D'ERLANGERの起点であり、バンドのスタイルが分かりやすく提示された初期作『LA VIE EN ROSE』

2017年4月19日 / 18:00

『LA VIE EN ROSE』/D'ERLANGER (okmusic UP's)

4月22日に再結成10周年を記念した『REUNION 10th ANNIVERSARY-薔薇色の激情-』の開催、さらに新曲「バライロノセカイ-Le monde de la rose-」の配信リリース。そして、5月3日リリースでニューアルバム『J'aime La Vie』がスタンバイと、さすがに再結成10周年の節目の年だけあって、盛り上がりを見せているD'ERLANGER。途中、解散からのインターバルがあったものの、結成から数えて30年を優に越えるベテラン・バンドである。各メンバーの活動も含めて現在の音楽シーンに大きな影響を与えたことは間違いない彼ら。その出発点とも言えるアルバムを取り上げてみたい。

活動期間1年半の伝説的バンド
再結成からすでに10年間を経ているわけで、今やD’ERLANGERがロックシーンで活動していることに何の感慨を持たない人も多いのだろうが、80年代をリアルタイムで見て来た者のひとりとしては、正直言って隔世の感を禁じ得ない。D’ERLANGERは一時期、“伝説的”と呼ぶに相応しいバンドであった。何しろ活動期間が短かった。結成は1983年だが、幾度かのメンバーチェンジ後、kyo(Vo)、CIPHER(Gu)、SEELA(Ba)、Tetsu(Dr)の現メンバーとなったのが1988年。1stアルバム『LA VIE EN ROSE』のリリースが1989年2月で、1990年1月にメジャーデビュー。同年3月に2ndアルバム『BASILISK』を発表し、その後、11月に解散している。それだけ見ると、活動期間は大凡1年半といったところである。発表したアルバムは共にセールスも絶好調で、しかもメジャー第1弾アルバム『BASILISK』はチャート5位にランクインしたほどなので、まさに“これから”といったところでその活動にピリオドを打った。パッと咲いてパッと散る──短期間に鮮烈な印象を与えたバンドだったのである。当時メディア向けに“解散理由はない”と発表され、我々からしてみたら不可解な解散劇でもあったので、D’ERLANGERの存在そのものにミステリアスなイメージが付加されたとも思う。
各メンバーの出自と、それぞれが解散後に立ち上げたバンドがしっかりと実績を残したこともD’ERLANGERの“伝説”感に拍車をかけたとも思う。まず出自であるが、kyo、TetsuがSAVER TIGERという、これまた伝説的なバンドに在籍していた。このSAVER TIGERはHIDE(X JAPAN)が高校生の時に立ち上げたバンドで、その解散後、YOSHIKIに誘われてXに加入したという経緯がある。また、CIPHERは44MAGNUMのJIMMY(Gu)のローディーを務めており、師弟関係であることを公言している。解散後の各々の活動としては、1991年にkyoがDie In Criesを立ち上げている。ここに室姫深(Gu、ex.THE MAD CAPSULE MARKETS)、YUKIHIRO(Dr、ex.ZI:KILL)が参加。室姫は後にDEAD ENDのMORRIE(Vo)のソロプロジェクト、Creature Creatureに参加している他、Acid Black Cherryのサポートも務めている。YUKIHIROがその後にL’Arc〜en〜Cielのドラマーとなったことは言うまでもないだろう。CIPHERとTetsuはBODYでの活動を挟んで、1994年にCRAZEを結成。ここには藤崎賢一(Vo、JUSTY-NASTY)、飯田成一(Ba、ex.ZI:KILL)が加わった。途中、藤崎が脱退した後には緒方豊和(ex.MAJESTY)、鈴木慎一郎(BLOOD)、そして、板谷祐(Vo、THE SLUT BANKS、ex.ZI:KILL)をフロントマンに迎えている。D’ERLANGER前もD’ERLANGER後も、当時のシーンを知る者にとって、彼らの在籍したバンドはドリームチームであったのである。そこから転じて、D’ERLANGERをリアルタイムで聴いたことがないリスナーにしても、“D’ERLANGERとはさぞかしすごいバンドであったに違いない!”と思うに至ったとも思われる。ちなみに、kyoの前にD’ERLANGERのボーカリストだったDIZZY=福井祥史はSTRAWBERRY FIELDSというバンドを結成し、1991年にメジャーデビューしているのだが、その時も“元D’ERLANGERのボーカリスト”で推していた記憶がある。

