<ライブレポート>マハラージャン、満員御礼の日比谷野音で魅せた初の野外ワンマン【日比谷大宴会~外~】

2023年6月8日 / 12:00

 マハラージャンが、初の日比谷野音ワンマン公演【日比谷大宴会~外~】を5月27日に東京・日比谷公園大音楽堂で開催した。

 この日は、マハラージャンがこれまでにリリースした全31曲を披露することが事前告知されており、YouTubeにて生配信が実施された記念すべき公演となった。爽やかな天候に恵まれた日比谷野音には、後ろまでびっしりとオーディエンスが集っていた。開演前には、所属事務所の社長corin.氏より終日撮影OKや声出しルールなどについてユーモア溢れる事前アナウンスが。そのままオンタイムを迎えると「心のきれいな人だけに見える音楽の精霊達をお呼びしましょう!」という掛け声とともに、運動会でよく耳にする「天国と地獄」のSEが流れ出し、ステージ後方に設置してある大きな雛壇に、黄色い衣装の胸にリリースされたタイトルの略称を記した“31曲分の音楽の精霊達”が、曲に合わせて登場。会場からは自然と手拍子が沸き起こり、何が起こるのか予想できないマハラージャンらしいシュールな演出で、さっそく期待感に包まれる。

 “音楽の精霊達”が定位置に着くと、テクノ調のSEに切り替わり、バンドメンバーの小川翔(Gt.)、皆川真人(Key.)、まきやまはる菜(Ba.)、澤村一平(Dr.)、小田原 ODY 友洋(Cho.)、TIGER(Cho.)、竹上良成(Sax.)、真砂陽地(Tp.)、高井天音(Tb.)の9名が登場し「貞☆子」のイントロを奏で始める。そこに満を持して、頭にトレードマークのターバンを巻いたマハラージャンが登場すると、観客はオールスタンディングで拍手と歓声が起こる。マハラージャンの「楽しもう!」という掛け声とともに、コロナ終息後の日常に想いを馳せた同曲で軽快に幕を開けた。サビでは観客と一体となって左右に手を振り、〈来るよ 来るよ来るよ/そんな日が〉というフレーズではシンガロングが沸き起こった。曲終盤では「そんな日来ました!」と嬉しげに投げかけ、1曲目からパワフルで喜びに満ちたステージに胸がぎゅっと掴まれた。

 勢いは止まることなく、立て続けに「僕のスピな人」「示談」「地獄Part2」と怒涛のキラーチューンを炸裂。会場中を踊らせ、喜びと気迫を感じさせるグルーヴィーなパフォーマンスで盛り上がりはすでに最高潮だ。華やかなブラスやコーラスが加わり気合いの入ったバンドサウンドに、曲が終わるごとに退場するシュールなステージ上の“音楽の精霊達”とマハラージャンもノリノリで耳も目も序盤から楽しい。「飛んだり跳ねたりできますか!」と投下した「適材適所」では、遠吠えのようなシャウトを日比谷中に響き渡らせ会場をぶち上げた。

 MCでは「コロナ禍でデビューした私マハラージャン、最初は何十人かを相手にやらせてもらってましたが……野音でやってます!」と喜び前面に感謝を述べ、テンポ良く「全曲やります!」と伝えると観客から拍手が送られた。そのままテンションは増していき「次行くよ」から「いうぞ」までノンストップで立て続けに披露。まだ明るい日比谷野音にぴったりなポジティブなダンスナンバーで魅了し、会場中のオーディエンスを踊らせた。

 再びのMCパートでは「本当のライブだったら大体真ん中ぐらいですね……まだ前半です!(笑)」との言葉に会場は笑いと拍手に包まれ、温かい雰囲気に。そしてライブで一回も披露したことない曲も披露する旨を口にすると「自意識過剰」「よそはよそ」を初披露。曲間で「声が出せるようになりましたよみんな!」と投げかけ「声、出してもいいですよ」とそっと囁き、その流れで「僕のムンクが叫ばない」を投下する。続けて、インディーズ時代以来に披露された「おかしくなった人」は、少しずつ日が落ちはじめた日比谷野音に絶妙にマッチしていた。そしてそこから「何の時間」「いいことがしたい」「ちがう」「単純な作業」のメドレーを披露。自身は“変な歌”とMCで自分の楽曲について紹介していたが、持ち前の抜群な音楽センスと絶妙にシュールな歌詞で、全員を踊らせることができる唯一無二のかっこよさがそこにはあった。

