ファンキー・イヤーエンド・パーティ!シュガーヒル・ギャングが繰り出す言葉のグルーヴに身を委ねて。

2017年12月31日 / 11:15

 「Clap Your Hands」、「Have A Party」、「Scream Tokyo!」

 ターンテーブルから聴こえてくるノイズ交じりのファンファーレに誘われるようにメンバーが登場すると、かぶりつきのオーディエンスは総立ち状態。一気にヴォルテージが沸点に達し、ファンキー・パーティがスタートする。迸るストリートのメンタリティ――。

 1970年代、路上の気分をダイレクトにメッセージしていく音楽として産声を上げたラップ/ヒップホップ。いわゆる“何でもアリ”の精神で雑多な要素を過剰に詰め込み、タフなストリート・ミュージックとして瞬く間に人種を越えて支持を集めたファンキーなノリと知性は、シックの「Good Times」のベースラインを借用してダンス・ミュージックに特化した「Rapper’s Delight」や、ラップの本質を突いた「The Message」といったヒットと歩を合わせるかのように世界中に浸透。世紀を越えた今は、もはやポップ・ミュージックのミドル・ロードに揺るぎないポジションを獲得している。

とにかく当時は、目からウロコの“革命”だったラップ・ミュージック。そのオリジネイターとして、今も絶大な人気を博しているのがシュガーヒル・ギャングだ。路地裏のチンピラたちがユーモアを交えながら誇らしげに掲げたその名前は、もはやラッパーやヒップホップ・アーティストにとって“クールの象徴”になっていると言って差し支えない。レーベル・メイトのファンキー・フォー・プラス・ワンが「That’s The Joint」で高らかに謳った通り、NYにシュガーヒル・レーベルあり!――そのメイン・ユニットが彼らというわけだ。

 そんな、とことんファンキーな4人(残念ながらDJ T Dynastyは急遽欠席)を年末のパーティに呼んでくれるなんて、なかなかやってくれるなぁ、ビルボードライブ!ましてやオープニングDJにRYUHEI THE MANまでキャスティングされたのだから、今宵のパーティは間違いない!

 16ビートの躍動的なリズムに乗って、ユーモラスかつシビアな言葉が3人のMCによって矢継ぎ早にリレーされていく。DJタイムで温まった身体に軽快に響くサウンドは、それだけで気分が高揚し、会場が熱気に満ちていく。スクラッチやブレイクビーツ、サンプリング、そして執拗なまでのリフの繰り返し。これは、まさに韻を踏んだ“言葉のアート”と言っていいだろう。エッジの利いたグルーヴはとびきり中毒性が高く、1度身体に染み込むと厄介なほど。しばらくは心地好い後遺症に苦しみそうだ。

 肌に擦りつけられるような質感を持ったサウンドとザラついたリリックがハコ全体に共鳴する。ドラムスやキーボードと一緒に並んだターンテーブル。その横に置かれたマックのアップル・マークが発光している。

中盤にはJBやオハイオ・プレイヤーズといったヘヴィ・ファンクからディスコ~メロウ・ソウル~レゲエ~ラテンと、ターンテーブルからは“何でもアリ”のリズムが弾き出されてくる。まさにヒップホップの面目躍如とばかりに、あらゆるグルーヴを飲み込みながらパーティ・ラップはキレを増していく。後半には生演奏も絡めながらリリックのリレーは佳境に――。気が付けば総立ちの観客は、これでもかというほど激しく身体をくねらせている。

 生命感溢れるビートの応酬。20世紀後半に始まった大胆なグルーヴの革新が目の前で展開されていくミラクルな95分。下半身を直撃し、踵が浮き上がるリズムの津波に飲み込まれながら、心地好く汗を滲ませていくダンスタイムの連続。まるで観客全員が『Soul Train』のステージで踊っているような年末のトゥインクル・タイムを、僕はすっかり堪能した。

 大晦日の今日は、大阪で文字通りファンキー・カウントダウンをぶちかましてくれる彼ら。サウス・ブロンクス発の音楽アイデアによって、もう、ハッピーな年越しが約束されたも同然。こんなに愉快な“行く年、来る年”は、なかなか味わえない。絶対に参戦しなければ!

◎シュガーヒル・ギャング公演情報
12月30日(土)ビルボードライブ東京 ※終了
1st Stage 開場15:30 開演16:30
2nd Stage開場18:30開演19:30

12月31日(日)ビルボードライブ大阪
1st Stage開場18:30開演19:30
2nd Stage開場21:30開演22:30(カウントダウン・ショー)
公演詳細>

Photo:Masanori Naruse

Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。数年ぶりに厳しい冬になった東京。厳かに新年を迎えたいのなら、近年、進化が著しい日本の赤ワインはいかが? 我が国固有のハイブリッド種にして2013年に国際品種に登録されたマスカット・ベーリーAで造る辛口が、おせち料理にピッタリ。従来のフォクシー・フレイヴァーを抑えた、落ち着きの感じられる味わいが新鮮。勝沼の『くらむぼんワイン』で出会った「ベルカント・マスカット・ベーリーA 樽貯蔵」は、個人的に今年最高の見つけもの! 果実味が濃厚ながらも食事を邪魔しない味に造り手のセンスが感じられる逸品。ぜひ、お試しを。そして、よいお年を!


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