『アナと雪の女王2 オリジナル・サウンドトラック』(Album Review)

2019年11月23日 / 18:00

 松たか子が絶唱した“ありの~ままの~”を真似る子供たちを筆頭に、日本でも大ブームを巻き起こしたディズニー・アニメーション映画『アナと雪の女王』。ハロウィンで仮装されたり、ディズニーリゾートでイベントが開催されたりと、何かと取り上げられることが多かったからか、映画公開が今から6年も前(日本公開は2014年春)になるとは到底信じがたい。その続編となる『アナと雪の女王2』が公開されることも、数年前から話題にはなっていたが、こんなにも早くその時が訪れるとは思わなかった。

 同映画といえば、前述の「レット・イット・ゴー~ありのままで~」をはじめ、劇中で歌われる楽曲がヒットの要因といっても過言ではない。前作のサウンドトラックは、米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で通算13週間のNo.1をマークし、2014年の年間アルバム・チャートで首位獲得を果たす、モンスターヒットを記録した。もちろん、ヨーロッパ各国やアジア、此処日本でも1位に輝いている。それだけに、オリジナル・サウンドトラックへの期待も高まるわけだが、制作陣は前作の大ヒットと、ディズニーというブランドを背負った、相当大きなプレッシャーを抱えていたに違いない。

 前作に続き、本作もクリストフ・ベックとロバート・ロペス&クリステン・アンダーソン=ロペス夫妻が楽曲を手掛けている。監督を務めたクリス・バックは、彼等の存在(音楽)は作品の一部であり、それなしでは映画の完成もなかったと話している。共同監督のジェニファー・リーも、これ以上ない結果を出してくれたと絶賛した。彼らの生み出すメロディーが、物語を深め、キャラクターの感情をより鮮明にする。ディズニー映画の音楽が注目され、常にヒットするのは、作品との深い一体感にあるからだ。

 本作からは、前月にエルサ役のイディナ・メンゼルが歌う「イントゥ・ジ・アンノウン」が発表された。前作でいう「レット・イット・ゴー」的ポジションの、作品の核となる壮大なドラマティック・メロウで、語り口調を織り交ぜたオープニングから、ハイトーンを存分に披露したサビへの展開は、まさに『アナ雪』の世界観を表現している。「レット・イット・ゴー」では、和訳にもあるように自分自身を開放した様が歌われていたが、「イントゥ・ジ・アンノウン」は迷いや不安を感じながらも、前進していく心境が綴られている。このあたりが、本編のストーリーとリンクしている(かも?)。

 同曲には、ノルウェーの女性シンガーソングライター=オーロラが、フィーチャリング・アーティストとして参加している。また、前作ではデミ・ロヴァートが務めたエンドソングを、ロックバンドのパニック!アット・ザ・ディスコが彼等“らしい”解釈で焼き直した。特に、ボーカルのブレンドン・ユーリーによるサビのハイトーンは、イディナ・メンゼルに勝るとも劣らないクオリティの高さで、映画を「ハッピーな気分」で締め括ることができそう。日本版は、原曲を松たか子、エンドソングを中元みずきという新人アーティストが担当した。

 「イントゥ・ジ・アンノウン」にも劣らない存在感を示すのが、イディナ・メンゼルとアナとエルサの母・イドゥナ王妃を担当した女優のエヴァン・レイチェル・ウッドによる「みせて、あなたを」。両者によるエモーショナルなボーカルと、オーケストラをバックに従えたダイナミックなサウンドが、成熟した『アナ雪』ワールドの広大に開ける瞬間を捉える。

 オープニング曲「魔法の川の子守唄」は、そのエヴァン・レイチェル・ウッドがしっとり歌う、マイナー調のバラード曲。アコースティックギターの物悲し気な演奏と、触れたら壊れてしまいそうなほど繊細に歌うエヴァンのボーカルが見事に相まったディズニー映画らしい仕上がりで、地味ながらも興奮を余儀なくされる瞬間でもある。一方、ケイシー・マスグレイヴスが歌う同曲のエンドソングは、エヴァン・バージョンとはまた違う、優しい雰囲気に包まれたカントリー・バラードのようなテイストで、まさに「子守歌」のような役割を果たしている。

 2曲目の「ずっとかわらないもの」は、アナ役のクリステン・ベルを中心とした、カントリー調の軽快なオールディーズ・ポップ。クリステン・ベルの透き通ったハイトーン・ヴォイスが舞い、オラフ役のジョシュ・ギャッドが台詞調のパートを重ね、まろやかなトーンのジョナサン・グロフ(クリストフ役)が歌い、イディナ・メンゼル(エルサ)がハイライトを担当するメドレー形式のナンバーで、ゴスペル風のコーラスをバックに、全員でハーモニーを奏でていくエンディングはすばらしいの一言。

 一方、クリステン・ベルが単独で歌う「わたしにできること」は、ファルセットが瑞々しく美しいクラシカルなバラード曲で、ストーリーに直結した歌詞を表現すべく、時に涙をこらえて歌うようなパフォーマンスも披露した。オラフが何かやらかしそうな(?)場面が目に浮かぶ「おとなになったら」では、ジョシュ・ギャッドのコミカルなアレンジと、オールディーズ調の暖かみ溢れるサウンドが、緊張感を緩和させてくれる。

 「トナカイのほうがずっといい~恋愛編~」~「恋の迷い子」は、アナを想うクリストフのもどかしい気持ちを表現したおセンチ系メロウ。感情の揺らめきをジョナサン・グロフが実に上手くボーカルで表現していて、ウィーザーが披露したエンドソングの方も“エンディング”に相応しいパワーバラードに仕上がっている。

 スーパー・デラックス版は、本編のインストゥルメンタルに加え、 劇中では使用されなかったアウトテイク、ロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン=ロペス、クリストフ・ベックによるオリジナルスコアが収録される。また、日本盤には前述の松たか子による「イントゥ・ジ・アンノウン」他、神田沙也加(アナ)や吉田羊(イドゥナ王妃)など、吹き替え版キャストが担当した日本語バージョンも収録される。

 2019年11月22日に世界同時公開された『アナと雪の女王2』は、日本でも大ヒットを記録しているようで、公開初日はSNSでも様々な感想や意見が飛び交っている。映画を観る前の予習、観た後の余韻に浸りたい方、もしくは映画を観る予定ではない方も十分楽しめる内容になっているので、音で体感するだけでも『アナ雪2』の世界観は十分堪能できると思う。

Text: 本家 一成


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