<ライブレポート>シド、『海辺』と共に伝えたファンへの愛「ずっと“ありがとう”と思いながら歌ってました」

2023年5月19日 / 15:00

 シドが、最新アルバム『海辺』、そしてバンドの結成20周年を掲げたツアー【SID 20th Anniversary TOUR 2023 「海辺」】を2023年5月13日に東京のZepp DiverCity TOKYOで締めくくった。

 会場が暗転し、SEが流れる中マオ(Vo.)、Shinji(Gt.)、明希(Ba.)、ゆうや(Dr.)が一人ずつ登場。この時点で会場にはファンの大歓声が響き渡っている。オープニングを飾ったのは、『海辺』の1曲目である「軽蔑」。少しダークで情熱的なサウンドが光る名曲だ。オーディエンスも楽曲のシンガロング・パートに全力で応える。続く「大好きだから…」では生々しく狂気的な詞世界がステージ上のスクリーンを交えたゾクゾクする演出で表現される。

 「シドでーす!元気?」とマオが呼びかける。2023年1月に約1年2か月ぶりにシドとしてのライブ活動を再開したマオ。「すっごい楽しみにしてきました今日。どれくらい楽しみだったかと言うと、遠足くらい。子供の頃の遠足ってすごかったじゃないですか?あれくらい楽しみにしてきました」と語る彼の姿から、この日にかける想いが伝わってくる。

 ブラスが際立つ「13月」、そしてクラップが一体感を生んだメランコリックな「街路樹」と、『海辺』の中でも歌謡曲的な哀愁が感じられる楽曲が立て続けに繰り出される。もともとは2022年の3月に“令和歌謡”という新たなジャンルを掲げる形でリリースされた同作。そこからマオの喉の不調によるライブ活動休止やコロナ禍の影響で期間が空いた上で開催されたのが今回のツアーというわけだが、MCで明希が「ツアーのために作品を改めて聴き直して、作品と向き合うのはなかなか無い経験」とポジティブな解釈をしていたのが印象的だった。

 「最新作の中でも人気が高い曲」とメンバーが語った切ないバラード「白い声」が披露されると、そこに繋げるように2014年リリースの温かいバラード「hug」へと続く。当たり前かもしれないが、同じバラードでも魅せてくれる情景や空気感が全く異なる。改めてシドの表現力の幅広さを実感したブロックだった。

 内に秘めた情熱がどんどん溢れ出てくるような展開、そして中華的なフレーズが耳に残る「慈雨のくちづけ」を経て、楽器隊のソロ・コーナーに突入する。ゆうやのダイナミックに様々なジャンルを渡り歩くドラムソロに始まり、オーディエンスとのコール・アンド・レスポンスを取り入れた明希のベースソロ、そして洗練されたテクニカルなプレイで魅せたShinjiのギターソロと、三者三様の世界観を見せてくれた。

 メンバーが再集結し、ジャジーな「液体」でオーディエンスを甘い歌詞でタイトル通り“溶かして”いく。そこから、ブラスの効いたアップテンポな歌謡ロック「騙し愛」で会場の空気はどんどん熱量が増す。8th(メジャー4th)アルバム『OUTSIDER』収録曲で、バンドの20周年にもふさわしいタイトルでもある「ANNIVERSARY」では多幸感をファンとのシンガロングで共有し、ハッピーな一体感で会場を満たす。そして、おなじみのメンバーコールを経て、最初期からシドのライブを支えてきた「循環」に突入する。コロナ禍でおあずけとなっていた定番のサビの回る振り付けも解禁となり長年ファンと培ってきた一体感が存分に発揮された形となった。最後に、久しぶりの披露となったパンキッシュな「one way」でフロアのテンションを限界突破させ、バンドはステージを去った。

 アンコールに応え、ラフな格好に着替えたメンバーが再登場。『海辺』から爽やかなメロディーが印象的な「揺れる夏服」をプレイすると、「夏恋」へと新旧の夏曲を繋げる。バンド初期からの代表曲なだけあって、オーディエンスの盛り上がりはハイボルテージに。メンバー同士も楽しげにじゃれ合う姿も見せていた。

 MCではメンバー全員がそれぞれマイクを握り、マオは「君たちすごいね!負けないようにこっちもガンガンいくんだけど、それを超えてくる」とファンの盛り上がりを称え、Shinjiはコロナ禍を経てライブ等がどれも当たり前ではないことを実感したとし、ライブを「どれも宝物」と語った。明希はシンプルに「20年やっててよかった」と噛みしめるように話した。ゆうやは昔からMCなどでおなじみとなっている“ゆうや飛ばし”に触れ、「20年経ってもやります!」と宣言した。

 「せっかくだから他会場の2、3倍はアンコール盛り上がりたい」という煽りから始まったブロックはまさに狂乱と呼ぶべき流れだった。3rdアルバム『play』収録の激烈チューン「park」でフロアにヘドバンの嵐を生み出すと、2008年にインディーズ時代最後の曲としてリリースされたラウドなデジロック「眩暈」でフロアを揺らしていく。極めつけは、前述の「循環」と共にシドの初音源に収録されていたダークな狂気的ハードコア「吉開学17歳 (無職)」。会場はカオティックな熱狂の渦と化す。ステージもフロアも力を全てを出し切る勢いで暴れる狂乱の光景はただただ圧巻だった。

 この濃ゆいブロックを終え、マオは「ファイナルにふさわしいライブがやれたんじゃないかなと思っています。正直、Zepp DiverCityでは今日とは別人のような苦しいライブも個人的に経験していて。そういう記憶を今日は絶対に塗り替えたくて、すごい気迫を持ってこのステージに挑みました。皆のおかげで無事に今日この会場がまた俺の中でキラキラと輝き出したので、またここに集まってやれる日を楽しみにしてます」とこの日に対する想いを語った。ファンへの日頃の感謝を話した上で「このツアー、そして今日のライブ中はいつもに増して感謝の気持ちが強かったです。ずっと“ありがとう”と思いながら歌ってました。それをステージで返せたのかなと思っていて、今日は最高に気持ちいいです」と真摯に伝えた。

 「シドはバンド、そして俺はヴォーカリストなので、最後は歌でこの素敵な『海辺』ツアーを締めくくりたいと思います。最後、俺達の気持ちをしっかりと胸に受け取ってください」という紹介からオールラスト、アルバムの表題曲でもある「海辺」へ。<君を選んで 流れ着いたよ 海辺みたいな 君へ>壮大で幻想的なサウンドで届けられるファンへの愛はきっと会場に居た全員に伝わっただろう。『海辺』というアルバムの世界観、そしてシドというバンドの歩みを同時に堪能できた、心を動かされる一夜だった。

Text:Haruki Saito
Photo:今元 秀明

◎公演情報
【SID 20th Anniversary TOUR 2023 「海辺」】
2023年5月13日(土) 東京・Zepp DiverCity TOKYO

◎セットリスト
1.軽蔑
2.大好きだから…
3.13月
4.街路樹
5.白い声
6.hug
7.慈雨のくちづけ
8.液体
9.騙し愛
10.ANNIVERSARY
11.循環
12.one way
[アンコール]
13.揺れる夏服
14.夏恋
15.park
16.眩暈
17.吉開学17歳(無職)
18.海辺


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