バンドの原点かつシーンの原典
再結成から10年。D’ERLANGERはこの間に5枚のオリジナルアルバムを発表しているので、彼らの名盤を挙げるとするならば、それこそ最新作も含めて本来全8作品の中から選ぶべきなのだろうが、何しろ、2017年5月3日に発売される8thアルバムのタイトルが『J’aime La Vie』で、その収録曲で先行配信リリースされたシングルが「バライロノセカイ-Le monde de la rose-」というのが、彼らの最新トピックである。“J’aime La Vie = 我が人生を謳歌している”+“バライロノセカイ-Le monde de la rose-”と来たら、これはもう“初期作品について書け!”と言われているようなもの。2つにひとつ。「BARA IRO NO JINSEI」収録の『BASILISK』も悪くないが、ここはアルバムタイトルがズバリ“薔薇色の人生”である『LA VIE EN ROSE』でいこう。本作はD’ERLANGERの起点でもあるのでバンドのスタイルが分かりやすく提示されているだけでなく、改めて聴いてみると、後世のロックバンド、とりわけ所謂ビジュアル系に与えた影響が少なくないことも感じられる。シーンの原典と言うと若干大袈裟に聞こえるかもしれないが、そうした側面があることも否めないアルバムである。
多彩な旋律を奏でつつ、エッジの立った音を聴かせるギター。グイグイとバンドをけん引するキレのいいドラムス。独特のうねりを持ってそのふたつをつなぐベース。そして、ハスキーだがそれゆえに攻撃性が際立ったように思えるヴォーカル。『LA VIE EN ROSE』で垣間見ることができるD’ERLANGERサウンドはそれらが合わさって構成されている。端的に言えばそういうことだと思う。と書くと、“3ピース+ヴォーカルって大体そんなだろう? BOØWYだってそうじゃんか?”との突っ込みもあるだろうが、それも半分は正しい。CIPHERはBOØWYからの影響を公言しており、この頃、彼はギターアンプをマーシャルからローランドに変えて、歪んだ音よりもカッティングにこだわり始めたというし、Tetsuのドラムスもロート・タムを取り入れたという。だから、バンドのスタイルというか、楽曲の体裁がビートロック寄りなのは当たり前とも言える。だが、半分はそうじゃない。それを証明するのはM4「DEAR SECRET LOVER」が最も分かりやすいと思う。ベースはシャッフルビートで楽曲自体はサクサクと進んでいくのだが──何と言ったらいいか、良い意味で奔放なのだ。案外(と言うのも失礼だが)ギターは生真面目なカッティングを続けるのだが、ドラムスは時々マーチングビートを取り入れており、ベースはシャッフルっぽくない、定番ではないうねりを見せるので、随所々々で明らかにビートロックのそれとは異なる鳴りを聴かせる。決して不協ではないが、ギリギリのところでバランスを取っている感じがスリリングでカッコ良い。こうしたところはD’ERLANGERならではのバンドアンサンブルであろう。M2「LA VIE EN ROSE」、M5「SADISTIC EMOTION」、M6「an aphrodisiac」などでもそれらを感じることができる。

メロディーメーカーとしての非凡さ
歌メロにも触れておかなければならない。その全てがキャッチーであり、メロディアスなのもD’ERLANGERの特徴だ。本作収録曲の作曲はほぼCIPHERが手掛けているが、彼のメロディーメーカーとしての非凡さを見せつけているようでもある。1曲を挙げるなら、これはもうM8「LULLABY」で決まりだろう。この開放的なメロディーはどこに出しても恥ずかしくないというか、音楽シーンのド真ん中で鳴らしても決して見劣りすることはないキャッチーさ、メロディアスさである。サビ頭にするに相応しい堂々たるものだと思う。余談だが、本人がそれを望むかどうかは別として、CIPHERは作曲家としても大成するのではないかと、筆者は半ばマジで思っている。ロックバンドのミュージシャンがアイドルに楽曲提供することも珍しくなくなった今、実現も不可能ではないと思うのだが──。話を戻すと、これは想像の域を出ないが、CIPHERのメロディーメーカーとしての資質はやはり44MAGNUMを筆頭とした和製ヘヴィメタルからの影響だろうか。サウンドは激しいが、歌メロはキャッチーなのが和製ヘヴィメタル。ややノスタルジックなテイストを含んでいるのも特徴で、それは『LA VIE EN ROSE』収録曲とも共通する。また、M5「SADISTIC EMOTION」がその最たるものであると思うが、サウンドこそ異なるものの、楽曲の構成がハードロック、ヘヴィメタルに近いものも本作には多い。
最後に結論めいたものを述べるとすると、和製ヘヴィメタルから派生したメロディーと楽曲構成を、ビートロック寄りのスタイルをベースとしながらも、各パートが奔放にぶつかり合うバンドアンサンブルで構築し、そのサウンドにバンド名の“淫靡な誘惑”に相応しい歌詞をコーティングしたのがD’ERLANGERであろう。
《青い小舟ふたり乗って/強く抱きしめ口づけて/離れないでそばに居てよ/全ての愛君に捧ぐ》(M4「DEAR SECRET LOVER」)。
《瞳は閉じたままそばにおいでよ/いつかの夢誓う 今はふたりこうして寄り添って/まどろむ月・PROMISE・眠れぬ夜交わす/子守歌をひとつ オルゴールにのせて/静かに夢心地 星をつなげば/絵具で夜描く君のシャイなハートをつかまえて》(M8「LULLABY」)。
上記のようなロマンティックな作風がCIPHERによるもの。
《パンドラの箱の中/醜い美の権化/BEDの下のMAKE LOVE/安物のNIHILISM/BANSHEEの喘ぎ声/装った SENSHITIVE/I CROSS MY HEART & HOPE TO DIE》(M M6「an aphrodisiac」)。
《LAZY. SLEAZY 甘い果実と醜いピエロ/LAZY. SLEAZY ほどけはしない JIGZAW PUZZLE/SUCIDAL 自殺行為さ 全て時計じかけ/IMITATION 仮面の下で操つられる LANGUAGE》《LAZY. SLEAZY 甘い果実と醜いピエロ/LAZY. SLEAZY 不協和音 堕天使の BLUE SIGHS/LAZY. SLEAZY 銀のピアスに 憐れな SYNPATHY/LAZY. SLEAZY ほどけはしない JIGZAW PUZZLE》(M10「LAZY SLEAZY」)。
これら、若干デカダンスなニュアンスを含んでいるのがkyo作詞のリリックである。共にスタイリッシュであり、サウンドで半分消し去ったハードロック、ヘヴィメタル特有の“えぐみ”を完全に脱臭することに成功している。


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