバム『Under Blue』にも収録される。 ◎映像情報 … 続きを読む

TM NETWORKのツアーに密着、デビュー40周年ドキュメンタリー映画の公開決定

J-POP2024年11月22日

 TM NETWORKのドキュメンタリー映画『TM NETWORK Carry on the Memories -3つの個性と一つの想い-』が、2025年春に劇場公開される。  1984年4月21日に、シングル『金曜日のライオン』でデビュー … 続きを読む

モーニング娘。’24が初登場、「恋愛レボリューション21」を披露<THE FIRST TAKE>

J-POP2024年11月22日

 モーニング娘。’24の一発撮りパフォーマンス映像『モーニング娘。’24 – 恋愛レボリューション21 / THE FIRST TAKE』が、2024年11月22日22時にYouTubeプレミア公開される。  一発撮りのパフォー … 続きを読む

tuki.、「15歳になるまでに作った曲」を集めた1stアルバム『15』リリース決定

J-POP2024年11月22日

 tuki.が、2025年1月8日に1stアルバム『15』を発売する。  同作は、tuki.が15歳を迎えるまでに作ったという楽曲が収録されたアルバム。「晩餐歌」をはじめ、「一輪花」「サクラキミワタシ」「ひゅるりらぱっぱ」といった既発曲のほ … 続きを読む

Willfriends

page top