 バンドメンバーがステージからはけ、アコースティックギターを手に持ち替えたマハラージャンがステージ上にひとり残ったスタイルで始まったこの日3度目のMCパートでは、観客を着席させると、おもむろに「みなさんは、別れた恋人の歯ブラシで便器を磨いたことはありますか……?」と質問を投げかけ、次の曲を予感させてのアコースティックパートへ。「君の歯ブラシ」では途中、ギターの3弦が切れるというアクシデントもあったがパフォーマンスは止めず、ギターをかき鳴らしながらソウルフルに熱唱し、最後まで歌い上げた。その後、徐々にコーラスやギター、キーボードとバンドメンバーを増やしていき、「比べてもしょうがない」「空ノムコウ」「遠回り」のアコースティック・バージョンを、夕暮れ時が似合う爽やかなアレンジで披露し魅了していった。

 ライブ終盤に差し掛かると、「それにしても今日はみなさん本当にありがとう!」「知ってました? この野音、100周年なんですって!」と伝え「100年の歴史にいい音楽を刻みたいです!」「そろそろ踊りたくなってきてませんか?」とスタンディングを促し、その流れのままカウントが始まると、マハラージャンのシャウトと、バチバチなバックバンドが織りなす熱狂的イントロで「正気じゃいられない」を披露し、会場のボルテージはうなぎ登りに。「みなさんは鼻の奥に米が入ったことはありますか?」と思わず突っ込みたくなるMCから始まった「鼻の奥に米がいる状態」、アンセム的ナンバー「エルトン万次郎」、そして「eden」までノンストップでパフォーマンスし会場中を踊らせた。

 日が落ち、ライトがまばゆいステージで「実は気づいている人もういると思うんですけど、黄色い精霊達が少なくなってきました。間もなく終わっちゃうわけです」と口にすると観客から残念がられるシーンも。そして唐突に「じぇ!」とバンドメンバーや黄色い精霊達、観客に向けコール&レスポンスをした後、そのまま「持たざる者」へ。後ろの精霊達も踊り出し、いいバイブスのまま「その気にさせないで」「くらえ!テレパシー」と立て続けに披露し、観客を踊らせ会場を大いに盛り上げた。

 「振り返ってみると、ここまで30曲やりました」「コロナ禍でできた曲が多くて、みんなの気持ちもどっか乗っかってたら嬉しいです。コロナ禍お疲れ! まだいろんな事がありますけど、頑張っていきましょう!」と語ると、ラストはメジャー・デビュー曲「セーラ☆ムン太郎」を披露。自然とクラップも沸き起こり、サビをコール&レスポンスをするシーンも。アウトロのメンバー紹介では各メンバーのソロが光り、カラフルなステージでハッピームード満点な盛り上がりのなか「最高でした! ありがとう!」と感謝をしきりに伝えステージを後にした。

 鳴り止まない拍手で迎えたアンコールでは、夏に開催されるビルボードライブツアーと冬の全国ツアーの開催を発表した。さらに、7月14日には新EP『蝉ダンスフロア』をデジタル・リリースすることを解禁し、「これからもいい音楽作ります!」と投げかけた後、新曲「蝉ダンスフロア」を初披露。全32曲、約150分におよぶ初の日比谷野音ワンマンを締めくくった。そして、最後は滅多に撮らないという集合写真を記念で撮影し、マイクを通さずマハラージャンの地声で「本当にありがとうございました!」と観客へ感謝をたっぷりと伝え、公演は幕を下ろした。

Text:Rumi Miyamoto
Photo:中島たくみ

 ◎公演情報
【日比谷大宴会~外~】
2023年5月27日(土) 東京・日比谷公園大音楽堂

 ▼セットリスト
1. 貞☆子
2. 僕のスピな人
3. 示談
4. 地獄Part2
5. 適材適所
6. 次行くよ
7. ねぇ、ねぶって
8. 権力ちょうだい
9. 行列
10. 先に言って欲しかった
11. いうぞ
12. 自意識過剰
13. よそはよそ
14. 僕のムンクが叫ばない
15. おかしくなった人
16. 何の時間
17. いいことがしたい
18. ちがう
19. 単純な作業
20. 君の歯ブラシ
21. 比べてもしょうがない
22. 空ノムコウ
23. 遠回り
24. 正気じゃいられない
25. 鼻の奥に米がいる状態
26. エルトン万次郎
27. eden
28. 持たざる者
29. その気にさせないで
30. くらえ!テレパシー
31. セーラ☆ムン太郎
En1. 蝉ダンスフロア


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